ここでは東大数理の修士課程の院試の2019B09の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2019B09
とおく。連続かつ上級な関数で、なものをとる。ここで上の関数に対し、と定義する。またを上の乗可積分実数値関数の為す実ヒルベルト空間とする。または上の恒等作用素を表す。
- は上の有界作用素を定めていることを示しなさい。
- がかつを満たしていて、極限が存在したとする。このときなる任意の実数に対して、は単射でないことを示せ。
- とする。線型作用素は有界な逆作用素を持たないことを示せ。
- 実際とおくと、
であることから、はの線型作用素を定めていることとその有界性が示せた。 - 初めに数列を及びによって定める。これは及びの仮定から無限大に発散する。ここでを上に於いて
であるように定める。このときは上全体で定義される関数である。更にの仮定から定数を適切に取ったとき
がわかる。以上からの固有値に関する固有ベクトルが構成できたから、特には単射ではない。 - 定義から
かつであるような関数列が取れれば良い。まず
と定義する。このとき
であるからは所望の条件を満たす。よっては有界な逆作用素を持たない。