記号について
この記事では,記号を以下の意味で使用します.
: の対象のsubsetを含む最小のthick部分圏(=直和因子でとじる三角部分圏)
: の対象のsubsetを含む最小のlocalizing部分圏
: のコンパクトな対象全体からなるのfull部分圏.
また,ホモトピー余極限を以下のように定義しておきます.
を任意の添字集合に対する直和をもつ三角圏とする.
下に有界なの列
に対して,そのホモトピー余極限を次の完全三角形における対象として定義する:
(すなわち,である).
概要
今回の目標は次の定理です.
[Kra07, Remark 4.5 (1), Lemma 6.5]
を任意の添字集合に対する直和を持つ三角圏で,compact generatorをもつとする.をの対象のcompact subsetとする.このとき次は同値:
- がのgenerator,すなわち.
- 任意のとについて,ならば,
- .
前回の記事
で出てきた便利な同値条件ですね.
準備
今回は,次の2つの定理を認めて使用します.
Nee01, Proposition 1.6.8
を任意の添字集合に対する直和をもつ三角圏であるとする.このとき,直和で閉じるの三角部分圏は直和因子でも閉じる.
定理2はホモトピー余極限の基本的な性質から導かれます.多分いつか記事にします.
(NeemanのProposition 1.6.8はさらに強く,が冪等完備であることを主張しています).
Brownの表現定理, Nee96, Theorem 3.1
を任意の添字集合に対する直和を持つ三角圏で,compact generatorをもつとする.のホモロジー関手について,任意の集合で添字づけられた族における自然な射
が同型ならば、の元の直和の有限回の拡大で得られる対象の族とその列
が存在して,そのホモトピー余極限で表現可能,すなわちである.
この定理は,のホモロジー関手が表現可能となるためのシンプルな十分条件を与える非常に強い定理です.
いくつか補題を用意します.
を任意の添字集合に対する直和を持つ三角圏で,をcompactな対象の集合とする.このとき,が成り立つ.
compact性がshift,cone,直和因子を取る操作で保たれることを示せば良い.shiftを取る操作で保たれることはから明らか.coneを取る操作で保たれることは可換図式
に5-Lemmaを適用すればよい.直和因子を取る操作で保たれることはから明らか,
次の補題が非常に非自明な補題です.
[Nee92, Lemma 2.3]
を任意の添字集合に対する直和を持つ三角圏で,をのcompactな対象の集合であるとする.をのcompactな対象する.また,とその間の射について,がの対象の直和の有限回の拡大で表されるとする.このとき,任意の射に対して,次の可換図式を満たすとが存在して,を満たす.
の長さ(の対象の直和から拡大をとり続けてが現れる最小の回数)による帰納法で示す.長さが1のとき,はの対象の直和である.このとき,がのcompactであることから,射を考えるとの直和因子であって有限個のの対象の直和で表される対象を経由する.このとき,である.図式
について,三角圏の公理から,となるようなが取れる.よって長さが1のときは示された.長さが以下の場合に成立を仮定して,長さがの場合を示す.は長さがであるから,長さが以下の対象を用いて
が完全三角形となるようにできる.このとき,まず八面体公理から,
の各行各列が全て完全三角形である.そこで,がcompactであることとの帰納法の仮定から可換図式
を満たしであるようなをとる.ここで,特に補題4からはcompactであり,したがってもcompactである.よって,の帰納法の仮定から
を満たしであるようなをとる.ここで,上の二つの図式の一番左側の図式を結合させた
のとが求めるべき対象と射であることを示す.これを完全三角形の間の射に拡張すると,
を示せばよい.いま,八面体公理から次の図式が可換かつ全ての行と列が完全三角形である:
よって特に左から2列目が完全三角形であり,であることからである.以上から示された.
定理1の証明
主定理を示す準備ができました.もう一回主定理を掲示しておきます.
再掲
を任意の添字集合に対する直和を持つ三角圏で,compact generatorをもつとする.をの対象のcompact subsetとする.このとき次は同値:
- がのgenerator,すなわち.
- 任意のとについて,ならば,
- .
1.2.を示す.まず,に対して,
であるようなのfull部分圏を考えると,これはのlocalizing部分圏となる.まずこれを示そう.シフトで閉じることは定義から明らかである.coneで閉じることを示す.に対してがホモロジー関手であることから
が完全列であり,ここからが従う.直和で閉じることを示す.集合で添字づけられたに対して,
となることから,が従う.よって,1.の仮定から,である.は任意の対象からの射が0射しかないことになるのでである.
2.1.を示す.任意のに対して,をに制限したを考える.このとき,この関手はホモロジー関手であり,集合で添字づけられたに対してであるからBrownの表現定理の仮定を満たしている.よって,あるが存在して自然同型
が取れる.よって,米田の補題(
前回の記事
参照.補題中のを,をとする)からで任意のに対してであるものが存在する.ここで,完全三角形
を考えてこれに(ただし)を作用させると,がホモロジー関手であることとである(はfull部分圏なのでに注意)ことから,.仮定からであり,これはを意味する.よって,となりが示された.
1. 3.を示す.任意のcompactな対象に対して,にBrownの表現定理を適用する.すなわち,の列
で,そのホモトピー余極限が,となるようなものをとる.このとき,米田の補題からであるからもcompactである.このとき,完全三角形
においてがcompactであることからはの有限直和を経由する(ここで,この有限直和はとして一般性を失わない).このとき,完全三角系は複体であるからであり,を有限直和への射と埋め込みに分解してとすると,は次の行列で表される射である:
(正確にはこれは像をの有限直和に制限した表示であり,これをへ埋め込んだものがである).このとき,これは左逆射
をもつ.よって,,特にである.よって,はretractionとなる.対応するsectionを考えると,のcompact性からはの有限直和の直和因子である.各はに属する対象の直和の有限回の拡大で記述されることから特にその有限直和も同様である.ここで,補題5を以下の図式に適用する:
このとき,あるとでsection との合成がを経由するものが存在してであるというのが補題5の主張であった.sectionは特に単射なので,は射なのではの直和因子であるからである.よって,である.逆は補題4から明らか.
3.1.を示す.なので,はcompact generatorを含むことから.
以上で示されました.
主定理の「がcompact generatorを持つとする」という仮定は必要な仮定です.2.から1.を示すときにBrownの定理を使いますが,Brownの定理は三角圏がcompact generatorを持つとしたうえでホモロジー関手が表現可能である条件を述べたものです.また,3.から1.を示すときにこの仮定がないとが導出できません.
間違っている部分などございましたらコメントにて指摘していただけますと幸いです.
謝辞
わからないところを一緒に議論して考えてくださった後輩のA氏に感謝いたします.
参考文献
[Kra07] H. Krause, Derived categories, resolutions, and Brown representability, Interactions between homotopy theory and algebra, 101--139, Contemp. Math., 436, Amer. Math. Soc., Providence, RI, 2007.
[Nee92] A. Neeman, The connection between the K-theory localization theorem of Thomason, Trobaugh and Yao and the smashing subcategories of Bousfield and Ravenel, Ann. Sci. Éc. Norm. Supér. 4e série, 25, no. 5 (1992), 547--566.
[Nee96] ------, The Grothendieck duality theorem via Bousfield's techniques and Brown representability, J. Amer. Math. Soc. 9 (1996), 205--236.
[Nee01] ------, Triangulated Categories, Annals of Mathematics Studies, vol. 148, Princeton University Press, Princeton, NJ, 2001.