5

二項係数の和の漸近挙動

282
0

この記事では, 前回の記事 で紹介した, 以下の式の証明を書いてみようと思います.

k=0n(nk)2tk(t+1)2n+12t4πnas n

証明には, これの母関数

n=0(αnk=0n(nk)2tk)zn=1(t1)α(βαz)(1z)(|z|<1)
を用います.

ただしここで α=(t1t1)2,β=(t+1t1)2 であり, t>1とします.

まず, 以下の補題を示します.

区間[1,1]で連続かつf(1)0である関数f(z)と正の実数cを用いて, 実数列{an}n0の母関数が
n=0anzn=f(z)(1z)c
と表せるとき, anf(1)Γ(c)nc1as n
が成り立つ.

ちなみに, 私はこういうのにまだそこまで慣れていないので, fはたちの良い関数であるということにさせてください. また, an>0が必要かもしれません. ここら辺はご容赦していただきたいです...(>人<;)

(補題1の証明)

[1] c=1のとき

n=0bnzn=g(z) のとき n=0(k=0nbk)zn=g(z)1z という性質を思い出すと, n=0anzn=f(z)1zのとき, k=0nΔak=an なる数列{Δan}n0 を用いて,
n=0Δanzn=f(z)
となります. 従って,
f(1)=n=0Δan=limnan
となり, 示されました.

[2] c>1のとき

n=0anzn=f(z)(1z)c
の両辺を(c1)階積分します. ただしここで, 非整数階積分は, Iを積分演算子として, α>0に対して

Iαg(x)=1Γ(α)0x(xt)α1g(t)dt
と定義されるものとします.

まず左辺は,
Ic1zn=1Γ(c1)0z(zt)c2tndt=zn+c1Γ(c1)01(1t)c2tndt(tzt)=zn+c1Γ(c1)B(n+1,c1)=Γ(n+1)Γ(n+c)zn+c1
となります.

次に右辺は,
Ic1f(z)(1z)c=1Γ(c1)0z(zt)c2f(t)(1t)cdt
となりますが, これはだいたい11zくらいの大きさなので, [1]を適用することができます. すると[1]でいうf(1)limz10(1z) Ic1f(z)(1z)c に対応します. これを計算すると,
limz10(1z) Ic1f(z)(1z)c=limz101zΓ(c1)0z(zt)c2f(t)(1t)cdt=limz+0 zΓ(c1)01z(1tz)c2f(t)(1t)cdt=limz+0 zΓ(c1)01zn=0(c2n)(1t)c2n(z)nf(t)(1t)cdt=1Γ(c1)n=0(c2n)(1)nlimz+0 zn+101zf(t)(1t)n+2dt

ここで, ロピタルの定理より(極限の存在の証明は許してください...)
limz+0 zn+101zf(t)(1t)n+2dt=limz+0ddz01zf(t)(1t)n+2dtddz1zn+1=limz+0 zn+2n+1f(1z)zn+2=f(1)n+1
ですので, 結局
1Γ(c1)n=0(c2n)(1)nf(1)n+1=f(1)Γ(c1)10(1+x)c2dx=f(1)(c1)Γ(c1)=f(1)Γ(c)
となります.

従って, [1]より
limnanΓ(n+1)Γ(n+c)=f(1)Γ(c)
となり, Stirlingの公式より Γ(n+1)Γ(n+c)1nc1 ですので
anf(1)Γ(c)nc1as n
が示されました.

[3] 0<c<1のとき

この場合は, (c1)階積分はできないので, 1階微分してからc階積分することにします.

n=0anzn=f(z)(1z)c
の両辺を微分して,
n=0nanzn1=cf(z)+(1z)f(z)(1z)c+1
これは, [2]においてcc+1(>1), annan, f(z)cf(z)+(1z)f(z)と読み替えたものであり, 条件を満たしているので, (z倍の差は影響しません )
nancf(1)Γ(c+1)nc
即ち
anf(1)Γ(c)nc1
が示されました.

以上より, 補題1の証明が完了しました.

補題1を
n=0(αnk=0n(nk)2tk)zn=1(t1)α(βαz)(1z)(|z|<1)
に適用します. 即ち, c=12,f(z)=1(t1)α(βαz)として,

αnk=0n(nk)2tk1(t1)α(βα)1πn
となります.

α=(t1t1)2, 1α=(t+1)2, βα=4t(t1)2 に注意してこれらを代入することで,
k=0n(nk)2tk(t+1)2n+12t4πnas n
を得ました!!!

さらに, 今はt>1と約束していましたが, なんとt=1でもこれは正しくて, にっこりしてしまいますね🥰

ここまで読んで下さった方, ありがとうございました. もし間違っている点などありましたら教えて頂けると幸いです🙇‍♂️!

投稿日:202118
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

東大理数B4です

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中