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現代数学解説
文献あり

単項式と一次関数のn回合成関数【反復合成写像#2】

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概要

前回に続き、単項式や一次関数といった簡単な代数関数の反復合成写像についての記事です。
前回:n回合成関数の基本的な定理や式【反復合成写像#1】

単項式
式1

$f(x)=ax^b$のとき、任意の$n\in\mathbb{Q}$について、
$$f^n(x)=a^{\frac{b^n-1}{b-1}}x^{b^n}(b\neq1)$$
$$f^n(x)=a^nx(b=1)$$
とくに、
$$f^{\frac{1}{2}}(x)=a^{\frac{1}{\sqrt{b}+1}}x^{\sqrt{b}}$$
  • $n\in\mathbb{N},b\neq1$のとき、
    $n=1$のとき、明らかに成り立つ。
    $n=k$のとき、$f^k(x)=a^{\frac{b^k-1}{b-1}}x^{b^k}$が成り立つと仮定すると、
    $n=k+1$のとき、
    $$f^{k+1}(x)=f^k(f(x))=a^{\frac{b^k-1}{b-1}}(ax^b)^{b^k}=a^{\frac{b^k-1}{b-1}+b^k}x^{b^k+b}=a^{\frac{b^{k+1}-1}{b-1}}x^{b^{k+1}}$$
    よって成り立つ。
  • $n\in\mathbb{N},b=1$のとき、
    $n=1$のとき、明らかに成り立つ。
    $n=k$のとき、$f^k(x)=a^kx$が成り立つと仮定すると、
    $n=k+1$のとき、$f^{k+1}(x)=f^k(f(x))=a^k(ax)=a^{k+1}x$
    よって成り立つ。
  • $n=0$のとき、$f^n(x)=x$は明らかに成り立つ。
  • $n\in\mathbb{N},b\neq1$かつ$f(x)$の逆関数が存在するとき、
    $n=1$のとき、$f^{-n}(x)=f^{-1}(x)=\sqrt[b]{\frac{x}{a}}=a^{-\frac{1}{b}}x^{\frac{1}{b}}=a^{\frac{b^{-1}-1}{b-1}}x^{b^{-1}}$より、成り立つ。
    $m=k$のとき、$f^{-k}(x)=a^{\frac{b^{-k}-1}{b-1}}x^{b^{-k}}$が成り立つと仮定すると、
    $m=k+1$のとき、$f^{-(k+1)}(x)=f^{-k}(f^{-1}(x))=a^{\frac{b^{-k}-1}{b-1}}(a^{\frac{b^{-1}-1}{b-1}}x^{b^{-1}})^{b^{-k}}=a^{\frac{b^{-(k+1)}-1}{b-1}}x^{b^{-(k+1)}}$
    よって、成り立つ。
  • $n\in\mathbb{N},b=1$かつ$f(x)$の逆関数が存在するとき、
    $n=1$のとき、$f^{-n}(x)=f^{-1}(x)=\frac{x}{a}=a^{-1}(x)$より、成り立つ。
    $n=k$のとき、$f^{-k}(x)=a^{-k}x$が成り立つと仮定すると、
    $n=k+1$のとき、$f^{-(k+1)}(x)=f^{-k}(f^{-1}(x))=a^{-k}(\frac{x}{a})=a^{-(k+1)}x$
    よって、成り立つ。

ここからは、$n\in\mathbb{Z}$について成り立つものとして、これを用います。

  • $c,d\in\mathbb{Z},d\neq0$のとき、$g(x)=f^{\frac{1}{d}}(x)=Ax^B(B\neq1)$とすると、
    $g^d(x)=A^{\frac{B^d-1}{B-1}}x^{B^d}=ax^b$より、
    $B=\sqrt[d]{b},A=a^{\frac{B-1}{B^d-1}}=a^{\frac{\sqrt[d]{b}-1}{b-1}}$
    よって、$g(x)=f^{\frac{1}{d}}(x)=a^{\frac{\sqrt[d]{b}-1}{b-1}}x^{\sqrt[d]{b}}$
    また、
    $$f^{\frac{c}{d}}(x)=\left(a^{\frac{\sqrt[d]{b}-1}{b-1}}\right)^{\frac{b^{\frac{c}{d}}-1}{\sqrt[d]{b}-1}}x^{b^\frac{c}{d}}=a^{\frac{b^{\frac{c}{d}}-1}{b-1}}x^{b^\frac{c}{d}}$$
    したがって、$n\in\mathbb{Q}$についても成り立つ。
  • $c,d\in\mathbb{Z},d\neq0$のとき、$g(x)=f^{\frac{1}{d}}(x)=Ax^B(B=1)$とすると、
    $g^d(x)=A^dx=ax$より、
    $A=\sqrt[d]{a}$
    よって、$g(x)=f^{\frac{1}{d}}(x)=\sqrt[d]{a}x$
    また、$g^{\frac{c}{d}}(x)=a^{\frac{c}{d}}(x)$
    したがって、$n\in\mathbb{Q}$についても成り立つ。

同様の係数と指数を比較する方法での証明がcbrtxさんの記事合成関数の逆操作についてにも載っているので、ぜひご覧ください。

一次関数
式2

$f(x)=ax+b(a\neq0)$のとき、任意の$n\in\mathbb{Q}$について、
$$f^n(x)=a^nx+\frac{b(a^n-1)}{a-1}(a\neq1)$$
$$f^n(x)=x+nb(a=1)$$

同様に数学的帰納法を用いてもいいですが、代わり映えがしないので高校数学の二項間漸化式を用いてみようと思います。

  • $n\in\mathbb{N},a\neq1$のとき、
    $f^n(x)$は、初項$f^1(x)=ax+b$、漸化式$f^{n+1}(x)=af^n(x)+b$を満たす。
    したがって、$g^n(x)=f^n(x)-\frac{b}{1-a}$とすれば、
    $g^n(x)$は、初項$f^1(x)-\frac{b}{1-a}=ax+b-\frac{b}{1-a}=ax-\frac{ab}{1-a}$
    公比$a$の等比数列となる。
    よって、
    $$f^n(x)=g^n(x)+\frac{b}{1-a}=\left(ax-\frac{ab}{1-a}\right)a^{n-1}+\frac{b}{1-a}=a^nx+\frac{b(a^n-1)}{a-1}$$
    が示された。
  • $n\in\mathbb{N},a=1$のとき、
    $f^n(x)$は、初項$f^1(x)=x+b$、漸化式$f^{n+1}(x)=f^n(x)+b$を満たす。
    したがって、
    $$f^n(x)=x+b+(n-1)b=x+nb$$
    が示された。
  • $n=0$のとき、$f^n(x)=x$は明らかに成り立つ。
  • $n\in\mathbb{N},a\neq1$のとき、
    $f^{-n}(x)$は、初項$\frac{x-b}{a}$、漸化式$f^{-(n+1)}(x)=\frac{f^{-n}(x)-b}{a}$を満たす。
    したがって、$g^{-n}(x)=f^{-n}(x)-\frac{b}{1-a}$とすれば、
    $g^{-n}(x)$は、初項$f^{-1}(x)-\frac{b}{1-a}=\frac{x-b}{a}-\frac{b}{1-a}=\frac{x}{a}-\frac{b}{a(1-a)}$
    公比$\frac{1}{a}$の等比数列となる。
    よって、
    $$f^{-n}(x)=\left(\frac{x}{a}-\frac{b}{a(1-a)}\right)\frac{1}{a^n}+\frac{b}{1-a}=a^{-(n+1)}x+\frac{b(a^{-(n+1)}-1)}{a-1}$$
    より、$n\in\mathbb{Z}$についても成り立つ。
  • $n\in\mathbb{N},a=1$のとき、
    $f^{-n}(x)$は、初項$f^{-1}(x)=x-b$、漸化式$f^{-(n+1)}(x)=f^{-n}(x)-b$を満たす。
    したがって、
    $$f^{-n}(x)=x-b-(n-1)b=x-nb$$
    より、$n\in\mathbb{Z}$についても成り立つ。
  • $c,d\in\mathbb{Z},d\neq0$のとき、$g(x)=f^{\frac{1}{d}}(x)=Ax+B(A\neq1)$とすると、
    $g^d(x)=A^dx+\frac{B(A^d-1)}{A-1}=ax+b$より、
    $A=\sqrt[d]{a},B=\frac{b(A-1)}{A^d-1}=\frac{b(\sqrt[d]{a}-1)}{a-1}$
    よって、$g(x)=f^{\frac{1}{d}}(x)=\sqrt[d]{a}x+\frac{b(\sqrt[d]{a}-1)}{a-1}$
    また、
    $$f^{\frac{c}{d}}(x)=a^{\frac{c}{d}}x+\frac{b(\sqrt[d]{a}-1)}{a-1}\frac{a^{\frac{c}{d}}-1}{\sqrt[d]{a}-1}=a^{\frac{c}{d}}x+\frac{b(a^{\frac{c}{d}}-1)}{a-1}$$
    したがって、$n\in\mathbb{Q}$についても成り立つ。
  • $c,d\in\mathbb{Z},d\neq0$のとき、$g(x)=f^{\frac{1}{d}}(x)=Ax+B(A=1)$とすると、
    $g^d(x)=x+dB=x+b$より、
    $B=\frac{1}{d}b$
    よって、$g(x)=f^{\frac{1}{d}}(x)=x+\frac{1}{d}b$
    また、
    $$f^{\frac{c}{d}}(x)=x+\frac{c}{d}b$$
    したがって、$n\in\mathbb{Q}$についても成り立つ。
式3

$f(x)=\sqrt[m]{ax^m+b}$のとき、任意の$n\in\mathbb{Q},m\in\mathbb{Z},m\neq0$について、
$$f^n(x)=\sqrt[m]{a^nx^m+\frac{b(a^n-1)}{a-1}}(a\neq1)$$
$$f^n(x)=\sqrt[m]{x^m+nb}(a=1)$$

$m$乗根が$m$乗されるので、一次関数の反復合成と同様の仕組み(というか$m=1$のとき一次関数に一致するので一般化)であることがわかります。証明は数学的帰納法を用いれば一次関数の場合と同様にできると思います。

高次関数

次は二次関数について考えていきたいところですが、$n$回合成関数は$n=3$からは計算したくないほど項が多くなり、関数的平方根は$(\mathrm{多項式})^{\sqrt{2}}$の形が出てきてしまい、どちらも一次関数のときと同様の方法では求めるのが至難の業です。
ちなみに、一次関数では漸化式を用いた方法を紹介しましたが、二次関数の$n$回合成関数を求めることは漸化式$f^{n+1}(x)=a\{f^n(x)\}^2+bf^n(x)+c$の一般項を求めることに等しいため、その難しさがわかります。前に興味があって調べたんですが、三角関数の倍角が使える形など特殊な形でない限り、二次の漸化式を解くことはできないと考えられていて、漸化式の可解性についてのガロア理論のようなものの研究が進められているようです。

関数的平方根は、四次や九次など、次数が平方数の関数なら求められそうな気もしますが、単項式や一次関数の場合に有効な「考えうる関数的平方根の形をおいて、それを2回合成して係数や指数を比較する」という方法を用いても係数が足りず、もとの関数のいくつかの係数が他の係数に依存してしまいます。別の方法を考え中です。


$$f(x)=ax^4+bx^2+\frac{b(b+2\sqrt[3]{a})}{4a}(a\neq0)$$
のとき、
$$f^{\frac{1}{2}}(x)=\sqrt[3]{a}x^2+\frac{b}{2\sqrt[3]{a^2}}$$
$$f(x)=x^4+x^2+\frac{3}{4}$$
のとき、
$$f^{\frac{1}{2}}(x)=x^2+\frac{1}{2}$$
(前回の続き)一般合成不動点定理
定理 一般合成不動点定理

$f(x)=x$が唯一の解$\alpha$を持つならば、
$$f^n(\alpha)=\alpha(n\in\mathbb{Q})$$
予想 第二一般合成不動点定理

$f(x)=x$$m$個の解$\alpha_i(i=1,2,\cdots ,m)$を持つならば、
$$f^n(\alpha_i)=\alpha_i(n\in\mathbb{Q})$$

前回は上の方を証明し、下の方は$n\in\mathbb{Z}$の場合のみ同様の方法で証明できそうなことがわかりました。今回は数学的帰納法を用いて、$n=\frac{1}{2}$の場合のみを証明できれば$n\in\mathbb{Q}$について成り立つといえることを証明します。

$f(\alpha)=\alpha$のとき、$f^{\frac{1}{b}}(\alpha)(b\in\mathbb{N},b\neq0)$について、
$b=k$のとき、$f^{\frac{1}{k}}(\alpha)=\alpha$が成り立つと仮定すると、
$b=k+1$のとき、$\abs{k}\gt 1$のときに限り、
$$f^{\frac{1}{k+1}}(\alpha)=f^{\sum_{n=0}^\infty(-1)^nk^{-n-1}}(\alpha)=f^{\frac{1}{k}-\frac{1}{k^2}+\frac{1}{k^3}\cdots}(\alpha)=\cdots f^{\frac{1}{k^3}}(f^{-\frac{1}{k^2}}(f^{\frac{1}{k}}(\alpha)))$$
関数的指数法則より、$f^{\frac{1}{k^m}}$$f(x)$$\frac{1}{k}$回合成を$m$回繰り返すことに等しく、$f^{-\frac{1}{k^m}}$$f(x)$$\frac{1}{k}$回合成を$m$回繰り返し-1回合成を1回繰り返す(逆関数をとる)ことに等しい。
$f(\alpha)$$\frac{1}{k}$回合成は仮定より$\alpha$に等しい。
$f(\alpha)$の-1回合成は、$f(x)$の逆関数が存在するとき、$g(x)=f^{-1}(x)$とすると、逆関数の定義$y=f^{-1}(x)\Leftrightarrow x=f(y)$より、$\alpha=f(\alpha)\Leftrightarrow g(\alpha)=\alpha$なので、前提より$\alpha$に等しい。
よって、これらの合成を無限回繰り返しても常に$\alpha$となる。
したがって、$b=k$のとき成り立つと仮定すれば、$b=k+1$のときも成り立つ。

$b=2$($n=\frac{1}{2}$)のときが証明できれば、数学的帰納法より$f^{\frac{1}{b}}(\alpha)=\alpha(b\in\mathbb{Z},b\neq0)$が証明でき、それの$a\in\mathbb{Z}$回合成は一般合成不動点定理よりやはり$\alpha$に一致するので、$\alpha$が唯一の解であることを使わずに$n\in\mathbb{Q}$についても証明できたことになります。したがって、$f(x)=x$の解が複数個に増えても、全く同様に証明できるはずです。(恐らく、自信がない)

後書き

次回:もう少々お待ち下さい

参考文献

投稿日:23日前
更新日:12日前
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