この記事では一般化楕円積分にまつわるルジャンドル関係式を紹介します。
まずルジャンドル関係式とは次の恒等式のことを言うのでした。
完全楕円積分
および
が成り立つ。
そして芝浦工業大学の竹内慎吾教授(日本人!)はこれの一般化を考え、2016年(割と最近!)に
Legendre-type relations for generalized complete elliptic integrals
という論文で以下のように具体的な一般化を与えたようです。
に対して一般化完全楕円積分
と定める。
このとき
一般化円周率
と定める。
このとき
写像
とおくと
が成り立つ(ただし
実際に
に注意すると最初に挙げたルジャンドル関係式
が出てくることがわかります。
ちなみにこの一般化ルジャンドル関係式は超幾何関数にまつわるElliottの恒等式
と等価であることが知られています(このことについては
別の記事
で詳しく解説します)。
E.B.Elliottがこの恒等式を超幾何関数の観点から証明したところを、竹内教授は楕円積分の観点からの別証明を与えたという構図になっているようです。
まず
という微分方程式が成り立つことを示す。
そして
とおいたとき、上の微分方程式から
が
を満たすことを確かめる。
したがって
がわかるので
および
と計算できることから
を得る。といった具合になります。
まず以下での議論を簡単にするために一般化した三角関数を導入します。
一般化正弦関数
の逆関数として定義する。
また
と定める。
いま
つまり
がわかります。
ただ
と定めておきます。このとき
が成り立ちます。
ここで変数変換
に注意すると
と表せることが肝になってきます。
次に上で予告したように次の微分方程式を示します。
とおくと
が成り立つ。
とわかる。
いま定義より
が成り立つことに注意すると
を得る。
および
とおくと
が成り立つ。
および
とおくと
が成り立つ。
定理4系に注意して計算していくと
と整理でき、
とおくと
が成り立つ。
および一般化円周率の定義から明らか。
とわかる。
以上より
とおくと
を得る。