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現代数学解説
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ディリクレのL関数の特殊値と関数等式

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はじめに

 この記事ではDirichletのL関数の特殊値と関数等式の導出について解説していきます。

ディリクレのL関数

 ディリクレ指標χに対して
L(s,χ)=n=1χ(n)ns
と定められる関数をディリクレのL関数と言う。

L関数の基本性質

 L関数は
n=0|χ(n)ns|n=01nRe(s)=ζ(Re(s))
よりRe(s)>1で絶対一様収束し、χが非自明な指標のときはk=1nχ(k)が有界となるのでディリクレの収束判定法によりRe(s)>0で収束することがわかります。
 またRe(s)>1においてはχの完全乗法性より
L(s,χ)=p:prime11χ(p)ps
というオイラー積表示を持ちます。

 χが法1の指標であるときはL(s,χ)=ζ(s)となるのでL関数はζ関数の一般化の一つと考えられます。
 L関数は複素数平面全域に解析接続され以下の関数等式を満たします。

 法Nの原始的ディリクレ指標χに対して
εχ=1χ(1)2={0χ が偶指標のとき1χ が奇指標のとき
および
L^(s,χ)=(Nπ1)s+εχ2Γ(s+εχ2)L(s,χ)
とおくと
L^(s,χ)=τ(χ)iεχNL^(1s,χ)
が成り立つ。ただしτ(χ)χガウス和とした。

 またL関数は負の整数点における特殊値は以下のように求められます。

 法Nのディリクレ指標χに対して一般化ベルヌーイ数Bn,χを母関数
Fχ(t)=teNt1a=1Nχ(a)eat=n=0Bn,χn!tn
によって定める。
 このとき正整数nに対して
L(1n,χ)=Bn,χn
が成り立つ。

 特にχが原始的であれば前述の関数等式を用いることで正の整数点s=nにおける特殊値も求められます。

 2m+εχ>0なる整数mに対し
L(2m+εχ,χ)=(1)m+1τ(χ)2iεχ(2πN)2m+εχB2m+εχ,χ(2m+εχ)!
が成り立つ。

 さらに偶指標については別途s=1における特殊値も以下のように求められます。

 χが導手Nの偶なる原始的ディリクレ指標であるとき
L(1,χ)=τ(χ)Na=1Nχ(a)log|1ζNa|
が成り立つ。ただしζN=e2πiNとした。

特殊値

 以下χは法Nのディリクレ指標とする。

s=1nにおける特殊値

 L関数の特殊値の公式の示すのにまずHurwitzζ関数を導入する。

フルヴィッツζ関数

ζ(s,x)=n=01(n+x)s
と定められる関数をフルヴィッツζ関数と言う。

 このときL関数はフルヴィッツζ関数を用いて次のように表せる。

L(s,χ)=a=1Nχ(a)ζ(s,aN)Ns

 χ(N+a)=χ(a)に注意すると
L(s,χ)=a=1Nm=0χ(Nm+a)(Nm+a)s=a=1Nχ(a)m=11(Nm+a)s=a=1Nχ(a)ζ(s,aN)Ns
とわかる。

 いまフルヴィッツζ関数の特殊値は以下のように求められる。

 ベルヌーイ多項式Bn(x)を母関数
F(t,x)=tetxet1=n=0Bn(x)n!tn
によって定める。このときn1に対し
ζ(1n,x)=Bn(x)n
が成り立つ。

 Re(s)>1において
Γ(s)ζ(s,x)=n=01(n+x)s0ts1etdt=0us1n=0e(n+x)udu(t=(n+x)u)=0us1exu1eudu
と表せ、この積分はRe(s)<1においても
|1us1exu1eudu|=1uRe(s)1exu1eudu0u21exu1eudu=ζ(2,x)<+
および
01us1exu1eudu=01(n=0Bn(x)n!(u)n)us2du=n=0Bn(x)n!(1)ns+n1
と収束するので、これによってΓ(s)ζ(s,x)Re(s)<1にも解析接続できる。
 特にその極s=1nにおける留数は
Ress=1n(Γ(s)ζ(s,x))=ζ(1n,x)lims1n(s+n1)Γ(s+n)s(s+1)(s+n1)=ζ(1n,x)(1)n1(n1)!=(1)nBn(x)n!
となることから主張を得る。

L(1n,χ)=Bn,χn

 いま
NFχ(t)=NteNt1a=1Nχ(a)eaNNt=a=1Nχ(a)F(Nt,aN)=n=0tnn!Nna=1Nχ(a)Bn(aN)
つまり
Bn,χ=Nn1a=1Nχ(a)Bn(aN)
が成り立つことに注意すると補題2から
L(1n,χ)=a=1Nχ(a)Nn1ζ(1n,aN)=1nNn1a=1Nχ(a)Bn(aN)=Bn,χn
を得る。

s=1における特殊値

 a0(modN)なる任意の整数aについて
n=1ζNann=log(1ζNa)
が成り立つ。

log(1x)=n=1xnn
からわかる(cf. アーベルの連続性定理、ディリクレの収束判定法)。

 χが導手Nの偶なる原始的ディリクレ指標であるとき
L(1,χ)=τ(χ)Na=1Nχ(a)log|1ζNa|
が成り立つ。ただしζN=e2πiNとした。

 いまχは原始的であったので この記事 の定理5から
χ(n)=τ(χ)τ(χ)τ(χ)χ(1)τ(χ)χ(n)=τ(χ)Na=1Nχ(a)ζNan
と表せることに注意すると
L(s,χ)=n=11ns(τ(χ)Na=1Nχ(a)ζNan)=τ(χ)Na=1Nχ(a)n=1ζNanns
が成り立つので
L(1,χ)=τ(χ)N122a=1Nχ(a)log(1ζNa)=τ(χ)N12(a=1Nχ(a)log(1ζNa)+a=1Nχ(a)log(1ζNa))=τ(χ)N12a=1Nχ(a)log(|1ζNa|2)=τ(χ)Na=1Nχ(a)log|1ζNa|
を得る。

関数等式

 以下χは法Nの原始的ディリクレ指標とし
L^(s,χ)=(Nπ1)s+εχ2Γ(s+εχ2)L(s,χ)
とおく。このとき変数変換t=πn2u/Nによって
L^(s,χ)=0us+εχ21n=1χ(n)nεχeπn2u/Ndu
が成り立つのでまずは
ψχ(t)=n=1χ(n)nεχtεχ2eπn2t/N
という関数の性質について考える。

テータ関数の関数等式

 いま
ϑχ(t)=n=χ(n)nεχtεχ2eπn2t/N
とおくと
N=1θχ(t)=2ψχ(t)1
N2θχ(t)=2ψχ(t)
が成り立ち、θχ(t)は以下の関数等式を満たす。

θχ(t)=iεχNτ(χ)tϑχ(1t)

 これにはまず以下の公式を示す。

ポアソン和公式

 関数f(x)のフーリエ変換
f^(s)=f(x)e2πixsdx
に対し
n=f(n+x)=n=f^(n)e2πinx
が成り立つ。

F(x)=n=f(x+n)
とおくとこれは周期1の関数となるので
F(x)=n=cne2πinx(cn=01F(x)e2πinxdx)
とフーリエ級数展開でき、このとき
cn=k=01f(x+k)e2πinxdx=f(x)e2πinxdx=f^(n)
と求まることから主張を得る。

 θχ(t)はそのままではポアソン和公式を適用する適当な関数が見つからないが
θχ(t)=a=1Nχ(a)m=(Nm+a)εχtεχ2eπ(Nm+a)2t/N
と変形することで
g(x)=(Nx)εχtεχ2eπ(Nx)2t/N
ひいてはfεχ(x)=xεχeπx2を考えればよいことがわかる。

fεχ^(s)=(is)εχeπs2

 f0(x)=2πxf0(x)より
ddsf^0(s)=(2πix)f0(x)e2πixsdx=if0(x)e2πixsdx=i(2πis)f0(x)e2πixsdx=2πsf0^(s)
つまりf^(s)=Aeπs2が成り立ち
f0^(0)=eπx2dx=1πex2dx=1
よりf0^(s)=eπs2を得る。
 またf1(x)=12πf0(x)より
f1^(s)=(12π)(2πis)f0(x)e2πixsdx=isf0^(s)=iseπs2
を得る。

g^(s)=(is)εχtεχ2Nteπs2/Nt

g(x)=Nεχ2fεχ(Ntx)
より変数変換Ntx=yによって
g^(s)=Nεχ2fεχ(y)e2πiys/NtdyNt=Nεχ2Ntfεχ^(sNt)=Nεχ2Nt(isNt)εχeπs2/Nt=(is)εχtεχ2Nteπs2/Nt
とわかる。

θχ(t)=iεχNτ(χ)tϑχ(1t)

 ζN=e2πiNとおくとポアソン和公式から
θχ(t)=a=1Nχ(a)m=(Nm+a)εχtεχ2eπ(Nm+a)2t/N=a=1Nχ(a)m=g(m+aN)=a=1Nχ(a)m=g^(m)ζNam=a=1Nχ(a)m=(i)εχNtmεχtεχ2eπm2/NtζNam=(i)εχNtn=mεχtεχ2eπm2/Nta=1Nχ(a)ζNam
ここでχは原始指標としていたので この記事 の定理5などから
a=1Nχ(a)ζNam=χ(m)τ(χ)=χ(m)|τ(χ)|2χ(1)τ(χ)=χ(m)N(1)εχτ(χ)
となり
θχ(t)=(i)εχNtN(1)εχτ(χ)n=χ(m)mεχtεχ2eπm2/Nt=iεχNτ(χ)tϑχ(1t)
を得る。

証明

L^(s,χ)=τ(χ)iεχNL^(1s,χ)

 簡単のため以下N2とする。
 (N=1、つまりL(s,χ)=ζ(s)のときはθχ(t)=2ψχ(t)1なので少し事情が変わってくるが大筋は同じである。)

 ψχの関数等式から
L^(s,χ)=0ts21ψχ(t)dt=1ts21ψχ(t)dt+01ts21ψχ(t)dt=1ts21ψχ(t)dt+1t(s21)ψχ(1t)dtt2=1ts21ψχ(t)dt+iεχNτ(χ)1t1s21ψχ(t)dt
が成り立つので
τ(χ)iεχN=|τ(χ)|2iεχχ(1)τ(χ)N=iεχNτ(χ)
に注意すると
τ(χ)iεχNL^(1s,χ)=τ(χ)iεχN(1t1s21ψχ(t)dt+iεχNτ(χ)1ts21ψχ(t)dt)=1ts21ψχ(t)dt+iεχNτ(χ)1t1s21ψχ(t)dt=L^(s,χ)
を得る。

参考文献

[1]
加藤和也, 黒川信重, 斎藤毅, 数論I Fermatの夢と類体論, 岩波書店, 2005
[4]
Z. I. Borevich and I. R. Shafarevich, Number Theory, Academic Press, 1966, pp.333-336
投稿日:20201213
更新日:2024117
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  1. はじめに
  2. 特殊値
  3. s=1nにおける特殊値
  4. s=1における特殊値
  5. 関数等式
  6. テータ関数の関数等式
  7. 証明
  8. 参考文献