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院解13 京大数学系 H24 数学I 1 行列の多項式への代入

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とんとんアカン、ガチでみたことあらへんタイプの問題や
「条件式が与えられて代入した多項式の値を求めるいうのが珍しいな。ほな、やっていこか。教えてとんとん〜」

  1. 複素係数の正則行列$C$の逆行列が$C$の多項式で与えられることをみる.$C$の固有多項式を$\Phi_C(z)=\displaystyle\sum_{k=0}^n a_k z^k$とおくと,ケーリー・ハミルトンの定理から$\Phi_C(C)=0$.定数項$a_0$は固有値の積であり$A$の正則性から$0$ではないことに注意して整理すると
    $ I=\dfrac{1}{a_0}\displaystyle\sum_{k=1}^n a_k C^k=C\left(\dfrac{1}{a_0}\displaystyle\sum_{k=1}^n a_k C^{k-1}\right)=\left(\dfrac{1}{a_0}\displaystyle\sum_{k=1}^n a_k C^{k-1}\right)C$.
    よって$C^{-1}=\dfrac{1}{a_0}\displaystyle\sum_{k=1}^n a_k C^{k-1}$であり,たしかに$C$の多項式である.

示した事実から$f(B)^{-1}$$f(B)$の多項式である.よって$A=Bf(B)^{-1}$$B$の多項式であり$B$と可換.

(2)$C$を複素係数の行列とする.$\sigma(C)$$C$の固有値全体の集合を表す.$g$を複素係数の多項式とするとスペクトル写像定理から$g(\sigma(C))=\sigma(g(C)) $.さらに$0\in \sigma(f(B))=f(\sigma(B))$だから$0\notin f(\sigma(B)\backslash \{0\})$であることをみればよい.$\alpha\in \sigma(B)\backslash\{0\}$とし,$\alpha$に対応する固有ベクトルを$v$とする.$\alpha v=Bv=Af(B)v=f(\alpha)Av$.もし$ f(\alpha)=0$であるとすれば$\alpha v=0$となり矛盾する.

最後にスペクトル写像定理を証明する.
$\alpha$$C$の固有値とし,対応する固有ベクトルの一つを$v$とする.すると$g(B)v=g(\alpha)v$だから$v$$g(\alpha)$に対応する固有値である.
逆に$\alpha\in \sigma(g(C))$とする.$\alpha-g(z)=a(z-\alpha_1)\cdots(z-\alpha_n)$,$a,\alpha_1,\dots,\alpha_n\in \mathbb{C}$とおく.任意の$i$に対して$ \alpha_i\notin\sigma(C)$であるとすると$\alpha I-g(C)=a(B-\alpha_1 I)\cdots(B-\alpha_n I)$は非可逆となり$\alpha$がスペクトルの元であることに矛盾する.よってある$i $に対し$\alpha_i\in\sigma(C)$.このとき$\alpha=f(\alpha_i)\in g(\sigma(C))$.逆の包含も言えた.$\Box$

コメント:(1)にはfunctional calculusを使った解答も可能です. ケーリー・ハミルトンの定理をfunctional calculusで証明できるか で扱った定理$2$によって,固有値$\lambda_j$$\dfrac{1}{z}$$m_j$階微分まで等しい値をとる多項式をとれば,そのような多項式への代入が逆行列になるので,やはり逆行列が多項式になることを言えます.そのような多項式の存在は$0$が固有値でないことと$n\times n$行列の最小多項式が高々$ n$次であることからわかります.
(2)は代入した結果得られる式から関数の性質を導く関数方程式のような問題でしたが,条件式が行列であるところが珍しいと思いました.この点はリンクに貼った記事の定理2の逆も同様だと言えます.

投稿日:23時間前

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