中学校では有理数は循環小数として表され、無理数は循環しない小数として表されるという事実を教えられると思います。しかし高校生になってもこのことの証明が授業で扱われることは多くないでしょう (少なくとも私は習っていません) 。そこで本記事ではそのことをきちんと証明していこうと思います。
より小さい任意の 以上の実数 は
と表される。このとき と書く。
まず任意の から までの整数からなる数列 に対して無限級数
がある実数に収束することを示す。そのためには
からなる数列 が上に有界であることを示せば良いが、このことは
より成り立つ。
任意の自然数 に対して
が成り立つから ならある に対して
となる。このような は一意に定まる。もしある に対して
が成り立つなら
となるから、ある が存在して
が成り立つ。このような は一意に定まる。
このようにして帰納的に数列 が構成され任意の自然数 に対して
が成り立っている。
とおくとこの不等式の最左辺と最右辺は共に に収束するから挟みうちの原理により が成り立つ。
全ての実数 はある自然数 と から までの整数からなる数列 によって
と表される(この表示は一意的とは限らない)。この表示を の小数展開という。
定理1を証明することでようやく小数を実数としてきちんと扱えることになります。
の小数展開が によって表されているとする。このときある自然数 に対して なら となっているとき は有限小数であるという。そうでないとき は無限小数であるいう。
実数 に対してある自然数 が存在して 以上の任意の整数 に対して
が成り立つとき を循環小数という。特に有限小数は循環小数である。
例えば は循環小数ですし、 は循環しない無限小数になります。一つだけ有名な命題を確認してから目的であった定理を証明します。
オイラーの定理
を互いに素な正整数とする。このとき を 以上 以下の整数のうち と互いに素となるようなものの個数とする。このとき
が成り立つ。
を 以上 以下で と互いに素となるような整数の集合とする。 と は互いに素なので を法として
が成り立つ。実際、各 に対して を で割った余りは と互いに素だからある に対して となり、(左辺)(右辺)が成り立つ。また、 なら だから左辺と右辺の要素の個数は等しいので等号が成立する。よって とすると
が成り立つから
が得られる。
実数 が有理数であるための必要十分条件は が循環小数となることである。
と仮定して良い。 が循環小数であるとし、その小数展開が によって表されているとする。仮定よりある自然数 に対して
が成り立つ。このとき
が成り立つ。したがって は有理数となり が有理数であることが示された。
逆を示そう。 でない整数 があって であるとする。まず が と互いに素である場合について示す。 このとき補題2より が の倍数となるから は整数となる。よって とおくと
となるから は循環小数である。 が または を約数に持つ場合、 となるような正整数 及び と互いに素な が存在する。このとき とおけば は循環小数となるから も循環小数となる。
これで本記事の目標が達成されたことになります。すなわち有理数は循環小数であり無理数は循環しない小数であるということが証明されました。 を他の整数に置き換えれば、全く同様の議論で 進法の場合について同じ結果が得られます。最後まで読んでいただきありがとうございました!