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(2乗)+(3乗)=(6乗)の正整数解【前編】

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$$\newcommand{beku}[1]{\displaystyle\overrightarrow{\vphantom{b}\mbox{$#1$}}} \newcommand{bekutoru}[1]{\displaystyle\overrightarrow{\vphantom{b}\mbox{#1}}} \newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand{bunsuu}[2]{\dfrac{\,\lower.44ex{#1}\,}{\,\raise.10ex{#2}\,}} \newcommand{Deg}[0]{^{\circ}} \newcommand{dsqrt}[1]{\displaystyle\sqrt{\,#1\,}} \newcommand{gauss}[1]{\left[\mkern1mu {#1}\mkern1mu\right]} \newcommand{kaku}[1]{\angle\mbox{#1}} \newcommand{kumiawase}[2]{\mathord{{}_{#1}\kern-.12em{}\text{C}_{#2}}} \newcommand{mdot}[0]{\!\cdot\!} \newcommand{sankaku}[1]{\triangle \mbox{#1}} \newcommand{suuretu}[1]{\left\{#1\right\}} \newcommand{tsqrt}[1]{\textstyle\sqrt{\,#1\,}} \newcommand{zyunretu}[2]{\mathord{{}_{#1}\kern-.12em{}\text{P}_{#2}}} $$

【後編】→まだ公開してないよ!

問題

$x^2+y^3=z^6$を満たす正の整数$(x,\;y,\;z)$は存在するか?

この問題を初等的な知識だけで解いてみよう!というのがこの記事の目標です。長くなってしまいましたので,【前編】と【後編】に分けております。

「自然数」と「正の整数」は同義です。

後編はまだ公開していません。

解答作り

以下,先の問題に解答を与えます。なお,$$ x^2+y^3=z^6\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{①}} $$
とナンバリングしておきます。

$x$,$y$,$z$はそれぞれ互いに素としてよい

$(x,\ y,\ z)$は①を満たすとします。この時$x$$y$は互いに素としても一般性は失われません。実際,$x$$y$が共通な素因数$p$を持つならば,ある自然数$x_1,\ y_1$が存在して,$x=px_1$$y=py_1$と書けますが,このとき①は$$ p^2x_1^2+p^3y_1^3=z^6 $$
と書けるので,$z$$p$の倍数であることが分かります。よって$z=pz_1$と書けるので,$$ p^2x_1^2+p^3y_1^3=p^6z_1^6 $$
となります。$p$で何回割れるかに着目すれば,$x_1$$p$の倍数でなければなりません。$x_1=px_2$として,$$ p^2x_2^2+py_1^3=p^4z^6 $$
ですので,$y_1$$p$の倍数です。$y_1=py_2$として,$$ px_2^2+p^3y_2^3=p^3z_1^6 $$
同様に$x_2$$p$の倍数だから$x_3=px_2$とすれば,$$ \begin{align} &p^2x_3^2+p^2y_2^3=p^2z_1^6\\&x_3^2+y_2^3=z_1^6 \end{align} $$
であり,$(x_3,\ y_2,\ z_1)$も①の解となります。というわけで,$x$$y$が①を満たすならば$x$$y$が互いに素の時を考えれば十分だということが分かりました。

同様に$y$$z$を互いに素,$z$$x$を互いに素としても一般性は失われないことが分かります。ですのでそれぞれが互いに素であるという仮定のもと,①について考えていくことにします。

$y$$z$は互いに素としていますので,考えうる組合せとしては次の$2$通りが考えられます。

  1. $y$$z$の偶奇が異なるとき
  2. $y$$z$が共に奇数のとき

それぞれの場合で考えることとしましょう。

$y$$z$の偶奇が異なるとき

$y$$z$について,一方が偶数,他方が奇数のときを考えます。
$z^2+y=a$$z^2-y=b$とすると,$a$$b$も奇数であり,$$ \begin{align} \gcd(a,\ b)&=\gcd(z^2+y,\ z^2-y)\\&=\gcd(z^2-y,\ 2y)\\&=\gcd(z^2-y,\ y)\\&=\gcd(z^2,\ y)=1\end{align} $$と分かります(途中,$z^2-y$が奇数であること,$y$$z^2$が互いに素であることを用いている。)ので,$a$$b$は互いに素です。また$z^2$$y$をそれぞれ$a$$b$を用いて表しますと,$$ z^2=\bunsuu{a+b}2,\quad y=\bunsuu{a-b}2 $$
となります。。これを①に代入すると,
\begin{align} & x^2+\left(\bunsuu{a-b}2\right)^3=\left(\bunsuu{a+b}2\right)^3\\ \therefore\quad & 4x^2=b(b^2+3a^2)\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{②}} \end{align}
となります。ここで$b$$b^2+3a^2$の最大公約数を考えると,$a$$b$が互いに素であることから,その可能性は$1$$3$しかないことが,互除法を用いることで分かります。それぞれの場合を見ていきましょう。

$\gcd(b^2+3a^2,\ b)=1$のとき

$\gcd(b^2+3a^2,\ b)=1$のとき,$b$は奇数であるから,②より,ある自然数$c$$d$が存在して$$ b=c^2,\quad b^2+3a^2=4d^2,\quad x=cd $$
と表せます。

理由
 もしも$b$が自然数の$2$乗として表せないならば,$b$はある素数$p$で最大奇数回割り切れることになるが,②の左辺は$p$で最大偶数回割り切れなければならず,これは$b^2+3a^2$も素因数$p$を持つこととなり,$\gcd(b^2+3a^2,\ b)=1$としたことに矛盾する。

このとき,
\begin{equation} x^2=c^2d^2\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{③}} \end{equation}
となりますが,①式を変形すると,
\begin{align} x^2&=z^6-y^3\notag\\ &=z^6-(z^2-b)^3\notag\\ &=z^6-(z^2-c^2)^3\notag\\ &=9c^2(z^4-3c^2z^2+3c^4)\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{④}} \end{align}
とも表せます。③と④を比較することで,
\begin{equation} 3z^4-3c^2z^2+c^4=d^2\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⑤}} \end{equation}
を得ます。

ここで,次の補題 1 を用意します。

自然数の組$(\alpha,\ \beta,\ \gamma)$が,
\begin{equation} 3\alpha^4-3\alpha^2\beta^2+\beta^4=\gamma^2\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⭐}} \end{equation}
を満たす為には,$\boldsymbol{\alpha^2=\beta^2=\gamma}$を満たすことが必要十分である。

この補題 1 を認めれば,⑤は⭐の形をしているので,$$ z^2=c^2=d $$
が従い,これより$(x,\ y,\ z)=(c^3,\ 0,\ c^6)$となるから,①の自然数解とはならないことが結論付けられました。

補題 1

の証明は【後編】にて扱います。

$\gcd(b^2+3a^2,b)=3$のとき

$\gcd(b^2+3a^2,b)=3$のとき,$b$が奇数であることから,②よりある自然数$c$$d$が存在して$$ b=3c^2,\quad b^2+3a^2=4d^2,\quad x=3cd $$
と表せます($b/3$が平方数となることについては$\gcd(b^2+3a^2,b)=1$のときと同様の議論をすればよいです)。$\gcd(b^2+3a^2,b)=1$のときと同様にして,$$ x^2=9c^2d^2=9c^2(z^4-3c^2z^2+3c^4)$$$x$について$2$通りの表示が得られます。従って$z,\ c,\ d$の間には
$$ z^4-3c^2z^2+3c^4=d^2 $$
なる関係があります。これも⭐の形をしているので,補題 1 から$$ \begin{align} &z^2=c^2=d \\\therefore\quad &(x,\ y,\ z)=(3c^3,\ -2c^2,\ c) \end{align} $$
ですので,正整数ではありません。

 

以上より,$y$$z$の偶奇が異なるときは①式は正整数解を持たないことが分かりました。

$y$$z$が共に奇数のとき

$y$$z$が共に奇数のとき,ある整数$a,\ b$を用いて$z^2+y=2a$$z^2-y=2b$と表せます。このとき
\begin{equation} z^2=a+b,\quad y=a-b\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⑥}} \end{equation}
と表せるので,$a$$b$は偶奇が異なり,特に互いに素となることが分かります。

$a$$b$が互いに素な理由
 $z^2=a+b$$y=a-b$は共に奇数で互いに素だから,$$ \begin{align} \qquad 1&=\gcd(a+b,\ a-b)\\ &=\gcd(a-b,\ 2b)\\&=\gcd(a-b,\ b)\\&=\gcd(a,\ b) \end{align} $$
⑥を①に代入することで,

\begin{align} & x^2+(a-b)^3=(a+b)^3\\ \therefore\quad & x^2=2b(b^2+3a^2)\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⑦}} \end{align}
を得ます。$2b$$b^2+3a^2$の最大公約数を考えると,$a$$b$が互いに素,$b^2+3a^2$は奇数であるため,その可能性は$1$$3$しかなりえません。それぞれの場合を見ていきましょう。

$\gcd(b^2+3a^2,\ 2b)=1$のとき

$\gcd(b^2+3a^2,\ 2b)=1$のとき,⑦より$x^2$は偶数ですので,ある自然数$m$を用いて$x=2m$と表すことが出来ます。また$b^2+3a^2$は奇数だから,ある自然数$c$$d$が存在して,
\begin{equation} b=2c^2,\quad b^2+3d^2=d^2,\quad x=2m=2cd \end{equation}
と表せます。これと①より,$x^2$は2通りの表示ができて,
\begin{equation} x^2=4c^2d^2 \end{equation}
と,
\begin{align} x^2=z^6-y^3&=z^6-(z^2-2b)^3\notag\\ &=z^6-(z^2-4c^2)^3\notag\\ &=4c^2(3z^4-3(2c)^2z^2+(2c)^4) \end{align}
です。これら$2$式を比較することで,
\begin{equation} 3z^4-3(2c)^2z^2+(2c)^4=d^2 \end{equation}
とまとめることが出来ました。これも⭐の形をしているので,補題 1 を適用することが出来ます。つまり$$ \begin{align} &z^2=(2c)^2=d\\ \therefore\quad & (x,\ y,\ z)=(8c^3,\ 0,\ 2c) \end{align} $$
が従いますので,自然数解とはなりません。(そもそも$z$を奇数としたことに矛盾していますね。)

$\gcd(b^2+3a^2,\ 2b)=3$のとき

$\gcd(b^2+3a^2,\ 2b)=3$のときも同様に考えます。⑦より,これまでと同様に,ある自然数$c,\ d$が存在して,
\begin{equation} 2b=3(2c)^2,\quad b^2+3a^2=3d^2,\quad x=6cd \end{equation}
と表せます。やはり$x^2$$2$通りで表すことによって,
\begin{align} &36c^2d^2=36c^2\left(z^4-12c^2z^2+48c^4\right)\\\therefore\quad & 3(2c)^4z^4-3(2c)^2+z^2=d^2 \end{align}
となり,これも⭐の形をしていますので,補題 1 を適用して,$$ \begin{align} &(2c)^2=z^2=d\\ \therefore\quad&(x,\ y,\ z)=(8c^3,\ 0,\ 2c) \end{align} $$
よってこれも自然数解とはなりません。

 

以上ですべての場合を考えましたので,①を満たす自然数解は存在しないことが示されました。

ここまでのまとめ

【前編】では,$x^2+y^2=z^6$を満たす自然数解について,補題 1 が成り立つならば存在しない!ということを証明しました。

証明の中身を見れば分かりますが,副産物として以下も従います。

$\bm{x^2+y^3=z^6}$の“整数”解

$x^2+y^3=z^6$の整数解は,整数$k$を用いて以下のパターンに分類される。$$ \begin{align} (x,\ y,\ z)&=(0,\ k^2,\ \pm k),\ (\pm k^3,\ -k^2,\ 0),\ \\ &=(\pm k^3,\ 0,\ \pm k),\ (3k^3,\ -2k^2,\ k) \end{align} $$

特に$(3k^3)^2+(-2k^2)^3=k^6$については,かなり非自明な雰囲気を感じますね。

【後編】では補題 1 を証明します。

ここまで見ていただきありがとうございます!

投稿日:2021131

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ぱるち
ぱるち
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数学屋さんをしています。代数,数論系に興味があり,今は楕円曲線と戯れています。Mathlogは現実逃避用という噂もあります。@f_d00123

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