概要最近話題の反復合成写像、関数的平方根について、以前遊んでいたものに一致する部分があった(主に代数関数で遊んでいました。)ので書き留めておこうと思います。関数的平方根を求めるのってロマンありますよね。この記事を書くにあたって甘くないなっぽーさんの記事疑問:2回合成してe^xとなる関数は?,cbrtxさんの記事合成関数の逆操作について,sinxの分解にチャレンジが大変参考になり、面白い内容だったので紹介しておきます。
定義いろいろな記法があると思いますが、個人的には逆関数の記法であるを包含する次のような記法が好みです。(巨大数の分野でも頻繁に使われるようです。グラハム数とか、急増加関数とか。)
◆定義
・について、
とする。
・について、の逆関数が存在し、のとき、
とし、のとき、
とすることで、についても定義することができる。
・は通常の逆関数に一致する。
・について、
となるような関数が存在する時、をと定義することで、について定義することができる。
・とくに、のとき、は回合成することでとなる関数であり、のとき「関数的平方根」と呼ぶ。
・をの回合成、重合成という。とくに、0回合成はとなり、-1回合成は逆関数となる。
あまり厳密ではない定義かもしれませんが、一次関数などが存在する関数であれば、まではとくに問題なく計算できると思います。なお、以下出てくる関数は全てとします。
基本的な定理合成→掛け算、反復合成→冪乗と対応し、冪乗に成り立つ指数法則のような法則が成り立ちます。
◆定理1
のとき、
定義より明らかに成り立ちます。
◆定理2-1
のとき、
◆定理3-1 (限定的な)関数的交換法則
のとき、とのみを複数個合成して得られる関数は、合成する順番を変えても同じとなる。
について、
は明らかに成り立つ。
も成り立つことがわかる。
したがって、整数回合成した関数にまたはを合成することは、整数を+1または-1することに等しい。よって、和の交換法則より、またはを合成する順番は交換できる。
◆定理2-2
のとき、
定理2-1および定理3-1より、
(nが負のときも、fとgが入れ替わるだけなので同様に成り立つ。)
◆定理4 関数的指数法則
について、
証明は、指数法則の証明とほとんど同様に、を自然数、0、負の数の9通りに場合分けすることでできます。
- のときは、明らかに成り立つ。
- のとき、
より、成り立つ。 - のとき、
より、成り立つ。 - のとき、
より、成り立つ。
ここからは、上記の自然数および0に対する関数的指数法則が成り立つものとして用います。
- のとき、とすると、定理1と、定理3-1より、
のとき、
のとき、
のとき、
また、
より、成り立つ。 - のとき、とすると、定理1と、定理3-1より、
のとき、
のとき、
のとき、
また、
より、成り立つ。 - のとき、とすると、定理1より、
より、成り立つ。 - のとき、とすると、定理1より、
より、成り立つ。 - のとき、とすると、定理1より、
より、成り立つ。
ここからは、上記の整数に対する関数的指数法則を用います。
- のとき、とすると、定義より、
よって、
また、とすると、定義より、
よって、
以上より、についても成り立つ。
◆定理3-2 関数的交換法則
のみを複数個合成して得られる関数は、合成する順番を変えても同じとなる。
定理4より、整数回合成した関数にを合成することは、整数を+nすることに等しい。よって、和の交換法則より、を合成する順番は交換できる。
不動点についての定理前述した、cbrtxさんの記事合成関数の逆操作についてで言及されていた「合成不動点定理」を一般化したものです。なお、の証明は、の場合の証明をお借りさせていただきました。グラフを見ると明らかにが成り立つように見えるんですが、とりあえず(が唯一の解を持つ場合)に限定して証明します。
◆定理5 一般合成不動点定理(より適当な名前)
が唯一の解を持つならば、
- のとき、
のときは、前提より
のとき、が成り立つと仮定すると、
のとき、
よって、成り立つ。 - について、
のとき、明らかに
のとき、について考えると、
のとき、逆関数の定義より、
のとき、が成り立つと仮定すると、
のとき、
よって、成り立つ。 - について、
のとき、まずを示す。
と仮定する。
したがって、となるが、の唯一の解がであることに矛盾するため、が示された。
よって、定理4を用いて、より、成り立つ。
唯一の解であることを証明に用いるのはの場合のみなので、同様の証明で以下の予想のの場合も成り立つことがわかります。多分。
◆予想 第ニ一般合成不動点定理(さらに適当な名前)
が個の解を持つならば、全ての解について、
例として、についてのグラフを見てみましょう。
のときのグラフ(赤が濃いほどが大きく青が濃いほどが小さい)
のときのグラフ(赤が濃いほどが大きく青が濃いほどが小さい)
のときのグラフ(赤が濃いほどが大きく青が濃いほどが小さい)
のとき、第二一般合成不動点定理が成り立っている様子がわかります。ちなみに、この場合の不動点はより、ランベルトのW関数を用いてと表されるので、によって0~2つあることがわかります。
微分高校数学で合成関数・逆関数の微分法を学んだと思いますが、同様の方法で反復合成写像、回合成関数の微分を考えることができます。
◆定理6 回合成関数の微分
について、のとき、
のとき、
のとき、
のとき、
合成関数の微分法のときより、回合成したときは、のときとなる。
合成されるのは同じ関数なので、と置き換えられ、同様に、
と置き換えられる。したがって、
のとき、
より、
のとき、
合成関数の微分法より、回合成したときは、のときとなる。
合成されるのは同じ関数なので、逆関数の微分法のときより、
と置き換えられる。したがって、
◆例
・はの3回合成なので、
・はの-2回合成なので、
後書き次回は単項式、一次関数といった簡単な代数関数について触れたいと思います。
次回:単項式と一次関数のn回合成関数【反復合成写像#2】