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Schurの補題①

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初めまして

こんにちは。MakkyoExistsと申します。
まずは有限群の表現論において基本的なSchurの補題について書きたいと思います。

ちなみに何でSchurの補題について書こうと思ったかというと、たまたま近藤武先生の『群論Ⅲ』という本が手元にあって、パッと開いたところがSchurの補題のページだったからです笑
この補題だったら証明はほとんど定義を使うだけだし書きやすいなと思ったので書いてみました。

まぁ、前置きと自己紹介はこれくらいにしてさっそく中身に入っていきたいと思います。

基本事項

この章では有限群の表現、同型の概念、そして既約表現についての定義をします。
これを読んでいるみなさんには周知のことかもしれませんが、軽く述べておきます。

有限群の表現

$G$を有限群、$k$を体とし、$V$$k$上ベクトル空間とする。$G$の元から$GL(V)$の元への準同型対応
$$ \rho : G \longrightarrow GL(V) $$
が与えられたとき、$\rho$$G$$V$における表現(representation)という。ここで$GL(V)$とは$V$から$V$への線形同型写像全体の集合である。

表現の同型

$G$を有限群、$k$を体とし、$(\rho_1, V_1)$, $(\rho_2, V_2)$$G$の表現とする。
ここで、$G$の任意の元$x$に対して、
$$ f \circ \rho_1(x) = \rho_2(x) \circ f $$
となる$V_1$から$V_2$への同型写像$f$が存在するとき、$(\rho_1, V_1)$$(\rho_2, V_2)$同型(isomorphic)であるといい$(\rho_1, V_1) \sim (\rho_2, V_2)$と表す。

つまり2つの表現が同型であるかどうかは、$V_1$から$V_2$への
・線形で
・同型で
・可換な
写像がとれるかどうかを調べればよいわけです。

同型の定義で出てきた$f \circ \rho_1(x) = \rho_2(x) \circ f$という条件、本当は可換図式を書いた方が分かりやすいのですが、Mathlogで図式をどう書けばよいのかわからなかったため割愛しました(スミマセン)。書き方が分かったら追記します。もしわかりづらいと感じた方は手を動かして書いてみて下さい。

では次に不変部分空間と既約表現について定義します。

不変空間と既約表現

$(\rho, V)$を有限群$G$の表現、$W$$V$の部分空間とする。任意の$G$の元$x$に対し、$\rho(x)(W) \subseteq W$が成り立つとき、$W$$V$$\rho$-不変な部分空間($\rho$-invariant subspace)という。そして$V$$\{ 0 \}$ではない$\rho$-不変な真部分空間を持たないとき$(\rho, V)$既約表現(irreducible representation)という。

どうですか? 初学者には少し複雑に見える定義かもしれませんね。ちなみに
$$ \rho(x)(W) $$
というのは$V$から$V$への写像である$\rho(x)$で、$V$の部分空間$W$の元を写した全体という意味です。集合で書くと
$$ \rho(x)(W) = \{ \rho(x)(w)|w \in W \} $$
といった感じでしょうか。これが任意の$x \in G$に対して$W$から外に飛び出さないというのが$\rho$-不変、そしてそのような部分空間で自明なものが存在しないというが既約表現の定義です。

Schurの補題の証明

ではいよいよSchurの補題について述べたいと思います。主張は以下の通りです。

Schurの補題

$G$を有限群、$k$を体とし、$(\rho_1, V_1)$, $(\rho_2, V_2)$をそれぞれ$G$の既約な表現とする。
また、任意の$G$の元$x$に対して
$$f \circ \rho_1(x) = \rho_2(x) \circ f$$
が成り立つ零写像ではない$V_1$から$V_2$への線形写像$f$がとれるとする。このとき
$(\rho_1, V_1)$$(\rho_2, V_2)$は同型である。

既に定義した通り、2つの表現が同型であるかどうかは$V_1$から$V_2$への
・線形で
・同型で
・可換な
写像$f$がとれるかどうかを調べればよいわけでした。これが既約表現に限って話をすれば「$f$が同型であるかどうか」はチェックする必要がないということですね。

  1. まず$f$が単射であることを示す。$f$は線形写像なので$Kerf = 0$であることを示せばよい。任意の$v \in kerf$, $x \in G$に対し、
    $$ 0 = (\rho_2(x) \circ f)(v) = (f \circ \rho_1(x))(v) = f(\rho_1(x)(v)). $$
    よって$\rho_1(x)(v) \in kerf$となるので$kerf$$V_1$$\rho_1$-不変であることがわかるが、$(\rho_1, V_1)$は既約表現なので$kerf$$0$$V_1$全体になる。
    もし$kerf = V_1$とすると$f=0$となり$f$が零写像ではないという仮定に矛盾するので$kerf = 0$である。これで$f$が単射であることが言えた。

次に$f$が全射であることを示す。$f(V_1)$の任意の元$f(v_1)$をとる($v_1 \in V_1$)。
このとき、任意の$G$の元$x$に対し、
$$ \rho_2(x)(f(v)) = \rho_2(x) \circ f(v) = f \circ \rho_1(x)(v) = f(\rho_1(x)(v)) \in f(V_1). $$
よって$f(V_1)$$\rho_2$-不変であることが分かる。$(\rho_2, V_2)$は既約表現なので$f(V_1) = 0$, $V_2$となるが$f$は零写像ではないので$f(V_1) = V_2$であることが言えて、$f$は全射であることが導かれた。

つまり$f$は線形であり、全単射であり任意の$G$の元$x$に対して$f \circ \rho_1(x) = \rho_2(x) \circ f$が成り立つので2つの表現は同型であることが言えた。

最後に

いかがでしたでしょうか? なかなか書くのって大変ですね笑 肩こりが爆発しそうです。

あ、ちなみにですね、Schurの補題には続きがあって、

Schurの補題(後半)

$k$が代数閉体であるとき$V_1 = V_2$かつ$\rho_1 = \rho_2$が成り立ち、更に
$$ f = \alpha・id_{V_1} $$
となる$k$の元$\alpha$がとれる。

ということも言えます。流れでそのまま証明できるし本当はここまでこの記事で解説したかったのですが、如何せん想像以上に書き疲れたので今日はとりあえずここまでとしておきます。。また次回書くことにしますね笑
(2020/11/08追記:後半の主張も こちらの記事 に書きました。是非見ていただけると嬉しいです。)

最後まで読んで頂きありがとうございました。
また、読んだ感想とかあればコメント下さると嬉しいです。何か誤植とか間違っている点などもございましたら教えて下さい。Twitterも

@MakkyoExists
で検索すれば僕のアカウントが出てきますのでそちらでメンションして頂いても大丈夫です。

では改めて、ありがとうございました('-'*)

投稿日:2020117

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投稿者

音楽してます。数学科です。エースバーンが好きです。

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