こんにちは、mapstoです。
今回はLambertのW関数について紹介しようと思います。
皆さんはLambertのW関数を知っていますか?
知っていたらかなりマニアックだと思います。(偏見)
早速定義を見ていきます。
関数$f(x)=xe^x$の逆関数をLambertのW関数(ランベルトのW関数)といい、$W(x)\coloneqq f^{-1}(x)$と表す。$\omega$関数または対数積ともいう。
……さて、勘のいい方は気付いていると思いますが、上の定義は概略としてはいいのですが、厳密ではありません。逆関数とは何か、もう一度考えてみましょう。
関数$y=f(x)$の逆関数は、$y$の値を1つ定めたときに$x$の値がただ1つに定まるとき($f$が全単射である、といいます)にのみ存在する。
実際に$f(x)=xe^x$のグラフを描いてみてください。
$x=-1$で最小値$-1/e$をとり、$$\lim_{x \to -\infty}f(x)=0,\,\, \lim_{x \to \infty}f(x)=\infty$$となるようなグラフが描けると思います。
このグラフの逆関数を取ろうとすると、$-1/e < x < 0$の範囲では1つの$x$に対して$y$の値が2つ出てきてしまい、逆関数を定めることができません。このような関数を多価関数と言います。
しかし、範囲を定めることによって、逆関数を定めることができます。
関数$f:\mathbb{R} \to (-1/e,\infty),x\mapsto xe^x$の逆関数を
$$f^{-1}(x)=W_0 (x)\,\,(-1 \le x)$$
$$f^{-1}(x)=W_{-1} (x)\,\,(x \le -1)$$と定める。このとき、$W_0 (x)$を主枝、$W_{-1} (x)$を分枝という。
定義域を複素数にとることもできますが、この記事では実数の場合のみを考え、さらに主枝や分枝のことは深く考えないことにします。
LambertのW関数(以下W関数と呼ぶ)を定義したところで、特殊値や等式について見てみましょう。
ここで比較しやすいように、指数・対数の関係の例を挙げておきます。
$$8=2^3 \Leftrightarrow 3=\log_2 8$$
そしてW関数は
$$y=xe^x \Leftrightarrow x=W(y)$$
となります。
① $x=1$のとき
$$e=1 \cdot e^1 \Leftrightarrow 1=W(e)$$
② $x=0$のとき
$$0=0 \cdot e^0 \Leftrightarrow 0=W(0)$$
③ $x=-1$のとき
$$-\frac{1}{e}=-1 \cdot e^{-1} \Leftrightarrow -1=W\left(-\frac{1}{e}\right)$$
④ $x=x$のとき
$$W(x)=xe^x \Leftrightarrow x=W((W(x))=W(xe^x)$$
⑤ $x=W(x)$のとき
$$x=W(x)e^{W(x)} \Leftrightarrow W(x)=W(x)$$
⑥$y=1$のとき
$$1=xe^x \Leftrightarrow \dots??$$
この場合、方程式$xe^x=1$を解かないといけませんが、もちろん初等的には解けません。そこで、この方程式の解を$x=\Omega=0.56714\dots$(オメガ定数)と定めます。
$$1=\Omega e^{\Omega} \Leftrightarrow \Omega=W(1)$$
$$W(e)=1$$
$$W(0)=0$$
$$\displaystyle{W\left(- \frac{1}{e}\right)}=-1$$
$$W(xe^x)=x$$
$$W(x)e^{W(x)}=x$$
$$W(1)=\Omega$$
(ただし$\Omega$は$\Omega e^{\Omega}=1$を満たす定数)
W関数の微積分を見ていきましょう。
(1)$\displaystyle{\frac{dW}{dx}}=\frac{1}{x+e^{W(x)}}\enspace(x\ne-1/e)$
(2)$\displaystyle{\int W(x)dx= x \left( W(x) - 1 + \frac{1}{W(x)} \right) + C}$
これは演習問題にしておきます。陰関数の微分や部分積分を使うとできると思います。
W関数に関するmathlog記事を紹介します。ぜひ読んでみてください。
[1]
ランベルトのW関数の積分を解いたり, テトレーションをW関数で表したりした
[2]
ラグランジュ反転公式の応用(1)
[3]
x^xとガンマ関数を含む積分とランベルトのW関数
読んでいただきありがとうございました。