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ここでは科学大数学系の修士課程の院試の2022午前05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2022午前05
$a< b$を実数とし、$f:[a,b]\to\mathbb{R}$を連続関数とする。
- 広義積分
$$
\int_{-\infty}^\infty\frac{1}{t^2+x^2}dx
$$
を計算しなさい。 - $0\not\in[a,b]$とするとき、
$$
\lim_{t\to+0}\int_a^b\frac{tf(x)}{t^2+x^2}dx=0
$$
を示しなさい。 - $0\in(a,b)$とするとき、
$$
\lim_{t\to+0}\int_a^b\frac{tf(x)}{t^2+x^2}dx=0
$$
を示しなさい。
- 置換積分から
$$
\int_{-\infty}^\infty\frac{1}{1+x^2}dx=\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}\frac{\cos^{-1}\theta d\theta}{1+\tan^2\theta}=\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}d\theta={\color{red}\pi}
$$
である。 - ルベーグの優収束定理から
$$
\lim_{t\to+0}\int_{a}^{b}\frac{tf(x)}{t^2+x^2}dx=\int_a^b\lim_{t\to+0}\frac{tf(x)}{t^2+x^2}dx=0
$$
である。 - まず
$$
\begin{split}
\int_{a}^{b}\frac{tf(x)}{t^2+x^2}dx&=\int_{\frac{a}{t}}^{\frac{b}{t}}\frac{tf(tx)}{t^2(1+x^2)}tdx\\
&=\int_{\frac{a}{t}}^{\frac{b}{t}}\frac{f(tx)}{1+x^2}dx
\end{split}
$$
である。ここで関数$f_t(x):\mathbb{R}\to\mathbb{R}$を
$$
f_t(x):=\begin{cases}
\frac{f(tx)}{1+x^2}&(\frac{a}{t}< x<\frac{b}{t})\\
0&(\textsf{if else})
\end{cases}
$$
とおくと、この極限$\frac{f(0)}{1+x^2}$は$\mathbb{R}$上可積分であるから、ルベーグの優収束定理より
$$
\begin{split}
\lim_{t\to+0}\int_{a}^{b}\frac{tf(x)}{t^2+x^2}dx&=\lim_{t\to+0}\int_{-\infty}^\infty f_t(x)dx\\
&=\int_{-\infty}^\infty\lim_{t\to+0}f_t(x)dx\\
&=\int_{-\infty}^\infty\frac{f(0)}{1+x^2}dx&=\pi f(0)
\end{split}
$$
になり、結果が従う。