【後編】→まだ公開してないよ!
この問題を初等的な知識だけで解いてみよう!というのがこの記事の目標です。長くなってしまいましたので,【前編】と【後編】に分けております。
「自然数」と「正の整数」は同義です。
後編はまだ公開していません。
以下,先の問題に解答を与えます。なお,$$
x^2+y^3=z^6\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{①}}
$$
とナンバリングしておきます。
$(x,\ y,\ z)$は①を満たすとします。この時$x$と$y$は互いに素としても一般性は失われません。実際,$x$と$y$が共通な素因数$p$を持つならば,ある自然数$x_1,\ y_1$が存在して,$x=px_1$,$y=py_1$と書けますが,このとき①は$$
p^2x_1^2+p^3y_1^3=z^6
$$
と書けるので,$z$は$p$の倍数であることが分かります。よって$z=pz_1$と書けるので,$$
p^2x_1^2+p^3y_1^3=p^6z_1^6
$$
となります。$p$で何回割れるかに着目すれば,$x_1$も$p$の倍数でなければなりません。$x_1=px_2$として,$$
p^2x_2^2+py_1^3=p^4z^6
$$
ですので,$y_1$も$p$の倍数です。$y_1=py_2$として,$$
px_2^2+p^3y_2^3=p^3z_1^6
$$
同様に$x_2$は$p$の倍数だから$x_3=px_2$とすれば,$$
\begin{align}
&p^2x_3^2+p^2y_2^3=p^2z_1^6\\&x_3^2+y_2^3=z_1^6
\end{align}
$$
であり,$(x_3,\ y_2,\ z_1)$も①の解となります。というわけで,$x$と$y$が①を満たすならば$x$と$y$が互いに素の時を考えれば十分だということが分かりました。
同様に$y$と$z$を互いに素,$z$と$x$を互いに素としても一般性は失われないことが分かります。ですのでそれぞれが互いに素であるという仮定のもと,①について考えていくことにします。
$y$と$z$は互いに素としていますので,考えうる組合せとしては次の$2$通りが考えられます。
それぞれの場合で考えることとしましょう。
$y$と$z$について,一方が偶数,他方が奇数のときを考えます。
$z^2+y=a$,$z^2-y=b$とすると,$a$も$b$も奇数であり,$$
\begin{align}
\gcd(a,\ b)&=\gcd(z^2+y,\ z^2-y)\\&=\gcd(z^2-y,\ 2y)\\&=\gcd(z^2-y,\ y)\\&=\gcd(z^2,\ y)=1\end{align}
$$と分かります(途中,$z^2-y$が奇数であること,$y$と$z^2$が互いに素であることを用いている。)ので,$a$と$b$は互いに素です。また$z^2$と$y$をそれぞれ$a$と$b$を用いて表しますと,$$
z^2=\bunsuu{a+b}2,\quad y=\bunsuu{a-b}2
$$
となります。。これを①に代入すると,
\begin{align}
& x^2+\left(\bunsuu{a-b}2\right)^3=\left(\bunsuu{a+b}2\right)^3\\
\therefore\quad & 4x^2=b(b^2+3a^2)\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{②}}
\end{align}
となります。ここで$b$と$b^2+3a^2$の最大公約数を考えると,$a$と$b$が互いに素であることから,その可能性は$1$か$3$しかないことが,互除法を用いることで分かります。それぞれの場合を見ていきましょう。
$\gcd(b^2+3a^2,\ b)=1$のとき,$b$は奇数であるから,②より,ある自然数$c$,$d$が存在して$$
b=c^2,\quad b^2+3a^2=4d^2,\quad x=cd
$$
と表せます。
ここで,次の補題 1 を用意します。
自然数の組$(\alpha,\ \beta,\ \gamma)$が,
\begin{equation}
3\alpha^4-3\alpha^2\beta^2+\beta^4=\gamma^2\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⭐}}
\end{equation}
を満たす為には,$\boldsymbol{\alpha^2=\beta^2=\gamma}$を満たすことが必要十分である。
この補題 1 を認めれば,⑤は⭐の形をしているので,$$
z^2=c^2=d
$$
が従い,これより$(x,\ y,\ z)=(c^3,\ 0,\ c^6)$となるから,①の自然数解とはならないことが結論付けられました。
の証明は【後編】にて扱います。
$\gcd(b^2+3a^2,b)=3$のとき,$b$が奇数であることから,②よりある自然数$c$,$d$が存在して$$
b=3c^2,\quad b^2+3a^2=4d^2,\quad x=3cd
$$
と表せます($b/3$が平方数となることについては$\gcd(b^2+3a^2,b)=1$のときと同様の議論をすればよいです)。$\gcd(b^2+3a^2,b)=1$のときと同様にして,$$
x^2=9c^2d^2=9c^2(z^4-3c^2z^2+3c^4)$$と$x$について$2$通りの表示が得られます。従って$z,\ c,\ d$の間には
$$
z^4-3c^2z^2+3c^4=d^2
$$
なる関係があります。これも⭐の形をしているので,補題 1 から$$
\begin{align}
&z^2=c^2=d \\\therefore\quad &(x,\ y,\ z)=(3c^3,\ -2c^2,\ c)
\end{align}
$$
ですので,正整数ではありません。
以上より,$y$と$z$の偶奇が異なるときは①式は正整数解を持たないことが分かりました。
$y$と$z$が共に奇数のとき,ある整数$a,\ b$を用いて$z^2+y=2a$,$z^2-y=2b$と表せます。このとき
\begin{equation}
z^2=a+b,\quad y=a-b\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⑥}}
\end{equation}
と表せるので,$a$と$b$は偶奇が異なり,特に互いに素となることが分かります。
\begin{align}
& x^2+(a-b)^3=(a+b)^3\\
\therefore\quad & x^2=2b(b^2+3a^2)\quad\cdots\cdots\style{font-family:inherit}{\text{⑦}}
\end{align}
を得ます。$2b$と$b^2+3a^2$の最大公約数を考えると,$a$と$b$が互いに素,$b^2+3a^2$は奇数であるため,その可能性は$1$か$3$しかなりえません。それぞれの場合を見ていきましょう。
$\gcd(b^2+3a^2,\ 2b)=1$のとき,⑦より$x^2$は偶数ですので,ある自然数$m$を用いて$x=2m$と表すことが出来ます。また$b^2+3a^2$は奇数だから,ある自然数$c$,$d$が存在して,
\begin{equation}
b=2c^2,\quad b^2+3d^2=d^2,\quad x=2m=2cd
\end{equation}
と表せます。これと①より,$x^2$は2通りの表示ができて,
\begin{equation}
x^2=4c^2d^2
\end{equation}
と,
\begin{align}
x^2=z^6-y^3&=z^6-(z^2-2b)^3\notag\\
&=z^6-(z^2-4c^2)^3\notag\\
&=4c^2(3z^4-3(2c)^2z^2+(2c)^4)
\end{align}
です。これら$2$式を比較することで,
\begin{equation}
3z^4-3(2c)^2z^2+(2c)^4=d^2
\end{equation}
とまとめることが出来ました。これも⭐の形をしているので,補題 1 を適用することが出来ます。つまり$$
\begin{align}
&z^2=(2c)^2=d\\
\therefore\quad & (x,\ y,\ z)=(8c^3,\ 0,\ 2c)
\end{align}
$$
が従いますので,自然数解とはなりません。(そもそも$z$を奇数としたことに矛盾していますね。)
$\gcd(b^2+3a^2,\ 2b)=3$のときも同様に考えます。⑦より,これまでと同様に,ある自然数$c,\ d$が存在して,
\begin{equation}
2b=3(2c)^2,\quad b^2+3a^2=3d^2,\quad x=6cd
\end{equation}
と表せます。やはり$x^2$を$2$通りで表すことによって,
\begin{align}
&36c^2d^2=36c^2\left(z^4-12c^2z^2+48c^4\right)\\\therefore\quad & 3(2c)^4z^4-3(2c)^2+z^2=d^2
\end{align}
となり,これも⭐の形をしていますので,補題 1 を適用して,$$
\begin{align}
&(2c)^2=z^2=d\\
\therefore\quad&(x,\ y,\ z)=(8c^3,\ 0,\ 2c)
\end{align}
$$
よってこれも自然数解とはなりません。
以上ですべての場合を考えましたので,①を満たす自然数解は存在しないことが示されました。
【前編】では,$x^2+y^2=z^6$を満たす自然数解について,補題 1 が成り立つならば存在しない!ということを証明しました。
証明の中身を見れば分かりますが,副産物として以下も従います。
$x^2+y^3=z^6$の整数解は,整数$k$を用いて以下のパターンに分類される。$$ \begin{align} (x,\ y,\ z)&=(0,\ k^2,\ \pm k),\ (\pm k^3,\ -k^2,\ 0),\ \\ &=(\pm k^3,\ 0,\ \pm k),\ (3k^3,\ -2k^2,\ k) \end{align} $$
特に$(3k^3)^2+(-2k^2)^3=k^6$については,かなり非自明な雰囲気を感じますね。
【後編】では補題 1 を証明します。
ここまで見ていただきありがとうございます!