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Schurの補題②

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

はじめに

こんにちは。MakkyoExistsです。 前回の記事 で以下の主張を示しました。

Schurの補題(一部)

$G$を有限群、$k$を体とし、$(\rho_1, V_1)$, $(\rho_2, V_2)$をそれぞれ$G$の既約な表現とする。
また、任意の$G$の元$x$に対して
$$f \circ \rho_1(x) = \rho_2(x) \circ f$$
が成り立つ零写像ではない$V_1$から$V_2$への線形写像$f$がとれるとする。このとき
$(\rho_1, V_1)$$(\rho_2, V_2)$は同型である。

今回はこの続きを解説したいと思います。表現や同型の定義、上の主張の証明も前回の記事( https://mathlog.info/articles/214 )に載っていますのでもし見られていない方は先にそちらを見ていただくと良いと思います。では内容に入っていきましょう。

Schurの補題

Schurの補題

$G$を有限群、$k$を体とし、$(\rho_1, V_1)$, $(\rho_2, V_2)$をそれぞれ$G$の既約な表現とし、$V_1$, $V_2$の次元は有限次元とする。
また、任意の$G$の元$x$に対して
$$f \circ \rho_1(x) = \rho_2(x) \circ f$$
が成り立つ零写像ではない$V_1$から$V_2$への線形写像$f$がとれるとする。このとき
$(\rho_1, V_1)$$(\rho_2, V_2)$は同型であり、もし$k$が代数閉体でかつ$V_1 = V_2$, $\rho_1 = \rho_2$であるとき、
$$ f = \alpha・id_{V_1} $$
となる$k$の元$\alpha$がとれる。

$V_1$の次元は有限と仮定しているので$f$は固有値を持ち、それを$\alpha$とする。$k$は代数閉体なので$\alpha \in k$である。ここで線形写像$g$
$$ g = f - \alpha・id_{V_1} $$
とおき$g=0$が導かれれば証明が出来たことになる。任意の$x \in G$, 任意の$v \in V_1$に対し、
$$\begin{eqnarray} \rho_1(x) \circ g(v) &=& \rho_1(x) \circ (f - \alpha・id_{V_1})(v) \\ &=&(\rho_1(x) \circ f - \alpha \rho_1(x))(v)\\ &=&\rho_1(x) \circ f(v) - \alpha \rho_1(x)(v)\\ \end{eqnarray}$$

となる。今$V_1 = V_2$$\rho_1 = \rho_2$を仮定しているので可換条件$f \circ \rho_1(x) = \rho_2(x) \circ f$から
$$\begin{eqnarray} &&\rho_1(x) \circ f(v) - \alpha \rho_1(x)(v)\\ &=&f \circ \rho_1(x)(v) - \alpha \rho_1(x)(v)\\ &=&(f \circ \rho_1(x) - \alpha \rho_1(x))(v)\\ &=&(f - \alpha・id_{V_1}) \circ \rho_1(x))(v)\\ &=&g \circ \rho_1(x)(v) \end{eqnarray}$$
となる。まとめると$\rho_1(x) \circ g = g \circ \rho_1(x)$が成り立つことが分かる。

Schurの補題の前半の主張より$g$は零写像か、もしくは同型写像となるが、もし$g$が同型写像(つまり零写像ではない)とすると、$\alpha$の固有ベクトル$v_0(\ne 0)$に対し、
$$\begin{eqnarray} g(v_0) &=& (f-\alpha・id_{V_1})(v_0)\\ &=& f(v_0)-\alpha・id_{V_1}(v_0)\\ &=& f(v_0)-\alpha v_0\\ &=& \alpha v_0 - \alpha v_0 \\ &=&0 \end{eqnarray}$$
となり矛盾となる(零ベクトルではない$v_0$が同型写像$g$によって$0$に写ってしまうため)。よって$g$は零写像となり$f = \alpha・id_{V_1}$が得られる。

おわり

ということで、Schurの補題の後半の証明が終わりました。短かったということもあり前回の記事ほどは時間かからなかったですね。証明で使っている固有ベクトルとか固有値の定義とかも書いた方が良いのかなーとも思ったんですが、この文章見ている方にとっては既知である人が多いだろうと思ったんで省きました(決して面倒になったわけではありませんよ…??)
まぁ需要があったら(あと気力があったら)固有値についてとかも触れようと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。前回記事書いて投稿したとき、誰からも反応がなくてもおかしくはないなーと思っていたのですが意外と良いねが来て、コメントも頂けて嬉しいです。とても励みになります。

今回も何か感想とか誤字の報告とかございましたらコメント頂けると助かります。
(良いねだけでもめっちゃ舞い上がります笑)

では、また!('-'*)

投稿日:2020118

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投稿者

音楽してます。数学科です。エースバーンが好きです。

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