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現代数学
文献あり

Lieの第三定理

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$$\newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{End}[0]{\mathrm{End}} \newcommand{g}[0]{\mathfrak{g}} \newcommand{GL}[0]{\mathrm{GL}} \newcommand{Grass}[0]{\mathrm{Grass}} \newcommand{h}[0]{\mathfrak{h}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{inpro}[1]{\mathopen{\langle}#1\mathclose{\rangle}} \newcommand{mapsfromup}[0]{\genfrac{}{}{0}{}{\xymatrix@=3pt{{} \\ {}\ar@/^15pt/[u]}}{}} \newcommand{mapstodown}[0]{\genfrac{}{}{0}{}{\xymatrix@=3pt{{} \ar@/^15pt/[d] \\ {}}}{}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{norm}[1]{\left\lVert#1\right\rVert} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{set}[2]{\{\, #1 \mid #2\,\}} \newcommand{setmid}[0]{\mathrel{}\middle|\mathrel{}} \newcommand{span}[0]{\mathrm{span}} \newcommand{ve}[0]{\varepsilon} \newcommand{X}[0]{\mathfrak{X}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

Lieの第三定理(別証明)

Lie群Lie環対応の本質的全射性をAdoの定理を経由せずに示す方法を知ったので追記。

Lieの第三定理

任意のLie環$\g$はある(単連結)Lie群$G$のLie環と同型になる。

$\g$の中心を$C$$\g/C$$\tilde{\g}$と書く。$\tilde{\g}$は随伴表現により$\End(\g)$に埋め込むことができるが、$\End(\g)$はあるLie群のLie環であることが既に分かっているから、$\tilde{\g}$は単連結Lie群$\tilde{G}$のLie環として実現できる。

事実

単連結なLie群の2次以下のde Rahmコホモロジー群は消える
これは普通、Lie群の2次ホモトピー群が消えること(難)とHurewiczの定理(ホモロジーとホモトピーの行き来)と普遍係数定理(ホモロジーとコホモロジーの行き来)などから説明される。後でこの事実の簡単な証明を紹介する。

$0\to C\to \g\to\tilde{\g}\to0$という拡大の(線形写像のレベルでの)セクション$s:\tilde{\g}\to\g$を取り、コサイクル$\Psi:\tilde{\g}\times\tilde{\g}\to C$$\Psi(X,Y):=[s(X),s(Y)]-s([X,Y])$で定める。Lie環の公理から
$\Psi(Y,X)=-\Psi(X,Y),\ \Psi([X,Y],Z)+\Psi([Z,X],Y)+\Psi([Y,Z],X)=0$
となる。$\Psi\in\hom(\wedge^2\tilde{\g},C)=C\otimes\wedge^2\tilde{\g}^*=C\otimes\wedge^2 T^*_e\tilde{G}$ と同一視することで、$\Psi$$\tilde{G}$上の$C$値左不変2次微分形式だと思える。外微分の内在的な表記(括弧積を使う長い式)から、$\Psi([X,Y],Z)$の巡回和が0という条件は$d\Psi=0$と同値である。
先の事実を使ってこの$\Psi$を積分していくと元のLie環のコサイクルを群のコサイクルに持ち上げることができ、$G:=\tilde{G}\times C$の積をそのコサイクルで捻ったものが求めるLie群になる。
2次コホモロジーの消滅から$\Psi=d\alpha$なる$\tilde{G}$上の$C$値1次微分形式$\alpha$(左不変とは限らない)が存在し、完全1形式を引くことで$\alpha_e=0$としておく。$\Psi$の左不変性から$(L_g)^*\alpha-\alpha$は閉形式であり、$L_g^*\alpha-\alpha=df_g$かつ$f_g(e)=0$なる$f_g:\tilde{G}\to C$が存在する。$F:\tilde{G}\times\tilde{G}\to C$$F(g,h):=f_g(h)$と定めると$C^\infty$級である、$f_g$が具体的に$f_g(h)=\int_{[e,h]} (L_g^*\alpha-\alpha)$と記述できるから。これは$e$から$h$への道(一つ取る)への制限を積分するという意味。
\begin{align*} L_{gh}^*\alpha-\alpha &= L_h^*(L_g^*\alpha-\alpha)+(L_h^*\alpha-\alpha)\\ df_{gh} &= L_h^*df_g+df_h\\ f_{gh} &= f_g\circ L_h + f_h +C\ \ \ \exists C=C_{g,h}\\ F(gh,k)+F(g,h) &= F(g,hk)+F(h,k) \end{align*}
定数$C$の特定に$F(-,e)=0$を使った。これにより$F$は2-cocycle条件を満たすので、$G:=\tilde{G}\times C$上に$(g,a)\times(h,b):=(gh,a+b+F(g,h))$で群構造が入り、$G$には直積として微分構造が入る。$F$がそうだから演算は全て$C^\infty$級となる。
残るは、元々のLie環$\g$$G$のLie環の同型である。それは、セクション$s$による同一視$\g\cong\tilde{\g}\times C$$T_e G\cong T_e\tilde{G}\times C$(と接空間と左不変ベクトル場の同一視)の合成によって得られることを確認する。まず、元のLie環の構造は$\tilde{\g}\times C$
$[(X,A),(Y,B)]:=[s(X)+A,s(Y)+B]=s[X,Y]+\Psi(X,Y)=([X,Y],\Psi(X,Y))$
で入る。また、$(v,w)\in T_e\tilde{G}\times C$の平行移動$L_{(g,a)}(X,A)=(dL_gv,w+df_gv)$を見れば、$G$上の左不変ベクトル場は$(X,A+df_g(X_e)),\ X\in\g,A\in C$と書ける。特に、$G$上の左不変ベクトル場を$C$の方向に微分しても0である。
\begin{align*} &[(X,A+df_g(X_e)),(Y,B+df_g(Y_e))]\\ =& [X,Y]+[X,B+df_g(Y_e)]+[A+df_g(X_e),Y]+[A+df_g(X_e),B+df_g(Y_e)]\\ =& [X,Y]+X(B+df_g(Y_e))-Y(A+df_g(X_e))\\ =& [X,Y]+X(L_g^*\alpha-\alpha)(Y_e)-Y(L_g^*\alpha-\alpha)(X_e)\\ =& [X,Y]+X(\alpha(Y)_g)-Y(\alpha(X)_g)\\ =& [X,Y]+X\alpha(Y)-Y\alpha(X) \end{align*}
$\Psi(X,Y)=d\alpha(X,Y)=X\alpha(Y)-Y\alpha(X)-\alpha([X,Y])$より、最後の式は
$[X,Y]+\Psi(X,Y)+\alpha([X,Y])=[X,Y]+\Psi(X,Y)+\alpha([X,Y])_g-\alpha([X,Y])_e=[X,Y]+\Psi(X,Y)+df_g([X,Y])$
どちらも括弧積が同じ形をしている。

Lie群の2次ホモトピー群の消滅が追えそうになかったので、次で満足することにした。

Lie群$G$の1次de Rahmコホモロジー群が消えるなら2次も消える。

$m:G\times G\to G$$\{e\}\times G,G\times\{e\}$に制限すると$\id$になる。これをコホモロジーに持ってきて、ついでにK"unnethの公式を使えば
$m^*:H^n(G)\to\bigoplus_k H^k(G)\otimes H^{n-k}(G)$にて$m^*(\alpha)$$k=0,n$成分が$1\otimes\alpha+\alpha\otimes1$となる。ここで$m^*$は環準同型ではない($\Z/2$-grading分の符号が必要)が、偶数次では積を保つことに注意。$H^1(G)=0,\ \alpha\neq0\in H^2(G)$を取る。
まず、$m^*(\alpha)=1\otimes\alpha+\alpha\otimes1$である。$m^*(\alpha^2)=1\otimes\alpha^2+2\alpha\otimes\alpha+\alpha^2\otimes1$にて、真ん中の項は非ゼロ(で他と次数が違う)から$m^*(\alpha^2)$$\alpha^2$も非ゼロ。$m^*(\alpha^4)$でも$\alpha^2\otimes\alpha^2$があるから非ゼロになり、これが繰り返されるとコホモロジーの有限次元性に違反する。

参考文献

[1]
Frank W. Warner, Foundations of Differentiable Manifolds and Lie Groups, Graduate Texts in Mathematics, Springer New York, NY, 1983, 276
[2]
森田 茂之, 微分形式の幾何学, 岩波書店, 2005, 372
[3]
Gijs M. Tuynman., An elementary proof of Lie’s Third Theorem., Publications de l’U.E.R. Mathematiques Pures et Appliquees, I.R.M.A. Univ. Lille, 1994, 4
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更新日:91

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