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全射の個数の問題について

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この記事では, 以下の問題の解答を書こうと思います. 正整数の集合をZ>0と書きます.


 整数n,m1mnを満たす. 集合X={1,2,,n}から集合Y={1,2,,m}への全射の個数はk=1m(1)mk(mk)knに等しいことを示せ.

(解答)

iYに対しf(x)=iとなるxXの個数をaiとおきます. するとi=1mai=nであり, 逆にこれを満たす正整数の組(a1,,am)に対し, 全射f:XYがいくつか存在します.

これは具体的には, 1からnの整数をa1個, a2個, ..., am個, のグループに分ける場合の数を考えれば, このような全射fn!a1!a2!am!通りあり得ます.

従って求める個数S
S=a1++am=naiZ>0n!a1!a2!am!
と書けます.

ここで関数g(x)の(Maclaurin展開の)xkの係数を[xk]g(x)と書くことにすると, [xk]ex=1k!が成り立つことを利用します. 即ち, x1,x2,,xmの式
i=1m(exi1)
を展開することを考えたとき, そのn次の項全ての係数の和は, 和がnである正整数の組(a1,,am)全てに対して1a1!am!を足し合わせたものに等しいのです!(ex10次の項はないことが効いてきます)

さらにこの値は, x1,,xmを全て同一視してxとした式 (ex1)mxnの係数に等しいので,

S=n!a1++am=naiZ>01a1!am!=n!a1++am=naiZ>0[x1a1xmam]i=1m(exi1)=n![xn](ex1)m=n!k=0m(1)mk(mk)[xn]ekx=k=1m(1)mk(mk)kn

よって示すことができました. □

実はこれは, 私の過去の記事の主張を用いるととても簡潔に解くことができます.

(解答2)

求める全射の個数をSmとおきます(nは固定する). 全射と限らないXからYへの写像はmn通りあることに注意します.

mn通りの写像f#Imfによって場合分けすると, #Imf=kなるImfY(mk)通りとれ, そのそれぞれに対しf:XImfは全射だからSk通りとれます. 従って
k=1m(mk)Sk=mn
が, 各mに対して成立します.

これに この記事 の主張でnmと置き換えてから, ak=(1)kSk, bm=nmとしたものを適用すれば,
(1)mSm=k=1m(1)k(mk)kn

よって示すことができました. □

読んでくださった方, ありがとうございました.

投稿日:2021419
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