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大学数学基礎解説
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確率論小ゼミ第2回 〜確率測度P, 確率空間

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  • (2024-02-25 21:05) 公開

目次

  1. はじめに
  2. 確率測度・確率空間
  3. 演習問題
  4. おわりに

はじめに

今回でついにP()とは何なのかについて説明していくが,その前に,まずは前回( 確率論小ゼミ第1回 )で扱ったσ-集合体・可測空間について軽くおさらいしておこう.もう大丈夫という方はこの部分は読み飛ばして構わない.

前回言い忘れていたかもですが,標本空間Ωは空でないものとしています.
今後も「標本空間Ω」と言われたときは,Ωは空でない集合と捉えてください🙏
σ-集合体

標本空間Ω上のσ-集合体とは,次の[1], [2], [3']を満たす集合族Fのことである.
[1] ΩF
[2] AF  AcF
[3'] A1,A2,F  i=1AiF

可測空間

Fを標本空間Ω上のσ-集合体とする.このとき,組(Ω,F)可測空間という.また,Fの元AΩ上のF-可測集合という.

Ωを標本空間とする.このとき,2ΩΩ上のσ-集合体であることを示せ.

問題1の解答例
解答例を見る
任意の集合Eに対して,EΩ  E2Ωが成り立つことに注意すると,
  1. ΩΩ.従って,Ω2Ω
  2. 任意のA2Ωに対して,AΩであるから,Ac=ΩAΩ.従って,Ac2Ω
  3. 任意のA1,A2,2Ωに対して,A1,A2,Ωであるから,i=1AiΩ.従って,i=1Ai2Ω
よって,2ΩΩ上のσ-集合体である.

確率測度・確率空間

確率測度とは

確率測度(確率の公理)

可測空間(Ω,F)上の確率測度とは,次の[1], [2], [3]を満たす関数P:F[0,1]のことである.
[1] P(Ω)=1
[2] AF  P(A)0
[3] A1,A2,F,  AiAj=  (ij)    P(i=1Ai)=i=1P(Ai)

この定義を言葉で書くと,次のようになる.

  1. 全体集合(標本空間)をPで測ると1になる(全確率は1).
  2. Fからどのような元を取り出してPで測ったとしても負になることはない(非負性).
  3. Fから取り出した互いに素(排反)な元の和集合をPで測ったものは,それぞれの元をPで測ったものの総和に等しい(完全加法性).

P(A)は「集合Aを測度Pで測った大きさ」とも捉えられる.それ故,Aはちゃんと(Pで)測れる集合,つまり可測集合,つまりFの元でなければならない.

[3]はσ-加法性とか可算加法性とも呼ばれる.

確率空間とは

確率空間

(Ω,F)を可測空間とし,P(Ω,F)上の確率測度とする.このとき,3つ組(Ω,F,P)確率空間という.

これらの用語は押さえておこう

Ω:標本空間,FΩ上のσ-集合体,P(Ω,F)上の確率測度,(Ω,F):可測空間,(Ω,F,P):確率空間

確率測度の諸性質

(Ω,F,P)を確率空間とする.このとき,次が成り立つ.

  1. P()=0
  2. A1,,AnF,  AiAj=  (ij)   P(i=1nAi)=i=1nP(Ai)
  3. A,BF,  AB  P(AB)=P(A)P(B)
  4. A,BF,  AB  P(A)P(B)
  5. AF  P(Ac)=1P(A)
  6. A1,A2,F  P(i=1Ai)i=1P(Ai)
  7. A1,A2,F,  {An}  P(limnAn)=limnP(An)
  8. A1,A2,F,  {An}  P(limnAn)=limnP(An)

{An} : {An} は単調増加列,i.e.,A1A2
{An} : {An} は単調減少列,i.e.,A1A2

  1. 証明を見るA1=Ω, A2=A3== とすると,AiF  (i=1,2,) である( 確率論小ゼミ第1回 参照,以下この文言は省く).また,AiAj=  (ij) であるから,確率測度の定義[1],[3]により,
              1=P(Ω)=P(i=1Ai)=i=1P(Ai)=P(Ω)+i=2P()=1+i=2P()
    よって,P()=0 を得る.

  2. 証明を見るAn+1=An+2== とする.このとき,AiAj=  (ij) であるから,
              P(i=1nAi)=P(i=1Ai)=i=1P(Ai)=i=1nP(Ai)+i=n+1P()=0=i=1nP(Ai)
    を得る.

  3. 証明を見るA1=B, A2=AB (=ABc) とおくと,A1A2=A,  A1A2= となる.従って,(2)から
              P(A)=P(A1A2)=P(A1)+P(A2)=P(B)+P(AB)
    即ち,P(AB)=P(A)P(B) が成り立つ.

  4. 証明を見る(3)より P(AB)=P(A)P(B) が成り立つ.よって,確率測度の定義[2](非負値性)より P(AB)0 となるから,
              0P(AB)=P(A)P(B)    P(A)P(B)
    が成り立つ.

  5. 証明を見るΩA であるから(3)より
              P(Ac)=P(ΩA)=P(Ω)P(A)=1P(A)
    が成り立つ.

  6. 証明を見る          Bn={A1(n=1)An(k=1n1Ak)c(n=2,3,)
    とすると,
              n=1Bn=n=1An,    BiBj=  (ij)
    であるから,P(An)P(Bn)  (AnBn; n=1,2,) に注意すると
              P(n=1An)=P(n=1Bn)=n=1P(Bn)n=1P(An)
    を得る.

  7. 証明を見る{An} であるから,任意の自然数 n=1,2, に対して,
              m=nAm=m=1Am,    m=nAm=An
    が成り立つ.従って,
              lim supnAn=infn1supmnAm=n=1m=nAm=n=1m=1Am=m=1Am,
              lim infnAn=supn1infmnAm=n=1m=nAm=n=1An
    となるから,lim supnAn=lim infnAn=n=1An が言える.故に,limnAn=n=1An が成り立つ.ここで,
              Bn={A1(n=1)AnAn1(n=2,3,)
    とおくと,n=1Bn=n=1AnBiBj=  (ij) となるから,
              P(n=1An)=P(n=1Bn)=n=1P(Bn)=limN(P(A1)+n=2N(P(An)P(An1)))=limNP(AN)
    が成り立つ.

  8. 証明を見る{An} であるから,任意の自然数 n=1,2, に対して,
              m=nAm=An,    m=nAm=m=1Am
    が成り立つ.従って,
              lim supnAn=infn1supmnAm=n=1m=nAm=n=1An,
              lim infnAn=supn1infmnAm=n=1m=nAm=n=1m=1Am=m=1Am
    となるから,lim supnAn=lim infnAn=n=1An が言える.故に,limnAn=n=1An が成り立つ.今,A1A2 であるから,A1cA2c,即ち {Anc} となる.よって,(7)より,
              P(limnAn)=P(n=1An)=1P(n=1Anc)=1P(limnAnc)=1limnP(Anc)=limnP(An)
    を得る.

確率測度の具体例(有限ver)

実際,確率測度の構成方法は少し分かりずらいと思われるので次の例で理解を深めてほしい.

1から6までの数字が書かれている6面体サイコロを3つ同時に振る.但し,どの出目も同様に確からしいとする.このとき,この結果を表す確率空間(Ω,F,P)を構成してみよう.まず,標本空間は
          Ω={1,2,3,4,5,6}3={(ω1,ω2,ω3)i{1,2,3}, ωi{1,2,3,4,5,6}}={(1,1,1),(1,1,2),,(1,1,6),(1,2,1),,(6,6,6)}
とすれば良い.次に,Ω上のσ-集合体として,
          F=2Ω
を選べば,可測空間(Ω,F)を構成することができる.最後に,関数P:F[0,1]を,任意のAFに対して,
          P(A)=|A||Ω|=|A|63
と定めれば,Pは確率測度となるから,これで確率空間(Ω,F,P)を構成することができた.

下線部①「Pは確率測度となる」の証明
解答例を見る
  1. P(Ω)=|Ω||Ω|=1
  2. 任意のAFに対して,|A|0であるから,P(A)=|A||Ω|0
  3. 任意の互いに素な集合A1,A2,F  (AiAj=; ij)に対して,
              |n=1An|=n=1|An|
    であるから,
              P(n=1An)=1|Ω||n=1An|=n=1|An||Ω|=n=1P(An)
よって,P(Ω,F)上の確率測度である.

例1において,

  1. 3つの出目の和が5となる事象をAとしたときのP(A)
  2. 3つの出目の積がm (=1,2,)の倍数となる事象をBmとしたときのP(B4)
をそれぞれ求めてみよう.
  1. A={(ω1,ω2,ω3)Ωω1+ω2+ω3=5}={(1,1,3),(1,3,1),(3,1,1),(1,2,2),(2,1,2),(2,2,1)}Fであるから,P(A)=|A||Ω|=663=136 となる.
  2. Bm={(ω1,ω2,ω3)Ωω1ω2ω30 (mod m)}Fである.今,4=22であり,B4B2B4c=(B2B4c)B2cであるから,
              P(B4)=1P(B4c)=1P((B2B4c)B2c)=1P(B2B4c)P(B2c)=1P({出目の積は2で割り切れるが4では割り切れない})P({出目の積は2で割り切れない})=1P({出目の1つは2,6のどれか,残りは2,4,6以外のどれか})P({全ての出目は2,4,6以外のどれか})=1326(36)2(36)3=58
    となる.

確率測度の具体例(可算無限ver)

表の出る確率がp (0<p<1),裏の出る確率が1pのコインを表が出るまで投げ続ける.このとき,この結果を表す確率空間(Ω,F,P)を構成してみよう.まず,標本空間は
          Ω={0,1,2,}
とすれば良い.次に,Ω上のσ-集合体として,
          F=2Ω
を選べば,可測空間(Ω,F)を構成することができる.最後に,関数P:F[0,1]を,任意のAFに対して,
          P(A)=ωAp(ω),    p(ω)=p(1p)ω
と定めれば,Pは確率測度となるから,これで確率空間(Ω,F,P)を構成することができた.

下線部②「Pは確率測度となる」の証明
解答例を見る
  1. P(Ω)=ωΩp(ω)=ω=0p(1p)ω=p1(1p)=1
  2. 任意のωΩに対して,p(ω)>0であるから,任意のAFに対して,
              P(A)=ωAp(ω)0
  3. 任意の互いに素な集合A1,A2,F  (AiAj=; ij)に対して,
              P(n=1An)=ωn=1Anp(ω)=n=1ωAnp(ω)=n=1P(An)
よって,P(Ω,F)上の確率測度である.

実際,例3の標本空間は
          Ω={表, 裏表, 裏裏表, 裏裏裏表, }
であるが,確率空間を簡単に構成するためにΩ={0,1,2,}を標本空間とした.もし,Ωを標本空間とする場合は
          X(ω)=「文字列 ω にある裏の出現回数」
という関数X:ΩZを導入して,
          f(x)={p(1p)x(x=0,1,2,)0(otherwise)
として,任意のAFに対して,
          P(A)=xX(A)f(x)
とすれば良い.実はこの関数X確率変数であり,関数fX確率(量)関数と呼ばれる.

X(A)={X(ω)ωA}

非可算無限の場合はまた今度...


演習問題

(Ω,F,P)を確率空間とする.このとき,次が成り立つことを示せ.

  1. A,BF  P(AB)=P(A)+P(B)P(AB)
  2. A1,,AnF  P(i=1nAi)=k=1n(1)k11i1<<iknP(=1kAi)
    (=i=1nP(Ai)1i<jnP(AiAj)+1i<j<knP(AiAjAk)+(1)n1P(A1A2An))
  3. A,B,DF,  DA  P(A(BDc))=P(A)+P(BD)P(D)
  4. A1,A2,F  P(lim supnAn)=limnP(k=nAk)limnk=nP(Ak)
  5. A1,A2,F  P(lim infnAn)=limnP(k=nAk)1limnk=nP(Akc)
  6. A1,A2,F  P(lim infnAn)lim infnP(An)lim supnP(An)P(lim supnAn)
  7. A1,A2,F, limnAn が存在  P(limnAn)=limnP(An)

問題2の解答例
解答例を見る
  1. 証明を見るA(BAc)=AB,  A(BAc)= であることと,B(AB)=BAc,  BAB より,
              P(AB)=P(A)+P(BAc)=P(A)+P(B(AB))=P(A)+P(B)P(AB)
    となる.

  2. 証明を見るまず,n=1 は明らか.n=2 のときは(1)と同じ.次に,n=N (N=2,3,) のとき成り立つと仮定すると,n=N+1 のとき,
              (右辺)=k=1N+1(1)k11i1<<ikN+1P(=1kAi)=k=1N(1)k1(1i1<<ikNP(=1kAi)+1i1<<ik=N+1P(=1kAi))(1)N11i1<<iN+1N+1P(=1kAi)=k=1N(1)k11i1<<ikNP(=1kAi)+P(AN+1)+k=2N(1)k11i1<<ik1NP((=1k1Ai)AN+1)(1)N1P(A1A2AN+1)=P(i=1NAi)+P(AN+1)k=1N1(1)k11i1<<ikNP(=1k(AiAN+1))(1)N1P(A1A2AN+1)=P(i=1NAi)+P(AN+1)k=1N(1)k11i1<<ikNP(=1k(AiAN+1))=P(i=1NAi)+P(AN+1)P(i=1N(AiAN+1))=P(i=1NAi)+P(AN+1)P((i=1NAi)AN+1)=P((i=1NAi)AN+1)=P(i=1N+1Ai)=(左辺)
    となる.よって,数学的帰納法により,この命題は真となることが示される.

  3. 証明を見るAD に注意すると,
              (AD)(BD)=ADcBD=
              (AD)(BD)=(AB)(AD)=A=A(DcB)(DcD)=Ω=A(BDc)
    より,P(A(BDc))=P(AD)+P(BD) が成り立つ.よって,
              P(A(BDc))=P(A)P(D)+P(BD)
    が成り立つ.

  4. 証明を見るBn=m=nAm  (n=1,2,) とすると,{Bn} であるから,定理1-(7)より,
              P(lim infnAn)=P(n=1m=nAm)=P(n=1Bn)=limnP(Bn)
    となる.また,定理1-(6)より,任意の n=1,2, に対して,
              P(Bn)=P(m=nAm)m=nP(Am)
    となるから,
              P(lim infnAn)=limnP(Bn)=limnP(m=nAm)limnm=nP(Am)
    を得る.

  5. 証明を見るCn=m=nAm  (n=1,2,) とすると,{Cn} であるから,定理1-(8)より,
              P(lim supnAn)=P(n=1m=nAm)=P(n=1Cn)=limnP(Cn)
    となる.また,定理1-(6)より,任意の n=1,2, に対して,
              P(Cn)=P(m=nAm)=1P(m=nAmc)1m=nP(Amc)
    となるから,
              P(lim supnAn)=limnP(Cn)=limnP(m=nAm)1limnm=nP(Amc)
    を得る.

  6. 証明を見るまず,P(lim infnAn)lim infnP(An) を示す.Bn=m=nAm  (n=1,2,) とすると,{Bn} であるから,定理1-(7)より,
              P(lim infnAn)=P(n=1m=nAm)=P(n=1Bn)=limnP(Bn)
    となる.ここで,任意の n,m  (n=1,2,; m=n,n+1,) に対して,BnAm より P(Bn)P(Am) となるから,任意の n=1,2, に対して,P(Bn)infmnP(Am) が成り立つ.よって,
              P(lim infnAn)=limnP(Bn)limninfmnP(Am)=lim infnP(An)
    を得る.次に,P(lim supnAn)lim supnP(An) を示す.Cn=m=nAm  (n=1,2,) とすると,{Cn} であるから,定理1-(8)より,
              P(lim supnAn)=P(n=1m=nAm)=P(n=1Cn)=limnP(Cn)
    となる.ここで,任意の n,m  (n=1,2,; m=n,n+1,) に対して,CnAm より P(Cn)P(Am) となるから,任意の n=1,2, に対して,P(Cn)supmnP(Am) が成り立つ.よって,
              P(lim supnAn)=limnP(Cn)limnsupmnP(Am)=lim supnP(An)
    を得る.このことと,任意の n=1,2, に対して,infmnP(Am)supmnP(Am) が成り立つ,即ち
              limninfmnP(Am)=lim infnP(An)lim supnP(An)=limnsupmnP(Am)
    が成り立つことから,
              P(lim infnAn)lim infnP(An)lim supnP(An)P(lim supnAn)
    を得る.

  7. 証明を見るlimnAn が存在するから,limnAn=A とすると,lim infnAn=lim supnAn=A が成り立つ.よって,(6)より,
              P(A)lim infnP(An)lim supnP(An)P(A)
    が成り立つから,lim infnP(An)=lim supnP(An)=P(A) を得る.故に,
              P(limnAn)=limnP(An)
    を得る.


おわりに

今回はレイアウトに凝ってみましたw

参考文献

投稿日:2024225
更新日:2024228
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  2. はじめに
  3. 確率測度・確率空間
  4. 確率測度とは
  5. 確率空間とは
  6. 確率測度の諸性質
  7. 確率測度の具体例(有限ver)
  8. 確率測度の具体例(可算無限ver)
  9. 演習問題
  10. おわりに
  11. 参考文献