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Semidifferentialについて②

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以下, nN として, ΩRn を開集合とする. また, Rn の Euclidノルムを || で書き, 全微分可能を単に微分可能と呼ぶことにする. Du(x)ux に於ける微分(勾配)を表すことにする.

前回のsemidifferentialに関する記事 の続きについて. ここで, D±u(x) の定義と諸性質について確認しておく. uC(Ω), xΩ に対して,

D+u(x):={pRn|lim supyxu(y)u(x)p(yx)|yx|0}={Dψ(x)Rn | ψC1(Ω) s.t.  yBδ(x), u(y)ψ(y)  u(x)=ψ(x)}

D+u(x) かつ Du(x) ならば, ux で微分可能であり,
D+u(x)=Du(x)={Du(x)}.
が成り立つ.

Du(x) についても同様に成り立つ. 特に, ux で微分可能であれば, D+u(x),Du(x) は共に一点集合で, それは {Du(x)} に一致することに注意する.

具体的な函数の super-/subdifferential を挙げる.

n=1, u(x)=|x|, xR とする. この u は原点 x=0 で微分不可能である. この u に対して, D+u(0),Du(0) を計算すると,
{D+u(0)=Du(0)=[1,1]
となる.

これは, 微分不可能な点 x=0 に於いて, 下側から接する滑らかな函数(C1級)の傾きが -1から1を取り得るとイメージ出来る. 逆に, x=0 で上から接するような滑らかな函数は取れないことも分かる.

対称的に, u(x)=|x| については, D±u(0) が逆になる.

微分可能な例.

n=1, u(x)=x22, xR とする. このとき, uxR で微分可能なので, xR,
D+u(x)=Du(x)={x}
となる.

D+u(x),Du(x) が共に になる例.

n=2,α(0,1] とする. u を,
u(x,y)=|x|α|y|α,(x,y)R2.
と定める. このとき, 点 (0,0) に関して,
\begin{align*}
\begin{cases}
D^{+}u(0,0) = \emptyset \
D^{-}u(0,0) = \emptyset
\end{cases}
\end{align*}
である.

この例は, u が原点 (0,0) に於いて, どの方向からも滑らかな接平面を取れない事を示している.

D+u(0,0)= のみ示す. D+u(0,0) として矛盾を導く. (p1,p2)D+u(0,0) とすると, φC1(R2)s.t.
\begin{align*}
D\varphi(0,0)=(p_1,p_2), \quad 0=u(0,0)=\varphi(0,0) \ \
かつ \ u(x,y) \leq \varphi(x,y), \ (x,y)\in \mathbb{R}^{2}
\end{align*}
とできる. ここで, h(0,1) に対して,
\begin{align}
\frac{\varphi(h,0)-\varphi(0,0)}{h}
&= \frac{\varphi(h,0)}{h} \nonumber \
&\geq \frac{u(h,0)}{h} \nonumber \
&= \frac{|h|^{\alpha}}{h} \geq \frac{|h|}{h} =1 \nonumber
\end{align}
となる. h0 とすると, p1=φ(0,0)x なので, p11 が成り立つ.
逆に, h(1,0) に対して,
\begin{align}
\frac{\varphi(h,0)-\varphi(0,0)}{h}
&= \frac{\varphi(h,0)}{h} \nonumber \
&\leq \frac{u(h,0)}{h} \qquad (h<0 なので) \nonumber \
&= \frac{|h|^{\alpha}}{h} \leq \frac{|h|}{h} =-1 \nonumber
\end{align}
となるので, h0 とすると, p1=φ(0,0)x なので, p11 が成り立つ.
以上より,
\begin{align*}
p_{1}\geq 1 \quad かつ \quad p_{1} \leq -1
\end{align*}
となり矛盾する. 従って, D+u(0,0)= である. Du(0,0) についても同様に示される.

この u をより一般の多次元に拡張する場合は, u(x1,x2,,xn)=|x1||x2|+|x3|±|xn| のように符号を変えれば良い.
他にも, 片方が で片方が R になる例や, 片方が で片方が一点集合になる例などもあるが, これらは [1,Exam3.1.2] を参照して欲しい. 今回の例を通して, 微分不可能な点がsuper-/subdifferentialの観点からその特徴を見出すことが出来る.

参考文献
  1. P.Cannarsa and C.Sinestrari, Semiconcave Functions, Hamilton-Jacobi Equations, and Optimal Control, Birkhauser Boston, Inc.,Boston, MA,2004.
投稿日:2020122
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偏微分方程式論/その他,備忘録

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  1. 具体的な函数の super-/subdifferential を挙げる.