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高校数学解説
文献あり

フィボナッチ数から円周率を作る式(新作)

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はじめに

日曜数学アドベントカレンダーについて

この記事は  日曜数学 Advent Calendar 2021  の、$12$$3$日用の記事として作成しました。

$1$日目、$2$日目はtsujimotterさんの記事で、無限級数やフィボナッチ数がテーマになっていましたね。全くの偶然ですが、この記事のテーマも無限級数やフィボナッチ数だったりします。

フィボナッチの日について

フィボナッチ数が連続して並ぶ$11$$23$日は「フィボナッチの日(Fibonacci Day)」と呼ばれており、Twitterでもそれにちなんだ投稿が多数見られます。

そんなわけで、私も$2021$$11$$23$日のフィボナッチの日に、私が以前から趣味で作り続けている「フィボナッチ数から円周率を作る式」の新作を発表しました。

この記事ではその式の証明をしたいと思います。

(余談ですが、  日曜数学 Advent Calendar 2021  は申し込めば誰でも参加できるイベントで、空いてる日であれば何日の担当にするかは自由に選べる状態だったのですが、今回、$12$$3$日にした理由も、「$1,2,3$ は連続するフィボナッチ数になっているので、この記事を公開するのにふさわしいと思った」、という発想だったりします。)

フィボナッチ数から円周率を作る式

今回作ったのは次の式です。
フィボナッチ数と二重階乗を組み合わせています。

${\displaystyle \begin{align} &\sum_{k=0}^{\infty} \frac{5(2k-1)!!(F_{2k}+F_{2k+2})}{(2k)!!(2k+1)2^{2k+1}}\\ &\qquad=\frac{5\cdot(-1)!!\cdot(0+1)}{0!!\cdot1\cdot2} +\frac{5\cdot1!!\cdot(1+3)}{2!!\cdot3\cdot2^3} +\frac{5\cdot3!!\cdot(3+8)}{4!!\cdot5\cdot2^5} \cdots\\ &\qquad=\pi\\ \end{align} }$

二重階乗について

この記事では $!!$ の記号で二重階乗を表します。
二重階乗とは、階乗の1つおきバージョンで、具体的には次のように計算します。

二重階乗

$1!!=1$
$2!!=2$
$3!!=3\cdot1=1$
$4!!=4\cdot2=8$
$5!!=5\cdot3\cdot1=15$
$6!!=6\cdot4\cdot2=48$
$(2k-1)!!=(2k-1)\cdot(2k-3)\cdot\ldots\cdot1$
$(2k)!!=2k\cdot(2k-2)\cdot\ldots\cdot2$

$k!!=k\cdot(k-2)!!$ の関係を使って$0$$-1$の二重階乗を定義します。

$0!!=\dfrac{2!!}{2}=1$
$(-1)!!=\dfrac{1!!}{1}=1$

ポッホハマー記号について

この記事では、 $(\cdot )_k$ の記号でポッホハマー記号を表します。
ポッホハマー記号とは、階乗に類似した演算で、次のように計算します。

${\displaystyle (x)_{n}=\underbrace{x(x+1)(x+2)\cdots (x+n-1)}_{n\text{個}}={\frac {(x+n-1)!}{(x-1)!}} }$

具体例をあげると次のようになります。

ポッホハマー記号

${\displaystyle (4)_{3}=4\cdot5\cdot6=120 }$

${\displaystyle (1)_{4}=1\cdot2\cdot3\cdot4=24 }$

${\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)_{5}=\frac{1}{2}\cdot\frac{3}{2}\cdot\frac{5}{2}\cdot\frac{7}{2}\cdot\frac{9}{2}=\frac{9!!}{2^5} }$

ポッホハマー記号の定義には複数の流儀があるみたいですが、この記事では上記の定義で使います。

補題など

$\arcsin$ の無限級数表示

$\sin $ の逆関数 $\arcsin $ は次のように無限級数で表すことができます。

$\arcsin$ の無限級数表示

${\displaystyle \arcsin x =\sum_{k=0}^{\infty} \frac{(2k-1)!!x^{2k+1}}{(2k)!!(2k+1)} }$

この記事では $\arcsin$ の定義域を $-1< x < 1$ に、値域を $-\dfrac{\pi}{2}< y < \dfrac{\pi}{2}$ とします。

!FORMULA[40][33135590][0] の定義域・値域 $\arcsin$ の定義域・値域

$\arcsin$ の無限級数表示は次のように証明できますが、難しければ飛ばしてもらってもかまいません。

$\arcsin$ の無限級数表示

$\arcsin$$\sin$ の逆関数であることから、$y=\arcsin x$ とすると$x=\sin y$ なのでこれを $y$ で両辺微分して

$\dfrac{dx}{dy}=\cos y$

逆数をとって

${\displaystyle \begin{align} \dfrac{dy}{dx}&=\dfrac{1}{\cos y}\\ &=\dfrac{1}{\sqrt{1-\sin^2 y}}\\ &=\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}\\ \end{align} }$

${\displaystyle \begin{align} \therefore y &=\int_0^x \dfrac{1}{\sqrt{1-t^2}}\,dt\\ \end{align} }$

ここで一般二項定理

${\displaystyle (1-x)^{-a}=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(a)_k}{k!}x^k }$

を使って被積分関数を無限級数にして項別積分すると

${\displaystyle \begin{align} y &=\int_0^x \dfrac{1}{\sqrt{1-t^2}}\,dt\\ &=\int_0^x \sum_{k=0}^{\infty}\frac{\left(\frac{1}{2}\right)_k}{k!}t^{2k}\,dt\\ &= \sum_{k=0}^{\infty}\frac{\left(\frac{1}{2}\right)_k}{k!(2k+1)}x^{2k+1}\\ &= \sum_{k=0}^{\infty}\frac{(2k-1)!!}{2^k k!(2k+1)}x^{2k+1}\\ &= \sum_{k=0}^{\infty}\frac{(2k-1)!!x^{2k+1}}{(2k)!!(2k+1)}\\ \end{align} }$

一般二項定理については、次の記事なども参考にしてみてください。
arcsinとその2乗のMaclaurin展開の証明
一般化二項定理とルートなどの近似

黄金比と三角関数の間の関係

また、黄金比と三角関数の間に次のような関係があることを使います。

$ \sin\dfrac{\pi}{10} =\dfrac{1}{2\varphi} $

$ \sin\dfrac{3\pi}{10} =\dfrac{\varphi}{2} $

正五角形の辺の長さと対角線の長さの比が $1:\varphi$ であることと、辺と対角線のなす角度から、次の図のとおりこれらの三角比が求められる。

辺と対角線の長さの比からこれらの三角比がわかる 辺と対角線の長さの比からこれらの三角比がわかる

黄金比とフィボナッチ数の間の関係

黄金比とフィボナッチ数の次の関係も使います。

$ \varphi^n+(-\varphi)^{-n}=F_{n-1}+F_{n+1} $

ビネの公式より
${\displaystyle \begin{align} F_{n-1}+F_{n+1} &=\frac{\varphi^{n-1}-(-\varphi)^{-n+1}}{\sqrt{5}} +\frac{\varphi^{n+1}-(-\varphi)^{-n-1}}{\sqrt{5}}\\ &=\frac{\left(\varphi^{-1}+\varphi\right)\left(\varphi^{n}+(-\varphi)^{-n}\right)}{\sqrt{5}}\\ &=\varphi^{n}+(-\varphi)^{-n} \end{align} }$

証明

これで準備がすべて整いました!
上記の公式・補題を用いて冒頭の式を次のように変形していきます。

${\displaystyle \begin{align} &\sum_{k=0}^{\infty} \frac{5(2k-1)!!(F_{2k}+F_{2k+2})}{(2k)!!(2k+1)2^{2k+1}}\\ &\qquad=\sum_{k=0}^{\infty} \frac{5(2k-1)!!(\varphi^{2k+1}+(-\varphi)^{-2k-1})}{(2k)!!(2k+1)2^{2k+1}}\qquad\text{(補題4を使った)}\\ &\qquad=\sum_{k=0}^{\infty} \frac{5(2k-1)!!\varphi^{2k+1}}{(2k)!!(2k+1)2^{2k+1}} -\sum_{k=0}^{\infty} \frac{5(2k-1)!!\varphi^{-2k-1}}{(2k)!!(2k+1)2^{2k+1}}\\ &\qquad=5\left( \sum_{k=0}^{\infty} \frac{(2k-1)!!\left(\frac{\varphi}{2}\right)^{2k+1}}{(2k)!!(2k+1)} -\sum_{k=0}^{\infty} \frac{(2k-1)!!\left(\frac{1}{2\varphi}\right)^{2k+1}}{(2k)!!(2k+1)} \right)\\ &\qquad=5\left(\arcsin\frac{\varphi}{2}-\arcsin\frac{1}{2\varphi}\right)\qquad\text{(補題2を使った)}\\ &\qquad=5\left(\frac{3\pi}{10}-\frac{\pi}{10}\right)\qquad\text{(補題3を使った)}\\ &\qquad=\pi\\ \end{align} }$

これで証明完了です!
円周率に収束することをご納得いただけましたでしょうか。

おわりに

私はこれまで趣味でフィボナッチ数から円周率を作る式をいろいろ作ってきました。

過去の記事
フィボナッチ数から円周率を作る自作の式たち

実用的な意味は全くありません。
過去に作った式の中には今回の式と似ているものもありますが、実は、今回初めて、「整数とフィボナッチ数だけを使った(二重になっていない)無限級数で円周率に収束するもの」を作ることができました!

整数とフィボナッチ数のみを使って円周率に収束する無限級数を作ることは、私の中ではずっと課題として残っていたので、今回、この級数を作ることができたことにとても満足しています。

みなさんも、ぜひオリジナルの無限級数を作って遊んでみてください。

参考文献

投稿日:2021122

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apu_yokai
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