更新履歴
目次
-
はじめに
-
確率測度・確率空間
-
演習問題
-
おわりに
はじめに
今回でついにとは何なのかについて説明していくが,その前に,まずは前回(
確率論小ゼミ第1回
)で扱った-集合体・可測空間について軽くおさらいしておこう.もう大丈夫という方はこの部分は読み飛ばして構わない.
前回言い忘れていたかもですが,標本空間は空でないものとしています.
今後も「標本空間」と言われたときは,は空でない集合と捉えてください🙏
-集合体
標本空間上の-集合体とは,次の[1], [2], [3']を満たす集合族のことである.
[1]
[2]
[3']
可測空間
を標本空間上の-集合体とする.このとき,組を可測空間という.また,の元は上の-可測集合という.
を標本空間とする.このとき,は上の-集合体であることを示せ.
問題1の解答例
解答例を見る
任意の集合に対して,が成り立つことに注意すると,
- .従って,.
- 任意のに対して,であるから,.従って,.
- 任意のに対して,であるから,.従って,.
よって,は上の-集合体である.
確率測度・確率空間
確率測度とは
確率測度(確率の公理)
可測空間上の確率測度とは,次の[1], [2], [3]を満たす関数のことである.
[1]
[2]
[3]
この定義を言葉で書くと,次のようになる.
- 全体集合(標本空間)をで測ると1になる(全確率は1).
- からどのような元を取り出してで測ったとしても負になることはない(非負性).
- から取り出した互いに素(排反)な元の和集合をで測ったものは,それぞれの元をで測ったものの総和に等しい(完全加法性).
は「集合を測度で測った大きさ」とも捉えられる.それ故,はちゃんと(で)測れる集合,つまり可測集合,つまりの元でなければならない.
[3]は-加法性とか可算加法性とも呼ばれる.
確率空間とは
確率空間
を可測空間とし,を上の確率測度とする.このとき,3つ組を確率空間という.
これらの用語は押さえておこう
:標本空間,:上の-集合体,:上の確率測度,:可測空間,:確率空間
確率測度の諸性質
証明を見る
とすると, である(
確率論小ゼミ第1回
参照,以下この文言は省く).また, であるから,確率測度の定義[1],[3]により,
よって, を得る.
証明を見る
とする.このとき, であるから,
を得る.
証明を見る
とおくと, となる.従って,(2)から
即ち, が成り立つ.
証明を見る
(3)より が成り立つ.よって,確率測度の定義[2](非負値性)より となるから,
が成り立つ.
証明を見る
であるから(3)より
が成り立つ.
証明を見る
とすると,
であるから, に注意すると
を得る.
証明を見る
であるから,任意の自然数 に対して,
が成り立つ.従って,
となるから, が言える.故に, が成り立つ.ここで,
とおくと,, となるから,
が成り立つ.
証明を見る
であるから,任意の自然数 に対して,
が成り立つ.従って,
となるから, が言える.故に, が成り立つ.今, であるから,,即ち となる.よって,(7)より,
を得る.
確率測度の具体例(有限ver)
実際,確率測度の構成方法は少し分かりずらいと思われるので次の例で理解を深めてほしい.
1から6までの数字が書かれている6面体サイコロを3つ同時に振る.但し,どの出目も同様に確からしいとする.このとき,この結果を表す確率空間を構成してみよう.まず,標本空間は
とすれば良い.次に,上の-集合体として,
を選べば,可測空間を構成することができる.最後に,関数を,任意のに対して,
と定めれば,は確率測度となる①から,これで確率空間を構成することができた.
下線部①「は確率測度となる」の証明
解答例を見る
- .
- 任意のに対して,であるから,.
- 任意の互いに素な集合に対して,
であるから,
よって,は上の確率測度である.
例1において,
- 3つの出目の和が5となる事象をとしたときの
- 3つの出目の積がの倍数となる事象をとしたときの
をそれぞれ求めてみよう.- であるから, となる.
- である.今,であり,,であるから,
となる.
確率測度の具体例(可算無限ver)
表の出る確率が,裏の出る確率がのコインを表が出るまで投げ続ける.このとき,この結果を表す確率空間を構成してみよう.まず,標本空間は
とすれば良い.次に,上の-集合体として,
を選べば,可測空間を構成することができる.最後に,関数を,任意のに対して,
と定めれば,は確率測度となる②から,これで確率空間を構成することができた.
下線部②「は確率測度となる」の証明
解答例を見る
- .
- 任意のに対して,であるから,任意のに対して,
- 任意の互いに素な集合に対して,
よって,は上の確率測度である.
実際,例3の標本空間は
であるが,確率空間を簡単に構成するためにを標本空間とした.もし,を標本空間とする場合は
という関数を導入して,
として,任意のに対して,
とすれば良い.実はこの関数は確率変数であり,関数はの確率(量)関数と呼ばれる.
非可算無限の場合はまた今度...
演習問題
を確率空間とする.このとき,次が成り立つことを示せ.
問題2の解答例
解答例を見る
証明を見る
であることと, より,
となる.
証明を見る
まず, は明らか. のときは(1)と同じ.次に, のとき成り立つと仮定すると, のとき,
となる.よって,数学的帰納法により,この命題は真となることが示される.
証明を見る
に注意すると,
より, が成り立つ.よって,
が成り立つ.
証明を見る
とすると, であるから,定理1-(7)より,
となる.また,定理1-(6)より,任意の に対して,
となるから,
を得る.
証明を見る
とすると, であるから,定理1-(8)より,
となる.また,定理1-(6)より,任意の に対して,
となるから,
を得る.
証明を見る
まず, を示す. とすると, であるから,定理1-(7)より,
となる.ここで,任意の に対して, より となるから,任意の に対して, が成り立つ.よって,
を得る.次に, を示す. とすると, であるから,定理1-(8)より,
となる.ここで,任意の に対して, より となるから,任意の に対して, が成り立つ.よって,
を得る.このことと,任意の に対して, が成り立つ,即ち
が成り立つことから,
を得る.
証明を見る
が存在するから, とすると, が成り立つ.よって,(6)より,
が成り立つから, を得る.故に,
を得る.
おわりに
今回はレイアウトに凝ってみましたw