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大学数学基礎解説
文献あり

類数公式の証明

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{abs}[0]{\mathrm{abs}} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{ep}[0]{\epsilon} \newcommand{eq}[0]{\equiv} \newcommand{even}[0]{\mathrm{even}} \newcommand{fa}[0]{\mathfrak{a}} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\widehat{G}} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{K}[0]{{K^+}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{l}[0]{l^*} \newcommand{lra}[0]{\leftrightarrow} \newcommand{ls}[2]{\Big(\frac{#1}{#2}\Big)} \newcommand{m}[1]{\pmod{#1}} \newcommand{mf}[1]{\mathfrak{#1}} \newcommand{mfa}[0]{\mathfrak{a}} \newcommand{mr}[1]{\mathrm{#1}} \newcommand{N}[0]{\mathrm{N}_{k/\mathbb{Q}}} \newcommand{ndiv}[0]{\nmid} \newcommand{O}[0]{\mathcal{O}} \newcommand{o}[0]{\omega} \newcommand{ob}[1]{\overbrace{#1}} \newcommand{odd}[0]{\mathrm{odd}} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{olT}[0]{\overline{T}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{p}[0]{\mathfrak{p}} \newcommand{prime}[0]{\mathrm{prime}} \newcommand{q}[0]{\mathfrak{q}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\rho} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\mathrm{Re}} \newcommand{resp}[0]{\mathrm{resp}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{t}[0]{\tau} \newcommand{th}[0]{\theta} \newcommand{ti}[0]{{}^\times} \newcommand{Tr}[0]{\mathrm{Tr}_{k/\mathbb{Q}}} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{wh}[1]{\widehat{#1}} \newcommand{x}[0]{\chi} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

この記事では類数公式の証明を行います。

類数公式とは以下のような主張のことを言うのでした。

類数公式

代数体$K$とそのデデキントゼータ関数$\z_K(s)$について、
$s,2t,R_K,h_K,w_K,D_K$をそれぞれ$K$の実埋め込みの個数、複素埋め込みの個数、単数規準、類数、$1$の冪根の個数、判別式とすると
$\dis \lim_{s\to1}(s-1)\z_K(s)=\frac{2^s(2\pi)^tR_Kh_K}{w_K\sqrt{|D_K|}}$
が成り立つ。

これの証明の肝となるのはディリクレの単数定理になります。
ディリクレの単数定理とは$r=s+t-1$について

ディリクレの単数定理

$K$の任意の単数$\e$は基本単数$\e_1,\e_2,\ldots,\e_r$とある$1$の冪根$\z\in K$によって
$\e=\z\e_1^{a_1}\e_2^{a_2}\cdots\e_r^{a_r}$
の形に一意的に表される。

という主張でした。実際には以下に示す別の形の主張を用いることになります。

$K$$n=[K:\Q]=s+2t$個の異なる共役写像$\{\s_k\}_{k=1}^n$$\s_k$$1\leq k\leq s$で実埋め込み、$s+1\leq k\leq s+t$で複素埋め込みかつ$\s_{t+k}=\ol\s_k$となるようにおく。
このとき写像$p:K\to\R^s\times\C^t,\;l:\R^s\times\C^t\to\R^{s+t}$
$p(\a)=(\s_i(\a))_{1\leq i\leq s+t}=(\ob{\s_1(\a),\ldots,\s_s(\a)}^{\mr{real}},\ob{\s_{s+1}(\a),\ldots,\s_{s+t}(\a)}^{\mr{complex}})$
$l(x)=(\log|x_1|,\ldots,\log|x_s|,\log|x_{s+1}|^2,\ldots,\log|x_{s+t}|^2)$
で定める。

$l\circ p$による$K$の基本単数$\e_1,\e_2,\ldots,\e_r$の像は$\R$上線形独立である。

なおディリクレの単数定理の証明については 代数的整数論 - 中川仁 のp.42-p.50によく書かれているので私の記事では紹介しないつもりです。

用語の解説

今回の記事ではいろんな記法・記号が登場するので一度ここにまとめておく。

  • $l(\a)$
    先の定義では$\a\in K$$\R^{s+t}$への像は$l(p(\a))$と表さなければいけなかったが一々$p()$を書くとごちゃごちゃしてしまうのでこれを単に$l(\a)$と表すこととする。
  • $e_1,e_2,\ldots,e_{s+t}$
    上でも色々定義したように$k$$1\leq k\leq s$$s+1\leq k\leq s+t$かで場合が分かれることが多いので議論を簡潔にするため補助的な因子$\{e_k\}^{s+t}_{k=1}$$1\leq k\leq s$において$e_k=1$$s+1\leq k\leq s+t$において$e_k=2$として導入しておく。
  • $N(x)$
    $R^s\times\C^t$上のノルム$N:R^s\times\C^t\to\R$
    $N(x)=x_1\cdots x_s|x_{s+1}|^2\cdots |x_{s+t}|^2$
    と定義します。このとき$|\s_k(\a)|^2=\s_k(\a)\ol\s_k(\a)=\s_k(\a)\s_{t+k}(\a)$であったので
    $N(p(\a))=\prod^n_{k=1}\s_k(\a)=N_{K/\Q}(\a)$
    が成り立ちます。
    ちなみにこの記事では写像$N$が多用されます。代数的数のノルム$N_{K/\Q}(\a)$にイデアルのノルム$N(\fa)$$R^s\times\C^t$上のノルム$N(x)$、そして領域内の格子点の個数$N(r)$といった具合です。少しややこしいですが注意して読んでれば混同することはないと思います。
  • $W_K$
    $K$に含まれる$1$の冪根全体からなる集合を$W_K$とおきます。一般に体の有限部分乗法群は巡回群となるので$W_K$$1$の原始$w_K$乗根$\z$によって生成される巡回群となります。(別に一般論を持ってこなくても$W_K$が巡回群であることは容易に示せます。)
  • $\R^s\times\C^t$
    $\R^s\times\C^t$$s+t$個の体の直積であるとして考えると積$xx'=(x_ix_i')_{1\leq i\leq s+t}$が考えられます。このとき$p,l,N$はそれぞれ
    $p(\a\a')=p(\a)p(\a'),\;l(xx')=l(x)+l(x'),\;N(xx')=N(x)N(x')$
    という関係によって準同型となります。

証明のあらすじ

まずデデキントゼータ関数$\z_K(s)$
$\dis N(\fa)^s\sum_{\a\in A(\fa)}\frac{1}{|N_{K/\Q}(\a)|^s}$
という形の級数の$h_K$個の和に等しいことを示し、またある$n$次元の格子$\mf{M}(\fa)$とある領域$X\subset\R^s\times\C^t$があって$p(A(\fa))=\mf{M}(\fa)\cap X$つまり
$\dis \sum_{\a\in A(\fa)}\frac{1}{|N_{K/\Q}(\a)|^s}=\sum_{x\in\mf{M}(\fa)\cap X}\frac{1}{|N(x)|^s}$
$\R^s\times\C^t$の世界に落とし込めることを示す。

次にある条件を満たす格子$\mf{M}$と領域$X$$X$上の正値写像$F$に対して定まる関数
$\dis\xi(s)=\sum_{x\in\mf{M}\cap X}\frac{1}{|F(x)|^s}$
$\mf{M}$の基本胞体の体積$\Delta$$X$のある単位的な集合$T$の体積$v_T$について
$\dis\lim_{s\to1+0}(s-1)\xi(s)=\frac{v_T}{\Delta}$
が成り立つことを示す。

最後に
$\dis\Delta(\fa)=\frac1{2^t}\sqrt{|D(\fa)|}=\frac{N(\fa)\sqrt{|D_K|}}{2^t}$
$\dis w_Kv_T=2^s(\pi^tR_K)$
を示すことで
$\dis\lim_{s\to1}(s-1)\z_K(s)=\frac{2^s(2\pi)^tR_Kh_K}{w_p\sqrt{|D_K|}}$
を得る。

デデキントゼータ関数の分割

$K$のイデアル類群を$\mathcal{Cl}_K$とおくと
$\dis\z_K(s)=\sum_{\mf{a}}\frac{1}{N(\mfa)^s}=\sum_{C\in\mathcal{Cl}_K}\sum_{\mfa\in C}\frac{1}{N(\mfa)^s}$
(ただし$\mfa\in C$は分数イデアルではなく整イデアル(つまり$\O_K$のイデアル)として渡る。)
と変形でき、類数$h_K=|\mathcal{Cl}_K|$は有限であるので以降は内部の和
$\dis \sum_{\mfa\in C}\frac{1}{N(\mfa)^s}$
について考える。

いま$C\in\mathcal{Cl}$の逆元$C^{-1}$から任意に整イデアルを一つ取り$\mfa'$とおく。
このとき任意の$\mfa\in C$にある$\a\in\fa'$があって$\mfa\mfa'=(\a)$が成り立ち、
逆に任意の$\a\in\fa'$にある$\fa\in C$があって$\mfa\mfa'=(\a)$が成り立つので
$N(\fa)N(\fa')=|N_{K/\Q}(\a)|$および$\fa_1\fa'=\fa_2\fa'\Rightarrow\fa_1=\fa_2$に注意すると
$\dis \sum_{\mfa\in C}\frac{1}{N(\mfa)^s}=N(\fa')^s\sum_{\substack{(\a)\\\a\in\fa'}}\frac{1}{|N_{K/\Q}(\a)|^s}$
と変形できる。(ただしこれは単項イデアル$(\a)$のうち$\a\in\fa'$なるもの全体を渡るもので$\a$$\fa'$全体を渡るわけではない。)

そして$\a,\a'\in\O_K$$(\a)=(\a')$を満たすときある単数$\e\in\O_K^\times$があって$\a'=\e\a$が成り立つので同値関係$\sim$$\a\sim\a'\mathrel{\overset{\text{def}}{\iff}}\exists\e\in\O_K^\times,\a'=\e\a$で定義すると
$\dis \sum_{\mfa\in C}\frac{1}{N(\mfa)^s}=N(\fa')^s\sum_{\a\in\fa'/\sim}\frac{1}{|N_{K/\Q}(\a)|^s}$
と表すことができる。

$\R^s\times\C^t$上の表現

$\R^{s+t}$の基底と基本領域

定理3で言及したように$R^{s+t}$において$l(\e_1),l(\e_2),\ldots,l(\e_r)$は線形独立であり、また$l(\e_j)$の各成分の和$\sum^{s+t}_{k=1}\log|\s_k(\e_j)|^{e_k}$$\log|N_{K/\Q}(\e_j)|=\log1=0$に等しいので、それらが生成する部分空間$E$$E=\{x\in\R^{s+t}|\sum^{s+t}_{k=1}x_k=0\}$と特徴づけられる。
 よって$\l=(e_i)_{1\leq i\leq s+t}$とおくと$\l\not\in E$であるから$r+1=s+t$個のベクトル$l^*,l(\e_1),l(\e_2),\ldots,l(\e_r)$$\R^{s+t}$の基底となる。

ここで$K$の基本領域というものを定める。

基本領域

$\R^s\times\C^t$の部分空間$X$$K$の基本領域であるとは任意の$x\in X$が以下の条件を満たすことをいう。

  • $N(x)\neq0$
  • $0\leq\arg x_1<2\pi/w_K$
  • $l(x)$$\R^{s+t}$の基底$l^*,l(\e_1),l(\e_2),\ldots,l(\e_r)$による表現
    $l(x)=\xi\l+\sum^r_{k=1}\xi_kl(\e_k) $において$0\leq\xi_k<1$が成り立つ。

$K$の基本領域$X$は錐(cone)である。
つまり$X$は空ではなく、$x\in X$ならば任意の$a>0$$ax\in X$が成り立つ。

任意の$x\in X$$a>0$について$N(ax)=a^nN(x)\neq0$$\arg(ax_1)=\arg x_1$$l(ax)=(\log a)\l+l(x)$なので$ax\in X$となる。また$N(p(1))=N_{K/\Q}(1)=1$$\arg(1)=0$$l(1)=0$であるから$p(1)\in X$つまり$X\neq\emptyset$がわかる。

本題

この説では以下の定理を示す。

$\O_K/\sim$の任意の剰余類$C_\sim$について$p(\a)\in X$なる$\a\in C_\sim$がただ一つ存在する。

この定理が示されれば$N_{K/\Q}(\a)=N(p(\a))$に注意すると
$\dis\sum_{\mfa\in C}\frac{1}{N(\mfa)^s}=N(\fa')^s\sum_{\a\in\fa'/\sim}\frac{1}{|N_{K/\Q}(\a)|^s}=N(\fa')^s\sum_{x\in p(\fa')\cap X}\farc{1}{|N(x)|^s}$
と表すことができることになる。

$N(y)\neq0$なる任意の$y\in\R^s\times\C^t$$y=xp(\e)\;(x\in X,\e\in\O_K^\times)$の形に一意的に表せれる。

$l(y)=\g\l+\sum_{k=1}^r\g_kl(\e_k)$と表したとき、$\e'=\prod^r_{k=1}\e_k^{\lfloor\g_k\rfloor},\;\g'_k=\g_k-\lfloor\g_k\rfloor$とおくと
$l(yp(\e')^{-1})=\g\l+\sum_{k=1}^r\g'_kl(\e_k)\;(0\leq\g'_k<1)$
となる。また$yp(\e')^{-1}$の第一成分の偏角を$\varphi$とおき、$\dis 0\leq \varphi-\frac{2\pi k}{w_K}<\frac{2\pi}{w_K}$なる整数$k$および$\s_1(\z)=e^{\frac{2\pi i}{w_K}}$なる$1$の原始$w_K$乗根$\z$を取り$x=yp(\z^{k}\e')^{-1},\e=\z^k\e'$とおくと$x\in X$および$\e\in\O_K^\times$であって$y=xp(\e)$が成り立つ。

また$y=xp(\e)=x'p(\e')$なる二通りの表示があったとき、$l(y)=l(x)+l(\e)=l(x')+l(\e')$$l(\e_k)$の係数を比較すると$l(\e)=l(\e')$でなければならず、 この記事 の補題2から$\Ker(l\circ p)=W_K$となることに注意するとある$\z\in W_K$$\e'=\z\e'$つまり$p(\e')=p(\z)p(\e)$となる。
 いま$x=x'p(\z)$であって、この両辺の第一成分の偏角を比較すると$0\leq\arg\s_1(\z)<2\pi/w_K$でなくてはならないが$\s_1(\z)^{w_K}=1$なので$\s_1(z)=1$つまり$\z=1$となり、$x=x'p(\z)=x',\;\e'=\z\e=\e$を得る。

定理5の証明

任意の$\O_K$の元$\b\neq0$について$\b=\e\a$であって$p(\a)\in X$なる$\a\in\O_K$がただ一つ存在することを示せばよい。
 そのことは$p(\b)=xp(\e)$とし、$\a=\e^{-1}\b$とおくと$p(\a)=x\in X$が成り立ち、また$p(\e'\a)\in X$ならば$p(\e'\a)p(1)=xp(\e')$なので表現の一意性から$\e'=1$でなくてはならないことからわかる。

$\dis\lim_{s\to1}(s-1)\z_K(s)$の計算

この記事では最終的に
$\dis \lim_{s\to1+0}(1-s)\sum_{x\in p(\fa')\cap X}\farc{1}{|N(x)|^s}=\frac{2^s(2\pi)^tR_K}{w_KN(\fa')\sqrt{|D_K|}}$
を示すがこの節ではより一般的に以下の公式を示す。

 $0$を含まない錐$X\subset\R^n$上の写像$F:X\to\R_{>0}$が以下の条件を満たすものとする。

  • 任意の$x\in X$および$\xi>0$について$F(\xi x)=\xi^nF(x)$が成り立つ。
  • $T=\{x\in X|F(x)\leq1\}$が有界で$n$次元体積$v_T\neq0$を持つ。

このとき$n$次元格子$\mf{M}\subset\R^n$(つまり$\mf{M}$は階数$n$の自由$\Z$-加群)について
$\dis \xi(s)=\sum_{x\in\mf{M}\cap X}\frac{1}{F(x)^s}$
と定める。

このとき$\mf{M}$の基本胞体(fundamental parallelepiped)の体積(つまり$\mf{M}$の基底$a_1,a_2,\ldots,a_n$に対する$|\det(a_1\;\; a_2\cdots a_n)|$)を$\Delta$とおくと以下の事実が成り立つ。

$\xi(s)$$\Re(s)>1$において絶対収束し$\dis\lim_{s\to1+0}(s-1)\xi(s)=\frac{v_T}{\Delta}$が成り立つ。

一応以下の事実を補題として触れたうえで証明を記す。

$r>0$に対して$\farc1r\mf{M}=\{\frac1rx|x\in\mf{M}\}$と定め$N(r)=\#(\frac1r\mf{M}\cap T)=\#(\mf{M}\cap rT)$とおくと
$\dis\lim_{r\to\infty}\frac{\Delta}{r^n}N(r)=v_T$が成り立つ。

これは$n$次元体積というものが超立方体への無限の分割によって定義されたように$T$$N(r)$個の基本胞体(体積${\Delta/r^n}$)に分割したら$v_T$が出てくるという程度の話である。

定理7

いま$\mf{M}\cap X$の全ての元を$F$による像が小さい順に並べ替えたものを$\{x_k\}$とおき、$r_k=\sqrt[n]{F(x_k)}$とおく。
このとき$F,T$および$\{x_k\}$の取り方より$x_1,x_2,\ldots,x_k$は全て$r_kT$に含まれることになる。よって$N(r_k)\geq k$が成り立つ。
また任意の$\e>0$について$x_k$$(r_k-\e)T$に属さないので$N(r_k-\e)< k$となり、これらを$r_k^n=F(x_k)$で割ることで
$\dis\frac{N(r_k-\e)}{(r_k-\e)^n}\left(\frac{r_k-\e}{r_k}\right)^n<\frac{k}{F(x_k)}\leq\frac{N(r_k)}{r_k^n}$
つまり
$\dis\lim_{k\to\infty}\frac{k}{F(x_k)}=\frac{v_T}{\Delta}$
を得る。

さていま任意の$\e>0$にある$k_0$があって$k\geq k_0$
$\dis\left(\frac{v_T}{\Delta}-\e\right)\frac1k<\frac{1}{F(x_k)}<\left(\frac{v_T}{\Delta}+\e\right)\frac1k$
これを$s>1$乗して足し合わせることで
$\dis\left(\frac{v_T}{\Delta}-\e\right)^s\sum^\infty_{k=k_0}\frac1{k^s}<\sum^\infty_{k=k_0}\frac{1}{F(x_k)^s}<\left(\frac{v_T}{\Delta}+\e\right)^s\sum^\infty_{k=k_0}\frac1{k^s}$
となり$\z(s)=\sum^\infty_{k=1}\frac{1}{k^s}$の収束性から$\xi(s)$$s>1$で収束し、また
$\dis\lim_{s\to1+0}(s-1)\sum^{k_0-1}_{k=1}\frac{1}{k^s}=\lim_{s\to1+0}(s-1)\sum^{k_0-1}_{k=1}\frac{1}{F(x_k)^s}=0$
および
$\dis\lim_{s\to1+0}(s-1)\z(s)=1$
に注意すると先の不等式に$(s-1)$をかけて$s\to1+0$とすることで
$\dis\left(\frac{v_T}{\Delta}-\e\right)<\lim_{s\to1+0}(1-s)\xi(s)<\left(\frac{v_T}{\Delta}+\e\right)$
となり$\e>0$は任意であったので結局
$\dis\lim_{s\to1+0}(s-1)\xi(s)=\farc{v_T}{\Delta}$
を得る。

いま線形空間として$(x_1,\ldots,x_s,y_1+iz_1,\ldots,y_t+iz_t)\lra(x_1,\ldots,x_s,y_1,z_1,\ldots,y_t,z_t)$という同型によって$\R^s\times\C^t=\R^{s+2t}=\R^n$とみなせば$K$の基本領域$X$上の写像$F(x)=|N(x)|$および格子$\mf{M}=p(\fa')$について定理7が適用でき、
$\dis \lim_{s\to1+0}(s-1)\sum_{x\in p(\fa')\cap X}\farc{1}{|N(x)|^s}=\frac{v_T}{\Delta(\fa')}$
が成り立つので残るは$T$の体積$v_T$$p(\fa')$の基本胞体の体積$\Delta(\fa')$を求めればよい。

具体的にそれぞれの値は以下のようになる。

$\dis v_T=\frac{2^s\pi^tR_K}{w_K}$および$\dis\Delta(\fa')=\frac{N(\fa')\sqrt{|D_K|}}{2^t}$が成り立つ。

さてこの記事におけるラスボス$v_T$の計算は後にして、まず$\Delta(\fa')$を求める。

$\Delta(\fa')$の計算

いま$\fa'$の基底を$\a_1,\a_2,\ldots,\a_n$とおくと$p(\fa')$の基底は$p(\a_1),p(\a_2),\ldots,p(\a_n)$となる。いま$\R^s\times\C^t$$\R^n$とみなしていたので$1\leq k\leq s$において$x^{(k)}_j=\s_k(\a_j)$$1\leq k\leq t$において$y_j^{(k)}+iz_j^{(k)}=\s_{s+k}(\a_j)$とおくと
$\Delta(\fa')=\abs\begin{vmatrix}x_1^{(1)}&x_1^{(2)}&\cdots&x_1^{(s)}&y_1^{(1)}&z_1^{(1)}&\cdots&y_1^{(t)}&z_1^{(t)}\\x_2^{(1)}&x_2^{(2)}&\cdots&x_2^{(s)}&y_2^{(1)}&z_2^{(1)}&\cdots&y_2^{(t)}&z_2^{(t)}\\\vdots&\vdots&&\vdots&\vdots&\vdots&&\vdots&\vdots\\x_n^{(1)}&x_n^{(2)}&\cdots&x_n^{(s)}&y_n^{(1)}&z_n^{(1)}&\cdots&y_n^{(t)}&z_n^{(t)}\end{vmatrix}$
となる。

いま$y_j^{(k)}$$iz_j^{(k)}$を足し、$z_j^{(k)}$$i$倍から$(y_j^{(k)}+iz_j^{(k)})/2$を引き、適当に列を入れ替えると
$\dis\frac{1}{2^t}\abs\begin{vmatrix} x_1^{(1)}&\cdots&x_1^{(s)}&y_1^{(1)}+iz_1^{(1)}&\cdots&y_1^{(t)}+iz_1^{(t)}&y_1^{(1)}-iz_1^{(1)}&\cdots&y_1^{(t)}-iz_1^{(t)}\\ x_2^{(1)}&\cdots&x_2^{(s)}&y_2^{(1)}+iz_2^{(1)}&\cdots&y_2^{(t)}+iz_2^{(t)}&y_2^{(1)}-iz_2^{(1)}&\cdots&y_2^{(t)}-iz_2^{(t)}\\ \vdots&&\vdots&\vdots&&\vdots&\vdots&&\vdots\\ x_n^{(1)}&\cdots&x_n^{(s)}&y_n^{(1)}+iz_n^{(1)}&\cdots&y_n^{(t)}+iz_n^{(t)}&y_n^{(1)}-iz_n^{(1)}&\cdots&y_n^{(t)}-iz_n^{(t)}\end{vmatrix} \\\dis=\frac{1}{2^t}|\det(\s_j(\a_i))|=\frac{1}{2^t}\sqrt{|D(\fa')|}=\frac{1}{2^t}\sqrt{N(\fa')^2|D_K|}$
よって
$\dis\Delta(\fa')=\frac{N(\fa')\sqrt{|D_K|}}{2^t}$
を得る。

$v_T$の計算

まず$K$の基本領域$X$に対する$T=\{x\in X\big||N(x)|\leq1\}$が有界であることを示す。

$x\in\R^s\times\C^t$について$l(x)=\xi\l+\sum^r_{k=1}\xi_kl(\e_k)$と表したとき、$\dis\xi=\frac1n\log|N(x)|$が成り立つ。

$l(x)$の各成分の総和を考えると
$\dis\sum^{s+t}_{j=1}\log|x_j|^{e_j}=\log|N(x)| \\\dis=\xi\sum^{s+t}_{j=1}e_j+\sum^r_{k=1}\xi_k\log|N_{K/\Q}(\e_k)|=n\xi+0$
であることからわかる。

$T$は有界である。

任意の$x\in T$について
$\dis l(x)=(\frac1n\log|N(x)|)\l+\sum^r_{k=1}\xi_kl(\e_k)$
の各成分を比較すると$\log|N(x)|\leq0$および$0\leq\xi_k<1$から$j$によらず$\log|x_j|^{e_j}\leq\rho$となるようなある定数$\rho$が取れる。つまり$|x_j|< e^{\rho/e_j}$となり主張を得る。

次に$T$を元に$T_1,T_2,\ldots,T_{w_K}$および$\ol{T}$を定め、$T$の代わりに$\olT$の体積を考える問題に帰結させる。

$\z$$\s_1(\z)=e^{\frac{2\pi i}{w_K}}$なる$1$の原始$w_K$乗根とし、$T_k\;(k=0,1,2,\ldots,w_K-1)$$T_k=p(\z^k)T$で定め、$T'=\bigcup^{w_K-1}_{k=0}T_k$とおく。
このとき$v_{T_k}=v_T,v_{T'}=w_Kv_T$が成り立つ。

$\R^s\times\C^t=\R^n$上の線形変換$x'\mapsto xx'$の表現行列は
$\begin{pmatrix}x_1\\&\ddots\\&&x_s\\&&&y_1&-z_1\\&&&z_1&y_1\\&&&&&\ddots\\&&&&&&y_t&-z_t\\&&&&&&z_t&y_t\end{pmatrix}$
であり、その行列式は$x_1\cdots x_s(y_1^2+z_1^2)\cdots(y_t^2+z_t^2)=N(x)$となるので$|N(p(\z^k))|=1$から$v_{T_k}=v_T$がわかる。

また$|N(xp(\z^k))|=|N(x)|\cdot|N_{K/\Q}(\z^k)|=|N(x)|$$\arg(x_1\s_1(\z^k))=\arg x_1+2\pi k/w_K$$l(xp(\z^k))=l(x)+l(\z^k)=l(x)$から$T_k$

  • $0<|N(x)|\leq1$
  • $2\pi k/w_K\leq\arg x_1<2\pi(k+1)/w_K$
  • $l(x)=\xi\l+\sum^r_{k=1}\xi_kl(\e_k) $について$0\leq\xi_k<1$が成り立つ。

なる$x\in\R^s\times\C^t$全体の集合であり、特に$2$つ目の条件から$k\neq k'$であれば$T_k$$T_{k'}$は互いに素となるので
$v_{T'}=\sum^{w_K-1}_{k=0}v_{T_k}=w_Kv_T$を得る。

$\olT$$\olT=\{x\in T'|x_1,x_2,\ldots,x_s>0\}$と定めると$v_{T'}=w_Kv_T=2^sv_{\olT}$が成り立つ。

いま$T'$

  • $0<|N(x)|\eq1$
  • $l(x)=\xi\l+\sum^r_{k=1}\xi_kl(\e_k) $について$0\leq\xi_k<1$が成り立つ。

なる$x\in\R^s\times\C^t$全体の集合であり、どちらの条件も各成分の絶対値$|x_j|$に対する制限となっているので$T'$は各成分の符号について対称性があることがわかる。つまり$x\in T$に対して$x$$j$成分を$-x_j$で置き換えた点$x'$$T$に含まれることになる。
よって$\t\in\{\pm1\}^s\times\{1\}^t\subset\R^s\times\C^t$を符号の置換$\t x=(\t_jx_j)$とみなせば
$\dis T'=\bigcup_{\t\in\{\pm1\}^s\times\{1\}^t}\t\olT$
となる。いま右辺は直和であり、$\#(\{\pm1\}^s\times\{1\}^t)=2^s$から両辺の体積を取ることで$v_{T'}=w_Kv_T=2^sv_{\olT}$を得る。

以上より以下の等式を示すことで類数公式の証明は完結する。

$v_\olT=\pi^tR_K$が成り立つ。

$v_\olT$の積分表示
$\dis\int_{\olT}dx_1\cdots dx_sdy_1dz_1\cdots dy_tdz_t$
を適当に変数変換して計算することで示す。

まず$x_k=\r_k,y_k=r_{s+k}\cos\th_k,z_k=r_{s+k}\sin\th_k$と変数変換するとそのヤコビ行列は
$\dis\farc{\partial(x_1,\ldots,x_s,y_1,z_1,\ldots,y_t,z_t)}{\partial(r_1,\ldots,r_s,r_{s+1},\th_1,\ldots,r_{s+t},\th_{t})} \\=\begin{pmatrix}1\\&\ddots\\&&1\\&&&\cos\th_1&-r_{s+1}\sin\th_1\\&&&\sin\th_1&r_{s+1}\cos\th_1\\&&&&&\ddots\\&&&&&&\cos\th_t&-r_{s+t}\sin\th_t\\&&&&&&\sin\th_1&r_{s+t}\cos\th_t\end{pmatrix}$
であるからヤコビアンは$r_{s+1}\cdots r_{s+t}$であり、また$\log|x_j|^{e_j}=\log r_j^{e_j},\;N(x)=\prod^{s+t}_{k=1}r_k^{e_k}$から領域$T$

  • $r_1,r_2,\ldots,r_{s+t}>0$かつ$\prod^{s+t}_{k=1}r_k^{e_k}\leq1$
  • $\dis\log r_j^{e_j}=\frac{e_j}{n}\log(\prod^{s+t}_{k=1}r_k^{e_k})+\sum^r_{k=1}\xi_k\log|\s_j(\e_k)|^{e_j}$と($j$によらず)表したとき$0\leq\xi_k<1$が成り立つ。

という条件によって定まる領域$\olT'$に写される。これは(補題13でも触れたように)$\th_1,\th_2,\ldots,\th_t$に対する制限がないので
$\dis v_\olT=\int^{2\pi}_0d\th_1\cdots\int^{2\pi}_0d\th_t\int_{\olT'} r_{s+1}\cdots r_{s+t}dr_1\cdots dr_{s+t} \\\dis=(2\pi)^t\int_{\olT'} r_{s+1}\cdots r_{s+t}dr_1\cdots dr_{s+t}$
となる。

さらに$\xi_1,\xi_2,\ldots,\xi_r$を変数として
$\dis\log r_j^{e_j}=\frac{e_j}{n}\log \xi+\sum^r_{k=1}\xi_k\log|\s_j(\e_k)|^{e_j}$
と変数変換すると
$\dis\frac{\partial r_j}{\partial \xi}=\frac{r_j}{n\xi},\;\frac{\partial r_j}{\partial \xi_k}=\frac{r_j}{e_j}\log|\s_j(\e_k)|^{e_j}$
なのでそのヤコビアンは
$\begin{vmatrix}\dis\frac{r_1}{n\xi}&\dis\frac{r_1}{e_1}\log|\s_1(\e_1)|^{e_1}&\cdots&\dis\frac{r_1}{e_1}\log|\s_1(\e_r)|^{e_1}\\\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\\dis\frac{r_{s+t}}{n\xi}&\dis\frac{r_{s+t}}{e_{s+t}}\log|\s_{s+t}(\e_1)|^{e_{s+t}}&\cdots&\dis\frac{r_{s+t}}{e_{s+t}}\log|\s_{s+t}(\e_r)|^{e_{s+t}}\end{vmatrix} \\\dis=\frac{\prod^{s+t}_{k=1}r_k}{n\xi\prod^{s+t}_{k=1}e_k}\begin{vmatrix}e_1&\log|\s_1(\e_1)|^{e_1}&\cdots&\log|\s_1(\e_r)|^{e_1}\\\\\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\e_{s+t}&\log|\s_{s+t}(\e_1)|^{e_{s+t}}&\cdots&\log|\s_{s+t}(\e_r)|^{e_{s+t}}\end{vmatrix}$
であり、最後の行列の一番下の行に他の全ての行を足すと$(n\quad0\quad\cdots\quad0)$なので結局
$\dis\frac{\prod^{s+t}_{k=1}r_k}{n(\prod^{s+t}_{k=1}r_k^{e_k}) 2^t}n|\det(e_i\log|\s_i(\e_j)|)_{0\leq i,j\leq r}|=\frac{R_K}{2^tr_{s+1}\cdots r_{s+t}}$
となる。
 また$\xi=\prod^{s+t}_{k=1}r_k^{e_k}$に注意すると領域$\olT'$の一つ目の条件は$0<\xi\leq1$に、二つ目の条件は$0\leq\xi_k<1$に置き換わるので
$\dis v_\olT=(2\pi)^t\int_{[0,1]^{s+t}}\r_{s+1}\cdots\r_{s+t}\frac{R_K}{2^tr_{s+1}\cdots r_{s+t}}d\xi d\xi_1\cdots d\xi_r \\\dis=\pi^tR_K\int_{[0,1]^{s+t}}d\xi d\xi_1\cdots d\xi_r=\pi^tR_K$
と求まる。

参考文献

投稿日:20201227
OptHub AI Competition

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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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