まえがき
こんにちは!的場 沙雪です.今回は分解型複素数について考えていた時に,分解型複素数全体の集合の部分集合は乗法群に出来るのではないかと考え,調べてみたのですが特にそのような記述は見つからなかったので記事にしようという話です.
群論がわからない方も,極形式もどきの部分だけでも読んでみる価値はあると思います!なお群論の知識は本当に初歩の部分だけで問題無いです!
Wikipedia
を参照してもいいかもしれません.
オイラーの公式
定義や導出方法など詳しくは
こちらのサイト
などを参照していただきたいのですが,このような公式があります(紹介しなくてもいいのですが,後々計算が楽になります)
さらに,指数法則も成り立ちます.
極形式もどき
(非零)複素数には極形式と呼ばれる表示方法がありました.
分解型複素数でも極形式(のようなもの)を考えることが出来ます.を考えてみましょう.ただし,とします.これは実部が,虚部がなので,分解型複素数を平面上の点にプロットするとは双曲線のの部分にあることがわかります.
をの範囲で動かしてみる
と,の形で表せる点全体は図1に示す領域になります(境界は含みません).
が表す領域
さて,困りました.どうやらの形では分解型複素平面全体を表現出来ないようです.どうにかして残りの部分を表現できないでしょうか……
そういえば,複素数において倍は原点対称に点を移す操作でした.分解型複素数でも出来ないでしょうか?ということで,やってみます.は実部が,虚部がなので,先程と同様にプロットするとは双曲線のの部分にあることがわかります.つまりの形で表せる点全体は図2に示す領域になります(境界は含みません).
が表す領域
残るは上部分と下部分です.上部分は双曲線のの部分にある点を表現出来ればいいことがわかるので,そこから逆算しましょう.は変形するととなるので,を考えればいいことがわかります.なので,で表せるで表せる点全体は図3に示す領域になります(境界は含みません).
が表す領域
これで後は下部分だけです!下部分は先程考えた倍の話から,を考えればよいことがわかります.つまりで表せるで表せる点全体は図4に示す領域になります(境界は含みません).
が表す領域
以上でを満たす全ての点を極座標(のようなもの)で表すことが出来ました!分解型複素数のすごいところは,なんとこの極座標(のようなもの),とが一意に定まります!!!複素数では偏角に周期の任意性がありましたが,分解型複素数では任意性が無いので,対数関数が多価性を持ちません!!!!!!ただし,,の定義のしようがない(もしくは,,は指数関数の値域にない)ので,対数関数の定義域は図1で表される領域だけになります……どなたかうまい定義を思いついたらご一報いただければ幸いです.私はのように複素数を持ってくることで無理やり解決は出来るのかな……?と考えています.二元数の行列表現から以下の表(表の値は積)を作れるので,四元数と恐らく同型な数体系を考えて何とか出来ないでしょうか……
なお,今回はを満たす部分は使わないので関係ないですが,などとして表現することが出来ます(は
冪等元
です,冪等元を用いると計算が楽になります.「幻影数」で検索してみてもいいかもしれません).
以後,図1,図2,図3,図4の領域に移される分解型複素数全体の集合を,それぞれ極形式(のようなもの)になぞらえて,,,と表すことにします.
乗法群
いよいよ大詰めです.と定義すると,なんとは乗法群になります!きちんと述べれば,組はアーベル群になります(ちなみに組や組もアーベル群になります)!
これを示すには,元々は可換モノイドですから,上で積が閉じていること(組がマグマであること),そしての任意の元が上に乗法逆元を持つことを示せば十分です.なお,乗法単位元はに属しています.
まず前者の乗算の閉性からです.の元,をとると(もちろん,,,です),それらの積は指数法則よりとなっての元となります.,,の元はの元にそれぞれ,,が掛かっているだけなので,結局は乗法に関して閉じていることがわかります.具体的には以下の表のようになります.
さあ後は逆元の存在性のみです!先程と同じくの元,をとると,それらの積はとなります.ここで,乗法単位元はに属しているので,極形式(のようなもの)で書けます.具体的にはです,ということは,に注意して,と定義すればとなって積が乗法単位元になります!つまりの乗法逆元は上に存在してとなります.
先程の表から,残る,,の乗法逆元はそれぞれ,,上に存在することがわかります(乗法逆元との積は乗法単位元なので,特にに属していなければなりません).後はもうわかりますね!,,の乗法逆元はそれぞれ,,です.ようやく示せました!!
あとがき
分解型複素数はなんだかマイナーというか豆知識のような扱いを受けがち(体感)ですが,こんなにも面白い性質を持っているんです!!みなさんも分解型複素数を研究してみてはいかがでしょうか?ここまで読んでくださりありがとうございました.