を実数とする。
を満たす関数にはどんなものがあるだろうか?
いろいろと考えたのですが、自分には一般解を求めることができませんでした。
以前に投稿したの問題
と同様、WolframAlphaが解いてくれない系の問題ですし、どうしようもない感が半端ないです・・・
わかる範囲(が解析的と仮定する)で書いています。
の形の解を見つける
のときはなので、
であることは簡単にわかります。
の場合を考えます。
例えばとするとですが、
変形するとなので、
を満たします。
のときでも指数関数の形が解になりそうです。
とすると、
なので、
となるを求めればいいことが分かります。
ただ、このは初等関数で求めることができなくて、「乗積対数関数」とか「ランベルトの関数」などと呼ばれる関数を使って表します。
は、の逆関数です。
を変形するととなりますが、
両辺にを掛けてとして、両辺に関数をとると、
、すなわちであることがわかります。
したがって、はを満たします。
さらに、実数倍したもまたになります。
ただし、関数には気を付けないといけないことがあります。
は実数の値域で種類あるのです。
は「つ」じゃない
は、の逆関数として導入しましたが、関数の逆関数が存在するためには、その関数が定義域から値域まで、1対1の対応をしていなければなりません。はグラフを描けばわかりますが、1対1の対応をしていません。
の増減表
と関数のグラフ
xe^xとW関数
の定義域を適切に制限すれば逆関数を定義できるのですが、制限の仕方によって逆関数が変わります。
の逆関数を、の逆関数をと書くことにします。
は定義域、値域は、単調増加で原点を通る曲線です。
は定義域、値域は、を漸近線とする単調減少の曲線です。
の部分だけが種類あるんですね。
の問題に話を戻します。
のとき、が解になります。
のときは、もも解となります。
この微分方程式の問題でも「重ね合わせの原理」は明らかに成り立ち、はすべて解です。
(なお、のとき、もも同じになります。)
のときは、を満たす実数が存在しないので、解はなさそうに思えます。
を満たす関数の例
青線と赤線が重なっている
f'(x)=f(x+1/3)
というわけで、を満たす実関数は以下のようになりそうです。
階の微分方程式なのに、任意定数が2種類出てくるとは・・・個人的にビックリです。
なお、とすると、となるので、のときの一般解と一致します。
・・・しかし、実はこれは正しくないんです。
例えばとすると、
なので、
の場合に該当します。
しかし、この場合は上記の場合分けでは「存在しない」となっています。
まだ見つかっていない解があるようです。
原因はの"イタズラ"です。
複素関数を調べる
は値域が実数の範囲では種類ありますが、複素数の範囲では無限種類あります。
つまり、複素数に対し、を満たす複素数は無限にあるのです。これらをと書くことにします(ただし、例外としてのときはしかありません)。
(厳密には、から、複素関数の解析接続を使ってを定義するのですが、基本的には虚部の小さいほうから「」となっていると思って差し支えはないようです。)
を実数の範囲だけで考えていたとき、に対して、の解には
の定数倍と和で組み合わせたものがありました。(のことです。)
これは、が複素数、が以外でも同じです。
任意の整数に対して、
となる複素数があります。
そこで、とすると、
となります。
となるが何かを複素平面にプロットしたものがこちら(英語版Wikipedia "Lambert W function")
ただ、ここで求めたいのは「実数」に対するの解なので、
が実数であってほしいわけです。
なら、上記の実数の範囲だけの話なので、であるとします。
を実部と虚部に分けると、
なので、が実数になるには、でなければなりません。
よって、です。
このとき、です。
のグラフ
のとき、が実数になる
-xcot(x)
のグラフ
でない実数に対し、となるが無限個存在する
-xe^(-xcot(x))cosec(x)
また、も実部と虚部に分解すると、
従って、実数に対して、つまりの解には、
(の定数倍)があることがわかりました。
しかし、欲しい解は「実関数」です。
が邪魔になっています。
この邪魔な虚部をなくしましょう。
方法としては、つの解の和がまた解になることを使って、虚部を相殺することです。
複素数に対して、
となるがあります。
そこで、今度はとすると、
となります。
同様にが実数であってほしいのですが、実部と虚部に分解すると、
であり、
のときと虚部の符号が違うだけなので、がが実数になる条件です。
さらに実部が同じなので、ならばになります。
つまり、実数に対し、ですね。
も実部と虚部に分解すると、
これもと虚部の符号が違うだけです。
よって、とを足し算すると、
となって、実関数になります。
したがって、実数が与えられたとき、
となる実数に対し、
とすると、これは
の実関数の解になることが分かりました。
(によって、の値は変わり、もさまざまな関数になります。)
実は、との関係は、のとき、のときなんです。
の場合は、
や、
などが解です。
の場合は、
や、
などが解です。
はすべての整数をとれるので、無限にいろんな関数ができます。
そして、「重ね合わせの原理」から、これらをそれぞれ実数倍して足したものもすべて解になります。
のグラフ
のグラフ
具体例
したがって、新たにこれらの実関数の解が見つかりました。
(ただし、任意定数は、この関数項級数の無限和が任意の実数で収束して、項別微分可能になることを前提とする。)
例えば、実数の範囲だけではうまく説明できなかったの場合は、
であることを使って、
となり
の場合になることが分かります。
今わかっている解をまとめると
実数に対し、を満たす実関数は、
の形に注目してを値域が実数の関数として見たときに、以下の解が見つかりました。
そして、を値域が複素数の関数として見て、つの複素関数の解の和で実関数になってくれるものを調べて、以下の解が見つかりました。
これらをきれいにまとめるとこのようになります。
実数に対し、を満たす実関数には、以下の関数がある。
(ただし、任意定数は、この関数項級数の無限和が任意の実数で収束して、項別微分可能になることを前提とする。)
(はランベルトのW関数の解析接続)
階の微分方程式なのに、任意定数が無限個登場するとは個人的にビックリです。
これもの多価性(しかも無限価)の影響で、さらに複素対数関数とは違い、定数の差だけではないからですね。
のようにいくら初期値を設定しても、特殊解を一通りに定めることができない可能性が高いです。
想像以上に解がいっぱいあるってことですね・・・
もしかしたらまだあるかも・・・
かなりの実関数の解を見つけたつもりなんですが、もしかしたらまだあるかもしれないです。。。
もしが実数全体で解析関数だったら、上記の解だけだと思うんです。
だけど、非解析的で無限回微分可能な解となると・・・他にないことを証明するのは自分の実力じゃ無理でしたので、わかる人は教えていただきたいです・・・
以上、読んでいただきありがとうございました。
(2021/02/07 追記)
J_Koizumiさんにより、実数全体で解析的でなくても、を満たす実関数の存在が確認できました。
ありがとうございます!!!
詳しくはコメント欄をご覧ください。
やはり想像以上に解がいっぱいあるってことですね・・・