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【収束】 ☆牛tan分解で導く円周率の興味深い等式☆ 【可視化】

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【収束】 ☆牛tan分解で導く円周率の興味深い等式☆ 【可視化】

3.14…から始まるエトセトラ?

 お久しぶりです! スタバでパソコンを広げるお洒落な私 こと、みゆ🌹ฅ^•ω•^ฅ でございます☆

 春の兆しが訪れ、今年もお受験番号の有無に一喜一憂する合格発表の季節がやってまいりました。私もお返しの有無に一喜一憂するホワイトデーを目前に控えているわけですが、その3月14日って数学好きさんの界隈では『円周率の日』とされてる日でもあるんですよね。まあ細かいことをいうなら月や日の数え方は十進数ではないのでその日とπを短絡的に関連付けることには若干の抵抗もありつつ、それはそれとして今回は円周率にちなんだ記事を書いてみようかなあと思った次第です(*´ω`*)

 さて、ときおりふと降ってくるイメージの中には円周率に関するものもありまして、以前私が数式に翻訳したものとしては次のような式がございます。

π2=NarctanIm(Z)Re(Z)+arctanRe(ZN)Im(ZN)π4=NarctanIm(Z)Re(Z)+arctanRe(ZN)Im(ZN)Re(ZN)+Im(ZN)=limnk=1nnn2(2k1)2+(n2+kk2)2(n2+k2)(n2+(k1)2)

で、つい先日、また面白い等式のイメージを思いついてしまいました(*ノω・*)





円周率の等式 その1
Fmm 番目のフィボナッチ数

π2=n=0arctan1F2n+1=n=0arctan1n2+n+1

 果たしてこの等式はホントに成り立っているのでしょうか?

牛tan分解、再び!

 この等式を導出するために、まず「逆正接関数の分解定理」なるものを紹介いたしましょう。





逆正接関数の分解定理 by みゆ@ますらば
逆正接関数(arctan)の引数が有理数のとき、その関数の値は
分子を1とする有理分数を引数に持つ逆正接関数の和で表せる。

arctanqpq±r=arctan1parctanr(pq±r)p+q
arctan1p=arctanqpq±r±arctanr(pq±r)p+q

(※複号同順)

 牛タンを食べているときにひらめいたというしょうもない理由からこの定理を用いた分数分解を通称「牛tan分解」などと個人的に呼んでいるのですが、詳しくは過去記事「 みゆ式分数分解でマチンの公式を作ろう♪ 」を参照していただくとして、ここから次のような式を得ます。

p=F2mq=1r=F2m1 のとき
arctan1F2m=arctan1F2m+1+arctan1F2m+2Arg(F2m+i)=Arg(F2m+1+i)+Arg(F2m+2+i) (A)

q=1r=1 のとき
arctan1p=arctan1p+1+arctan1(p+1)p+1Arg(p+i)=Arg(p+1+i)+Arg((p+1)p+1+i)=Arg(p+1+i)+Arg(p2+p+1+i) (B)

(A)より
Arg(F2m+i)=Arg(F2m+1+i)+Arg(F2(m+1)n+i)Arg(F2m+i)=Arg(F2m+1+i)+Arg(F2n+i)Arg(F2n+1+i)+Arg(F2(n+1)+i)=n=mArg(F2n+1+i)Arg(F0+i)=n=0Arg(F2n+1+i)π2=n=0arctan1F2n+1
(B)より
Arg(p+i)=  Arg(p+1n+i)  +Arg(p2+p+1+i)=Arg(n+i)Arg(n+1+i)+Arg(n2+n+1+i)+Arg(p2+p+1+i)Arg(i)=n=0Arg(n2+n+1+i)π2=n=0arctan1n2+n+1

 無事、与式が導かれましたね!

π2=n=0arctan1F2n+1=n=0arctan1n2+n+1

ところでこれって、

F2n+1=n2+n+1

といえるでしょうか?

「では、分割プロセスをもう一度見てみよう」

フィボナッチ数列の奇数項 F2n+1

F1=1F3=2F5=5

であり、数列 n2+n+1

02+0+1=112+1+1=322+2+1=7

であるため、明らかに

F2n+1n2+n+1

なんですよね。

 一体何がおきているのか、改めて π2ラジアンが分割されてゆく様子を追いかけてみましょう。

(A)
Arg(F2m+i)=Arg(F2m+1+i)+Arg(F2m+2+i)Arg(0+i)=Arg(1+i)+Arg(1+i)=Arg(1+i)+Arg(2+i)+Arg(3+i)=Arg(1+i)+Arg(2+i)+Arg(5+i)+Arg(8+i)=Arg(1+i)+Arg(2+i)+Arg(5+i)+Arg(13+i)+Arg(21+i)

(B)
Arg(p+i)=Arg(p+1+i)+Arg(p2+p+1+i)=Arg(p2+p+1+i)+Arg(p+1+i)Arg(0+i)=Arg(1+i)+Arg(1+i)=Arg(1+i)+Arg(3+i)+Arg(2+i)=Arg(1+i)+Arg(3+i)+Arg(7+i)+Arg(3+i)=Arg(1+i)+Arg(3+i)+Arg(7+i)+Arg(13+i)+Arg(4+i)

 どうやら、(A)(B)の間には分割された角度のうち大きい側と小さい側のどちらを更に分割するかという選択の違いがあるようです。当然、それぞれ収束速度が異なるわけですから、両式の で用いられている変数 n を同一視しちゃダメ、絶対!

 初学者さんが陥りやすい罠ですので、気をつけましょうね(*´ω`*)

と、いうわけで

 理解を深めるため、2つの式がπ2ラジアンへ収束していく様を可視化してみました。
π2=n=0arctan1F2n+1=n=0arctan1n2+n+1
収束レース

 最後に、この記事を執筆中さらに興味深い関係式に気がついてしまいましたので、そちらもオマケとして紹介しながら締めたいと思いま~す ฅ^•ω•^ฅ





円周率の等式 その2
  π は円周率、ϕ は黄金数 1+52
  Fmm 番目のフィボナッチ数
  Lmm 番目のリュカ数

π2=n=0arctan1L2narctanϕ+n=0arctan1F4n+3arctan1ϕ=n=0arctan1F4n+1arctanϕ+n=0arctan1F4n+3arctan1ϕ=n=0arctan1F2n+1=n=0arctan1n2+n+1

[雑解説]
 おそらく眠くなると思いますので、起きていたい方は軽く読み飛ばすことをオススメします(;´∀`)

{arg[(xi+1)(yi+1)]=arg[(x+y)i+(1xy)]arg[(  i+x)(  i+y)]=arg[(x+y)i+(xy1)] より
{arctanx+arctany=arctanx+y1xy=+arctanzarctan1x+arctan1y=arctanx+yxy1=arctanz
{xy=z1x1y=z {x=zy1x=z1y のような演算子を導入して略記することにします。

(xi+1)(i+x)=(x2+1)i+(x+x)=(x2+1)i より x1x=x2+10=π2
すなわち ϕ1ϕ=π2=n=01F2n+1=n=01F4n+1n=01F4n+3

ここで、x2x1=0 の解 {x=1+52=ϕx=152=ϕ を生成元とする ガラパゴ数列 より
 {ϕ=1(ϕ)Gm=ϕmϕmϕϕ=ϕm1(ϕ)mϕ1(ϕ)=ϕm1(ϕ)m5=FmGm=ϕm+ϕmϕ+ϕ=ϕm+1(ϕ)mϕ+1(ϕ)=ϕm+1(ϕ)m1=ϕm+1(ϕ)m=Lm であることから

1F2m+1=ϕ1ϕϕ2m+11(ϕ)2m+1=(ϕ1ϕ)(ϕ2m+11(ϕ)2m+1)(ϕ2m+11(ϕ)2m+1)(ϕ2m+11(ϕ)2m+1)=(ϕ+1ϕ)(ϕ2m+1+1ϕ2m+1)(ϕ2m+1+1ϕ2m+1)(ϕ2m+1+1ϕ2m+1)=(ϕ2m+2+1ϕ2m+2)+(ϕ2m+1ϕ2m)(ϕ4m+2+1ϕ4m+2)+(ϕ0+1ϕ0)=(ϕ2m+2+1(ϕ)2m+2)+(ϕ2m+1(ϕ)2m)(ϕ4m+2+1(ϕ)4m+2)+(ϕ0+1(ϕ)0)=L2m+2+L2mL4m+2+L0=L2m+2+L2mL4m+2+L2L1=(ϕ2m+2+1(ϕ)2m+2)+(ϕ2m+1(ϕ)2m)(ϕ4m+2+1(ϕ)4m+2)+(ϕ2+1(ϕ)2)(ϕ1+1(ϕ)1)1=(ϕ2m+2+1(ϕ)2m+2)+(ϕ2m+1(ϕ)2m)(ϕ2m+2+1(ϕ)2m+2)(ϕ2m+1(ϕ)2m)1=L2m+2+L2mL2m+2L2m1=1L2m+21L2m
よって、n=01F4n+1=n=01L4n1L4n+2=n=01L2n です。

であれば、あとは ϕ=n=01F4n+1(=n=01L2n) が成り立つことさえ言えればよいですね。

ここで、ϕ=limiFi+1Fi=limmF2m+2F2m+1 でもありますから、
n=0m1F4n+1=F2m+2F2m+1 であることを示せればイナフです。
これについては数学的帰納法を用いて示すことができます。

もし、m=k のとき成り立つと仮定するならば、m=k+1 のときは
n=0k+11F4n+1=n=0k1F4n+11F4k+5=F2k+2F2k+11F4k+5=F2k+2F4k+5+F2k+1F2k+1F4k+5F2k+2=(ϕ2k+21(ϕ)2k+2)(ϕ4k+51(ϕ)4k+5)(ϕ1(ϕ))(ϕ1(ϕ))+ϕ2k+11(ϕ)2k+1ϕ1(ϕ)(ϕ2k+11(ϕ)2k+1)(ϕ4k+51(ϕ)4k+5)(ϕ1(ϕ))(ϕ1(ϕ))ϕ2k+21(ϕ)2k+2ϕ1(ϕ)=(ϕ2k+21ϕ2k+2)(ϕ4k+5+1ϕ4k+5)+(ϕ2k+1+1ϕ2k+1)(ϕ+1ϕ)(ϕ2k+1+1ϕ2k+1)(ϕ4k+5+1ϕ4k+5)(ϕ2k+21ϕ2k+2)(ϕ+1ϕ)=ϕ6k+71ϕ6k+7ϕ2k+3+1ϕ2k+3+ϕ2k+2+1ϕ2k+2+ϕ2k+1ϕ2kϕ6k+6+1ϕ6k+6+ϕ2k+4+1ϕ2k+4ϕ2k+3+1ϕ2k+3ϕ2k+1+1ϕ2k+1=(ϕ6k+7+1(ϕ)6k+7)(ϕ2k+3+1(ϕ)2k+3)+(ϕ2k+2+1ϕ2k+2)+(ϕ2k+1ϕ2k)(ϕ6k+6+1(ϕ)6k+6)+(ϕ2k+4+1(ϕ)2k+4)(ϕ2k+3+1(ϕ)2k+3)(ϕ2k+1+1(ϕ)2k+1)=L6k+7L2k+3+L2k+2+L2kL6k+6+L2k+4L2k+3L2k+1=L6k+7L2k+3+L2k+2+L2k+L2k1L2k1L6k+6+L2k+4L2k+3L2k+1L2k+L2k=L6k+7(L2k+3L2k+2L2kL2k1)0L2k1L6k+6+(L2k+4L2k+3L2k+1L2k)0+L2k=L6k+7L2k1L6k+6+L2k=(ϕ6k+7+1(ϕ)6k+7)(ϕ2k1+1(ϕ)2k1)(ϕ6k+6+1(ϕ)6k+6)+(ϕ2k+1(ϕ)2k)=ϕ6k+71ϕ6k+7ϕ2k1+1ϕ2k1ϕ6k+6+1ϕ6k+6+ϕ2k+1ϕ2k=(ϕ2k+41ϕ2k+4)(ϕ4k+3+1ϕ4k+3)(ϕ2k+3+1ϕ2k+3)(ϕ4k+3+1ϕ4k+3)=(ϕ2k+41(ϕ)2k+4)(ϕ4k+31(ϕ)4k+3)(ϕ2k+31(ϕ)2k+3)(ϕ4k+31(ϕ)4k+3)=F2k+4F4k+3F2k+3F4k+3=F2k+4F2k+3=F2(k+1)+2F2(k+1)+1
といえます。

m=0 のとき
{=n=001F0+1=11=F0+2F0+1=11
と成り立っていますので、必然的に任意の自然数 m について成り立つ、というカラクリです❣

謝辞

 査読検証およびアニメーションgif制作を快諾してくださった nayuta_ito 先生に感謝致します。

投稿日:202231
OptHub AI Competition

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投稿者

https://mathlog.info/articles/323         数学を愛する会 副会長 CCO / ガラパゴ数学 開拓者 / 猫舌・甘党・薄味派

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