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【スピン幾何】擬直交群O(s,t)

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スピノルの基本事項

 スピン幾何に必須のClifford代数を導入するために必要な擬直交群O(s,t)の基本事項をまとめます。

 擬Euclid空間E(s,t)とはRs+tとその上の非退化で指数が(s,t)型の対称形式ηによって定義される計量ベクトル空間(Rs+t,η)のことです。正規直交基底{e1,,es,es+1,,es+t}
η(ei,ej)=δij, (i,j=1,,s)η(ei,ej)=δij, (i,j=s+1,,s+t)
となるものが取れます。

 擬直交群O(s,t)とはE(s,t)の等長変換群が成す群です。

擬直交群

O(s,t):={AGL(R,s+t); η(Av,Aw)=η(v,w), v,wE(s,t)}

とくにO(1,t)またはO(s,1)のことをLorentz群と呼びます。ηの表現行列もηで表すとAO(s,t)tAηA=ηを満たすのでdet(A)=±1となります。また自然な同型O(s,t)O(t,s)が存在します。

 よく知られた命題として次があります。

  1. O(s,t)は線形Lie群である。
  2. st0ならばO(s,t)はnon-compactである。
  3. o(s,t)Co(s+t)C

 正規直交基底{e1,,es,es+1,,es+t}を取り、V:=SpanR{e1,,es}とします。AO(s,t)に対して、A|V:VVが向きを保つとき、A時間的向きを保つといいます。この性質はVの取り方によらないことが証明できます。O(s,t)の部分群について次の定義があります。

SO(s,t):={AO(s,t); det(A)=1}特殊(special)擬直交群O+(s,t):={AO(s,t); A}順時(orthochronous)擬直交群SO+(s,t):=O+(s,t)SO(s,t)固有順時(theproper orthochronous)擬直交群という。
またAO(s,t)
A=(A11A12A21A22)
と表示するとき、
O+(s,t)={AO(s,t); det(A11)>0}, SO+(s,t)={AO(s,t); det(A)=1, det(A11)>0}と定義しても同値である。

 またSO+(s,t)O(s,t)の単位元を含む連結成分です。さらにs,t1のとき、SO+(s,t)SO(s)×SO(t)×Rstとなります。例えば、4次元Minkowski時空の物理で重要となるのがSO+(1,3)SO+(3,1)SO(3)×R3です。SO+(1,3)の基本群はZ2です。

投稿日:2023519
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Submersion
Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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