6
大学数学基礎解説
文献あり

私はゼータ関数のEuler積表示を無限積の絶対収束性を使わず示したい!

773
0

はじめに

記事名がラノベのタイトルみたいですね. ところでRe(z)で複素数zの実部, 実数xに対しP,P<xをそれぞれ素数全体, x未満の素数全体の集合を表わすとする. 最も一般的に知られているゼータ関数:
ζ(s)=n=11ns(Re(s)>1)
には,
ζ(s)=pP(1ps)1(Re(s)>1)
という無限積表示がある. これを, ζ(s)のEuler積表示という. みずきさんの記事 では, Euler積表示を簡単な方法で分かりやすく示しているが, 暗に無限積の絶対収束性等を認めているので, 今回はそれを用いずに示していきたいと思う.

ゼータ関数のEuler積表示

級数n=1nsRe(s)>1で絶対収束する.

n=1|1ns|=n=11nRe(s)1+1xRe(s)dx=1+1Re(s)1<.

Euler積表示

n=11ns=pP(1ps)1(Re(s)>1)

Axx未満の素数の積で構成される数全体とする. 即ち,
Ax={n=j=1kpje(j):kN,pjP<x,e(j)N(1jk)}.
すると,
p<x(1ps)1=p<x(1+ps+p2s+p3s+)=nAx1ns
と変形できる. 二つ目の等式においては, 絶対収束級数k=0pks有限積であるから, 並びかえ及び積の展開が可能である. 従って
pP(1ps)1=limxpP<x(1ps)1
と解釈すれば,
|n=11nspP(1ps)1|=|n=11nslimxnAx1ns|=|limxnAx1ns|limxnAx1nRe(s)limxnx1nRe(s)=0.

さいごに

下の引用に挙げた書籍「素数とゼータ関数」には, みずきさんのような直感的な証明と, 本記事のような厳密な証明のどちらも載っていますので, 気になる方はお手にとってみてください.

素数とゼータ関数, 小山信也, 共立出版.

参考文献

[1]
小山信也, 素数とゼータ関数, 共立講座 数学の輝き6, 共立出版, 2015
投稿日:20201130
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Sep
Sep
31
5088
解析数論が好きです! ねこに包まれたい。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. ゼータ関数のEuler積表示
  3. さいごに
  4. 参考文献