3

研究の整理

333
1
$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathrm{div}} \newcommand{division}[0]{÷} \newcommand{grad}[0]{\mathrm{grad}\ } \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rot}[0]{\mathrm{rot}\ } \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

今までにやった一般化をまとめます.例によって$R,X$をそれぞれ(可換とは限らない)環,全順序群とする.また自然な写像$f:\mathbb Z\longrightarrow R$を考え,整数を$R$の元と見なす.

付値の一般化

写像$R\longrightarrow X\cup\{\infty\}$に対して以下の条件を考える.
$(1)\ v(xy)\ge v(x)+v(y)$
$(2)\ v(x+y)\ge \min(v(x),v(y))$
$(3)\ v(1)=v(-1)=0,v(0)=\infty$
$(4)\ $$R'$,そのイデアル$I$$R'=\{x\in R|v(x)\ge0\},I=\{x\in R|v(x)>0\}$で定めたとき,
$\overline x\in(R/I)^*\Longrightarrow v(xy)=v(yx)=v(y)$
$(5)\ n\in\mathbb Z\Longrightarrow v(nx)=v(x)+v(n)$
$(6)\ v(x^n)=nv(x)$

このうち$(1),(2),(3)$は常に仮定する.
次の補題は頻繁に用いる.

$v(x)\neq v(y)$ならば$v(x+y)=\min(v(x),v(y))$である.

対称性より$v(x)< v(y)$の時のみ示せば良い.$v(-y)\geq v(y)+v(-1)=v(y)$,$v(x+y)\geq v(x)$より
\begin{align}v(x+y)\geq& v(x)\\=&v(x+y-y)\\\geq &\min(v(x+y),v(-y))\\\geq&\min(v(x+y),v(y))=X \end{align}となる.$X=v(y)$のときは$v(x)\geq v(y)$となり,矛盾するので,$X=v(x+y)$.よって上の式の不等号が全て等号であるので,示された.

$(4)$の正当性は以下で保障される.

$R'$は環であり$I$$R'$のイデアルである.

$a,b\in R',x,y\in I$とすると,$v(a)\geq0,v(b)\geq0,v(x)>0,v(y)>0$である.
$v(a+b)\geq \min(v(a),v(b))\geq0,$
$v(ab)\geq v(a)+v(b)\geq0,$
$v(1)=0,v(-1)=0,v(0)=\infty$
より$R'$は環であり,
$v(x+y)\geq \min(v(x),v(y))>0,$
$v(xy)\geq v(x)+v(y)>0,$
$v(ax)\geq v(a)+v(x)>0$
より$I$はイデアルである.

$(4)$を仮定すれば$v(1)=v(-1)=0$は自明だが,そもそも$R'/I$を定義するために$v(1)=v(-1)=0$を仮定する必要があるのでこれらを条件から外すことは難しい.

$(4)$を少し言い換えてみる.(後で使うわけではない)

$(4)$は以下と同値:$x\in(R'/I)^*\Longrightarrow v(x)=0$

$x\in (R'/I)^*$とする.
$(4)$を仮定すると$v(x)=v(1\cdot x)=v(1)=0$となり$\Longrightarrow$は示された.
逆に$x\in(R'/I)^*\Longrightarrow v(x)=0$とすると,$v(ax)\geq v(a)+v(x)=v(a)$より,$v(ax)\geq v(a)$である.また,$x$$(R'/I)^*$での逆元を$y$とすると$xy=1+z$となる$z\in I$が存在する.よって$v(az)\geq v(a)+v(z)>v(a)$より補題1から$v(a)=v(a+az)=v(a(1+z))=v(axy)\geq v(ax)+v(y)=v(ax)$となり($y\in (R'/I)^*$に注意)$v(ax)=v(a)$が示された.$v(xa)$についても同様である.

次の補題は最後の方の一般化で重宝する.

$(5)$を仮定すると$\ I\cap\mathbb Z$は素イデアル.正確に言うと$f^{-1}(I)$は素イデアル.

$1\not\in f^{-1}(I)$より,$f^{-1}(I)\neq\mathbb Z$である.$ab\in f^{-1}(I)$となる正整数が存在するとすると,$0< v(ab)=v(a)+v(b)$となる.$a,b\not\in f^{-1}(I)$とすると$v(a)\leq0,v(b)\leq0$となるので$v(a)+v(b)\leq 0$となり,矛盾する.よって示された.

LTEの補題の一般化

以下,$v$$(4)$を満たすとする.

$x\in R$$x-1\in I$を満たすなら任意の$n\in (R'/I)^*$となる正整数に対して$$v(x^n-1)=v(x-1)$$が成立する.

仮定より$x-1=t$とおくと$v(t)>0$であり,$$\begin{align}v(x^n-1)=&v((t+1)^n-1)\\=&v(t^n+nt^{n-1}+{}_nC_2t^{n-2}+...+{}_nC_{n-2}t^2+nt+1-1)\\=&v((t^{n-2}+nt^{n-2}+{}_nC_{2}t^{n-3}+...+{}_nC_{n-2}t+n)t) \end{align}$$
ここで$t\in I$より$\overline{t^{n-2}+nt^{n-2}+{}_nC_{2}t^{n-3}+...+{}_nC_{n-2}t+n}=\overline n\in (R'/I)^*$なので$(4)$より,$v(x^n-1)= v((t^{n-2}+nt^{n-2}+{}_nC_2t^{n-3}+...+{}_nC_{n-2}t+n)t)=v(t)=v(x-1)$
がわかる.

以下,$v$$(5)$も満たすとする.このとき素数または$0$である$p$$f^{-1}(I)=(p)$となるものがある.これを$p_v$とおく.また整数が$p_v$で割り切れる回数を$v'$とする.
すると定理$5$より少しだけ強い定理が成立する.

$x\in R$$x-1\in I$を満たすなら任意の$v(n)=0$となる正整数に対して$$v(x^n-1)=v(x-1)$$が成立する.

仮定より$x-1=t$とおくと$v(t)>0$であり,$$\begin{align}v(x^n-1)=&v((t+1)^n-1)\\=&v(t^n+nt^{n-1}+{}_nC_2t^{n-2}+...+{}_nC_{n-2}t^2+nt+1-1)\\=&v(t^{n}+nt^{n-1}+{}_nC_{2}t^{n-2}+...+{}_nC_{n-2}t^2+nt) \end{align}$$
ここで$a>b$なら$v(t^a)>v(t^b)$なので補題$1$から$v(t^{n}+nt^{n-1}+{}_nC_{2}t^{n-2}+...+{}_nC_{n-2}t^2)=v({}_nC_{n-2}t^2)>v(t)$であり,仮定$(5)$より$v(nt)=v(t)$なので再び補題$1$から,$v(x^n-1)=v(x-1)$を得る.

またこの定理も成立する.

$x\in R$$x-1\in I$を満たすとする.$p_v=0$または$v((x-1)^{p_v-1})>v(p_v)$を満たすなら$n$を任意の正整数とすると$$ v(x^n-1)=v(x-1)+v(n) $$が成立する.

$2$以上の全ての正整数$k$に対して$v((x-1)^{k-1})>v(k)$を満たす事を示す....$(A)$
$p_v=0$のときは$v(k)=0$で,$v((x-1)^{k-1})\geq v(x-1)>0$なので$p_v>0$とする.
$v(k)=0$のときは同様に示せるので$v(k)>0$とする.$p_v^l$に対して$v((x-1)^{p_v^l-1})>v(p_v^l)=lv(p_v)$が示せれば,$v((x-1)^{p_v^{v'(k)}-1})\leq v((x-1)^{k-1})$,$v(k)=v(p_v^{v'(k)})$なので示すことができる.
仮定より
$v((x-1)^{p_v^l-1})\geq \displaystyle\frac{p_v^l-1}{p_v-1}v((x-1)^{p_v-1})>\displaystyle\frac{p_v^l-1}{p_v-1}v(p_v)$となるので,後は$\displaystyle\frac{p_v^l-1}{p_v-1}\geq l$を示すことになるがこれは左辺を展開すればわかる.よって$(A)$は示された.

仮定より$x-1=t$とおくと$v(t)>0$であり,$$\begin{align}v(x^n-1)=&v((t+1)^n-1)\\=&v(t^n+nt^{n-1}+{}_nC_2t^{n-2}+...+{}_nC_2t^2+nt+1-1)\\=&v((t^{n}+nt^{n-1}+{}_nC_2t^{n-2}+...+{}_nC_2t^2+nt) \end{align}$$よって補題$1$から,$2$以上$n$以下の整数$k$に対して$v({}_nC_kt^{k})>v(nt)$を示せば良い.
$$\begin{align}v({}_nC_kt^{k})+v(k)=&v(k{}_{n}C_{k}t^{k})\\=&v(n{}_{n-1}C_{k-1}t^{k})\\\geq&v(nt^{k})\\=&v(t^{k-1})+v(nt)\\>&v(k)+v(nt) \end{align}$$(最後の変形に$(A)$を用いている.)よって補題$1$から$v(x^n-1)=v(n(x-1))=v(x-1)+v(n)$を得る.

さらに$(6)$を仮定するともっと強い定理が成り立つ.
簡単のため$X=\mathbb R$としておく.

$v$$(6)$を満たすとする.$v(x-1)>0$とすると以下が成り立つ.
$(1)\ v(x-1)>\displaystyle \frac{v(p_v)}{p_v-1}$のとき$v(x^n-1)=v(x-1)+v(n)$
$(2)\ 0< v(x-1)\leq\displaystyle \frac{v(p_v)}{p_v-1}$のとき$L=\log_{p_v}\left(\displaystyle\frac{p_vv(p_v)}{(p_v-1)v(x-1)}\right)$とおくと,
$\ (2-1)\ v'(n)< L$のとき$v(x^n-1)=p^{v'(n)}v(x-1)$
$\ (2-2)\ v'(n)\ge L$のときは$v(x^n-1)=v(x^{p^{[L]}}-1)+v(n)-v(p_v)[L]$
特に$L$が整数でないなら$v(x^n-1)=p_v^{[L]}v(x-1)+v(n)-v(p_v)[L]$
が成り立つ.ただし$[\ ]$は中の数字以下の最大の整数,つまりガウス記号を表す.

$(1)$は仮定の$(6)$と定理$7$から従う.
$(2)$を示すためにまず以下の補題を示す.

上の仮定の下で$0< v(x-1)<\displaystyle\frac{v(p_v)}{p_v-1}$ならば$v(x^{p_v}-1)=p_vv(x-1)$

$x-1=t$とおく.$$v(x^{p_v}-1)=v((x-1)^{p_v}+x^{p_v}-1-(x-1)^{p_v})=v(t^{p_v}+(t+1)^{p_v}-1-t^{p_v})$$である.$(t+1)^{p_v}-1-t^{p_v}$$t$の多項式と見なすと,$t$で割り切れ,展開すると各項は$p_v$で割り切れるので$v((t+1)^{p_v}-1-t^{p_v})\geq v(t)+v(p_v)>v(t)+(p_v-1)v(t)=v(t^{p_v})$(2つめの変形で仮定を使った.).従って補題$1$より,$v(x^{p_v}-1)=v(t^{p_v})=p_vv(x-1)$となり,示された.

定理8の(2)

まず,定理$6$より,$n=p_v^m$と置いて良い.補題$9$より,$v(x^n-1)<\displaystyle\frac{v(p_v)}{p_v-1}$のときは$v(x^{p_vn}-1)=p_vv(x^n-1)$が成り立つので,帰納的に考えて,$m<\log_{p_v}\displaystyle{\left(\frac{p_vv(p_v)}{(p_v-1)v(x-1)}\right)}=L$のときは$v(x^n-1)=nv(x-1)$が成り立つ.
また$m\geq L$のときは,$L-1<[L]\leq L\leq m$なので$[L]< L$つまり,$L$が整数でないときは上の結果から,$v(x^{p_v^{[L]}}-1)=p_v^{[L]}v(x-1)>\displaystyle\frac{v(p_v)}{p_v-1}$となる.ここに$(1)$が使えて,
$v(x^n-1)=v(x^{p_v^{[L]}}-1)+v(p_v^{m-[L]})=p_v^{[L]}v(x-1)+v(n)-v(p_v)[L]$となる.$L$が整数のときもほとんど同様である.補題$9$において$v(x-1)=\displaystyle\frac{v(p_v)}{p_v-1}$とすると,最後の補題$1$が使えるところの等号が使えないだけなので$v(x^{p_v}-1)\geq p_vv(x-1)$が言える.従って$v(x^{p^L}-1)\geq p^Lv(x-1)$.後は同様にして,$v(x^n-1)=v(x^{p^L}-1)+v(p^{m-L})=v(x^{p^{[L]}}-1)+v(n)-[L]v(p_v)$となり,示された.

とりあえずここまでにします.

投稿日:202138
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

整数が好きです

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中