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解説大学数学以上
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Re:マクローリン展開から始める三角関数

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\Gamma} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{ndiv}[0]{\nmid} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\mathrm{Re}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z})^\times} $$

introduction

高校では三角関数は直角三角形の一方の鋭角$\theta\;[\mathrm{rad}]$に対する正弦、余弦で定義される。
そして直角三角形と扇の面積比較(図1)による不等式$\sin\theta<\theta<\tan\theta$から$\dis\lim_{\theta\to0}\frac{\sin\theta}{\theta}=1$が導かれ、三角関数の解析的性質が考察されていく。

 

しかし円及びに扇の面積は積分によって計算され、積分を計算するためには三角関数の解析的性質がわからないといけないのでこれは循環論法となってしまう。
そこでその矛盾を回避すべく現代数学は三角関数の定義を変えてしまおうという手を取った。
幾何学的性質から解析的性質が得られないなら解析的性質から幾何学的性質を得ればよいではないか、と。

本題

現代数学においては三角関数は
$\dis\sin x=\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}x^{2n+1},\cos x=\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n)!}x^{2n}$
で定義される。これらは
$\dis(\sin x)'=\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}(x^{2n+1})' =\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}(2n+1)x^{2n} =\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n)!}x^{2n}=\cos x$
同様に
$(\cos x)'=-\sin x$
という関係を満たす。

つまり
$(\sin^2x+\cos^2x)'=2\sin x(\sin x)'+2\cos x(\cos x)'=2\sin x\cos x-2\sin x\cos x=0$
なので、
$\dis\sin0=\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}0^{2n+1}=0$
$\dis\cos0=1+\sum^{\infty}_{n=1}\frac{(-1)^n}{(2n)!}0^{2n}=1$
に注意すると
$\sin^2x+\cos^2x=1$
がわかる。

よって媒介変数表示
$\left\{\begin{array}{l} x=\cos t\\y=\sin t \end{array}\right.$
で表される関数のグラフは単位円(の少なくとも一部)を描き、
$\left\{\begin{array}{l} x'=-\sin t\\y'=\cos t \end{array}\right.$
なので$t$の増加に伴って点$(x,y)$は半時計回りの方向に進む(図2)。

 

また任意の実数$t_0$に対し$t=0$から$t=t_0$までにグラフ$(\cos t,\sin t)$の描く弧の長さは
$\dis\int^{t_0}_0\sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2}dt=\int^{t_0}_01dt=t_0$
なので、弧度法の定義より$\theta\;[\mathrm{rad}]=t$(図3)であり、高校における三角関数と現代数学における三角関数は一致することがわかる。

 

ちなみに現代数学における三角関数だと高校では厳密には示せなかった$\dis\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1$
$\dis\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=\lim_{x\to0}\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}x^{2n}=1+\sum^{\infty}_{n=1}\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}0^{2n}=1$
と簡単に示せてしまう。

おまけ

その1

高校における三角関数では$\displaystyle\lim_{\theta\to0}\frac{\sin\theta}{\theta}=1$が厳密には示せないと言ったが実は頑張れば示すことができる。
例えば円の面積は三角関数を使わないと求められないのに対し、球の体積は簡単な計算で求めれることを利用して円の面積を間接的に求めることができる。

具体的には円$x^2+y^2=r^2$の面積を$S(r)$、球$x^2+y^2+z^2=1$の体積を$V$とおくと
相似比$1:\sqrt{1-x^2}$の図形の面積は$1:(1-x^2)$であることから
$S(\sqrt{1-x^2})=(1-x^2)S(1)$
であり、$y$-$z$平面による球の断面積は$S(\sqrt{1-x^2})$なので、
$\dis V=\int^1_{-1}S(\sqrt{1-x^2})dx=S(1)\int^1_{-1}(1-x^2)dx=\frac{4}{3}S(1)$
またバームクーヘン分割によって
$\dis V=2{\pi}\int^1_0x(2\sqrt{1-x^2})dx=4\pi\left[-\frac{1}{3}(1-x^2)^{\frac32}\right]^1_0=\frac{4}{3}{\pi}$
と計算できる。

よって$S(1)=\pi$つまり$S(r)=S(1)r^2={\pi}r^2$が示される。

その2

指数関数$e^x$は定理、または定義として$\dis e^x=\sum^{\infty}_{n=0}\frac{1}{n!}x^n$という表示を持つので、
\begin{eqnarray} e^{ix}=\sum^{\infty}_{n=0}\frac{1}{n!}(ix)^n &=&\sum^{\infty}_{n=0}\frac{1}{(2n)!}(ix)^{2n}+\sum^{\infty}_{n=0}\frac{1}{(2n+1)!}(ix)^{2n+1} \\&=&\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n)!}x^{2n}+i\sum^{\infty}_{n=0}\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}x^{2n+1} \end{eqnarray}
となり、関数等式$e^{ix}=\cos x+i\sin x$(オイラーの定理)が得られる。

また双曲線関数${\sinh}x,{\cosh}x$
$\dis\sinh x=\frac{e^x-e^{-x}}{2},\cosh x=\frac{e^x+e^{-x}}{2}$
と定義されるように、三角関数もオイラーの定理より
$\dis\sin x=\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i},\cos x=\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}$
と定義されることもある。

おわりに

この記事は 昔に私が書いたコラム的なもの をテキトーに編集し直したものになります。
少し前に Don@ld さんが幾何学的な定義から解析的な性質を考察する記事( $\dis\lim_{h\to0}\frac{\sin h}h=1$の循環論法,解決 )をあげていたのを見て、じゃあ私も解析的な定義から幾何学的な性質を考察する記事を書いておこうと思って投稿することにしました。

参考文献

投稿日:2021328
更新日:2021328

投稿者

主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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コメント

主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。