今までにやった一般化をまとめます.例によってR,Xをそれぞれ(可換とは限らない)環,全順序群とする.また自然な写像f:Z⟶Rを考え,整数をRの元と見なす.
写像R⟶X∪{∞}に対して以下の条件を考える.(1) v(xy)≥v(x)+v(y)(2) v(x+y)≥min(v(x),v(y))(3) v(1)=v(−1)=0,v(0)=∞(4) 環R′,そのイデアルIをR′={x∈R|v(x)≥0},I={x∈R|v(x)>0}で定めたとき,x―∈(R/I)∗⟹v(xy)=v(yx)=v(y)(5) n∈Z⟹v(nx)=v(x)+v(n)(6) v(xn)=nv(x)
このうち(1),(2),(3)は常に仮定する.次の補題は頻繁に用いる.
v(x)≠v(y)ならばv(x+y)=min(v(x),v(y))である.
対称性よりv(x)<v(y)の時のみ示せば良い.v(−y)≥v(y)+v(−1)=v(y),v(x+y)≥v(x)よりv(x+y)≥v(x)=v(x+y−y)≥min(v(x+y),v(−y))≥min(v(x+y),v(y))=Xとなる.X=v(y)のときはv(x)≥v(y)となり,矛盾するので,X=v(x+y).よって上の式の不等号が全て等号であるので,示された.
(4)の正当性は以下で保障される.
R′は環でありIはR′のイデアルである.
a,b∈R′,x,y∈Iとすると,v(a)≥0,v(b)≥0,v(x)>0,v(y)>0である.v(a+b)≥min(v(a),v(b))≥0,v(ab)≥v(a)+v(b)≥0,v(1)=0,v(−1)=0,v(0)=∞よりR′は環であり,v(x+y)≥min(v(x),v(y))>0,v(xy)≥v(x)+v(y)>0,v(ax)≥v(a)+v(x)>0よりIはイデアルである.
(4)を仮定すればv(1)=v(−1)=0は自明だが,そもそもR′/Iを定義するためにv(1)=v(−1)=0を仮定する必要があるのでこれらを条件から外すことは難しい.
(4)を少し言い換えてみる.(後で使うわけではない)
(4)は以下と同値:x∈(R′/I)∗⟹v(x)=0
x∈(R′/I)∗とする.(4)を仮定するとv(x)=v(1⋅x)=v(1)=0となり⟹は示された.逆にx∈(R′/I)∗⟹v(x)=0とすると,v(ax)≥v(a)+v(x)=v(a)より,v(ax)≥v(a)である.また,xの(R′/I)∗での逆元をyとするとxy=1+zとなるz∈Iが存在する.よってv(az)≥v(a)+v(z)>v(a)より補題1からv(a)=v(a+az)=v(a(1+z))=v(axy)≥v(ax)+v(y)=v(ax)となり(y∈(R′/I)∗に注意)v(ax)=v(a)が示された.v(xa)についても同様である.
次の補題は最後の方の一般化で重宝する.
(5)を仮定すると I∩Zは素イデアル.正確に言うとf−1(I)は素イデアル.
1∉f−1(I)より,f−1(I)≠Zである.ab∈f−1(I)となる正整数が存在するとすると,0<v(ab)=v(a)+v(b)となる.a,b∉f−1(I)とするとv(a)≤0,v(b)≤0となるのでv(a)+v(b)≤0となり,矛盾する.よって示された.
以下,vは(4)を満たすとする.
x∈Rがx−1∈Iを満たすなら任意のn∈(R′/I)∗となる正整数に対してv(xn−1)=v(x−1)が成立する.
仮定よりx−1=tとおくとv(t)>0であり,v(xn−1)=v((t+1)n−1)=v(tn+ntn−1+nC2tn−2+...+nCn−2t2+nt+1−1)=v((tn−2+ntn−2+nC2tn−3+...+nCn−2t+n)t)ここでt∈Iよりtn−2+ntn−2+nC2tn−3+...+nCn−2t+n―=n―∈(R′/I)∗なので(4)より,v(xn−1)=v((tn−2+ntn−2+nC2tn−3+...+nCn−2t+n)t)=v(t)=v(x−1)がわかる.
以下,vは(5)も満たすとする.このとき素数または0であるpでf−1(I)=(p)となるものがある.これをpvとおく.また整数がpvで割り切れる回数をv′とする.すると定理5より少しだけ強い定理が成立する.
x∈Rがx−1∈Iを満たすなら任意のv(n)=0となる正整数に対してv(xn−1)=v(x−1)が成立する.
仮定よりx−1=tとおくとv(t)>0であり,v(xn−1)=v((t+1)n−1)=v(tn+ntn−1+nC2tn−2+...+nCn−2t2+nt+1−1)=v(tn+ntn−1+nC2tn−2+...+nCn−2t2+nt)ここでa>bならv(ta)>v(tb)なので補題1からv(tn+ntn−1+nC2tn−2+...+nCn−2t2)=v(nCn−2t2)>v(t)であり,仮定(5)よりv(nt)=v(t)なので再び補題1から,v(xn−1)=v(x−1)を得る.
またこの定理も成立する.
x∈Rはx−1∈Iを満たすとする.pv=0またはv((x−1)pv−1)>v(pv)を満たすならnを任意の正整数とするとv(xn−1)=v(x−1)+v(n)が成立する.
2以上の全ての正整数kに対してv((x−1)k−1)>v(k)を満たす事を示す....(A)pv=0のときはv(k)=0で,v((x−1)k−1)≥v(x−1)>0なのでpv>0とする.v(k)=0のときは同様に示せるのでv(k)>0とする.pvlに対してv((x−1)pvl−1)>v(pvl)=lv(pv)が示せれば,v((x−1)pvv′(k)−1)≤v((x−1)k−1),v(k)=v(pvv′(k))なので示すことができる.仮定よりv((x−1)pvl−1)≥pvl−1pv−1v((x−1)pv−1)>pvl−1pv−1v(pv)となるので,後はpvl−1pv−1≥lを示すことになるがこれは左辺を展開すればわかる.よって(A)は示された.
仮定よりx−1=tとおくとv(t)>0であり,v(xn−1)=v((t+1)n−1)=v(tn+ntn−1+nC2tn−2+...+nC2t2+nt+1−1)=v((tn+ntn−1+nC2tn−2+...+nC2t2+nt)よって補題1から,2以上n以下の整数kに対してv(nCktk)>v(nt)を示せば良い.v(nCktk)+v(k)=v(knCktk)=v(nn−1Ck−1tk)≥v(ntk)=v(tk−1)+v(nt)>v(k)+v(nt)(最後の変形に(A)を用いている.)よって補題1からv(xn−1)=v(n(x−1))=v(x−1)+v(n)を得る.
さらに(6)を仮定するともっと強い定理が成り立つ.簡単のためX=Rとしておく.
vは(6)を満たすとする.v(x−1)>0とすると以下が成り立つ.(1) v(x−1)>v(pv)pv−1のときv(xn−1)=v(x−1)+v(n)(2) 0<v(x−1)≤v(pv)pv−1のときL=logpv(pvv(pv)(pv−1)v(x−1))とおくと, (2−1) v′(n)<Lのときv(xn−1)=pv′(n)v(x−1) (2−2) v′(n)≥Lのときはv(xn−1)=v(xp[L]−1)+v(n)−v(pv)[L]特にLが整数でないならv(xn−1)=pv[L]v(x−1)+v(n)−v(pv)[L]が成り立つ.ただし[ ]は中の数字以下の最大の整数,つまりガウス記号を表す.
(1)は仮定の(6)と定理7から従う.(2)を示すためにまず以下の補題を示す.
上の仮定の下で0<v(x−1)<v(pv)pv−1ならばv(xpv−1)=pvv(x−1)
x−1=tとおく.v(xpv−1)=v((x−1)pv+xpv−1−(x−1)pv)=v(tpv+(t+1)pv−1−tpv)である.(t+1)pv−1−tpvはtの多項式と見なすと,tで割り切れ,展開すると各項はpvで割り切れるのでv((t+1)pv−1−tpv)≥v(t)+v(pv)>v(t)+(pv−1)v(t)=v(tpv)(2つめの変形で仮定を使った.).従って補題1より,v(xpv−1)=v(tpv)=pvv(x−1)となり,示された.
まず,定理6より,n=pvmと置いて良い.補題9より,v(xn−1)<v(pv)pv−1のときはv(xpvn−1)=pvv(xn−1)が成り立つので,帰納的に考えて,m<logpv(pvv(pv)(pv−1)v(x−1))=Lのときはv(xn−1)=nv(x−1)が成り立つ.またm≥Lのときは,L−1<[L]≤L≤mなので[L]<Lつまり,Lが整数でないときは上の結果から,v(xpv[L]−1)=pv[L]v(x−1)>v(pv)pv−1となる.ここに(1)が使えて,v(xn−1)=v(xpv[L]−1)+v(pvm−[L])=pv[L]v(x−1)+v(n)−v(pv)[L]となる.Lが整数のときもほとんど同様である.補題9においてv(x−1)=v(pv)pv−1とすると,最後の補題1が使えるところの等号が使えないだけなのでv(xpv−1)≥pvv(x−1)が言える.従ってv(xpL−1)≥pLv(x−1).後は同様にして,v(xn−1)=v(xpL−1)+v(pm−L)=v(xp[L]−1)+v(n)−[L]v(pv)となり,示された.
とりあえずここまでにします.
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