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z変換:nの数字和をn(n+1)で割った級数の値を求める。

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目的

こちら の記事で紹介された級数の値をz変換をもちいて求める。

数字和をn(n+1)で割った級数

【数字和をn(n+1)で割った級数】

a(n)は自然数n10進数表記したときの 数字和 。また、単位階段関数u(n)を使ってnを整数に拡張したa(n)
a(n):=a(n)u(n1)={0(n0,nZ)a(n)(n>0,nZ)と定義する。このとき
n=1a(n)n(n+1)=n=0a(n)n(n+1)=109log(10)

a(n)の例

n12345のときa(n)
a(12345)=a(12345)u(123451)=a(12345)u(12344)=a(12345)=1+2+3+4+5=15

a(n)の性質
  1. a(n)nで割ったn0の極限は0
    limn0u(n1)n=0である。
    この極限を求める証明はこちら
    単位階段関数の微分は
    du(x)dx=δd(x)で与えられる。ただし、δd(x)はディラックのデルタ関数で
    δd(x):={0x0x=0で定義される。求める極限は00の不定形なのでロピタルの定理から
    limn0u(n1)n=limx0u(x1)x=limx0du(x1)d(x1)dx1dxdxdx=limx0δd(x1)11=0となり求める極限が求まった。

limn0a(n)n=limn0a(n)u(n1)n=limn0a(n)limn0u(n1)n=00=0

2.a(n)0以上の整数nに対してn以下。等号がなりたつのはn1桁のとき。
a(n)n(n0,nZ)

証明

a(n)を表す式

a(n)は床関数を使うとnの桁数mに応じて以下のようにあらわせる。
a(n)=0(n0)a(n)=n(n1)a(n)=n9n10(n2)a(n)=n9n109n100(n3)a(n)=n9n109n1009n1000(n4)a(n)=n9l=1m1n10l(nm)

a(123)

a(123)=1239l=131n10l=1239(12310+123100)=1239(12+1)=123117=6

 l>m1のときn10l0なので、lの範囲をまでとっても総和の値は変わらない。よってa(n)
a(n)=n9l=1n10lと表せる。また単位階段関数を使って床関数をあらわすと
n10l=k=1u(n10lk)なので、a(n)
a(n)=n9l=1k=1u(n10lk)とあらわせる。

a(123)

a(123)=1239l=1k=1u(n10lk)=1239{u(n101)+u(n102)+...+u(n1012)l=1121+u(n1013)+...+u(n1001)l=211+u(n1002)+u(n1003)+...+...l>20}=1239{12+1}=123117=6

a(n)z変換

a(n)の収束領域

0以上の整数に対してa(n)nが成り立っている。またnz変換の収束領域は|z|>1なので、a(n)の収束領域を|z|>ρとするとρ<1。よってa(n)z変換は|z|>1において一様収束する。ゆえにa(n)の収束領域は|z|>1

a(n)z変換する

a(n)z変換する。z変換の定義から

Z[a(n)]=n=0a(n)zn=n=0{n9l=1k=1u(n10lk)}zn=n=0nzn9n=0l=1k=1u(n10lk)zn=Z[n]9n=0l=1k=1u(n10lk)zn=z(z1)29n=0l=1k=1u(n10lk)znnz変換=z(z1)29l=1k=1n=0u(n10lk)zn=z(z1)29l=1k=1Z[u(n10lk)]=z(z1)29l=1k=1z10lkZ[u(n)]z変換のシフト則=z(z1)29l=1k=1z10lkzz1 単位階段関数のz変換 =z(z1)29zz1l=1k=1z10lk=z(z1)29zz1l=1z10l1z10l初項および公比が z10lの幾何級数 =z(z1)29zz1l=11z10l1

a(n)n(n+1)z変換を求める

両辺に1zz2をかけて
1zz2Z[a(n)] =1z(z1)+9zl=11z10l1z2Z[a(n)]z1Z[a(n)] =1z(z1)+9zl=11z10l1
zwにおきかえて両辺をzからまでwで積分して
zw2Z[a(n)]w1Z[a(n)]dw =z1w(w1)+9wl=11w10l1dwzw2Z[a(n)]dwzw1Z[a(n)]dw=z1w(w1)+9wl=11w10l1dw
ここでa(0)=0だからz変換の積分則を適用できて
Z[a(n)n+1](Z[a(n)n]limn0a(n)n)=z(1w1w1)dw+9l=1z1w(w10l1)dw
limn0+a(n)n=0なので 
Z[a(n)n+1]Z[a(n)n]=[log(w)log(w1)]z+9l=1z1w(w10l1)dw=[log(w1w)]z+9l=1z1w(w10l1)dw=log(1z1)+9l=1z1w(w10l1)dw
ここで定積分はw10l1=uとおくと、(10l)w10l1dw=duなので
z10l11wu110lw10l1du=z10l11u110lw10ldu=z10l1110l1u(u+1)du=110lz10l11u1u+1du=110l[log(u)log(u+1)]z10l1du=110l[log(uu+1)]z10l1=110llog(z10l1z10l)=110llog(1z10l)よって
Z[a(n)n+1]Z[a(n)n]=log(1z1)+9l=1z1w(w10l1)dwZ[a(n)n+1a(n)n]=log(1z1)9l=1110llog(1z10l)Z[a(n)n(n+1)]=log(1z1)9l=1110llog(1z10l)Z[a(n)n(n+1)]=log(1z1)+9l=1110llog(1z10l)
ここで総和内のlogの箇所はlogの和に分解される。
log(1z10l)=log(1z10l1)+log(1+z110l1+z210l1+...+z910l1)(分解1回目) =log(1z10l2)+log(1+z110l2+z210l2+...+z910l2)+log(1+z110l1+z210l1+...+z910l1)(分解2回目) ==log(1z10ll)+log(1+z110ll+z210ll+...+z910ll)+log(1+z110l(l1)+z210l(l1)+...+z910l(l1))+log(1+z110l2+z210l2+...+z910l2)+log(1+z10l1+z210l1+...+z910l1)(分解l回目) =log(1z1)+log(1+z1+z2+...+z9)+log(1+z10+z210+...+z910)+log(1+z110l2+z210l2+...+z910l2)+log(1+z110l1+z210l1+...+z910l1)=log(1z1)+h=1llog(1+z110lh+z210lh+...+z910lh)=log(1z1)+h=1llogj=09zj10lh
よって
Z[a(n)n(n+1)]=log(1z1)+9l=1110l(log(1z1)+h=1llogj=09zj10lh)=log(1z1)+9log(1z1)l=1110l+9l=1110lh=1llogj=09zj10lh=log(1z1)+9log(1z1)(1101110)+9l=1110lh=1llogj=09zj10lh=log(1z1)+9log(1z1)(19)+9l=1110lh=1llogj=09zj10lh=9l=1110lh=1llogj=09zj10lh
となりz変換が得られた。収束領域は|z|>1

級数n=0a(n)n(n+1)の値

Z[a(n)n(n+1)]z1の極限をとった値が求める級数の値。しかし、Z[a(n)n(n+1)]の収束半径が|z|>1であるため|z|1の極限をとった際に級数n=0a(n)n(n+1) が収束するか否かはわからない。よってまず級数n=0a(n)n(n+1)の収束性を判定する。収束すればアーベルの連続性定理から級数n=0a(n)n(n+1)の値は、zを複素平面上の単位の外側、つまり収束領域から1に近づけた limz1+Z[a(n)n(n+1)]に等しい。
ゆえに
n=0a(n)n(n+1)=limz1+n=0a(n)n(n+1)zn=limz1+Z[a(n)n(n+1)]
を示したことになる。

級数n=0a(n)n(n+1)の収束判定

収束判定
a(n)は各桁の値の和なのでnm桁のときa(n)9mが成り立つ。つまり、各桁をすべて9としたときの和は常にa(n)以上である。nの桁数mlog(n)log10+1なので 

a(n)n(n+1)9mn(n+1)=9(log(n)log(10)+1)n(n+1)9(log(n)log(10)+1)n(n+1)
ダランベールの級数判定法から、n+1項目とn項目の比をとって
limn9(log(n+1)log(10)+1)(n+1)(n+2)9(log(n)log(10)+1)n(n+1)=limnnlog(10(n+1))(n+2)log(10n)=limnlog(10(n+1))+nn+1log(10n)+n+2nの不定形だからロピタルの定理を適用=limn1n+1+1(n+1)21n+2n2の不定形だからロピタルの定理を適用=limnn2n2n+2(n+1)2=1
比が1になったのでラーベの判定法を使えて
limnn(9(log(n+1)log(10)+1)(n+1)(n+2)9(log(n)log(10)+1)n(n+1)1)=limnn(nlog(10(n+1))(n+2)log(10n)1)=limnn(nlog(10(n+1))(n+2)log(10n)(n+2)log(10n))=limn(n2log(10(n+1))n(n+2)log(10n)(n+2)log(10n))=limn(2nlog(10(n+1))+n2n+1((2n+2)log(10n)+n(n+2)n)log(10n)+n+2n)の不定形だからロピタルの定理を適用=limn(2log(10(n+1))+2nn+1+2nn2(n+1)2(2log(10n)+2(n+1)n+1)1n+1+2n)の不定形だからロピタルの定理を適用=limn(2log(n+1n)+2nn+1+2nn2(n+1)2(2(n+1)n+1)1n+1+2n)=limn(2log(1+1n)+21+1n+2n1(1+1n)2(2+2n+1)1n+1+2n)=(0+2130+1+0)=2
2=1cなので正の数1が存在するので、級数n=09mn(n+1)は絶対収束する。
よって
a(n)n(n+1)9mn(n+1)なので、級数n=0a(n)n(n+1)は絶対収束する。

級数の値を求める。

n=1a(n)n(n+1)=n=0a(n)n(n+1)=limz1+Z[a(n)n(n+1)]=limz1+9l=1110lh=1llogj=09zj10lh=9l=1110lh=1llog(101)=9l=1llog(10)10l=9log(10)l=1l10l=9log(10)1081=109log(10)となり示された。

途中あらわれた級数l=1l10lの値の求め方はこちら。
z変換をもちいて求める。z変換のスケーリング則とnz変換から
Z[n10n]=10z(10z1)2 収束領域は|z|>110。このz変換の結果についてz1の極限をとった値がl=1l10lの値で
limz1Z[n10n]=1081となる。

参考文献

数字和

アーベルの連続性定理

ダランベールの収束判定法

ラーベの収束判定法

投稿日:2020125
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zeta
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  1. 目的
  2. 数字和を$n(n+1)$で割った級数
  3. 証明
  4. $a'(n)$を表す式
  5. $a'(n)$$z$変換
  6. 級数$\sum_{n=0}^{\infty} \frac{a'(n)}{n(n+1)}$の値
  7. 参考文献