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大学数学基礎解説
文献あり

【第一回】N次元球面上の掛け算構造

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キーワード

Lie群,Lie代数,de Rhamコホモロジー,de Rhamの定理,特異ホモロジー

0. イントロダクション

$1$次元球面$S^1 \subset \mathbb{R}^2 \simeq \mathbb{C} $は,以下のように表すことができる.
$$S^1 = \{ e^{\sqrt{-1} \theta} | \theta \in \mathbb{R}\}$$
この$S^1$上には,以下のようにして自然に掛け算の構造が入る($\theta$の取り方によらずwell-defined)
$$e^{\sqrt{-1} \theta_1} \times e^{\sqrt{-1} \theta_2} = e^{\sqrt{-1} (\theta_1 + \theta_2)}$$
この演算は,群の公理を満たしているため,$S^1$には滑らかな群構造を定義することができるといえる.


一方,$3$次元球面$S^3 \subset \mathbb{R}^4$にも群構造を定義することができる.
$\mathbb{R}^4$は四元数を定義することができるが,四元数$p,q$に対し,$\| p \| \|q\| = \| pq \|$が成り立つことから,この掛け算は,自然に$3$次元球面上の滑らかな群演算を誘導することがわかる.


以上の内容を命題の形でまとめると以下のように言える.

$1$次元球面$S^1$,および,$3$次元球面$S^3$は,Lie群構造を定めることができる.

では,より一般に正の整数$Nに対して,N$次元球面上にLie群構造を定めることができるだろうか.
実は,この問題に関して以下の定理が成り立つことが知られている.

$N$を正の整数とする.$N$次元球面$S^N$にLie群構造を定めることができる$N$の条件は,$N=1,3$である.

本記事では,2回に分けてLie群上のコホモロジー論を展開することにより,上記の定理の証明を目標とする.

本記事は[1]のChapter5,§12の議論をベースに,独自に再構成したものである.

【第一回】→本記事
【第二回】→ https://mathlog.info/articles/Ce9j4mlC3uJo4c3Ew5me

1. Lie群が作用する多様体のde Rhamコホモロジー

Lie群$G$が,滑らかな多様体$M$に左作用しているとする.すなわち,滑らかな写像$G \times M \to M : (g,x) \mapsto t_g(x)$であって,$t_g \circ t_h = t_{gh}$かつ,$t_e = id_G$が成り立つものが存在するとする.このとき,任意の$g \in G$に対し,$t_g$は滑らかな逆写像$t_{-g}$を持つので,$t_g$は微分同相写像である.


滑らかな多様体$M$上の$p$-form全体を$\Omega^p (M)$とあらわす.また,$\omega \in \Omega^p(M)$が,任意の$g \in G$に対し,$t_{g}^{*} \omega = \omega$を満たすとき,$\omega$は(左)作用に関して不変であるという.不変な$p$-form全体は$\mathbb{R}$ベクトル空間の構造を持っており,これを$\Omega_{G}^{p}(M)$と書くことにする.


$\omega \in \Omega_{G}^{p}(M)$に対し,$t_{g}^{*} (d \omega) = d(t_{g}^{*} \omega) = d \omega$が成り立つことから,$d \omega$もまた,不変$p$-formであり,普通の外微分$d$に関して,$(\Omega_{G}^{*}(M), d)$はチェイン複体を定めることができる.このチェイン複体に関する,$p$次のコホモロジーを$H_{G}^{p}(M)$と表す.


実は$G$がコンパクトかつ連結である場合は,$H_{G}^{p}(M)$は,通常のde Rhamコホモロジーと同型であることがわかる.すなわち,以下の定理が成り立つ.

$G$をコンパクト連結Lie群とし,$G$が滑らかな多様体$M$に滑らかに左作用しているとする.このとき,$\mathbb{R}$ベクトル空間の同型
$$H_{G}^{p}(M) \simeq H_{dR}^{p}(M)$$
が成り立つ.

この定理が示されれば,$M$のde Rhamコホモロジーの議論は,左作用に関して不変なformのみを考えれば十分であることがわかる.
このセクションでは,上の定理の証明を試みる.

写像の構成

$G$をコンパクトLie群とする(今は連結でなくてもよい).$\omega _ G$$G$上のHaar体積形式であり,$\int_{G} \omega_{G} = 1$を満たすものとする.$M$上の滑らかな実関数$f : M \to \mathbb{R}$に対し,$G$上の積分を,
$$\int_{G} f dg = \int_{G} f\omega_{G}$$
と表すことにする.

ベクトル空間の準同型$I : \Omega^{p} (M) \to \Omega_{G}^{p} (M)$を,以下で定める($X_i$$M$上の滑らかなベクトル場).
$$I(\omega)(X_1, ... , X_p) = \int_{G} t_{g}^{*} \omega (X_1, ... ,X_p) dg$$
ここで,$I$の像が不変$p$形式であることは以下のようにして確かめられる.
\begin{eqnarray} t_{h}^{*}(I(\omega))(X_1, ... , X_p) &=& I(\omega)((t_h)_*X_{1}, ... ,(t_h)_*X_{p}) \\ &=& \int_{G} \omega((t_g)_*(t_h)_*X_{1}, ... ,(t_g)_*(t_h)_*X_{p}) dg \\ &=& \int_{G} \omega((t_{gh})_*X_{1}, ... ,((t_{gh})_*X_{p}) dg \\ &=& \int_{G} \omega((t_{g})_*X_{1}, ... ,((t_{g})_*X_{p}) dg \\ &=& I(\omega)(X_1, ... ,X_p) \end{eqnarray}
ここで4番目の等号は,Haar積分の不変性を使用している.
$I$に関して,以下の主張が成り立つ.

$I : \Omega^{p} (M) \to \Omega_{G}^{p} (M)$ は外微分と可換である.すなわち$dI = Id$.

滑らかなベクトル場$X \in \mathfrak{X} (M)$に対し,$X^{g} = (t_{g})_{*} X$とおく.
外微分の定義に基づいて,
\begin{eqnarray} d(I(\omega))(X_1, ... , X_p) &=& \sum_{i=0}^{p} (-1)^{i} X_i (I(\omega)(X_0 , ... , \hat{X_i}, ... , X_p)) + \sum_{i < j} (-1)^{(i+j)} I(\omega) ([X_i, X_j], X_0 , ... , \hat{X_i}, ... , \hat{X_j}, ... , X_p) \\ &=& \sum_{i=0}^{p} (-1)^{i} X_i \int_{G} \omega(X_{0}^{g}, ..., \hat{X_i}, ... , X_{p}^{g}) dg + \sum_{i < j} (-1)^{(i+j)} \int_{G} \omega ([X_{i}^{g}, X_{j}^{g}], X_{0}^{g} , ... , \hat{X_{i}^{g}}, ... , \hat{X_{j}^{g}}, ... , X_{p}^{g}) dg \\ &=& \int_{G} d \omega (X_{0}^{g}, ... , X_{p}^{g}) dg \\ &=& I(d\omega)(X_1, ... , X_p) \end{eqnarray}
ここで,2番目の等号において,ベクトル場の基本性質$F_{*}([X,Y]) = [F_{*}X, F_{*}Y]$($F: M \to M$は微分同相)を使用していることに注意する. $\square$

上記の命題により,準同型$I : \Omega^{p} (M) \to \Omega_{G}^{p} (M)$は自然にコホモロジーの準同型$I^{*} : H_{dR}^{p}(M) \to H_{G}^{p}(M)$を誘導する.


一方で,包含写像$J : \Omega_{G}^{p} (M) \to \Omega^{p} (M)$も自然にコホモロジーの準同型$J^{*} = H_{G}^{p} (M) \to H_{dR}^{p} (M)$を定めることができる.

de Rhamコホモロジー$H_{dR}^{p} (M)$には,$[\omega] \mapsto [t_{g}^{*} \omega]$により,自然に群の左作用を定義することができる.任意の$g \in G$$H_{dR}^{p} (M)$への左作用に対して不動点となる$H_{dR}^{p} (M)$の部分空間を$H_{dR}^{p} (M)^G$とおく.$J^{*}$の像は,$\Omega_{G}^{p} (M)$の定義より,$H_{dR}^{p} (M)^G$に含まれるため,包含写像$J^{*}$の値域を書き換えて,$J^{*} = H_{G}^{p} (M) \to H_{dR}^{p} (M)^{G}$とすることができる.さらに,$I^{*}$の定義域を$H_{dR}^{p} (M)^G$に制限して,改めて,$I^{*} : H_{dR}^{p}(M)^{G} \to H_{G}^{p}(M)$と定める.


以上で定義した準同型$I^{*} : H_{dR}^{p}(M)^{G} \to H_{G}^{p}(M)$と,$J^{*} = H_{G}^{p} (M) \to H_{dR}^{p} (M)^{G}$は互いに逆写像になっていることを示せば,$I^{*},J^{*}$は同型写像となる.

コホモロジー同型の証明

コンパクトLie群$G$が,滑らかな多様体$M$に滑らかに左作用しているとする.このとき,$I^{*} \circ J^{*} = id, J^{*} \circ I^{*} = id$が成り立ち,以下の同型が成り立つ.
$$H_{G}^{p}(M) \simeq H_{dR}^{p}(M)^{G}$$

$\omega \in \Omega_{G}(M)$に対し,
\begin{eqnarray} I(\omega)(X_1, ... , X_p) &=& \int_{G} (t_{g}^{*} \omega)(X_1, ... ,X_p) dg \\ &=& \int_{G} \omega(X_1, ... ,X_p) dg \\ &=& \omega (X_1, ... , X_p) \end{eqnarray}
であるから,$I \circ J = id$が成り立つ.よって,$I^{*} \circ J^{*} = id$.
続いて,$J^{*} \circ I^{*} = id$を示す.任意に$\alpha = [\omega] \in H_{dR}^{p}(M)^{G}$をとると,$J^{*} \circ I^{*}(\alpha) = [I(\omega)]$なので,$[\omega]と[I(\omega)]$が,$H_{dR}^{p}(M)$の元として等しいことを示せばよい.$\omega \in H_{dR}^{p}(M)^{G}$なので,任意の$g \in G$に対し,$t_{g}^{*} \omega - \omega = d \eta$なる$\eta \in \Omega^{p-1}(M)$が存在する.

ところで,任意の滑らかな$p$単体$\sigma : \Delta_{p} \to M$ を任意にとり,$\sigma$上の$\omega$の積分を,
$$\int_{\sigma} \omega = \int_{\Delta_{p}} \sigma^{*} \omega$$
で定義する(ただし$p=0$の場合は,$\Delta_0$は1点集合$\{ e_0 \}$なので,$\int_{\sigma} \omega = \omega(\sigma(e_0))$とおく).すると特異$p$チェイン$c$は,$p$単体の単純な線形和として表記されるから,$\int_{c} \omega$が定義される.

滑らかな特異ホモロジー$[c] \in H_{p}(M)$をとると,Stokesの定理より,
$$\int_{c} \omega - \int_{c} t_{g}^{*} \omega = \int_{c} d \eta = \int_{\partial c} \eta = 0$$
ここで,最後の等式は,$c$が特異ホモロジーの代表元であることから従う.
よって,
\begin{eqnarray} \int_{c} I(\omega) &=& \int_{c} \left( \int_{G} t_{g}^{*} \omega dg \right) \\ &=& \int_{G} \left( \int_{c} t_{g}^{*} \omega \right) dg \\ &=& \int_{G} \left( \int_{c} \omega \right) dg \\ &=& \left( \int_{c} \omega \right)\left( \int_{G} 1 \right) = \int_{c} \omega \end{eqnarray}
つまり,$\int_{c} \left( I(\omega) - \omega \right) = 0$.ところで,de Rhamの定理より,$H_{dR}^{p}(M) \simeq \mathrm{Hom}(H_{p}(M), \mathbb{R})$が成り立ち,その同型写像は,
$$[\omega] \mapsto \left( [c] \mapsto \int_{c} \omega \right)$$で表示される([2]が参考になる).先の計算で,任意の$[c] \in H_{p}(M)$に対し,$\int_{c} \left( I(\omega) - \omega \right) = 0$が成り立つことから,$H_{dR}^{p}(M)$の元として,$[\omega] = [I(\omega)]$ $\square$

実は,$G$が連結の場合は,$H_{dR}^{p}(M)^{G} = H_{dR}^{p}(M)$である.つまり$G$がコンパクト連結Lie群の場合は,$H_{G}^{p}(M) \simeq H_{dR}^{p}(M)$が成り立ち,定理3が証明される.

$G$が連結の場合は,$H_{dR}^{p}(M)^{G} = H_{dR}^{p}(M)$

まず,任意の$g \in G$に対し,$t_{g}$$id_{M}$はホモトピックであることを示す.
$G$は連結(とくに$G$は多様体なので弧状連結)なので,ある連続曲線$c:[0,1] \to G$であって,$c(0) = e, c(1) = g$を満たすものが存在する.ここで,$H : [0,1] \times M \to M$$H(s,x) = t_{c(s)}(x)$で定義すると,これは$t_{g}$$id_{M}$を結ぶホモトピーになる(実は,Whitneyの定理より,滑らかなホモトピーとみなすことができる.[2]が参考になる).よって,$t_{g}^{*} = id_{M}^{*} = id$.よって,任意の$[\omega] \in H_{dR}^{p}(M)$$G$の左作用に関して不動点になるので,$H_{dR}^{p}(M)^{G} = H_{dR}^{p}(M)$が成り立つ. $\square$

ここまでの議論において,$MをG$自身とし,$G$または,$G$の直積Lie群$G \times G$による,以下の左作用を考える.

  • 左移動$L_{g} : G \to G | L_{g}(h) = gh$
  • 右移動$R_{g} : G \to G | R_{g}(h) = hg^{-1}$
  • 共役$C_{g} : G \to G | C_{g}(h) = ghg^{-1}$
  • 両側移動$B_{(g_1,g_2)} : G \to G | B_{(g_1,g_2)}(h) = g_{1}hg_{2}^{-1}$
    またそれぞれの左作用に関して定まるコホモロジー$H_G^{p}(G)$または$H_{G \times G}^{p}(G)$を,それぞれ$H_{L}^{p}(G),H_{R}^{p}(G),H_{C}^{p}(G),H_{B}^{p}(G)$とおく.
定理3

$G$をコンパクト連結Lie群とする.このとき,以下のコホモロジーの同型対応がとれる.
$$H_{dR}^{p}(G) \simeq H_{L}^{p}(G) \simeq H_{R}^{p}(G) \simeq H_{C}^{p}(G) \simeq H_{B}^{p}(G)$$

2. Lie代数とコホモロジー

前回のセクションでは,コンパクト連結Lie群$G$のde Rhamコホモロジーは,左移動や共役などに関して不変な微分形式からなるコホモロジーと同型であることが示された.次のセクションでは,さらにde Rhamコホモロジーが,Lie代数上で定まるコホモロジーと同型であることを示す.

Lie代数上の交代形式のコホモロジー

$G$をLie群とし,$G$上に定まるLie代数を$\mathfrak{g}$とおく.また,$\mathfrak{g}$上の$p$次交代形式全体を$\bigwedge^{p} \mathfrak{g}^{*}$とおく.
さらに,$d_{\mathfrak{g}} : \bigwedge^{p} \mathfrak{g}^{*} \to \bigwedge^{p+1} \mathfrak{g}^{*}$を以下のように定める.
$$d_{\mathfrak{g}} \omega (X_{1}, ... , X_{p}) = \sum_{i< j} (-1)^{(i+j)} \omega ([X_i, X_j], X_0 , ... , \hat{X_i}, ... , \hat{X_j}, ... , X_p)$$

Lie群の一般論より,$G$上の左不変$p$-form全体を$\Omega_{L}^{p}(G)$とおくと,$\mathbb{R}$ベクトル空間の同型写像$F_{p} : \Omega_{L}^{p}(G) \to \bigwedge^{p} \mathfrak{g}^{*}$が存在し,左不変ベクトル場$X_1, ..., X_p$に対し,${\omega}(X_1, ... , X_p) = F({\omega})((X_1)_{e}, ... , (X_p)_{e})$が成り立つ(左辺は実は定数になる).[3]参照.

$d \circ F_{p}^{-1} = F_{p+1}^{-1} \circ d_{\mathfrak{g}}$

$\omega \in \bigwedge^{p} \mathfrak{g}^{*}$と,左不変ベクトル場$X_0, ... ,X_p$に対し,
\begin{eqnarray} (d \circ F_{p}^{-1}\omega)(X_0, ... ,X_p) &=& \sum_{i=0}^{p} (-1)^{i} X_i ((F_{p}^{-1}(\omega))(X_0 , ... , \hat{X_i}, ... , X_p)) + \sum_{i < j} (-1)^{(i+j)} F_{p}^{-1}(\omega) ([X_i, X_j], X_0 , ... , \hat{X_i}, ... , \hat{X_j}, ... , X_p) \\ &=& \sum_{i < j} (-1)^{(i+j)} F_{p}^{-1}(\omega) ([X_i, X_j], X_0 , ... , \hat{X_i}, ... , \hat{X_j}, ... , X_p) \\ &=& \sum_{i < j} (-1)^{(i+j)} \omega_{e} ([(X_i)_{e}, (X_j)_{e}], (X_0)_{e} , ... , (\hat{X_i})_{e}, ... , (\hat{X_j})_{e}, ... , (X_p)_{e}) \\ \end{eqnarray}
ここで,2個目の等号については,$F_{p}^{-1}(\omega)(X_0 , ... , \hat{X_i}, ... , X_p)$が定数であることからわかる.一方$d_{\mathfrak{g}}$の定義より,
\begin{eqnarray} (F_{p+1} \circ d_{\mathfrak{g}} \omega)(X_0, ... ,X_p) &=& \sum_{i < j} (-1)^{(i+j)} \omega_{e} ([(X_i)_{e}, (X_j)_{e}], (X_0)_{e} , ... , (\hat{X_i})_{e}, ... , (\hat{X_j})_{e}, ... , (X_p)_{e}) \\ \end{eqnarray}
よって,左不変ベクトル場$X_0, ... ,X_p$に対し,($d (F_{p}^{-1} (\omega)) )(X_0, ... ,X_p) = (F_{p+1}^{-1} (d_{\mathfrak{g}} \omega ))(X_0, ... ,X_p)$
ところで,任意のベクトル場は,各点で線形独立な左不変ベクトル場$X_0, ... ,X_p$($\mathfrak{g}$ の基底を適当にとり,各基底に対し左不変ベクトル場を生成すればよい)の$C^{\infty}(M)$線形結合で書けるから,任意の滑らかなベクトル場$X_0, ... ,X_p$に対し,($d (F_{p}^{-1} (\omega)) )(X_0, ... ,X_p) = (F_{p+1}^{-1} (d_{\mathfrak{g}} \omega ))(X_0, ... ,X_p)$
ここまでの内容で,$d \circ F_{p}^{-1} = F_{p+1}^{-1} \circ d_{\mathfrak{g}}$が示された.$\square$

$d_{\mathfrak{g}} \circ d_{\mathfrak{g}} = 0$

$$d_{\mathfrak{g}} \circ d_{\mathfrak{g}} = (F_{p+2} \circ d \circ F_{p+1}^{-1}) \circ (F_{p+1} \circ d \circ F_{p}^{-1}) = F_{p+2} \circ d \circ d \circ F_{p}^{-1} = 0$$ $\square$

上の補題により$(\bigwedge^{*}(\mathfrak{g}^{*}), d_{\mathfrak{g}})$はチェイン複体となり,コホモロジー$H^{p}(\mathfrak{g})$を定めることができる.さらに補題7より,コホモロジーの同型写像$H_{L}^{p}(G) \to H^{p}(\mathfrak{g}^{*})$$[\omega] \mapsto [F_{p}(\omega)]$により定めることができる.よって,次の同型が成り立つ.

コンパクト連結Lie群$G$と,$G$上のLie代数$\mathfrak{g}$に対し,
$$H_{dR}^{p}(G) \simeq H^{p}(\mathfrak{g}^{*})$$

共役不変な交代形式のコホモロジー

前項では,左移動に関して不変な微分形式がなすコホモロジー$H_{L}^{p}(G)$は,Lie代数上の交代形式がなすコホモロジー$H^{p}(\mathfrak{g}^{*})$と同型であることが確かめられた.この項では,両側移動に関して不変な微分形式がなすコホモロジー$H_{B}^{p}(G)$と同型なLie代数上に定まるコホモロジーを考える.「両側移動に関して不変」という条件は,より「左移動に関して不変」という条件より厳しいことから,$H^{p}(\mathfrak{g}^{*})$より"小さい"範囲でコホモロジーが定義できることが期待される.

$G$をLie群とする.$\omega$$G$上の$p$次微分形式としたとき,$\omega$が両側不変な微分形式であることは,$\omega$が左不変かつ,共役不変な微分形式であることの必要十分条件である.

$\omega$を両側不変な微分形式とすると,$L_{g}^{*} \omega = B_{(g,e)}^{*} \omega = \omega$,かつ,$C_{g}^{*} \omega = B_{(g,g)}^{*} \omega = \omega$である.逆に,$\omega$を左不変かつ共役不変な微分形式とすると,$B_{(g,h)}^{*}\omega = C_{h}^{*} L_{gh^{-1}}^{*} \omega = \omega$. $\square$

$\mathfrak{g}$上の$p$次交代形式のうち,$G$の随伴表現$Ad : G \to GL(\mathfrak{g})$に関して不変なもの全体の集合を$\Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g}^{*})$とおく.ここで「$G$の随伴表現$Ad : G \to GL(\mathfrak{g})$に関して不変」とは,$g \in G$と,$\mathfrak{g}$上の$p$次の交代形式$\omega$に対し,
$$g(\omega)(X_1, ... ,X_p) = \omega(Ad(g^{-1})X_1, ... , Ad(g^{-1})X_p)$$
として$g(\omega)$を定めたとき,任意の$g \in G$に対し,$g(\omega) = \omega$を満たすことである.

$\mathbb{R}$ベクトル空間の同型,$\Omega_{B}^{p}(G) \simeq \Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g^{*}})$が成り立つ.ここで,$\Omega_{B}^{p}(G)$はLie群$G$上の両側不変$p$次微分形式全体を表す.

Lie群の一般論より,$G$上の左不変$p$-form全体を$\Omega_{L}^{p}(G)$とおくと,$\mathbb{R}$ベクトル空間の同型写像$F_{p} : \Omega_{L}^{p}(G) \to \bigwedge^{p} \mathfrak{g}^{*}$が存在するのであった.この$F_{p}$$\Omega_{B}^{p}(G)$への制限を考えたとき,$F_{p}|_{\Omega_{B}^{p}(G)}$は単射なので,これが$\Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g})$への全射であることが示されれば,補題が示される.まず,$F_p{\Omega_{B}^{p}(G)} \subset \Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g}^{*})$を示す.$\omega \in \Omega_{B}^{p}(G)$に対し,$f_{\omega} = F_{p}(\omega)$とおくと,$g \in G$と,$X_1, ... , X_p \in \mathfrak{g}$に対し,
\begin{eqnarray} g(f_{\omega})(X_1, ... ,X_p) &=& f_{\omega}(Ad(g^{-1})X_1, ... ,Ad(g^{-1})X_p) \\ &=& \omega_{e}(C_{g^{-1} *}{}X_{1}, ... , C_{g^{-1}*}X_{p}) \\ &=& (C_{g}^{*} \omega)_{e}(C_{g^{-1} *}{}X_{1}, ... , C_{g^{-1}*}X_{p}) \\ &=& \omega_{e}(X_1, ... ,X_p) \\ &=& f_{\omega}(X_1, ... ,X_p) \end{eqnarray}
つまり,$f_{\omega} \in \Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g}^{*})$となる.逆に$\omega'$に対し,$\omega = F_{p}^{-1} (\omega')$とおくと,上記の式から任意の$g \in G$と,$X_1, ... , X_p \in \mathfrak{g}$に対し,$\omega_{e}(X_1, ... ,X_p) = (C_{g}^{*} \omega)_{e}(X_{1}, ... , X_{p})$.よって,任意の滑らかなベクトル場は左不変ベクトル場の$C^{\infty}(G)$係数の線形結合で書けるので,$\omega = C_{g}^{*}(\omega)$.つまり$F_p({\Omega_{B}^{p}(G)}) \subset \Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g}^{*})$$F_{p}|_{\Omega_{B}^{p}(G)}$は全射になる.$\square$

$\Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g}^{*})$もまた,Lie代数の外微分作用素$d_{\mathfrak{g}}$により,チェインを形成するため,コホモロジー$H_{Ad}^{p}(\mathfrak{g}^{*})$が定義でき,以下のコホモロジーの同型が成り立つ.

コンパクト連結Lie群$G$と,その上のLie代数$\mathfrak{g}$に対し,以下のコホモロジーの同型が成り立つ.
$$H_{dR}^{p}(G) \simeq H_{B}^{p}(G) \simeq H_{Ad}^{p}(\mathfrak{g}^{*})$$

次回予告

今回の記事では,コンパクト連結Lie群,およびその上のLie代数のコホモロジーについて考察を行い,
最終的に$G$上のde Rhamコホモロジーは,Lie代数$\mathfrak{g}$の共役不変な交代形式がなすコホモロジーと同型であることを示した.


ところが,実はLie代数$\mathfrak{g}$上の共役不変な交代形式は,すべて($d_{\mathfrak{g}}$に関して)閉形式であることが知られている.よって,コンパクトLie群のコホモロジーは,$\Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g^{*}})$の次元を調べる問題に帰着し,コホモロジー論を簡単な問題に変換できる.


次回の記事では,Lie代数$\mathfrak{g}$上の共役不変な交代形式が閉形式であることを示したのち,$\Omega_{Ad}^{p}(\mathfrak{g^{*}})$の性質を調べる.また,ある条件の下では,$\mathfrak{g}$上に,Cartan's 3-formと呼ばれる特別な0でない交代形式が存在することを示し,球面のde Rhamコホモロジーと比較することにより,$1,3$次元でない球面上にはLie群構造が存在しないことを証明する.

参考文献

[1]
Glen E. Bredon, Topology and Geometry (Graduate Texts in Mathematics, 139), 1993
[2]
John Lee, Introduction to Smooth Manifolds (Graduate Texts in Mathematics, 218) Second Edition, 2012
[3]
松島 与三, 多様体入門 (数学選書 (5)) 第37版, 2011
投稿日:2023618

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