諸事象について無関心をつらぬきとおすことは重要なステップ: どこにも進まないうちは.
前幾何 $(M,c)$ と $A , B \subset M$ について $$\dim{A \cup B}\leq \dim{A} + \dim{B} - \dim{A \cap B}$$ が成り立つ.
$A \cap B$ の基底を取ってから足りない分を補う.
前幾何 $(M,c)$ と $A \subset M$ について $c(A) = A$ であるとき, 部分空間であるという.
前幾何 $(M,c)$ と $A \subset M$ について $c(A) = A$ かつ $A$ が有限基底を持つとき, 有限次元部分空間もしくは砂であるという.
前幾何 $(M,c)$ と $M$ の有限次元部分空間 $A$, $B$ について $$\dim{A \cup B} = \dim{A} + \dim{B} - \dim{A \cap B}$$ が成り立つとき, $M$ をモジュラーであるという.
ベクトル空間 $V$ について, $A \subset V$ に対して $c(A)$ として $A$ の張る部分空間を充てる対応 $c$ を取れば, $(V,c)$ はモジュラーは前幾何となる.
ベクトル空間 $V$ について, $V$ の $1$ 次元部分空間のなす集合を$\mathbb{P}(V)$ と表記すると, $\mathbb{P}(V)$ 上には $V$ の前幾何から誘導される前幾何構造が定まるが, これは幾何となっている. $\dim{V} = \dim{\mathbb{P}(V)}$ が成り立ち, また $\dim{V}$ が $2$ 以上ならば自明ではなく, かつモジュラーである.
実は前幾何について, $M$ から $c(\emptyset)$ を抜いた場所で $c(x)=c(y) \Leftrightarrow x \sim y$ となるような同値関係で割ってあげると, $M$ から自然に誘導される前幾何構造が入るがこれは幾何となっている.
前幾何 $(M,c)$ について以下は同値である:
1 $\Rightarrow$ 2 について, まあ以下 $A$ は砂であるとしてよい.
$B$ が $1$ 次元の場合から話をする. 生成元を $b$ とおく. $x \in c(b)$ ならば 2. は成り立つ. したがって以下 $x \notin c(b)$ とする. このとき $$\dim{A\cup \{b,x\}} = \dim{A} + \dim{c(\{b,x\})} - \dim{A \cap c(\{b,x\})}$$ かつ $$\dim{A\cup \{b,x\}} = \dim{A \cup \{b\}} = \dim{A} + \dim{c(\{b\})} - \dim{A \cap c(\{b\})}$$ が成り立つため, $\dim{A \cap \{b,x\}} = \dim{A \cap \{b\}} + 1$ が成り立つ. より $a \in c(\{b,x\}) \setminus c(\{b\})$ をとると, $x \in c(\{a,b\})$ が成り立つ. $0$ 次元の場合も同様にやってくれ.
2 $\Rightarrow$ 3 について, $A$, $B$ ともに砂としてよく, $\dim{A} = 0$ の場合は自明. $A$ の部分空間 $A_0$ と $a \in A$ で, 次元がひとつ小さく, かつ $c(A_0 \cup \{a\}) = c(A)$ なるものをとる. このとき, $x \in c(A_0 \cup B \cup \{a\})$ ならば 2. より $c \in c(A_0 \cup B)$ であって $x \in c(\{c,a\})$ なるものが存在する. このとき帰納法の仮定より濃度 $1$ の集合 $\{a'\} \subset A$ と濃度 $1$ 以下の集合 $B' \subset B$ が取れて $c \in c(\{a'\} \cup B') $ が成り立つ. ここで, $x \in c(c(\{a, a'\}) \cup B')$ と 2. より, $A' \subset A$ なる濃度 $1$ 以下の集合をとれて $x \in c(A' \cup B')$ となる.
3 $\Rightarrow$ 1 について, $\dim{A}$ についての帰納法を走らせる. 次元 $0$ の場合は自明. $A$ の余次元 $1$ の部分空間 $A_0$ と $a \in A$ について $c(A_0 \cup \{a\}) = A$ となるものを取る.
$a \in c(A_0 \cup B)$ の場合, $c(A \cap B) = c(A_0 \cap B) + 1$ を示せばよい. ここで, 3. より $a \in c(A' \cup \{b\})$ なる濃度 $1$ 以下の集合 $A' \subset A_0$ と $b \in B$ が取れる. $b \in c(A' \cup \{a\})$ より $b \in A$ が成り立つが, $b \in A_0$ とすると $b \notin A_0$ の仮定に矛盾するため, $c(A \cap B) = c(A_0 \cap B) + 1$ が成り立つ.
$a \notin c(A_0 \cup B)$ の場合, $c(A \cap B) = c(A_0 \cap B)$ を示せばよい. ここで, $b \in A \setminus A_0$ なる $b \in B$ があったとすると, $a \in c(A_0 \cup \{b\})$ となりこれは $a$ の取り方に矛盾する. したがって $A \cup B = A_0 \cup B$ が成り立つ.
とりあえず, やることがないので, モジュラーでない前幾何の例をもうひとつ.
$K$ を代数的閉体とする. このとき, $A \subset K$ に対し $A$ の代数的閉包を充てる対応 $c$ について, $(K,c)$ は前幾何となる. 以下 $K$ が無限超越次元を持つとする. ここで, $(K,c)$ はモジュラーでない.
$K$ の超越次数が有限であるような部分代数的閉体 $k$ を任意にとる. $k$ 上独立な元 $a,b,x$ をとり, また $y=ax+b$ であるとする. $t \in c(k \cup \{a,b\}) \cap c(k \cup \{x,y\})$ とすると, 多項式 $f_n$, $\ldots$, $f_0$, $g_m$, $\ldots$, $g_0$ によって $f_n(a,b)t^n + \ldots + f_0(a,b) = 0$ かつ $g_m(x,y)t^m + \ldots + g_0(x,y) = 0$ を成り立たせることができる.
$k[a,b,x]$ にて $t$ の最小多項式を $h(a,b,x,T)$ とおくと, これは $f_n(a,b)T^n + \ldots + f_0(a,b)$ と $g_m(x,y)T^m + \ldots + g_0(x,y)$ を割り切る($k[a,b,x][T] \to k[a,b,x,t]$ の核は高さ $1$ 以下の素イデアルであり $k[a,b,x][T]$ は UFD であるため). このとき, $h \in k[a,ax-y,T] \cup k[x,y,T]$ が成り立つが, このような $h$ は $k[T]$ に属する. よって $t \in k$ が成り立つ.
このとき, $\dim{c(k \cup \{a,b,x,y\})} = \dim{k} + 3$ かつ $\dim{c(k \cup \{a,b\})} = \dim{c(k \cup \{x,y\})} = \dim{k} + 2$ かつ $\dim{c(k \cup \{a,b\}) \cap c(k \cup \{x,y\})} = \dim{k}$ より, $(K,c)$ はモジュラー的ではない.
というわけでそろそろ飽きてきたと思う. 社会問題について考えて, よくわからない仮想敵にエネルギーを消費しててくれ.