この記事では, 前回の記事 で紹介した, 以下の式の証明を書いてみようと思います.
証明には, これの母関数
$$ \sumn{0}\bigg(\a^n\sumk{0}\nck^2t^k\bigg)z^n=\frac1{(t-1)\sqrt{\a(\b-\a z)(1-z)}}\hspace{12pt}(|z|<1)$$
を用います.
ただしここで $\ds\a=\bigg(\frac{\sqrt{t}-1}{t-1}\bigg)^2,\b=\bigg(\frac{\sqrt{t}+1}{t-1}\bigg)^2$ であり, $t>1$とします.
まず, 以下の補題を示します.
区間$[-1,1]$で連続かつ$f(1)\neq0$である関数$f(z)$と正の実数$c$を用いて, 実数列$\{a_n\}_{n\geq0}$の母関数が
$$ \sumn{0} a_nz^n=\frac{f(z)}{(1-z)^c}$$
と表せるとき, $$ \ds a_n\sim \frac{f(1)}{\Gamma(c)}\,n^{c-1}\hspace{12pt}\mathrm{as}\ n\to\infty$$
が成り立つ.
ちなみに, 私はこういうのにまだそこまで慣れていないので, $f$はたちの良い関数であるということにさせてください. また, $a_n>0$が必要かもしれません. ここら辺はご容赦していただきたいです...(>人<;)
${}$
(補題1の証明)
$[1]$ $c=1$のとき
$\ds\sumn{0}b_nz^n=g(z)$ のとき $\ds\sumn{0}\bigg(\sumk{0}b_k\bigg)z^n=\frac{g(z)}{1-z}$ という性質を思い出すと, $\ds\sumn{0} a_nz^n=\frac{f(z)}{1-z}$のとき, $\ds\sumk{0}\Delta a_k=a_n$ なる数列$\{\Delta a_n\}_{n\geq0}$ を用いて,
$$\sumn{0}\Delta a_nz^n=f(z)$$
となります. 従って,
$$ f(1)=\sumn{0}\Delta a_n=\limn a_n$$
となり, 示されました.
${}$
$[2]$ $c>1$のとき
$$ \sumn{0} a_nz^n=\frac{f(z)}{(1-z)^c}$$
の両辺を$(c-1)$階積分します. ただしここで, 非整数階積分は, $\I$を積分演算子として, $\a>0$に対して
$$ \I^{\a}g(x)=\frac1{\G{\a}}\int_0^x(x-t)^{\a-1}g(t)\,dt$$
と定義されるものとします.
まず左辺は,
$$\beq
\I^{c-1}z^n&=&\frac1{\G{c-1}}\int_0^z(z-t)^{c-2}t^n\,dt\\[5pt]
&=&\frac{z^{n+c-1}}{\G{c-1}}\int_0^1(1-t)^{c-2}t^n\,dt\hspace{12pt}(t\mapsto zt)\\[5pt]
&=&\frac{z^{n+c-1}}{\G{c-1}}B(n+1,c-1)\\[5pt]
&=&\frac{\G{n+1}}{\G{n+c}}z^{n+c-1}
\eeq$$
となります.
次に右辺は,
$$\beq
\I^{c-1}\frac{f(z)}{(1-z)^c}&=&\frac1{\G{c-1}}\int_0^z(z-t)^{c-2}\frac{f(t)}{(1-t)^c}\, dt
\eeq$$
となりますが, これはだいたい$\frac1{1-z}$くらいの大きさなので, [1]を適用することができます. すると[1]でいう$f(1)$は$\ds\lim_{z\to1-0}(1-z)\ \I^{c-1}\frac{f(z)}{(1-z)^c}$ に対応します. これを計算すると,
$$\beq
&&\lim_{z\to1-0}(1-z)\ \I^{c-1}\frac{f(z)}{(1-z)^c}\\[5pt]
&=&\lim_{z\to1-0}\frac{1-z}{\G{c-1}}\int_0^z(z-t)^{c-2}\frac{f(t)}{(1-t)^c}\, dt\\[5pt]
&=&\lim_{z\to+0}\ \frac{z}{\G{c-1}}\int_0^{1-z}(1-t-z)^{c-2}\frac{f(t)}{(1-t)^c}\, dt\\[5pt]
&=&\lim_{z\to+0}\ \frac{z}{\G{c-1}}\int_0^{1-z}\sumn{0}\binom{c-2}{n}(1-t)^{c-2-n}(-z)^n\frac{f(t)}{(1-t)^c}\, dt\\[5pt]
&=&\frac1{\G{c-1}}\sumn{0}\binom{c-2}{n}(-1)^n\lim_{z\to+0}\ z^{n+1}\int_0^{1-z}\frac{f(t)}{(1-t)^{n+2}}\,dt
\eeq$$
ここで, ロピタルの定理より(極限の存在の証明は許してください...)
$$\beq
&&\lim_{z\to+0}\ z^{n+1}\int_0^{1-z}\frac{f(t)}{(1-t)^{n+2}}\,dt\\[5pt]
&=&\lim_{z\to+0}\frac{\frac{d}{dz}\int_0^{1-z}\frac{f(t)}{(1-t)^{n+2}}\,dt}{\frac{d}{dz}\frac{1}{z^{n+1}}}\\[5pt]
&=&\lim_{z\to+0}\ \frac{z^{n+2}}{n+1}\cdot\frac{f(1-z)}{z^{n+2}}\\[5pt]
&=&\frac{f(1)}{n+1}
\eeq$$
ですので, 結局
$$\beq
&&\frac1{\G{c-1}}\sumn{0}\binom{c-2}{n}(-1)^n\frac{f(1)}{n+1}\\[5pt]
&=&\frac{f(1)}{\G{c-1}}\int_{-1}^0(1+x)^{c-2}\,dx\\[5pt]
&=&\frac{f(1)}{(c-1)\G{c-1}}\\[5pt]
&=&\frac{f(1)}{\G{c}}
\eeq$$
となります.
従って, $[1]$より
$$\limn a_n\frac{\G{n+1}}{\G{n+c}}=\frac{f(1)}{\G{c}}$$
となり, Stirlingの公式より $\ds\frac{\G{n+1}}{\G{n+c}}\sim\frac1{n^{c-1}}$ ですので
$$ a_n\sim\frac{f(1)}{\G{c}}n^{c-1}\hspace{12pt}\mathrm{as}\ n\to\infty$$
が示されました.
${}$
$[3]$ $0< c<1$のとき
この場合は, $(c-1)$階積分はできないので, 1階微分してから$c$階積分することにします.
$$ \sumn{0} a_nz^n=\frac{f(z)}{(1-z)^c}$$
の両辺を微分して,
$$ \sumn{0} na_nz^{n-1}=\frac{cf(z)+(1-z)f'(z)}{(1-z)^{c+1}}$$
これは, $[2]$において$c\mapsto c+1(>1),\ a_n\mapsto na_n,\ f(z)\mapsto cf(z)+(1-z)f'(z)$と読み替えたものであり, 条件を満たしているので, ($z$倍の差は影響しません )
$$ na_n\sim \frac{cf(1)}{\G{c+1}}n^c$$
即ち
$$ a_n\sim \frac{f(1)}{\G{c}}n^{c-1}$$
が示されました.
以上より, 補題1の証明が完了しました.$$\Box$$
${}$
補題1を
$$ \sumn{0}\bigg(\a^n\sumk{0}\nck^2t^k\bigg)z^n=\frac1{(t-1)\sqrt{\a(\b-\a z)(1-z)}}\hspace{12pt}(|z|<1)$$
に適用します. 即ち, $\ds c=\frac12, f(z)=\frac{1}{(t-1)\sqrt{\a(\b-\a z)}}$として,
$$ \a^n\sumk{0}\nck^2t^k \sim\frac{1}{(t-1)\sqrt{\a(\b-\a)}}\cdot\frac1{\sqrt{πn}}$$
となります.
$\ds\a=\bigg(\frac{\sqrt{t}-1}{t-1}\bigg)^2,\ \frac1{\a}=(\sqrt{t}+1)^2,\ \b-\a=\frac{4\sqrt{t}}{(t-1)^2}$ に注意してこれらを代入することで,
$$\sumk{0}\nck^2t^k\sim\frac{(\sqrt{t}+1)^{2n+1}}{2\sqrt[4]{t}\sqrt{πn}}\hspace{12pt}\mathrm{as}\ n\to\infty$$
を得ました!!!
さらに, 今は$t>1$と約束していましたが, なんと$t=1$でもこれは正しくて, にっこりしてしまいますね🥰
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ここまで読んで下さった方, ありがとうございました. もし間違っている点などありましたら教えて頂けると幸いです🙇♂️!
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