この記事では最近 Twitter で話題の、円と多項式の交点で円周を等分する問題について書きます。
放物線を使ったものも話題ですが、この記事ではチェビシェフ多項式を使って簡単にそのような式を作るレシピを紹介します。
参考:放物線を使った方法についてのリンク
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ポテト一郎さんのツイート
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私のツイート
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みゆさんの記事
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子葉さんの記事
参考:チェビシェフ多項式を使った方法についてのリンク
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こばっしーさんのツイート
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私のツイート
※ 他にもたくさんありますが、数が多いので一部のみのご紹介としています。
一般的な方法を紹介する前に、まずは具体例で交点の座標を計算してみましょう。
$y=8x^4-8x^2+1$
四次式 $y=8x^4-8x^2+1$ と円 $x^2+y^2=1$ の交点が円周の5等分点と3等分点になっていることを確認してみましょう。
まず、$x^2+y^2=1$ 上の点を $(\cos(\theta),\sin(\theta))$ と媒介変数表示します。$(0\le \theta <2\pi)$
これを $y=8x^4-8x^2+1$ に代入します。
$\sin(\theta)=8\left(\cos(\theta)\right)^4-8\left(\cos(\theta)\right)^2+1$
$\cos$ の4倍角を計算する次のような公式があります。(この公式の正体については後で説明します。)
$\cos(4x)=8\left(\cos(x)\right)^4-8\left(\cos(x)\right)^2+1$
この公式を使うと先ほどの式はこうなります。
$\sin(\theta)=\cos(4\theta)$
$\therefore\sin(\theta)-\sin\left(\frac{\pi}{2}-4\theta\right)=0$
和積の公式で変形すれば
$2\cos\left(\frac{\pi}{4}-\frac{3\theta}{2}\right)\sin\left(-\frac{\pi}{4}+\frac{5\theta}{2}\right)=0$
$\Leftrightarrow \cos\left(\frac{\pi}{4}-\frac{3\theta}{2}\right)=0$ 又は $\sin\left(-\frac{\pi}{4}+\frac{5\theta}{2}\right)=0$
$\Leftrightarrow \theta=\frac{3\pi}{6},\frac{7\pi}{6},\frac{11\pi}{6}$ 又は $\theta=\frac{\pi}{10},\frac{5\pi}{10},\frac{9\pi}{10},\frac{13\pi}{10},\frac{17\pi}{10}$
となり、円周の3等分点と5等分点が確かに交点になっていることが確認できました。
では、天下り的ですが、チェビシェフ多項式について説明します。
次のような多項式を第一種チェビシェフ多項式といいます。
${\displaystyle {\begin{aligned} T_{0}(x)&=1\\ T_{1}(x)&=x\\ T_{2}(x)&=2x^{2}-1\\ T_{3}(x)&=4x^{3}-3x\\ T_{4}(x)&=8x^{4}-8x^{2}+1\\ \vdots &\end{aligned}}}$
これらの多項式は次の漸化式に従うことがわかります。
${\displaystyle T_{n+1}(x)=2xT_{n}(x)-T_{n-1}(x)}$ (ただし$n = 1, 2,\ldots $)
じつは、この多項式は
${\displaystyle T_{n}(x)=\cos(nt),}$ ただし $x=\cos t$
と見ることで、$\cos $ の倍角公式そのものになる性質を持っています。
${\displaystyle {\begin{aligned} \cos(0t)&=1\\ \cos(1t)&=\cos(t)\\ \cos(2t)&=2(\cos(t))^{2}-1\\ \cos(3t)&=4(\cos(t))^{3}-3\cos(t)\\ \cos(4t)&=8(\cos(t))^{4}-8\left(\cos(t)\right)^{2}+1\\ \vdots &\end{aligned}}}$
式の形をよく見れば、先ほどの方法では$T_4(x)$ と4倍角の公式を使っていたことがわかります。
チェビシェフ多項式を使えば先ほどの方法を一般化して、円周を任意の自然数 $n$ で $(n-1)$ 等分及び$(n+1)$ 等分する多項式を作ることができます。
$y=T_n(x)$ と円 $x^2+y^2=1$ の交点を求めてみましょう。
まず、$x^2+y^2=1$ 上の点を $(\cos(\theta),\sin(\theta))$ と媒介変数表示します。$(0\le \theta <2\pi)$
これを $y=T_n(x)$ に代入します。
$\sin(\theta)=T_n\left(\cos(\theta)\right)=\cos(n\theta)$
$\therefore\sin(\theta)-\sin\left(\frac{\pi}{2}-n\theta\right)=0$
和積の公式で変形すれば
$2\cos\left(\frac{\pi}{4}-\frac{(n-1)\theta}{2}\right)\sin\left(-\frac{\pi}{4}+\frac{(n+1)\theta}{2}\right)=0$
$\Leftrightarrow \cos\left(\frac{\pi}{4}-\frac{(n-1)\theta}{2}\right)=0$ 又は $\sin\left(-\frac{\pi}{4}+\frac{(n+1)\theta}{2}\right)=0$
$\Leftrightarrow \theta=\frac{3\pi}{2(n-1)},\frac{7\pi}{2(n-1)},\frac{11\pi}{2(n-1)},\cdots,\frac{(4n-5)\pi}{2(n-1)}$ 又は $\theta=\frac{\pi}{2(n+1)},\frac{5\pi}{2(n+1)},\frac{9\pi}{2(n+1)},\frac{13\pi}{2(n+1)},\cdots,\frac{(4n+1)\pi}{2(n+1)}$
となり、円周の $(n-1)$ 等分点と $(n+1)$ 等分点が交点になっていることが確認できました。
わかってしまえば不思議感は減ってしまうかもしれませんが、多項式で円周を等分できるのって非自明な感じがして楽しいですね!