6
大学数学基礎議論
文献あり

積分が解けませんでした

211
1

さっきDon@ld氏が難しそうな積分の問題( https://mathlog.info/articles/1750 ) が投稿されていたので, それを考えたいと思います.
eπt/2(2tcos(eπt/2+π4)+(t2+3)sin(eπt/2+π4))(t2+1)(t2+9)dt
まず収束性が問題です. 積分の中身はtで指数関数的に無限に発散しているので, 発散しているように見えるかもしれません. まず, (,0)の範囲では絶対収束しています. 0<αとします. 置換eαxxにより,
0eαxf(eαx)dx=1α1f(x)dx
という感じになるので, 被積分関数の(0,)での積分はα=π2として,
1α12α(lnx)cos(x+π4)+((lnxα)2+3)sin(x+π4)((lnxα)2+1)((lnxα)2+9)dx
少し複雑で分かりにくいですが, 部分分数分解を用いて展開すると, α,βを実数として, n=0,1に対し,
1(lnnx)sin(x+α)ln2x+β2dx
が収束することを示せば十分です. ここで, 補題を用意します.

anが非負で狭義単調減少な数列で,
limnan=0
であるとき,
n=0(1)nan
は収束する.

これは簡単なので, 証明は省略する.

[0,)で定義された非負連続関数f(x)を, 十分大きな0<Mをとれば, [M,)で狭義単調減少な関数で,
limxf(x)=0
とすると,
0f(x)sinxdx
は収束する.

M<2πNとなる, NNをとると, f(x)[2πN,)で狭義単調減少である. また, f[0,2πN]で有界であるから,
0f(x)sinxdx=02πNf(x)sinxdx+2πNf(x)sinxdx=02πNf(x)sinxdx+0f(x+2πN)sinxdx
より, 第1項は収束するので, 第2項が収束することを示せばよいので, はじめから[0,)で狭義単調減少な関数としてよい. このとき,
0f(x)sinxdx=n=0nπ(n+1)πf(x)sinxdx=n=0(1)n0πf(x+nπ)sinxdx
ここで, fは狭義単調減少だったから, x(0,π)で, f(x+nπ)>f(x+(n+1)π)
よって,
an=0πf(x+nπ)sinxdx
は狭義単調減少な数列である. また,
limnan=limn0πf(x+nπ)sinxdxπlimnf(x+nπ)=0
である. よって, 補題1より積分は収束する.

さて, この補題をαだけ平行移動することにより,
1(lnnx)sin(x+α)ln2x+β2dx
の収束性が分かる. さて, もとの積分の値を求める方法を考えていきたい. 同様の置換により, 積分区間は(,)から(0,)になる. また, 上の分母をさらに部分分数分解することで,
0sin(x+α)lnx+βdx
の形の積分を求めればよいので,
h±(α)=0e±ixlnx+iαdx
とおいて, これを考えればよい. 以下, lnxは十分小さなδをとって, 偏角(π+δ,π+δ)で一価正則でlneix=ixとなるような範囲で枝をとるとする.

h+(α)+h(α+π)={0,(0<α<π)2πiei(eiαα),(π<α<0)h(α)+h+(απ)={0,(π<α<0)2πiei(eiαα),(0<α<π)

以下のような積分路Cεを考える.
積分路 積分路
すると,
Cεeixlnx+iαdx=εeixlnx+iαdx+εeixlnx+iα+iπdxiε0πeiεeix+ixlnεeix+iαdx
ε0として, 第3項は0に収束する. よって,
limε0Cεeixlnx+iαdx=h+(α)+h(α+π)

今度は以下のように積分路Cをとる.
積分路2 積分路2
±R1±R1+iR2eixlnx+iαdx=e±iR10R2exln(±R1+ix)+iαdx
R10に収束し,
ei(x+iR2)ln(x+iR2)+iαdx=eR2eixln(x+iR2)+iαdx
R20に収束するので, R1,R2で残るのは先ほどのCεである. よって, π<α<0のとき, x=eiαの留数はei(eiαα)であるから, 留数定理より,
h+(α)+h(α+π)={0,(0<α<πδ)2πiei(eiαα),(π<α<0)

lnxの主値の偏角を(πδ,πδ)として, 点対称な積分路でhに対し全く同じ議論をすることにより,

h(α)+h+(απ)={0,(π+δ<α<0)2πiei(eiαα),(0<α<π)
ここで, δ0として,
h+(α)+h(α+π)={0,(0<α<π)2πiei(eiαα),(π<α<0)h(α)+h+(απ)={0,(π<α<0)2πiei(eiαα),(0<α<π)

さて, α=π2として, もとの積分を変形していきます.
I=eπt/2(2tcos(eπt/2+π4)+(t2+3)sin(eπt/2+π4))(t2+1)(t2+9)dt=1α02α(lnx)cos(x+π4)+((lnxα)2+3)sin(x+π4)((lnxα)2+1)((lnxα)2+9)dx=α02α(lnx)cos(x+π4)+(ln2x+3α2)sin(x+π4)(ln2x+α2)(ln2x+9α2)dx=2α20(lnx)cos(x+π4)+αsin(x+π4)(ln2x+α2)(ln2x+(3α)2)dx+α0sin(x+π4)ln2x+(3α)2dx=140((lnx)cos(x+π4)+αsin(x+π4))(1ln2x+α21ln2x+(3α)2)dx+α0sin(x+π4)ln2x+(3α)2dx=140(lnx)cos(x+π4)ln2x+α2dx+α40sin(x+π4)ln2x+α2dx140(lnx)cos(x+π4)ln2x+(3α)2dx+3α40sin(x+π4)ln2x+(3α)2dx

また, 任意のαに対し,
h+(α)=0eixlnx+iαdx=0(lnxiα)(cosx+isinx)ln2x+α2dx=0(lnx)cosx+αsinxln2x+α2dx+i0(lnx)sinxαcosxln2x+α2dxh(α)=0(lnx)cosxαsinxln2x+α2dxi0(lnx)sinx+αcosxln2x+α2dx

さて, 定理の1つ目の式にα=π2として,
h+(π2)+h(3π2)=0

よって, 上の式はα=π2として,

(0(lnx)cosx+αsinxln2x+α2dx+0(lnx)cosx3αsinxln2x+(3α)2dx)+i(0(lnx)sinxαcosxln2x+α2dx0(lnx)sinx+3αcosxln2x+(3α)2)=0
これより,

0(lnx)cosx+αsinxln2x+α2dx+0(lnx)cosx3αsinxln2x+(3α)2dx=00(lnx)sinxαcosxln2x+α2dx0(lnx)sinx+3αcosxln2x+(3α)2dx=0
この2つの式を足し合わせて,
0(lnx)cos(x+π4)3αsin(x+π4)ln2x+(3α)2dx=0(lnx)sin(x+π4)αcos(x+π4)ln2x+α2dx
これを先ほどのIの式に代入して, 加法定理で整理すると,
I=1220(lnx)cosx+αsinxln2x+α2dx

ここで, 定理の1つ目の式にα=π2を代入して,
h+(π2)+h(π2)=2πe
であるから, これをα=π2として整理して,
0(lnx)cosxαsinxln2x+α2=πe
さて,

I=1220(lnx)cosx+αsinxln2x+α2dx=π220sinxln2x+α2dxπ2e2
あれ, おかしいな.
0sinxln2x+α2dx
これを求める方法があるのだろうか. ということは僕の方針がちょっと微妙だったのかもしれません. 最後の形をまとめておきます.

I=π220sinxln2x+(π/2)2dxπ2e2

最後まで読んでいただきありがとうございました.

参考文献

投稿日:2021215
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Wataru
Wataru
596
41925
超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中