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東大数理院試過去問解答例(2019B09)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2019B09の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2019B09

$\Omega=[0,\infty)$とおく。連続かつ$(0,\infty)$$C^1$級な関数$\varphi:\Omega\to\Omega$で、$\inf_{x\in(0,\infty)}\varphi'(x)>0$なものをとる。ここで$\Omega$上の関数$f:\Omega\to\mathbb{R}$に対し、$Tf:=f\circ\varphi$と定義する。また$L^2(\Omega)$$\Omega$上の$2$乗可積分実数値関数の為す実ヒルベルト空間とする。また$I$$L^2(\Omega)$上の恒等作用素を表す。

  1. $T$$L^2(\Omega)$上の有界作用素を定めていることを示しなさい。
  2. $\varphi$$\varphi(0)\neq0$かつ$\inf_{x\in(0,\infty)}\varphi'(x)\geq1$を満たしていて、極限$\alpha=\lim_{x\to\infty}\varphi'(x)$が存在したとする。このとき$\lambda<\frac{1}{\sqrt{\alpha}}$なる任意の実数$\lambda$に対して、$T-\lambda I:L^2(\Omega)\to L^2(\Omega)$は単射でないことを示せ。
  3. $\varphi(x)=e^x-1$とする。線型作用素$T-I:L^2(\Omega)\to L^2(\Omega)$は有界な逆作用素を持たないことを示せ。
  1. 実際$C=\inf\{\varphi'(x)\}$とおくと、
    $$ \begin{split} \|Tf\|_2^2&=\int_0^\infty |f\circ\varphi|^2dx\\ &=\int_{\varphi(0)}^\infty |f(s)|^2\frac{ds}{\varphi'(\varphi^{-1}(s))}\\ &\leq \frac{1}{C}\int_{\varphi(0)}^\infty |f(s)|^2{ds}\\ &\leq\frac{\|f\|_2^2}{C} \end{split} $$
    であることから、$T$$L^2(\Omega)$の線型作用素を定めていることとその有界性が示せた。
  2. 初めに数列$\{a_n\}$$a_n:=\varphi^n(0)$及び$a_0=0$によって定める。これは$\varphi'(t)\geq1$及び$\varphi(0)>0$の仮定から無限大に発散する。ここで$f:\Omega\to\mathbb{R}$$[a_i,a_{i+1})$上に於いて
    $$ f(x)=\lambda^i $$
    であるように定める。このとき$f$$\Omega$上全体で定義される関数である。更に$\lim_{x\to\infty}\varphi'(x)=\alpha$の仮定から定数$C$を適切に取ったとき
    $$ \begin{split} \int_0^\infty|f|^2dx&=\sum_{i=0}^\infty (a_{i+1}-a_i)\lambda^{2i}\\ &=\sum_{i=0}^\infty({\varphi^{i+1}(0)-\varphi^i(0)}{})\lambda^{2i}\\ &\leq C\sum_{i=0}^\infty (\alpha\lambda^2)^i&<\infty \end{split} $$
    がわかる。以上から$T$の固有値$\lambda$に関する固有ベクトル$f\neq0$が構成できたから、特に$T-\lambda$は単射ではない。
  3. 定義から
    $$ \int_{0}^\infty (f_n(e^x-1)-f(x))^2dx\xrightarrow{n\to\infty}0 $$
    かつ$\|f_n\|_2=1$であるような関数列$\{f_n\}_n$が取れれば良い。まず
    $$ f_n(x)=\begin{cases} \sqrt{n}&(x\leq \frac{1}{n})\\ 0&(\frac{1}{n}< x) \end{cases} $$
    と定義する。このとき
    $$ \begin{split} \|f_n\|_2^2&=\int_{\log(1+\frac{1}{n})}^{\frac{1}{n}}ndx\\ &=1-\log(1+\frac{1}{n})^n\xrightarrow{n\to\infty}0 \end{split} $$
    であるから$f_n$は所望の条件を満たす。よって$T-1$は有界な逆作用素を持たない。
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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