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約数個数函数の2種類の母函数

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\displaystyle} \newcommand{f}[0]{<} \newcommand{i}[1]{\int_0^{#1}} \newcommand{l}[0]{\left(} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{qed}[0]{~~~~~~~~~~\square} \newcommand{r}[0]{\right)} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{tria}[0]{\tau\rho\iota\alpha} \newcommand{v}[0]{\varnothing} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} $$

はじめに

約数個数函数というものがあります。その名の通り整数$n$に対し$n$の約数の個数を返してくる函数$d$で、

$\d d(n)=\sum_{k|n}1 $

と定義されます。($k|n$$n$$k$で割り切れるという意味です。)

この約数個数函数の2つの母函数をこの記事では求めます。具体的にいうと、

母函数としてのディリクレ級数$\d\sum_{n=1}^\infty\frac{d(n)}{n^s} $

通常型母函数$\d\sum_{n=1}^\infty d(n)x^n $

この2つを求めます。

母函数としてのディリクレ級数

$ \begin{eqnarray*} &&\sum_{n=1}^\infty\frac{d(n)}{n^s}\\ &=&\sum_{\substack{0\f a,b \\ n=ab}}\frac1{n^s}\\ &=&\sum_{0\f a,b}\frac1{a^sb^s}\\ &=&\z^2(s) \end{eqnarray*} $

以上より、

$\d\sum_{n=1}^\infty\frac{d(n)}{n^s}=\z^2(s)$

がわかりました。

1行目から2行目への式変形ですが、$ab=n$を満たす正整数$a,b$の組が$d(n)$通りであるため成立します。

通常型母函数

通常型母函数を求める前に、q-類似について軽く触れます。

q-類似(きゅーるいじ、英: q-analog, q-analogue)とは、理論に q → 1 の極限で、元の理論に一致するように径数 q を導入するような拡張のことをいう。q-拡張(英: q-extension)などとも呼ばれる。

詳しく知りたい、という方は こちら をご覧ください。q-類似に関するwikiです。また、 nkswtr さんが書かれた こちら のPDFも良いかもしれません。

ここでは通常型母函数を導出するにあたり必要なq-Pochhammer記号、q-ガンマ函数、q-ディガンマ函数、q-Euler定数の定義について説明します。

まず、q-Pochhammer記号です。これは

$\d(a,q)_n=\prod_{k=0}^{n-1}(1-aq^k) $

と定義されます。この記事では$n\rightarrow\infty$とした

$\d(a,q)_\infty=\prod_{k=0}^\infty(1-aq^k) $

を使います。

次にq-ガンマ函数です。これは

$\d\Gamma_q(z)=\frac{(q,q)_\infty}{(q,q^z)_\infty}(1-q)^{1-z} $

と定義されます。この記事ではこの定義を式変形し、

$\d\Gamma_q(z)=(1-q)^{1-z}\prod_{k=0}^\infty\frac{1-q^{k+1}}{1-q^{k+z}} $

としたものを使います。

そしてq-ディガンマ函数とq-Euler定数ですが、それぞれ

$\d\psi_q(z)=\frac{\partial}{\partial z}\log\Gamma_q(z) $

$\d\gamma(q)=-\psi_q(1) $

と定義されます。

定義を一通り確認したところで本題に入ります。

まず、$\d\Gamma_q(z)=(1-q)^{1-z}\prod_{k=0}^\infty\frac{1-q^{k+1}}{1-q^{k+z}} $から出発します。

$\d\log\Gamma_q(z)=(1-z)\log(1-q)+\sum_{k=0}^\infty\l\log(1-q^{k+1})-\log(1-q^{k+z}) \r $

$\d\frac{\partial}{\partial z} \log\Gamma_q(z)=\frac{\partial}{\partial z}\l(1-z)\log(1-q)+\sum_{k=0}^\infty\l\log(1-q^{k+1})-\log(1-q^{k+z}) \r\r $

$\d\psi_q(z)=-\log(1-q)+\log q\sum_{k=0}^\infty\frac{q^{k+z}}{1-q^{k+z}} $

$\d\psi_x(1)=-\log(1-x)+\log x\sum_{k=0}^\infty\frac{x^{k+1}}{1-x^{k+1}} $

$\d\sum_{k=1}^\infty\frac{x^k}{1-x^k}=\frac{\log(1-x)-\gamma(x)}{\log x} $

ここで、

$ \begin{eqnarray*} &&\sum_{k=1}^\infty\frac{x^k}{1-x^k}\\ &=&\sum_{0\f n,k}x^{nk}\\ &=&\sum_{\substack{0\f n,k \\ a=nk}}x^a\\ &=&\sum_{n=1}^\infty d(n)x^n \end{eqnarray*} $

より、

$\d\sum_{n=1}^\infty d(n)x^n=\frac{\log(1-x)-\gamma(x)}{\log x} $

がわかりました。

おわりに

ディリクレ級数の方ですが、この等式をうまく用いることで 前回の記事 の問題を解くことが出来ます。興味が湧いた方は是非挑戦してみてください。

この記事を書くにあたり協力してくださった don@ld さん、本当にありがとうございます。

投稿日:202111

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投稿者

神鳥奈紗
神鳥奈紗
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遭難者です.高専1年です.MZV,級数,積分をメインにやっています.

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