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現代数学
文献あり

Lie群Lie環対応(部分群)

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部分Lie群と部分Lie環の対応

以下ほとんどLie群に連結性を課しているので、一般のLie群についてはその単位元連結成分が連結Lie群(そして正規部分群)になることを注意しておく。特に付随するLie環が一致する(ので連結性は必要な仮定である)。

Lie群

Lie群

多様体Gが群構造を持っていて演算(積、逆元)が全てC級のときLie群と呼ぶ。
Cな群準同型を単にLie群の準同型と呼ぶ。
部分多様体HGがLie群の準同型であるとき部分Lie群と呼ぶ。つまり、部分群でも部分多様体でもありそれ自身Lie群になるもの。後に示すこととして、この定義と「部分多様体化可能な部分群」は同等。

  • 可換な例。G=Rn×Tm。はめ込まれた部分多様体の典型例として、T2内での「ぐるぐるするやつ」があるが、これは部分Lie群である。しかし閉ではない。
  • GL(n,R)とか。線形群。
  • アフィン変換群、半直積R>0R。つまり、多様体としてはG=R>0×Rだが(s,t)(s,t):=(ss,st+t)で群構造を入れたもの。

Lie環

有限次元R-線形空間gとその上の双線形写像[,]:g×gg
[X,Y]=[Y,X], [X,[Y,Z]]+[Y,[Z,X]]+[Z,[X,Y]]=0
を満たすときLie環と呼ぶ。括弧を保つ線形写像をLie環の準同型と呼び、括弧で閉じた部分線形空間を部分Lie環と呼ぶ。

  • 可換な例。g:=V[X,Y]:=0で括弧を入れたもの。
  • g:=M(n,R)[X,Y]:=XYYXで括弧を入れたもの。一般に結合的多元環は同じ構成でLie環と見做せる。
  • g:=span{X,Y}[X,Y]:=Yで括弧を入れたもの。

Lie群とLie環の関係

以下、G,HはLie群であるとする。

平行移動

左移動Ly:GxyxGで不変なベクトル場を付随するLie環gと言う。
g:={XX(G)yG (Ly)X=X}

これはX(G)の括弧積について閉じているからLie環になる。また、次から有限次元。

gXXeGeは線形同型である。

Xx=dLx(Xe)より単射性は明らか。逆に、vGeについてXx:=dLx(v)という構成が全射性を与えるが、XC級性がやや非自明である。
fC(G)に対しXfC(G)を示せば十分だが、(Xf)x=v(fLx)=iaiyif(xy),  v=iaiyiだから、f(xy)というG×G上の関数のC級性から降ってくる。

  • G=Rn×Tmに対しg=Rn+mは可換なLie環。
  • G=GL(n,R)に対しg=M(n,R)となる。
  • G=R>0Rに対しg=span{X,Y}, [X,Y]:=Yとなる。
関手性

準同型ϕ:GHに対し、ϕ:gGedϕHehはLie環の準同型。

つまりY:=ϕXとは、dϕ(Xe)Heを平行移動させてできるベクトル場である。
まず、X,Yϕ-relatedであることを見る。xGに対してdϕ(Xx)=Yϕ(x)を見ればよいが、ϕLx=Lϕ(x)ϕの両辺の微分にXeを当てれば得る。
YhX,Yϕ-relatedなものは一意(原点での値!)だからこれがϕXを特徴付けるが、前頁のϕ-relatedの補題から[X,Y],[ϕX,ϕY]ϕ-relatedとなりϕが括弧と交換する。

部分群と部分環の対応

連結Lie群Gを固定する。次の対応は互いに逆:{ι:HG連結部分Lie群}{hg部分Lie環}Hι(h)積分多様体h

まず主張の対応を説明する。ιはLie環の準同型だからその像ι(h)は部分Lie環である。hgに対しDx:={XxXh}で定まる左不変分布は部分Lie環性から包合的だからeGを含む極大積分多様体Hを取ると、これは部分Lie群である:
dLy(Dx)=Dyxの意味で左不変だから、極大積分多様体の一意性からLx1H=H, xHであり部分群になる。演算のC級性は積だけ見る(逆元も同様)。Gの演算の制限としてH×HGは滑らかだが、像がHに入るから前々頁の最後の定理より得る。
次に対応が互いに逆であることを見る。=idは単位元での接空間を見れば分かるから=idを示す。HGの付随するLie環に対する上の左不変分布DについてHが積分多様体になることは単位元での振る舞いから分かる。Hは極大積分多様体Hの開部分集合だが、これは部分群になっていて、H/Hが離散的になる。Hの連結性からH=Hとなり、Hは極大。

参考文献

[1]
Frank W. Warner, Foundations of Differentiable Manifolds and Lie Groups, Graduate Texts in Mathematics, Springer New York, NY, 1983, 276
[2]
森田 茂之, 微分形式の幾何学, 岩波書店, 2005, 372
[3]
Gijs M. Tuynman., An elementary proof of Lie’s Third Theorem., Publications de l’U.E.R. Mathematiques Pures et Appliquees, I.R.M.A. Univ. Lille, 1994, 4
投稿日:2024829
更新日:202491

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