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高校数学
文献あり

MZVの関係式[3]

1311
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大野関係式

双対関係式の証明で使用した連結和に変数を導入したものを新たに定義する。

インデックスk=(k1,,kr),l=(l1,,ls)について、
Z(k;l;x)=0=n0<n1<<nr0=m0<m1<<msi=1r1niki1(nix)j=1s1mjlj1(mjx)(1x)nr(1x)ms(1x)nr+ms
と定める。
ここで、(1x)nrはPochhammer記号(上昇冪)である。
また、O(k;x):=Z(k;;x)=Z(;k;x)と定める。

この連結和に関しても、同様の輸送関係式が成り立つ。

Z(k;l;x)=Z(k;l;x)
Z(k;l;x)=Z(k;l;x)

対称性より片方のみ示せばよい。
Z(k;l;x)=0=n0<n1<<nr<a0=m0<m1<<msi=1r1niki1(nix)j=1s1mjlj1(mjx)1ax(1x)a(1x)ms(1x)a+ms
ここで、
nr<a1ax(1x)a(1x)ms(1x)a+ms=1msnr<a((1x)a1(1x)ms(1x)a+ms1(1x)a(1x)ms(1x)a+ms)=1ms(1x)nr(1x)ms(1x)nr+ms
なのでZ(k;l;x)=Z(k;l;x)を得る。

許容インデックスk=(k1,,kr)と非負整数nについて、その大野和On(k)
On(k)=0e1,,ere1++er=nζ(k1+e1,,kr+er)
と定めると、O(k;x)=0nOn(k)xnが成り立つ。

O(k;x)=0<n1<<nri=0r1niki1(nix)=0<n1<<nr1nki=0r1(1x/ni)=0<n1<<nr1nki=0r0eixeiniei=0e1,,erxe1++er0<n1<<nr1n1k1+e1nrkr+er=0e1,,erxe1++erζ(k1+e1,,kr+er)=0nOn(k)xn

大野関係式

On(k)=On(k)

連結和の輸送関係式より
O(k;x)=Z(k;;x)=Z(;k;x)=O(k;x)
となるので、冪級数の係数の一致からOn(k)=On(k)を得る。

上の等式においてk=({1}r1,2),n=kr1(1<r<k)とすれば、
Okr1({1}r1,2)=0e1,,ere1++er=kr1ζ(1+e1,,1+er1,2+er)=0<e1,,er1,1<ere1++er=kζ(e1,,er)=dep(k)=r|k|=kζ(k)
であり、また、
Okr1({1}r1,2)=Okr1(({1}r1,2))=Okr1(r+1)=ζ(r+1+kr1)=ζ(k)
となるから、dep(k)=r|k|=kζ(k)=ζ(k)を得る。これはMZVの和公式といって、とても美しい式なので改めて定理として書いておく。

和公式

整数r,k1<r<kを満たすなら、dep(k)=r,|k|=kζ(k)=ζ(k)が成り立つ。

調和積からζ(2)2=ζ(4)+2ζ(2,2)、シャッフル積からζ(2)2=4ζ(1,3)+2ζ(2,2)が分かるので、ζ(1,3)=14ζ(4)が導かれる。和公式よりζ(1,3)+ζ(2,2)=ζ(4)なのでζ(2,2)=34ζ(4)も分かり、これを調和積から出てきた式に代入するとζ(2)2=52ζ(4)という関係式が具体値を経由せずに証明できる。よく知られた特殊値ζ(2)=π26ζ(4)=π490を用いればすぐわかるが、こういった具体値を経由せずに関係式が求まるのは、多重ゼータ値の強みであるといえる。

参考文献

[1]
Kam Cheong Au, EVALUATION OF ONE-DIMENSIONAL POLYLOGARITHMIC INTEGRAL, WITH APPLICATIONS TO INFINITE SERIES, arXiv
投稿日:202393

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