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むかしわからなかった積分の解法②

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 自分が加入・所属する二つの団体の今年度アドベント・カレンダー用に寄稿しました、今回は “Victor Adamchik” というとある工学の博士の方により示された美しいある広義積分の一般形についてご紹介します。
 なお、式中Wにつきましては「ランベルトのW関数(/対数積関数)」というものでして定義等の確認は次のMathlogの記事 『LambertのW関数』 がオススメです。

+a2(ex(|a|xb))2+(aπ)2dx=1W(eb/|a|/|a|)+1for a,bR.

 最初に、xlnxとして置換して積分区間を半分にする。そして、次に部分分数分解を行う。
+a2(ex(|a|xb))2+(aπ)2dx=0a2(x(|a|lnxb))2+(aπ)2dxx=0|a|2((x(|a|lnxb))+i|a|π)((x(|a|lnxb))i|a|π)dxx=012iπ(|a|(x(|a|lnxb))+i|a|π+|a|(x(|a|lnxb))i|a|π)dxx=12πi(0|a|x|a|(lnxiπ)+bdxx+0|a|x|a|(lnx+iπ)+bdxx)=12πi(0|a|x|a|ln(eiπx)+bdxx+0|a|x|a|ln(e+iπx)+bdxx)=12πi(+0|a||a|ln(eiπx)xbdxx0|a||a|ln(e+iπx)xbdxx).
 ここで、自然対数の分枝を考慮しつつオイラーの等式e+iπ=eiπ=1を考慮して、次の複素積分を考察する。続くその次の図は積分経路Γの図示。
Γ|a||a|ln(z)zbdzz:=(+((I)+CR((II)+((III)+cε((IV))|a||a|ln(z)zbdzz(V):=(ε(R(I)+z=Re+iθ:0θ2π((II)+R(ε(III)+z=εeiθ:0θ2π((IV))|a||a|ln(z)zbdzz.
積分経路!FORMULA[7][2074314156][0]と特異点達!FORMULA[8][1751739959][0] 積分経路Γと特異点達×
原点O以外の孤立特異点の計算過程を次に示しておく、非自明の場合を考えているので無論以降もa0である。
|a|ln(z)zb=0|a|(ln(z/|a|)+(z/|a|))+|a|(ln|a|b/|a|)=0|a|ln((z/|a|)ez/|a|)+|a|ln(|a|/eb/|a|)=0ln((z/|a|)ez/|a|)+ln(|a|/eb/|a|)=0ln((z/|a|)ez/|a|)=ln(eb/|a|/|a|)(z/|a|)ez/|a|=eb/|a|/|a|(z/|a|)=W(eb/|a|/|a|)z=|a|W(eb/|a|/|a|).
 最左辺の周回積分はコーシーの留数定理が適用可能、式途中の極限計算ではロピタルの定理を使用。
Γ|a||a|ln(z)zbdzz=2πiResz=|a|W(eb/|a|/|a|)(|a||a|ln(z)zb1z)=2πi1(11)!limz|a|W(eb/|a|/|a|)(d11dz11((z(|a|W(eb/|a|/|a|)))1(|a||a|ln(z)zb1z)))=2πilimz|a|W(eb/|a|/|a|)((z+|a|W(eb/|a|/|a|))|a||a|ln(z)zb1z)=2πilimz|a|W(eb/|a|/|a|)(z+|a|W(eb/|a|/|a|)|a|ln(z)zb)(1W(eb/|a|/|a|))=2πilimz|a|W(eb/|a|/|a|)(ddz(z+|a|W(eb/|a|/|a|))ddz(|a|ln(z)zb))(1W(eb/|a|/|a|))=2πi(W(eb/|a|/|a|)W(eb/|a|/|a|)+1)(1W(eb/|a|/|a|))=2πi1W(eb/|a|/|a|)+1.
 よって、R,ε0による積分の極限値が存在することとなる。
limR,ε0Γ|a||a|ln(z)zbdzz=2πi1W(eb/|a|/|a|)+1.
 また、最右辺については第2IIと第4IVの積分の絶対値は次のとおり上から評価される。
0||z|=r1|a||a|ln(z)zbdzz||z|=r1||a||a|ln(z)zb||dzz||z|=r1|dzz|sup|z|=r1||a||a|ln(z)zb|=|z|=r1|dzz|sup|z|=r1(|a|||a|lnz+zb|)|z|=r1|dzz|sup|z|=r1(|a||||a|lnz+z||b||)|z|=r1|dzz|sup|z|=r1(|a||||a||lnz||z|||b||)=2πsup|θ|π(|a||||a|ln2r+θ2(r||b||)={2πsup|θ|π(|a|/r|||a|((lnr)/r)2+(θ/r)2(1||b|/r|),2πsup|θ|π(|a|/|lnr||||a|1+(θ/(lnr))2(r/|lnr|||b|/|lnr||)}r0r0.
以上の評価より、以下の極限がえられる。
limR,ε0CR|a||a|ln(z)zbdzz=limR,ε0cε|a||a|ln(z)zbdzz=0.
 これらより、式Vから次が帰結される。
limR,ε0Γ|a||a|ln(z)zbdzz=limR,ε0+|a||a|ln(z)zbdzz+limR,ε0CRcε|a||a|ln(z)zbdzzlimR,ε0Γ|a||a|ln(z)zbdzz=limR,ε0+|a||a|ln(z)zbdzz+limR,ε0CRcε|a||a|ln(z)zbdzzlimR,ε0Γ|a||a|ln(z)zbdzz=limR,ε0+|a||a|ln(z)zbdzz+limR,ε0CRcε|a||a|ln(z)zbdzz2πi1W(eb/|a|/|a|)+1=limR,ε0+|a||a|ln(z)zbdzz+0+02πi1W(eb/|a|/|a|)+1=limR,ε0(+|a||a|ln(z)zbdzz+|a||a|ln(z)zbdzz)2πi1W(eb/|a|/|a|)+1=limR,ε0(εR|a||a|ln(z)zbdzz+Rε|a||a|ln(e2πiz)e2πizbdzz)2πi1W(eb/|a|/|a|)+1=limR,ε00|a||a|ln(z)zbdzz+0|a||a|ln(e2πiz)e2πizbdzz2πi1W(eb/|a|/|a|)+1=limR,ε0+0|a||a|ln(eiπx)xbdxx0|a||a|ln(e+iπx)xbdxx(VI).
 ゆえに、最後に式VIの部分を代入すれば所望の積分をえる。
+a2(ex(|a|xb))2+(aπ)2dx=12πi(+0|a||a|ln(eiπx)xbdxx0|a||a|ln(e+iπx)xbdxx)=12πi×(2πi1W(eb/|a|/|a|)+1)=1W(eb/|a|/|a|)+1.

 早速ですけど、パラメータa=1,b=0を引き渡してみましょう。すると、綺麗な結果が出現しますがこれが冒頭の積分でした。

(0)+dx(exx)2+π2=1W(1)+1.

 折角ですので、所有PCのPythonで近似値を計算してみます。次に示すコードブロックは、Windows PowerShellで実際に入力した画面の再現です。最終行の値が今求めている近似値です、SciPyパッケージを利用すれば初めからランベルトのW関数が実装されていて便利でした。

      PS> python -m pip install scipy

Installing collected packages: scipy
Successfully installed scipy-1.14.1

>>> import numpy as np
>>> from scipy.special import lambertw
>>> value = 1 / (lambertw(1) + 1)
>>> print(value)

(0.6381037433651108+0j)
    

 さらに、一般形からただちに多くの系がえられます。ただし、nNと約束します。

(1)+ex(exx)2+π2dx=1W(1)+1,(2)+dx(exx+1)2+π2=12,(3)+ex(exx+1)2+π2dx=12,(4)+dx(exnx+1)2+(nπ)2=1n1n+1,(5)+ex(exnx+1)2+(nπ)2dx=1n+1,(6)+dx(exx+e+1)2+π2=1e+1,(7)+ex(exx+e+1)2+π2dx=1e+1,(8)+dx(exex+e2+2e)2+(eπ)2=1e21e+1e+1,(9)+ex(exex+e2+2e)2+(eπ)2dx=1e1e+1,(10)+2exx((exx+1)2+π2)2dx=116.

 じつは、他にも同様の解法で別の形の積分がえられます。

(11)+dx(ex+x+1)2+π2=23,(12)+ex(ex+x+1)2+π2dx=13.

投稿日:2024125
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現在は20代エンジニアです、、、数学のなかでもとくに函数解析に興味がありますが、大学では可換環論を勉強していました。みかけによらず中国語が苦手です。。。

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