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積分botを解けるだけ解く, その5

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さて, 今日も解いていきます. 前回( https://mathlog.info/articles/1921 )

41個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361415173169242112 )

01arctan21+2x25(1+x2)1+2x2(1+3x2)dx=π2arctan35π215

見た目がすごいですね. なんでこんな積分をしようと思ったんでしょうか. とりあえず, 変数を導入してみます.

01arctan(a1+b2x21+x2)1+b2x2(1+c2x2)dx

見た目的にaで微分したくなりますよね. すると,
011+x2((1+x2)2+a2(1+b2x2))(1+c2x2)dx
となります. いや, これでは解けませんね. わかりません.

42個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361425927469740032 )

012x21x2dx=π2πΓ(14)2+Γ(14)242π

これは第2種完全楕円積分を用いて, 2E(12)と表されますね. 楕円積分についてはよく知らないですが, これは求まりそうですね.

まず, 第1種完全楕円積分, K(12)を求めます. x1x2の置換により,
K(12)=0111x2112x2dx=01xx1+x221x2dx=20111x4dx=12201x3/4(1x)1/2dx=122Γ(14)Γ(12)Γ(34)=Γ(14)24π
ここで, k=1k2として, Legendreの関係式,
K(k)E(k)+E(k)K(k)K(k)K(k)=π2
k=12を代入すると,
2K(12)E(12)K(12)2=π2
より,
2E(12)=2π4K(12)+12K(12)=π2πΓ(14)2+Γ(14)242π

43個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361430284835557377 )

01ln(1x)xx3dx=Γ(14)242π(ln2π)

楕円積分系のが連続で来ましたね.

Eulerの変換公式,
0n(a,b)n(c)nn!zn=(1z)cab0n(ca,cb)n(c)nn!zn
の両辺をaで偏微分して,
0n(a,b)n(c)nn!znk=0n11a+k=(1z)cab(ln(1z)0n(ca,cb)n(c)nn!zn+0n(ca,cb)n(c)nn!znk=0n11ca+k)
ここで, c=a+bとして, 右辺第2項を移項して,
0n(a,b)n(c)nn!znk=0n1(1a+k+1b+k)=ln(1z)0n(ca,cb)n(c)nn!zn
ここで, a=b=12として,
20n(12)n2n!2znk=0n112k+1=12ln(1z)2F1[12,121;z]
また, Euler積分表示
0n(a,b)n(c)nn!zn=Γ(c)Γ(b)Γ(cb)01xb1(1x)cb1(1zx)adx
の両辺をaで偏微分して, a=b=12,c=1とすると,
20n(12)n2n!2znk=0n112k+1=1π01ln(1zx)x(1x)(1zx)dx
これより, 上の式を合わせて,
01ln(1zx)x(1x)(1zx)dx=π2ln(1z)2F1[12,121;z]
与えられた積分は,
01ln(1x)xx3dx=01ln(1x2)ln(1+x)x(1x)(1+x)dx
ここで,
01ln(1x2)x(1x)(1+x)dx=lima12a01x1/2(1x2)a1dx=12lima12aΓ(14)Γ(a)Γ(a+14)=12Γ(14)Γ(12)Γ(34)(ψ(12)ψ(34))=Γ(14)242π(2ln2π)
と,
01ln(1+x)x(1x)(1x)dx=π2ln22F1[12,121;1]=Γ(14)242πln2
より,
01ln(1x)xx3dx=Γ(14)242π(ln2π)

44個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361430284835557377 )

0arctan2xln2(1+x2)x2dx=43πln32+23π3ln2+12πζ(3)

解く方法は1つわかりましたが, 僕にとって重要な研究を用いているので, ここでは非公開とします.

45個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361443526798692353 )

0ln(1+a2x)ex1dx=8π2ψ(2,a2π)a22(12lna2π)2πa(1+2lnΓ(a2π))

右辺に見慣れない関数があるので, とりあえず何なのかを調べてみます. wikipedia( https://en.wikipedia.org/wiki/Balanced_polygamma_function ) には,
ψ(z,q):=ζ(z+1,q)+(ψ(z)+γ)ζ(z+1,q)Γ(z)
という定義がありました. z=2を代入してみると,
ψ(2,a)=ζ(1,a)+ζ(1,a)=lnK(a)lnA+a(1a)2
という感じになりますね. ここで, KはKinkelinのK関数で,
lnA:=12ζ(1)
このAはGlaisher-Kinkelinの定数というらしいですが, 全く知らないので単なる略記として, 上の定義を採用します. 定義を確認したので, さっそく証明に取りかかりたいと思います. その前にもう少しだけ準備をします. まず, a2πaに置き換えると, 与えられた式は,
0ln(1+(2πa)2x)ex1dx=8π2ψ(2,a)2π2a2(12lna)4π2a(1+2lnΓ(a))
となる, さらにx(2πx)2と置換して,
8π20xln(1+a2x2)e2πx1dx=8π2ψ(2,a)2π2a2(12lna)4π2a(1+2lnΓ(a))
より,
0xln(1+a2x2)e2πx1dx=ψ(2,a)14a2(12lna)12a(1+2lnΓ(a))
この形の方が示しやすそうなので, これを示します.

Binetの第2公式
lnΓ(z)=12ln2π+(z12)lnzz+20arctanxze2πx1dx
zについて微分して,
ψ(z)=lnz12z20x(x2+z2)(e2πx1)dx
これより,
2z0x(x2+z2)(e2πx1)dx=zlnz12zψ(z)
zについて, 0からaまで積分して,
0xln(1+a2x2)e2πx1dx=0a(zlnz12zψ(z))dz=14a2(12lna)a20azψ(z)dz=14a2(12lna)a2alnΓ(a)+0alnΓ(z)dz=14a2(12lna)a2(1+2lnΓ(a))+lnK(a)+a2ln2π+a(1a)2

あれ, 一致しませんね, 実はψ(2,z)は負数でのPolygamma関数
ψ(2)(a):=0alnΓ(z)dz
のことを表していたとすれば, この式はあっているので, おそらくそういうことだと思います.

46個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361452349156454401 )

0π/2(x+arctan(1a1+atanx))2dx=π4Li2(a2)

この式, a=0で成立してないので, どこか打ち間違えたのかなと思って, 符号変えてみたらグラフが一致したので,
0π/2(xarctan(1a1+atanx))2dx=π4Li2(a2)
これを示したいと思います.

tanxxの置換により,
0π/2(xarctan(1a1+atanx))2dx=011+x2(arctanxarctan(1a1+ax))2dx=0π/2(xarctan(1a1+atanx))2dx=011+x2(arctanxarctan(1a1+ax))2dx=011+x21a1+a11a1+a1x2(1+y2x2)(1+z2x2)dydzdx=1a1+a11a1+a10x2(1+x2)(1+y2x2)(1+z2x2)dxdydz
最後の変形はFubiniの定理による. ここで, 部分分数分解などを用いて,
0x2(1+x2)(1+y2x2)(1+z2x2)dx=π21(1+y)(1+z)(y+z)
であることと, y1y1+y,z1z1+zの置換により,
1a1+a11a1+a10x2(1+x2)(1+y2x2)(1+z2x2)dxdydz=π21a1+a11a1+a11(1+y)(1+z)(y+z)dydz=π20a0a121+y21+z(1y1+y+1z1+z)2dy(1+y)22dz(1+z)2=π40a0a11yzdydz=π40<n0a0a(yz)n1dydz=π40<na2nn2=π4Li2(a2)

47個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361470038419664902 )

01arctan2x1x2dx=π4(4Li2(β2)Li2(β4))(β=1+2)

まず, この右辺が
π(Li2(β2)14Li2(β4))=π(0<nβ2nn20<nβ4n(2n)2)=π0n(β2)2n+1(2n+1)2=πχ2(β2)
となることを確認しておく.

この前の記事( https://mathlog.info/articles/1901 ) の命題3において, r=s=βとすると,
01arctan2x1x2dx=01arctan2(sinx)dx=πχ2(β2)

48個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361483779106242561 )

0xs1(1cothπx)dx=21sπsΓ(s)ζ(s)Re(s)>1

シンプルな式が来ました.

よく知られたMellin変換,
0xs1ex1dx=Γ(s)ζ(s)
より,
0xs1(1cothπx)dx=20xs1e2πx1dx=2(2π)s0xs1ex1dx=21sπsΓ(s)ζ(s)

49個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361500151022510080 )

01lnln1+1x2xdx=γ2ln2Γ(34)Γ(14)

まず, 置換x1xにより,
01lnln1+1x2xdx=1lnln(x+x21)x2dx
さらにxcoshxと置換して,
1lnln(x+x21)x2dx=0lnxsinhxcosh2xdx
ここで, Mellin変換により,
0xssinhxcosh2xdx=s0xs1coshxdx=2Γ(s+1)β(s)
よって, 特殊値,
β(0)=12β(0)=lnΓ(14)2Γ(34)
を用いて,
0lnxsinhxcosh2xdx=lims0s0xssinhxcosh2xdx=2lims0sΓ(s+1)β(s)=2lims0Γ(s+1)(ψ(s+1)β(s)+β(s))=2γβ(0)+2β(0)=γ2ln2Γ(34)Γ(14)

50個目( https://twitter.com/integralsbot/status/1361521504249405444 )

02πarctan(2cos2x)cos2xdx=πϕ

黄金比はϕ=1+52です. こういうarctanが入ってるのは, Fubiniの定理の仮定を満たしていることが多いんですよね.

Fubiniの定理より,
02πarctan(2cos2x)cos2xdx=40π/2arctan(2cos2x)cos2xdx=40π/20211+y2cos4xdydx=4020π/211+y2cos4xdxdy=402011+y2(1+x2)11+x2dxdy=40201+x2(1+x2)2+y2dxdy=4Re(02011+iy+x2dxdy)=2πRe(0211+iydy)=4πRe(i(1+2i1))=4πIm1+2i=4π512=4πϕ

4倍違いましたね. 数値を確認したところ, 積分botの方が間違っていました.

取り組む前にさっと眺めたところだと, 今回難しそうだと思ったけど, 取り組んでみると最初のやつ以外は大丈夫でした. これで, 50個取り組んで40個証明ができたところですね, 最初思ってたより多くの式が証明できたので良かったです. できれば次の記事では10個全部証明して50個いきたいですね.

投稿日:2021311
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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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