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高校数学
文献あり

MZVの関係式[3]

$$\newcommand{bm}[0]{\boldsymbol} \newcommand{dep}[0]{{\rm dep}} \newcommand{ds}[0]{\displaystyle} \newcommand{H}[0]{{\cal H}} \newcommand{Li}[0]{{\rm{Li}}} \newcommand{mi}[2]{\begin{array}{c} #1 \\ #2 \end{array}} \newcommand{MLV}[0]{{\sf MLV}} \newcommand{n}[0]{\varnothing} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{R}[0]{{\cal R}} \newcommand{sh}[0]{ш} $$

大野関係式

双対関係式の証明で使用した連結和に変数を導入したものを新たに定義する。

インデックス$\bm k=(k_1,\cdots,k_r),\bm l=(l_1,\cdots,l_s)$について、
$$Z(\bm k;\bm l;x)=\sum_{\begin{array}{c}0=n_0< n_1<\cdots< n_r\\ 0=m_0< m_1<\cdots< m_s\end{array}}\prod_{i=1}^r\frac{1}{n_i^{k_i-1}(n_i-x)}\prod_{j=1}^s\frac{1}{m_j^{l_j-1}(m_j-x)}\frac{(1-x)_{n_r}(1-x)_{m_s}}{(1-x)_{n_r+m_s}}$$
と定める。
ここで、$(1-x)_{n_r}$はPochhammer記号(上昇冪)である。
また、$O(\bm k;x):=Z(\bm k;\n;x)=Z(\n;\bm k;x)$と定める。

この連結和に関しても、同様の輸送関係式が成り立つ。

$$Z(\bm k_\to;\bm l;x)=Z(\bm k;\bm l_\uparrow;x)$$
$$Z(\bm k_\uparrow;\bm l;x)=Z(\bm k;\bm l_\to;x)$$

対称性より片方のみ示せばよい。
\begin{align} Z(\bm k_\to;\bm l;x)=&\sum_{\begin{array}{c}0=n_0< n_1<\cdots< n_r< a\\ 0=m_0< m_1<\cdots< m_s\end{array}}\prod_{i=1}^r\frac{1}{n_i^{k_i-1}(n_i-x)}\prod_{j=1}^s\frac{1}{m_j^{l_j-1}(m_j-x)} \\ &\cdot\frac{1}{a-x}\frac{(1-x)_{a}(1-x)_{m_s}}{(1-x)_{a+m_s}} \end{align}
ここで、
\begin{align} \sum_{n_r< a}\frac{1}{a-x}\frac{(1-x)_{a}(1-x)_{m_s}}{(1-x)_{a+m_s}}&=\frac{1}{m_s}\sum_{n_r< a}\left(\frac{(1-x)_{a-1}(1-x)_{m_s}}{(1-x)_{a+m_s-1}}-\frac{(1-x)_{a}(1-x)_{m_s}}{(1-x)_{a+m_s}}\right) \\ &=\frac{1}{m_s}\frac{(1-x)_{n_r}(1-x)_{m_s}}{(1-x)_{n_r+m_s}} \end{align}
なので$Z(\bm k_\to;\bm l;x)=Z(\bm k;\bm l_\uparrow;x)$を得る。

許容インデックス$\bm k=(k_1,\cdots,k_r)$と非負整数$n$について、その大野和$O_n(\bm k)$
$$O_n(\bm k)=\sum_{\begin{array}{c}0\leq e_1,\cdots,e_r\\ e_1+\cdots+e_r=n\end{array}}\zeta(k_1+e_1,\cdots,k_r+e_r)$$
と定めると、$\ds O(\bm k;x)=\sum_{0\leq n}O_n(\bm k)x^n$が成り立つ。

\begin{align} O(\bm k;x)&=\sum_{0< n_1<\cdots< n_r}\prod_{i=0}^r\frac{1}{n_i^{k_i-1}(n_i-x)} \\ &=\sum_{0< n_1<\cdots< n_r}\frac{1}{\bm n^{\bm k}}\prod_{i=0}^r\frac{1}{(1-x/n_i)} \\ &=\sum_{0< n_1<\cdots< n_r}\frac{1}{\bm n^{\bm k}}\prod_{i=0}^r\sum_{0\leq e_i}\frac{x^{e_i}}{n_i^{e_i}} \\ &=\sum_{0\leq e_1,\cdots,e_r}x^{e_1+\cdots+e_r}\sum_{0< n_1<\cdots< n_r}\frac{1}{n_1^{k_1+e_1}\cdots n_r^{k_r+e_r}} \\ &=\sum_{0\leq e_1,\cdots,e_r}x^{e_1+\cdots+e_r}\zeta(k_1+e_1,\cdots,k_r+e_r) \\ &=\sum_{0\leq n}O_n(\bm k)x^n \end{align}

大野関係式

$$O_n(\bm k)=O_n(\bm k^\dagger)$$

連結和の輸送関係式より
\begin{align} O(\bm k;x)&=Z(\bm k;\n;x) \\ &=Z(\n;\bm k^\dagger;x) \\ &=O(\bm k^\dagger;x) \end{align}
となるので、冪級数の係数の一致から$O_n(\bm k)=O_n(\bm k^\dagger)$を得る。

上の等式において$\bm k=(\{1\}^{r-1},2),n=k-r-1(1< r< k)$とすれば、
\begin{align} O_{k-r-1}(\{1\}^{r-1},2)&=\sum_{\begin{array}{c} 0\leq e_1,\cdots,e_r\\ e_1+\cdots+e_r=k-r-1\end{array}}\zeta(1+e_1,\cdots,1+e_{r-1},2+e_r) \\ &=\sum_{\begin{array}{c} 0< e_1,\cdots,e_{r-1},1< e_r\\ e_1+\cdots+e_r=k\end{array}}\zeta(e_1,\cdots,e_r) \\ &=\sum_{\begin{array}{c} \dep(\bm k)=r\\ |\bm k|=k\end{array}}\zeta(\bm k) \end{align}
であり、また、
\begin{align} O_{k-r-1}(\{1\}^{r-1},2)&=O_{k-r-1}((\{1\}^{r-1},2)^\dagger) \\ &=O_{k-r-1}(r+1) \\ &=\zeta(r+1+k-r-1) \\ &=\zeta(k) \end{align}
となるから、$\ds\sum_{\begin{array}{c} \dep(\bm k)=r\\ |\bm k|=k\end{array}}\zeta(\bm k)=\zeta(k)$を得る。これはMZVの和公式といって、とても美しい式なので改めて定理として書いておく。

和公式

整数$r,k$$1< r< k$を満たすなら、$\ds\sum_{\dep(\bm k)=r,|\bm k|=k}\zeta(\bm k)=\zeta(k)$が成り立つ。

調和積から$\zeta(2)^2=\zeta(4)+2\zeta(2,2)$、シャッフル積から$\zeta(2)^2=4\zeta(1,3)+2\zeta(2,2)$が分かるので、$\zeta(1,3)=\dfrac14\zeta(4)$が導かれる。和公式より$\zeta(1,3)+\zeta(2,2)=\zeta(4)$なので$\zeta(2,2)=\dfrac34\zeta(4)$も分かり、これを調和積から出てきた式に代入すると$\zeta(2)^2=\dfrac52\zeta(4)$という関係式が具体値を経由せずに証明できる。よく知られた特殊値$\zeta(2)=\dfrac{\pi^2}{6}$$\zeta(4)=\dfrac{\pi^4}{90}$を用いればすぐわかるが、こういった具体値を経由せずに関係式が求まるのは、多重ゼータ値の強みであるといえる。

参考文献

[1]
Kam Cheong Au, EVALUATION OF ONE-DIMENSIONAL POLYLOGARITHMIC INTEGRAL, WITH APPLICATIONS TO INFINITE SERIES, arXiv
投稿日:2022318
更新日:28日前

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