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現代数学
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Lieの第三定理

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Lieの第三定理(別証明)

Lie群Lie環対応の本質的全射性をAdoの定理を経由せずに示す方法を知ったので追記。

Lieの第三定理

任意のLie環gはある(単連結)Lie群GのLie環と同型になる。

gの中心をCg/Cg~と書く。g~は随伴表現によりEnd(g)に埋め込むことができるが、End(g)はあるLie群のLie環であることが既に分かっているから、g~は単連結Lie群G~のLie環として実現できる。

事実

単連結なLie群の2次以下のde Rahmコホモロジー群は消える
これは普通、Lie群の2次ホモトピー群が消えること(難)とHurewiczの定理(ホモロジーとホモトピーの行き来)と普遍係数定理(ホモロジーとコホモロジーの行き来)などから説明される。後でこの事実の簡単な証明を紹介する。

0Cgg~0という拡大の(線形写像のレベルでの)セクションs:g~gを取り、コサイクルΨ:g~×g~CΨ(X,Y):=[s(X),s(Y)]s([X,Y])で定める。Lie環の公理から
Ψ(Y,X)=Ψ(X,Y), Ψ([X,Y],Z)+Ψ([Z,X],Y)+Ψ([Y,Z],X)=0
となる。Ψhom(2g~,C)=C2g~=C2TeG~ と同一視することで、ΨG~上のC値左不変2次微分形式だと思える。外微分の内在的な表記(括弧積を使う長い式)から、Ψ([X,Y],Z)の巡回和が0という条件はdΨ=0と同値である。
先の事実を使ってこのΨを積分していくと元のLie環のコサイクルを群のコサイクルに持ち上げることができ、G:=G~×Cの積をそのコサイクルで捻ったものが求めるLie群になる。
2次コホモロジーの消滅からΨ=dαなるG~上のC値1次微分形式α(左不変とは限らない)が存在し、完全1形式を引くことでαe=0としておく。Ψの左不変性から(Lg)ααは閉形式であり、Lgαα=dfgかつfg(e)=0なるfg:G~Cが存在する。F:G~×G~CF(g,h):=fg(h)と定めるとC級である、fgが具体的にfg(h)=[e,h](Lgαα)と記述できるから。これはeからhへの道(一つ取る)への制限を積分するという意味。
Lghαα=Lh(Lgαα)+(Lhαα)dfgh=Lhdfg+dfhfgh=fgLh+fh+C   C=Cg,hF(gh,k)+F(g,h)=F(g,hk)+F(h,k)
定数Cの特定にF(,e)=0を使った。これによりFは2-cocycle条件を満たすので、G:=G~×C上に(g,a)×(h,b):=(gh,a+b+F(g,h))で群構造が入り、Gには直積として微分構造が入る。Fがそうだから演算は全てC級となる。
残るは、元々のLie環gGのLie環の同型である。それは、セクションsによる同一視gg~×CTeGTeG~×C(と接空間と左不変ベクトル場の同一視)の合成によって得られることを確認する。まず、元のLie環の構造はg~×C
[(X,A),(Y,B)]:=[s(X)+A,s(Y)+B]=s[X,Y]+Ψ(X,Y)=([X,Y],Ψ(X,Y))
で入る。また、(v,w)TeG~×Cの平行移動L(g,a)(X,A)=(dLgv,w+dfgv)を見れば、G上の左不変ベクトル場は(X,A+dfg(Xe)), Xg,ACと書ける。特に、G上の左不変ベクトル場をCの方向に微分しても0である。
[(X,A+dfg(Xe)),(Y,B+dfg(Ye))]=[X,Y]+[X,B+dfg(Ye)]+[A+dfg(Xe),Y]+[A+dfg(Xe),B+dfg(Ye)]=[X,Y]+X(B+dfg(Ye))Y(A+dfg(Xe))=[X,Y]+X(Lgαα)(Ye)Y(Lgαα)(Xe)=[X,Y]+X(α(Y)g)Y(α(X)g)=[X,Y]+Xα(Y)Yα(X)
Ψ(X,Y)=dα(X,Y)=Xα(Y)Yα(X)α([X,Y])より、最後の式は
[X,Y]+Ψ(X,Y)+α([X,Y])=[X,Y]+Ψ(X,Y)+α([X,Y])gα([X,Y])e=[X,Y]+Ψ(X,Y)+dfg([X,Y])
どちらも括弧積が同じ形をしている。

Lie群の2次ホモトピー群の消滅が追えそうになかったので、次で満足することにした。

Lie群Gの1次de Rahmコホモロジー群が消えるなら2次も消える。

m:G×GG{e}×G,G×{e}に制限するとidになる。これをコホモロジーに持ってきて、ついでにK"unnethの公式を使えば
m:Hn(G)kHk(G)Hnk(G)にてm(α)k=0,n成分が1α+α1となる。ここでmは環準同型ではない(Z/2-grading分の符号が必要)が、偶数次では積を保つことに注意。H1(G)=0, α0H2(G)を取る。
まず、m(α)=1α+α1である。m(α2)=1α2+2αα+α21にて、真ん中の項は非ゼロ(で他と次数が違う)からm(α2)α2も非ゼロ。m(α4)でもα2α2があるから非ゼロになり、これが繰り返されるとコホモロジーの有限次元性に違反する。

参考文献

[1]
Frank W. Warner, Foundations of Differentiable Manifolds and Lie Groups, Graduate Texts in Mathematics, Springer New York, NY, 1983, 276
[2]
森田 茂之, 微分形式の幾何学, 岩波書店, 2005, 372
[3]
Gijs M. Tuynman., An elementary proof of Lie’s Third Theorem., Publications de l’U.E.R. Mathematiques Pures et Appliquees, I.R.M.A. Univ. Lille, 1994, 4
投稿日:2024829
更新日:202491

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