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大学数学基礎議論
文献あり

未解決問題2

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$$\newcommand{a}[1]{\left\langle#1\right\rangle} \newcommand{arccot}[0]{\mathrm{arccot}} \newcommand{arccsc}[0]{\mathrm{arccsc}} \newcommand{arcosh}[0]{\mathrm{arcosh}} \newcommand{arcoth}[0]{\mathrm{arcoth}} \newcommand{arcsch}[0]{\mathrm{arcsch}} \newcommand{arcsec}[0]{\mathrm{arcsec}} \newcommand{arsech}[0]{\mathrm{arsech}} \newcommand{arsinh}[0]{\mathrm{arsinh}} \newcommand{artanh}[0]{\mathrm{artanh}} \newcommand{c}[1]{\left\{#1\right\}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{ce}[1]{\left\lceil#1\right\rceil} \newcommand{class}[3]{C^{#1}\r{#2;#3}} \newcommand{csch}[0]{\mathrm{csch}} \newcommand{d}[0]{\displaystyle} \newcommand{D}[0]{\mathbb{D}} \newcommand{div}[0]{\mathrm{div}} \newcommand{division}[0]{÷} \newcommand{eq}[2]{\exists#1\ \mathrm{s.t.}\ #2} \newcommand{f}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{grad}[0]{\mathrm{grad}\ } \newcommand{half}[0]{\frac{1}{2}} \newcommand{halfpi}[0]{\frac{\pi}{2}} \newcommand{i}[4]{\int_{#2}^{#3}#4\mathrm{d}#1} \newcommand{l}[3]{\lim_{#1\rightarrow#2}#3} \newcommand{map}[2]{\mathrm{Map}\r{#1,#2}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{p}[4]{\prod_{#1=#2}^{#3}#4} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[1]{\left(#1\right)} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rot}[0]{\mathrm{rot}\ } \newcommand{s}[1]{\left[#1\right]} \newcommand{sdif}[2]{#1\backslash#2} \newcommand{sech}[0]{\mathrm{sech}} \newcommand{set}[2]{\c{#1:#2}} \newcommand{sll}[2]{\left[#1,#2\right[} \newcommand{slr}[2]{\left[#1,#2\right]} \newcommand{srl}[2]{\left]#1,#2\right[} \newcommand{srr}[2]{\left]#1,#2\right]} \newcommand{su}[4]{\sum_{#1=#2}^{#3}#4} \newcommand{uq}[2]{\forall#1,\ #2} \newcommand{v}[1]{\left|#1\right|} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

こんにちは!的場 沙雪です. 前から思っていた のですが, ディガンマ関数の正の零点 の無理性が解決出来るんじゃないかな,と考えて,私なりの考えをまとめることにしました.もし既に解決されていて論文もあるなら,情報を提供していただければ幸いです.

ディガンマ関数の正の零点は無理数ですか.

まず,ディガンマ関数の正の零点は$1.46163214496836234126\cdots\cdots$と続き,$x_0$で表されます.定義から$\psi\r{x_0}=0$です.

$x_0\in\Q$とすると,正整数$n$$m$を使って$\d x_0=\frac{n}{m}$と書けます($x_0\notin\Z$なので$m\neq1$です).ここで$\psi\r{x_0}=0$に突っ込んでみると,$\d\psi\r{\frac{n}{m}}=0$となります.$\d\psi\r{\frac{n}{m}}$,ディガンマ関数の有理数点での値です.ということは,** Gauss's digamma theorem が使え**ます!

Gauss's digamma theorem

次の等式が成り立ちます.ただし$p\in\Z_{>0}$$q\in\Z_{>1}$とし,$p< q$を満たすとします.
$\d\psi\r{\frac{p}{q}}=-\gamma-\ln2q-\frac{\pi}{2}\cot\frac{\pi p}{q}+\su{k}{1}{q-1}{\cos\frac{2p\pi k}{q}}\ln\sin\frac{\pi k}{q}$

なお,これは 級数botにあったもの と同じです.証明は調べればいろいろ出てきます( こちらのサイト とか).またWikipediaのものとは異なりますが,三角関数を山の部分で半分に折り返して足しているだけです.

さて,この定理の条件をよく見ると$p< q$という条件が付いています.$1< x_0<2$なので$m< n<2m$であり,ディガンマ関数の中身を調整しないといけません.非正整数でない複素数$z$に対して$\d\psi\r{z+1}=\psi\r{z}+\frac{1}{z}$なので,$\d\psi\r{\frac{n-m}{m}+1}=\psi\r{\frac{n-m}{m}}+\frac{1}{\frac{n-m}{m}}$より$\d\psi\r{\frac{n-m}{m}}=-\frac{m}{n-m}$を得ます.$\d\frac{n-m}{m}$は定理の条件を満たしています!ということで,代入すると
$\d-\gamma-\ln2m-\frac{\pi}{2}\cot\frac{\pi\r{n-m}}{m}+\su{k}{1}{m-1}{\cos\frac{2\r{n-m}\pi k}{m}}\ln\sin\frac{\pi k}{m}=-\frac{m}{n-m}$
となり,整理すると
$\d\su{k}{1}{m-1}{\cos\frac{2n\pi k}{m}}\ln\sin\frac{\pi k}{m}=\gamma+\ln2m+\frac{\pi}{2}\cot\frac{\pi n}{m}-\frac{m}{n-m}$
を得ます.後は,もしこれが矛盾を導けば予想が証明されます!つまり,以下の予想に換言できます.

次の不等式が成り立つと予想されます.ただし$p\in\Z_{>2}$$q\in\Z_{>1}$とし,$q< p<2q$を満たすとします.
$\d\su{k}{1}{q-1}{\cos\frac{2p\pi k}{q}}\ln\sin\frac{\pi k}{q}\neq\gamma+\ln2q+\frac{\pi}{2}\cot\frac{\pi p}{q}-\frac{q}{p-q}$

もしくは,$p$$p+q$に置き換えた以下の予想でもいいでしょう.Gauss's digamma theoremの条件と同じなのでこちらの方が見やすいかもしれません.これは先ほどまでの議論を$\d x_0=\frac{n}{m}+1$から始めるのと同じことです.

次の不等式が成り立つと予想されます.ただし$p\in\Z_{>0}$$q\in\Z_{>1}$とし,$p< q$を満たすとします.
$\d\su{k}{1}{q-1}{\cos\frac{2p\pi k}{q}}\ln\sin\frac{\pi k}{q}\neq\gamma+\ln2q+\frac{\pi}{2}\cot\frac{\pi p}{q}-\frac{q}{p}$

しかし,この予想は問題点があります.それはオイラーの定数$\gamma$です.現在,この定数は無理数かどうかわかっていないですが,もし無理数なら$p$$q$といった整数に関する話にしてもなかなか整数という性質を使いにくくなります.まあでも,オイラーの定数も有理数だと仮定して矛盾を導いて,ディガンマ関数の正の零点とオイラーの定数のどちらかは無理数であることが証明できるかもしれませんね.恐らく$\gamma$がこんな簡単な式で書けるわけがないので,予想は正しいとは思いますが……

と,いうことでこの予想を残して今回は締めくくろうと思います.この記事を読んで解決できたのであればとても光栄に思います.ここまで読んでくださりありがとうございました.

参考文献

投稿日:2021314

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投稿者

微分積分学,数理論理学,順序数解析が好きです.ここでは主に微積や級数の話題をすると思います.記事まとめは下のリンクからどうぞ.

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