この記事は、「連載 グラフアートを描こう」の第2回です。
第1回
を読んでいない人はそちらから読んでいただくとより理解が深まります。
第2回は「直線を描こう」であると予告しましたが、構成を見直し、今回はグラフとは何かについて書くことに決定いたしました。
直線の方程式を楽しみにしていた皆さん、申し訳ございません。
この記事では、グラフアートの構成要素であるグラフとは一体何なのかを解説します。
グラフとは、$ x $座標と$ y $座標に関する等式を満たす全ての点を集めたものです。
(厳密には正しくないですが、グラフアートを描くためにはこの定義で十分です)
一般に、$ x $座標は単に$ x $、$ y $座標は単に$ y $と表されるため、「$ x $座標と$ y $座標に関する等式」の部分は$ x $と$ y $に関する等式として表されます。
「$ x $と$ y $に関する等式」は、$ x $だけ、または$ y $だけの式でも構いません。たとえば、$ x = 1 $という等式は「$ x $座標が$ 1 $で、それ以外の制約はない(つまり$ y $座標は何でもいい)」ということなので、グラフは縦線になります。
$x = 1\hspace{1mm}のグラフ$
前回の最後に描いた、「$ x $座標と$ y $座標の値が等しい点」の集まりがどんな図形だったか覚えているでしょうか。そうですね、斜めの線でした。
$x\hspace{1mm}座標と\hspace{1mm}y\hspace{1mm}座標の値が等しい点を全部集めた$
$ x $座標は$ x $、$ y $座標は$ y $と表すので、「$ x $座標と$ y $座標の値が等しい」は$ x = y $、あるいはこの左辺と右辺を入れ替えて$ y = x $と書けます。
こうして、$ y = x $のグラフを描くことができました。
では、もっと複雑な数式のグラフも描いてみましょう。
$ y = x^3 - 2x $のグラフは、どんな形でしょうか。
$ x^3 $が出てくる数式のグラフは数学Ⅱで習うのですが、この連載をここまで読んできた人ならもう描けるはずです。
グラフを描くためには、この数式を満たす点を全部集めればよいですね。
$ x $はどんな実数にもなれるので、全部集めるのは現実には不可能です。
そこで、試しに$ x = -2, -1.8, \cdots, 1.8, 2 $について対応する$ y $座標を計算して、それらの点を取ってみましょう。
計算が大変ですが、実際に点を描くと次のようになるはずです。縦に長いので少し小さめに表示しています。
$ y = x^3 - 2x \hspace{1mm}を満たす点をいくつか描いた$
特徴的な曲線が見えてきましたね。この間の点も全部描くと、次のような曲線になります。
$ y = x^3 - 2x\hspace{1mm}のグラフ$
左辺に来るのが$ y $だけとは限りません。左辺にも右辺にも、どんな式が来る可能性だってあります。
まずは、$ x = -0.5, -0.4, \cdots, 0.4, 0.5 $の点を描いてみましょう。
$ y^2 $の項があるので、$ x $を一つ決めるごとに$ y $の二次方程式になり、$ y $は(重解を除いて)二つ出てくるはずです。
実際に描くと、次のような図形が浮かび上がってきます。
$ 4x^2 + y^2 = 1\hspace{1mm}を満たす点をいくつか描いた$
真ん中が少しわかりにくいですが、もっと点を描いていくと、縦長の楕円ができます。
$4x^2 + y^2 = 1\hspace{1mm}のグラフ$
数式と点を出すので、その数式のグラフにその点が含まれるかどうか判定してみてください。全部で4問です。
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(1)~(3)は代入するだけです。
(4)は、ヒントを使用して、左辺>右辺を示します。
$$ \pi \cdot \frac{1}{2} = \frac{\pi}{2} > 1 \geq \sin{\frac{1}{2}} $$
これで$ \left(\pi, \frac{1}{2}\right) $が$ xy = \sin{y} $のグラフに含まれないことが示せました。
ちなみに、グラフの形状としては、(1)は直線、(2)は放物線、(3)は円、(4)は$ y $軸に「巻き付く」ような曲線になります。
グラフの描き方が分かったところで、次はグラフの動かし方について学びましょう。
第3回
は、「グラフを動かそう」です。