が超越数であることを証明
の続きとなる。前回は、 が超越数であることを証明するための方針を説明した。その中で
となる整数 に対して
とし、
を 成分にもつ 行列 を構成した。今回は、この行列について
を証明する。
そのために2変数多項式の零点に関する補題を証明するのだが、
前回にも触れた、その後の共著論文 [2] にやや一般的な補題があるので、それを証明する。
van der Monde型行列
まず、次の van der Monde型行列に関する命題を示す。
命題
を正の整数、 を 以上の整数とする。
が 個以上のでない数からなる集合ならば、行列 が正則となるように から 個の数 をとることができる。
のときは に対して から明らかである。
を に置き換えたとき命題が正しいとし、 を 以上の整数、 が 個以上のでない数からなる集合とする。すると先の仮定から が正則となるように を からとることができる。
であるから
によって定まる多項式 の最高次の項は となる。
のとき であるから と因数分解できる。 の次数は であるから、 の解の個数は より少ない。よって とは異なる の要素 で となるものが存在するので
となる。
これにより、 についても命題が正しいことが示され、数学的帰納法より命題は任意の正の整数 について正しいことが示された。
変数多項式の消滅
変数多項式に関する次の補題が、(2)を証明するための鍵となる。
補題
を正の整数とし、 が複素数で
が成り立っているとする。
また が
となる複素数係数の多項式で、 とする。
このとき とおいて となるすべての整数 について となるのであれば、 は多項式として でなければならない。
として矛盾を導く。 を について展開すれば
となる がとれる。また、 である。
を で割れるだけ割って、 としても一般性は失われないので、以下、 とする。
仮定 (4) および から、 に先の命題を適用することができ、 となる整数の組 から 個の要素からなる部分集合 を
となるように取り出すことができる。
について
とし、
とおくと は正則な 行列で、
より
である。 の各成分は の余因子を で割ったものだから、
としたこととあわせて
とあらわされる。
ならば だから のとき より
となる。したがって
となる。仮定 (5) から は 個より多くの解をもつ。
一方 の最高次の項を とおくと で
の最高次の項は であるから
の次数は
となって矛盾する。
このことから でなければならないことがわかる。
の証明
とおくと
である。ここで を
の解とする。
とし
とおくと
が成り立つ。
この に先の補題が適用できるように をとる。まず だから とおくと (6) が成り立つ。 とおくと は無理数だから
より (5) は成り立ち、 で はの累乗根ではないから
より (4) も成り立つ。よって補題から は多項式として に等しい。つまり の係数 はすべて でなければならない。
このことから、(7) が成り立つとき はすべて でなければならないことがわかる。これは の各列が線形独立であること、つまり であることを意味している。
以上によって (2) は示された。次回は (3) の証明に移る。