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右辺が0でない三項間漸化式の問題(解説編)

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前回の記事 の解説をしていきたいと思います。
と言っても、これは私が最初に思いついた解法なので、無駄に遠回りをしている可能性があります。それと、前回の記事でいった$(1)$から$(4)$までのすべてに使える解法はまた別の記事に書きたいと思います。

さて、全ての問題において、結局は$b_{n+2}-5b_{n+1}+6b_n=0$に帰着させています。やっぱり右辺が0のほうがいいんですね。

準備

これから$b_{n+2}-5b_{n+1}+6b_{n}=0$をたくさん解くことになるので先に解けるところまで解いてしまします。
まず、いつもの特性方程式$t^2-5t+6=0$を解いて上の漸化式を変形すると、
\begin{align*} b_{n+2}-2b_{n+1}&=3(b_{n+1}-2b_{n})\\ b_{n+2}-3b_{n+1}&=2(b_{n+1}-3b_{n}) \end{align*}
となるので$b_1,b_2$を用いて
\begin{align*} b_{n+1}-2b_{n}&=(b_2-2b_1)\cdot 3^{n-1}\\ b_{n+1}-3b_{n}&=(b_2-3b_1)\cdot 2^{n-1} \end{align*}
(上式)-(下式)より$b_{n}=(b_2-2b_1)\cdot 3^{n-1}-(b_2-3b_1)\cdot 2^{n-1}$となります。

$(1)\qquad a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_{n}=12,a_1=0,a_2=1$

方針は隣接二項間漸化式$a_{n+1}=pa_{n}+q$とまったく同様で、定数部分を特性方程式を用いて消すことを考えます。
つまり$a_k$に当たる部分を$\alpha$に置き換えた$\alpha-5\alpha+6\alpha=12$を解いて出た$\alpha=6$を用いて、与式を
$$ (a_{n+2}-6)-5(a_{n+1}-6)+6(a_n-6)=0$$
と書きかえます。(これは特性方程式の原理が分かっていれば変形できます)
よって、$a_{n}-6=\{(a_2-6)-2(a_1-6)\}\cdot 3^{n-1}-\{(a_2-6)-3(a_1-6)\}\cdot 2^{n-1}$
となって、$a_1=0,a_2=1$より
$$ a_n=7\cdot 3^{n-1}-13\cdot 2^{n-1}+6$$
が答えとなります。

$(2)\qquad a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_{n}=2n,a_1=0,a_2=1$

これも、考え方は普通の(二項間)漸化式と同じで、都合の良い形を作ることを考えます。
つまり
$$\tag{i}\{a_{n+2}-A(n+2)-B\}-5\{a_{n+1}-A(n+1)-B\}+6\{a_{n}-An-B\}=0$$
という式を満たす定数$A,B$を求めれば、右辺が$0$の隣接三項間漸化式として解くことができるということです。
早速展開して$A$$B$を求めてみましょう。
$(\text{i})$$a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_n=2An+(-3A+2B)$となるので、$(2)$の与式より
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 2A=2 \\ -3A+2B=0 \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
なので、$\displaystyle A=1,B=\frac{3}{2}$となります。
よって、$(\text{i})$$\displaystyle \left\{a_{n+2}-(n+2)-\frac{3}{2}\right\}-5\left\{a_{n+1}-(n+1)-\frac{3}{2}\right\}+6\left\{a_n-n-\frac{3}{2}\right\}=0$となるので、$\displaystyle a_n-n-\frac{3}{2}=b_n$と置けば、$(\text{i})$$b_{n+2}-5b_{n+1}+6b_{n}=0$となるので、これを解いて($a_n$に戻して)、$\displaystyle a_n-n-\frac{3}{2}=\left(-\frac{5}{2}+2\cdot\frac{5}{2}\right)\cdot 3^{n-1}-\left(-\frac{5}{2}+3\cdot\frac{5}{2}\right)\cdot 2^{n-1}$
つまり、
$$ a_n=\frac{5}{2}\cdot 3^{n-1}-5\cdot 2^{n-1}+n+\frac{3}{2}$$
が答えとなります。

$(3)\qquad a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_{n}=5^n,a_1=0,a_2=1$

右辺が指数関数なので、その部分をまずは解消しようと思います。
$a_n=5^nb_n$と置くと、与式は$\displaystyle b_{n+2}-b_{n+1}+\frac{6}{25}b_n=\frac{1}{25},b_1=0,b_2=\frac{1}{25}$となるので、右辺が定数、つまり$(1)$と同じ形にすることができました。こうなれば、あとは$(1)$と同様の特性方程式を解いて、$\displaystyle \alpha=\frac{1}{6}$を得るので、
$$ \left(b_{n+2}-\frac{1}{6}\right)-\left(b_{n+1}-\frac{1}{6}\right)+\frac{6}{25}\left(b_{n}-\frac{1}{6}\right)=0$$となります。
また(隣接三項間漸化式の)特性方程式$\displaystyle t^2-t+\frac{6}{25}=0$を解くと$\displaystyle t=\frac{2}{5},\frac{3}{5}$となるので、
\begin{align*} \left(b_{n+2}-\frac{1}{6}\right)-\frac{2}{5}\left(b_{n+1}-\frac{1}{6}\right)&=\frac{3}{5}\left\{\left(b_{n+1}-\frac{1}{6}\right)-\frac{2}{5}\left(b_{n}-\frac{1}{6}\right)\right\}\\ \left(b_{n+2}-\frac{1}{6}\right)-\frac{3}{5}\left(b_{n+1}-\frac{1}{6}\right)&=\frac{2}{5}\left\{\left(b_{n+1}-\frac{1}{6}\right)-\frac{3}{5}\left(b_{n}-\frac{1}{6}\right)\right\} \end{align*}
と変形して、
\begin{align*} \left(b_{n+1}-\frac{1}{6}\right)-\frac{2}{5}\left(b_{n}-\frac{1}{6}\right)&=-\frac{3}{50}\left(\frac{3}{5}\right)^{n-1}\\ \left(b_{n+1}-\frac{1}{6}\right)-\frac{3}{5}\left(b_{n}-\frac{1}{6}\right)&=-\frac{2}{75}\left(\frac{2}{5}\right)^{n-1} \end{align*}
(上式)-(下式)より
$$ \frac{1}{5}b_{n}=\frac{2}{75}\left(\frac{2}{5}\right)^{n-1}-\frac{3}{50}\left(\frac{3}{5}\right)^{n-1}+\frac{1}{30}$$
よって、
\begin{align*} a_{n}&=\frac{2}{3}\cdot 2^{n-1}-\frac{3}{2}\cdot3^{n-1}+\frac{1}{6}\cdot5^n\\ &=\frac{1}{3}\cdot2^n-\frac{1}{2}\cdot3^n+\frac{1}{6}\cdot5^n \end{align*}
が答えとなります。

$(3)$の別解

先ほどは指数関数の部分を無理やり定数に変えるという解法でした。こちらの別解では$(2)$の方法を用いて、$(3)$を解いてみようと思います。
まず、$(2)$の方法は、都合の良い形を作るというものでした。今回の都合の良い形というのは以下の形になります。
$$(a_{n+2}-A\cdot5^{n+2})-5(a_{n+1}-A\cdot5^{n+1})+6(a_{n}-A\cdot5^{n})=0$$
これと元の式を比較すると$6A=1$より$\displaystyle A=\frac{1}{6}$となるので、
$$ a_{n}-\frac{1}{6}\cdot5^{n}=\left\{\left(1-\frac{1}{6}\cdot5^2\right)-2\left(0-\frac{1}{6}\cdot5^1\right)\right\}3^{n-1}-\left\{\left(1-\frac{1}{6}\cdot5^2\right)-3\left(0-\frac{1}{6}\cdot5^1\right)2^{n-1}\right\}$$
これを整理して、
$$ a_n=\frac{1}{3}\cdot2^n-\frac{1}{2}\cdot3^n+\frac{1}{6}\cdot5^n$$
が答えとなります。

$(4)\qquad a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_{n}=2^n,a_1=0,a_2=1$

これも右辺に指数関数がある形なので、$(3)$と同じ方針で解き進めてみましょう。
$a_n=2^nb_n$と置くと、与式は$\displaystyle 4b_{n+2}-10b_{n+1}+6b_{n}=1,b_1=0,b_2=\frac{1}{4}$となります。この漸化式の特性方程式は$4\alpha-10\alpha+6\alpha=1$となるのですが、$\alpha$の係数を見ると、$0$になってしまいました。これは$\alpha$が求まらない、つまり$(1)$のようなうまい変形ができない、ということを意味しています。なぜこのようなことになるかというと、$a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_{n}=0$の特性方程式$t^2-5t+6=0$の解の一つに$2$が含まれていることに起因します。つまり、上に出てきた$b_n$についての漸化式を作った時、$2^n$に次数を合わせるために係数に出てきた$2$$b_{n+2} $なら$2^2$のように出てきたものが、$t^2-5t+6=0$の解になったことで$\alpha$の係数が$0$になってしまった($(2^2-5\times2+6)\alpha=0$)ということです。これは$(3)$でやった別解でも同様のことが起きます。
このままでは解けないので、何か別の方法を考えてみる必要があります。今、$2$が特性方程式$t^2-5t+6=0$の解だったために、$\alpha$の係数が$0$になってしまい、求めたい$\alpha$の情報が消えてしまいました。しかし、逆に考えると、結局消えてくれるなら要らないものを増やしても問題がないのではないか?という考え方もできます。そう、$n$という"身代わり"を使って$\alpha$を守ろうということです。しかも、$n$なら$n+1$$n+2$にも変化するので、$\alpha$が残ってくれるだろうということも期待できます。ここまでくればあとは簡単です。$a_n=2^nb_n$でだめなら、$a_n=n\cdot2^n b_n$としてみましょう。そうすると与式は$\displaystyle 4(n+2)b_{n+2}-10(n+1)b_{n+1}+6nb_{n}=1,b_1=0,b_2=\frac{1}{8}$となります。この式を展開してみると$\displaystyle n(4b_{n+2}-10b_{n+1}+6b_{n})+8b_{n+2}-10b_{n+1}=1$となって、先ほど$\alpha$が求められなかった原因である式の形が$n$にまとめられて狙い通りの形になっています。この式の特性方程式は$8\alpha-10\alpha=1$となって$\displaystyle \alpha=-\frac{1}{2}$が分かります。これを使って式変形をすると、
$$ 4(n+2)\left(b_{n+2}+\frac{1}{2}\right)-10(n+1)\left(b_{n+1}+\frac{1}{2}\right)+6n\left(b_{n}+\frac{1}{2}\right)=0$$
となって、これを解くと(特性方程式うんぬんはもう省略します)
$$ nb_n=\left(\frac{3}{2}\right)^n-\frac{1}{2}n-1$$
よって、
$$ a_n=3^n-n\cdot2^{n-1}-2^n$$
が答えとなります。

たった4問しかないのに、すごく長い解説になってしまいました…これは反省しないといけませんね。
こんなやり方も見つけた、という人はぜひ教えてください。では、今回はここまでにします。

投稿日:20201128

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