複素数は複素平面上のベクトルです。オイラーの公式を使った極形式で表せます。
複素数の普通の表示と極形式
複素数の加算は平行移動、乗算は拡大回転に対応します。この2つの操作は図形を相似に保ちます。
加算は平行移動、乗算は拡大回転
複素関数は二次元の図形を変形する操作とみなせます。
正則性
複素関数が正則性をみたす条件がコーシー・リーマンの方程式です。
これが
また以下のように考えることもできます。微小ベクトルの関係はヤコビ行列で表せます。
ヤコビ行列が拡大・回転であるためにはそれが
という形をしている必要があります。これからも同じ式が得られます。
ラプラス方程式はこのような式です。
まずニュートンが引力の法則を発見し、引力が距離の二乗に反比例すること、重ね合わせの原理が成り立つことを発見しました。この法則から、大きさを持った物体が及ぼす引力はそれを構成するすべての粒子からの力を積分することで得られます。ラプラスはこの力を位置の関数とした力の場を考え、この場が満たす方程式を示しました。それがラプラス方程式です。
まず力はベクトルなので、簡単にするためにスカラー関数であるポテンシャル関数
となります。このため大きさをもった物体が作るポテンシャルは以下のように表されます。
計算するとわかりますが、3次元では
が成り立ちます。
ラプラス方程式は流体の理論にも登場します。流体の中に仮想的な箱を考えます。その箱の中に流体が吸い込まれたり湧き出したりする点がない限り、箱の外から中に流入する流体の量と、中から外に流出する流体の量は同じになるはずです。微小な箱についてその内部から外部への流量を考えると発散という概念になり、各位置での流速を
微小領域
上図の領域について
話を簡単にするため
を解いているのと同じことになり、セルの値が周りに伝わっていくような計算ができます。ラプラスの方程式とはいわば、影響が周囲に均等に伝わることを表した式です。
「影響が周囲に均等に伝わる」ことがラプラスの方程式とすれば引力の法則との関係はどうなるのでしょうか。三次元空間の一点からの湧き出しを考えたとき、その影響は球面に均等に分配されるはずです。これから流量は距離の二乗に比例して減衰することが導かれます。影響が空間を均等に伝わるということと、点からの影響が逆二乗で減衰することは同じことなのです。
点からの影響がわかると、大きさをもったものの影響もそれを空間で積分することでわかります。グリーンはラプラス方程式の解法として、まず点からの影響を計算したグリーン関数というものを求め、それの重ね合わせで問題を解く方法を確立しました。
位置
を満たす
と表せます。三次元の場合グリーン関数は
電場についても同じ方程式が成り立ちます。電場は電位の勾配として
いま複素関数
等電位面と電気力線
電気力線の総量がゼロにならない場合
電気力線の総量がゼロになる場合
電気力線の間隔を1とすると
コーシー・リーマンの方程式、もしくは
ここで
と表せます。
微小正方形に対する積分
さきの積分を微小正方形について考えたものを
これを微小正方形の面積
という量になり
この微小領域をAとし、隣接した微小領域をBとします。これらをつなげた領域について同じ計算をしたものを
2つの領域をつなげた場合
どのような領域でも微小正方形に分割して同じことが言えるので
が成り立ちます。これをガウスの定理といいます。
これから
また
よって
と定義すれば
となります。静電場では電位が循環することはないので、実数部分は常にゼロになります。ただしコイルの中で磁界が変化したときなどに生じる誘導電場は循環する電場とみなせるので、これを虚数の電荷として表現できるかもしれません。
というわけで複素関数は電場を表し、電場と電荷の関係はポアソン方程式で表されます。そしてこれは2次元のグリーン関数
という関数で表され、複数の電荷が作る電場は
と表せます。
点電荷が作る電場は
点電荷
双極子(同符号)
複素関数が多価になるときもプログラム言語の関数は必ず一つの値を返すので、他の分岐は手動で重ね書きする必要があります。この図では青線と赤線が異なる分岐に対応します。
双極子(異符号)
円周上にならんだ電荷
四重極電荷
逆関数が求まるのは電荷の比や空間的な配置に対称性があるときで、対称性が少なくなるととたんに解けなくなります。ここではギリギリ解けたケースを紹介します。
1:2の比の電荷(異符号)
1:2の比の電荷(同符号)
3つ並んだ電荷
このように不自然な分岐の取り方になっています。冪根を含んだ式について自然な分岐の取り方をどう決めればいいのか?というのも研究テーマになりそうです。
一様電場は
ここで
一様電場中の点電荷
境界条件が具体的な問題と一致する関数というのが知られています。
一様電場中の円筒導体
直角に接続された金属板
曲線がパラメータ表示
これを無限遠まで続けると等電位面が重なってしまうところがでてきて解釈が破綻してしまいますが、近傍では任意の曲線形状の金属板が作る電場になっているのではないかと思います。
ありがとうございました。