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円に接しまくるn次関数(解決編)

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はじめに

 この記事では SunPillar さんの記事「 円に接しまくるn次関数 」にて提起された問題

 n3以上の整数とする。このときn次多項式fn(x)であって
fn(x)の最高次の係数は正である。
・円x2+y2=1とグラフy=fn(x)n1個の共有点を持ち、それらは全て接点である。
・またその接点のうちx座標が最も小さい点と最も大きい点において円x2+y2=1とグラフy=fn(x)は交差する。
を満たすようなものを求めよ。

について個人的に考察したことをまとめていきます。
 ちなみにこの記事ではこのような関数が一意に定まるかどうかについては考察しませんのであしからず。

一般項について

  SunPillarさんの記事 ではfn(x)の係数についての次のような予想が挙げられていました。

  • nが奇数ならfn(x)は奇関数、nが偶数ならfn(x)は偶関数となる。
  • 特にfn(x)=k=0nakxkと置いたとき、nkの偶奇が異なるときはak=0が成り立つ。
  • k=0,1,2,3,4に対しnkの偶奇が一致していればak
    a0=(1)n2a1=(1)n12n(n2)a2=(1)n21(n1)22a3=(1)n+12(n1)46n(n2)a4=(1)n2(n1)424
    と表せる。

 私はまず同記事に載っているn=3,4,,16に対するfn(x)の具体値とこの予想を参考にfn(x)の一般項について考察し、その結果次のような法則性が見出されました。

 k=5,6に対しnkの偶奇が一致していればak
a5=(1)n12(n3)(n+1)120(n1)6(n(n2))32a6=(1)n21(n4)(n+2)720(n1)6n(n2)
と表せる。
 またk=0,2,4,6に対しank
an=2n2(n1)n2nn2(n2)n22an2=2n4(n1)n2nn42(n2)n22an4=122n6(n1)n4(n(n2))n62an6=n562n8(n1)n6(n(n2))n82
と表せる。

 一見何の法則性も見えませんが流石にこれだけのデータを揃えたことで一筋の光明が差し込み、いくつかの試行錯誤の末に以下の予想を立てることができました。

 nkの偶奇が一致していれば
ak=(1)nk2(n+k42)!(nk2)!k!2k2(n1)k(n(n2))k22
が成り立つ。
 特にA=(n1)/n(n2)とおくと、n=2mのとき
fn(x)=n(n2)4k=0m(1)mk(m+k2)!(mk)!(2k)!(2Ax)2k
が成り立ち、n=2m+1のとき
fn(x)=n(n2)4k=0m(1)mk(m+k1)!(mk)!(2k+1)!(2Ax)2k+1
が成り立つ。

sin版チェビシェフ多項式

  Desmos で実験してみると上の予想は実際に正しそうだということがわかります。
 なので次に
Fm(x)=(2m1)2m(2m2)4k=0m(1)mk(m+k2)!(mk)!(2k)!(2x)2kGm(x)=2m(2m+1)(2m1)4k=0m(1)mk(m+k1)!(mk)!(2k+1)!(2x)2k+1
という多項式の性質について考えました。
 まずは閉じた形を求めようと母関数を考えたりなんだりした結果次のような性質を持つことがわかりました。

Fm(sinθ)=12((2m2)cos2mθ+2mcos(2m2)θ)Gm(sinθ)=12((2m1)cos(2m+1)θ+(2m+1)cos(2m1)θ)
が成り立つ。特に
Fm(sinθ)=(2m1)cos(2m1)θcosθ+sin(2m1)θsinθGm(sinθ)=2msin2mθcosθcos2mθsinθ
とも表せる。

 このことについては sin版チェビシェフ多項式 ほか という記事でも紹介しているため、ここでは特に解説しません。
 いまこれをfn(x)について当てはめると以下のような主張が現れます。

A=n1n(n2),gn(x)=Afn(x/A)
とおくとnが偶数のとき
gn(sinθ)=(1)n2n(n2)((n1)cos(n1)θcosθ+sin(n1)θsinθ)
が成り立ち、nが奇数のとき
gn(sinθ)=(1)n12n(n2)((n1)sin(n1)θcosθcos(n1)θsinθ)
が成り立つ。
 特にθθ+π2とするとnの偶奇に依らず
gn(cosθ)=1n(n2)((n1)sin((n1)θ)sinθ+cos((n1)θ)cosθ)
が成り立つ。

円に接しまくる関数

 いま円x2+y2=1とグラフy=fn(x)との関係について考えていたわけですが、これらの図形をA倍拡大することでこれは円x2+y2=A2とグラフy=gn(x)についての関係を考える問題に帰着できます。
 そのことに注意してgn(cosθ)の満たす性質を考えると以下のことがわかります。

gn(cosθ)=n(n2)cos((n1)θ)gn(cosθ)=n(n2)(n1)sin((n1)θ)sinθ
が成り立つ。

 x=cosθにおいてddx=1sinθddθが成り立つことに注意するとわかる。

(n1)2sin2θ+cos2θn(n2)=A2cos2θが成り立つ。

 自明。

 θについての方程式
cos2θ+g(cosθ)2=A2
0θπにおいて少なくともn1個の解を持つ。

 ϕ=ϕ(θ)
cosϕ=cosθ(n1)2sin2θ+cos2θ,sinϕ=(n1)sinθ(n1)2sin2θ+cos2θ
によって定めると定理3より
gn(cosθ)=A2cos2θcos((n1)θϕ)
が成り立つ。
 したがって
cos2θ+g(cosθ)2A2=(A2cos2θ)(cos2((n1)θϕ)1)=A2cos2θ2(cos(2(n1)θ2ϕ)1)
と変形でき、これが0となるためには
(cos2ϕ,sin2ϕ)=(cos(2(n1)θ),sin(2(n1)θ))
が成り立つことが必要十分である。
 いまθ:0πにおいて(cosϕ,sinϕ)は単位円を半周するので(cos2ϕ,sin2ϕ)は単位円を一周する。それに対して(cos(2(n1)θ),sin(2(n1)θ))は単位円をn1周するので少なくともn1個の点θにおいて
(cos2ϕ,sin2ϕ)=(cos(2(n1)θ),sin(2(n1)θ))
が成り立つことがわかる。

cos2θ+g(cosθ)2=A2
の解θに対して
cosθ+gn(cosθ)gn(cosθ)=0
が成り立つ。またθ=0,πにおいては
1+gn(cosθ)gn(cosθ)+gn(cosθ)2=0
も成り立つ。

gn(cosθ)=A2cos2θcos((n1)θϕ)
であったので
g(cosθ)=A2cos2θ
なるθに対して
cos((n1)θϕ)=±1
特に
(cos((n1)θ),sin((n1)θ))=±(cosϕ,sinϕ)
が成り立つ(複号同順)。
 したがって
cosθ+gn(cosθ)gn(cosθ)=cosθA2cos2θ±cosθA2cos2θ=01+gn(cosθ)gn(cosθ)+gn(cosθ)2=1A2cos2θ±(n1)2A2cos2θ+cos2θA2cos2θ=(n1)2+A2A2cos2θ=(n1)2+A2A21=0(θ=0,π)
がわかる。

結論

 以上によりfn(x)は所望の性質を持っていたことがわかります。
 ということで上でわかったことについてまとめておきましょう。

A=n1n(n2)
とおき、nが偶数のとき
fn(x)={n(n2)4k=0m(1)mk(m+k2)!(mk)!(2k)!(2Ax)2k(n=2m)n(n2)4k=0m(1)mk(m+k1)!(mk)!(2k+1)!(2Ax)2k+1(n=2m+1)
とするとfn(x)は以下の性質を満たす。

  • x2+fn(x)2=1n1個の解を持ち、それらの解は
    cosπjn1Axcosπ(j1)n1(j=1,2,,n1)
    において一つずつ存在する。特にx=±1/Aはその解の一つとなる。
  • またその解xに対し(x2+fn(x)2)=0が成り立つ。
  • 特にx=±1/Aに対しては(x2+fn(x)2)=0も成り立つ。

おわりに

 はい。なかなか手応えのある問題でしたがとりあえず形にはなってよかったと思います。
 特に言うことも思いつかないのでこの記事はこんなところで。では。  

投稿日:20231021
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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