置換群の理解があやふやだと感じていたために記事にしました。やりたいことは命題1の証明をすることです。自分の最近の勉強の成果をまとめるということを意識して書きました。それでもよければ、どうぞ。
$X$を空でない集合とするとき、$X$から$X$への全単射写像$\sigma:X \rightarrow X$のことを$X$の置換という。$\sigma , \tau$を$X$の置換とするとき、その積$\sigma\tau$を写像としての合成$\sigma \circ \tau$と定義する。
$X$の置換全体の集合は、上の演算より群になる。なお、単位元は恒等写像$id_X$で、$\sigma$が$X$の置換なら、群としての逆元は写像としての逆写像$\sigma^{-1}$である。結合法則が成り立つことは写像の合成に関して結合法則が成り立つことから従う。
$X$の置換全体からなる群のことを$X$の置換群という。$X_n = \{1,2,\cdots,n\}$とするとき、$X_n$の置換のことを$n$次の置換という。$n$次の置換全体よりなる群のことを$S_n$で表す。$S_n$を$n$次対称群という。$S_n$は位数$n!$の有限群である。
$S_n$の元を表すのに$1,2,\cdots,n$の行き先を書いて
$$ \sigma = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & \cdots & n \\ \sigma(1) & \sigma(2) & \sigma(3) & \cdots & \sigma(n) \end{pmatrix} $$
とも書く。
$1 \leqq i < j \leqq n$のとき、$l \ne i,j$なら、$\sigma(l) = l$であり、$\sigma(i) = j \hspace{3mm},\hspace{3mm} \sigma(j) = i$であるとき、$\sigma$は置換である。このような置換を$i,j$の互換といい、$(i,j)$と書く。
一般に、$1 \leqq i_1 , \cdots,i_m \leqq n$をすべて異なる整数とするとき、
$i_1 \rightarrow i_2 \hspace{3mm} , \hspace{3mm} i_2 \rightarrow i_3 \hspace{3mm},\hspace{3mm}\cdots \hspace{3mm} , \hspace{3mm}i_m \rightarrow i_1$
と移し、他の$1\leqq j \leqq n$は変えない置換を$(i_1 , i_2 , \cdots,i_m)$と書き、長さ$m$の巡回置換という。
ここまでを踏まえて、次の命題を示していきます。
(1)$S_n$の任意の元は有限個の互換の積として表せる。
(2)$S_n$の長さ$m$の巡回置換は$(m-1)$個の互換の積として表せる。
証明
(1)$\sigma \in S_n$とする。$n$に関する帰納法を用いて示す。
$\sigma(n) = i$とする。
なので、$\sigma$は次のように書ける。
$$ \sigma = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & \cdots & n \\ \sigma(1) & \sigma(2) & \sigma(3) & \cdots & i \end{pmatrix} $$
もし、$i = n$なら、$\sigma$は$S_{n-1}$の元とみなすことができる。
($\sigma(n) = n$のとき、$n$を固定した置換ということになる。このとき、$n$以外の$n-1$の個の元に焦点を当てて考えればよいことになり、これはつまり、$S_{n-1}$の置換を見ていることと同じことになる)
$n$に関する帰納法で、$\sigma$は有限個の互換の積として表せる。
($n-1$まで$\sigma$が有限個の積として表せたとする。このとき、$\sigma$は$S_{n-1}$の元としてみなせるから当然、$\sigma$も有限個の積として表せる)
もし、$i \ne n$なら$(i\hspace{3mm}n)\sigma(n) = n$.
$$ (i\hspace{3mm}n) = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & \cdots & i &\cdots & n \\ 1 & 2 & 3 & \cdots & n & \cdots &i \end{pmatrix} $$
で、$\sigma(n) = i$であるので、置換の積から$(i\hspace{3mm}n)\sigma(n) = n$となる。よって、$(i\hspace{3mm}n)\sigma$は$S_{n-1}$の元とみなすことができる。
よって、$n$に関する帰納法で、$(i\hspace{3mm}n)\sigma $は有限個の互換の積として表せる。
$(i\hspace{3mm}n)^2 = 1_{S_n}$なので、$\sigma$は有限個の互換の積として表せる。
(2)$\sigma = (i_1 \hspace{3mm}i_2\hspace{3mm} \cdots \hspace{3mm} i_m)$とする。
$m$に関する帰納法を用いる。
$$
\sigma =
\begin{pmatrix}
i_1 &i_2 & \cdots & i_m\\
i_2 & i_3 & \cdots & i_1
\end{pmatrix}$$
となっている。
$\tau = (i_1 \hspace{3mm}i_m)\sigma$とおくと、$\tau(i_2) = i_3 , \cdots , \tau(i_{m-2}) = i_{m-1}$である。
$\tau(i_{m-1})$の値は$(i_1\hspace{3mm}i_m)$を$\sigma(i_{m-1})$に適用して得られる。
$\tau(i_{m-1}) = (i_1\hspace{3mm}i_m)\sigma(i_{m-1}) = (i_1\hspace{3mm}i_m) (i_m) = i_1$
同様にして、$\tau(i_m) = i_m , \tau(i_1) = i_2$
よって、$\tau$は長さ$(m-1)$の巡回置換である。
(なぜなら、$\tau(i_m) = i_m$となっているから、$i_m$の部分を除いた$m-1$個の置換として見ることができるから)
$m$に関する帰納法により、$\tau$は$m-2$個の互換の積になる。
したがって、$\sigma$は$(m-1)$個の互換の積になる。
今回は以上です。