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準同型定理と加群同型+自己紹介

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まえがき

こんにちは!的場 沙雪です.珍しく群論の話です.いつも問題の投稿や問題の解説をしていますが,今回は出来ていなかった自己紹介も兼ねて 以前考えていたこと について解説をしようと思います(要は準同型定理って存在性しか述べてないけど一意だよねって話です).

今後は今まで通り問題の投稿や問題の解説の他に,高校の頃から書き溜めていたメモの一部を紹介+考察をしたりしていこうと思います.

自己紹介

的場 沙雪です.趣味は絵,作曲,数学です.好きな数学の分野は数理論理学,微分積分学,抽象代数学で,最近は証明論と順序数解析に興味があります(この辺の話を一から教えてくれるとめちゃくちゃ嬉しいです).好きな定数はオイラーの定数です.

定理の下準備

(G,)(H,)に対して,(G,)から(H,)への群準同型全体の集合をHom((G,),(H,))と表します.

(G,),環(R,+,×)に対して,
(h,k)Hom((G,),(R,+))2, uG, (h+k)(u):=h(u)+k(u)
cR, hHom((G,),(R,+)), uG, (c×h)(u):=c×h(u)
によりHom((G,),(R,+))上の演算+×を定義します.

証明は省略

(G,)は群,(R,+,×)は環,fは終域がGの写像とします.

このとき,以下が成り立ちます.
(h,k)Hom((G,),(R,+))2, (h+k)f=(hf)+(kf)
cR, hHom((G,),(R,+)), (c×h)f=c×(hf)

証明は省略

(G,)は群,(R,+,×)は環とします.

このとき,(Hom((G,),(R,+)),+)は加群となり,また((Hom((G,),(R,+)),+),×)は環(R,+,×)上の左R-加群となります.

本題の定理

(G,)は群,(R,+,×)は環,(N,)(G,)の正規部分群とします.

このとき,環(R,+,×)上の左R-加群同型
Hom((G/N,),(R,+)){fHom((G,),(R,+)):Nker(f)}
が導かれます.

解説
写像π:GG/Nを自然な全射とし,写像F:Hom((G/N,),(R,+)){fHom((G,),(R,+)):Nker(f)}
gHom((G/N,),(R,+)), F(g):=gπ
により定義します.

(g1,g2)Hom((G/N,),(R,+))2, F(g1+g2)=(g1+g2)π=(g1π)+(g2π)=F(g1)+F(g2)
であり,また
cR, gHom((G/N,),(R,+)), F(c×g)=(c×g)π=c×(gπ)=c×F(g)
ですので,Fは左R-加群準同型です.

Hom((G/N,),(R,+))の元g1g2を任意にとります.F(g1)=F(g2)と仮定すると,g1π=g2πですが,ここでπは全射ですからエピ射でもあり,g1=g2を得ます.従ってFは単射です.

{fHom((G,),(R,+)):Nker(f)}の元hを任意にとります.h(G,)から(R,+)への群準同型であり,Nker(h)ですから,準同型定理より
gHom((G/N,),(R,+)) s.t. h=gπ
です.これはつまり
gHom((G/N,),(R,+)) s.t. h=F(g)
です.従ってFは全射です.

以上よりFは左R-加群準同型かつ全単射なので,Fは左R-加群同型です.よって環(R,+,×)上の左R-加群同型
Hom((G/N,),(R,+)){fHom((G,),(R,+)):Nker(f)}
が導かれます.

あとがき

この定理により,例えば以下のことが言えます.

Fは体,Vは体F上の線型空間,VVの双対空間,WVの線型部分空間,(V/W)V/Wの双対空間,WWVにおける零化域とします.

このとき,体F上の線型同型
(V/W)W
が導かれます.

この系は, Wikipediaに証明無しでしれっと書いてあったこれ です.大学の数学の講義で「Vが有限次元のときdimFV=dimFW+dimFWを示せ」という課題が出たので,なにか使えそうな定理は無いかと調べて見つけたものです.

授業や講義で習ったことだけではなく,その一般化をしてみるとより深い理解が得られると思います.ここまで読んでくださりありがとうございました.

投稿日:2021220
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投稿者

微分積分学,数理論理学,順序数解析が好きです.ここでは主に微積や級数の話題をすると思います.記事まとめは下のリンクからどうぞ.

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