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大学数学基礎解説
文献あり

テータ関数,イータ関数の特殊値を求める

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nZeπn2=π4Γ(34)n=1tanhπn=π1/421/8Γ(34)n=11n(e2πn1)=ln22+lnΓ(34)lnπ4π12

いきなりですがこんな等式が成り立つらしいです。証明の手順をネットで探すのが結構大変だったので、この記事で纏めます。大雑把に纏めたので、定義や主張の詳しい条件は省略したりしています。また数日でかき集めた情報なので、間違ったことを書いている可能性があります。ご了承ください。

第一種完全楕円積分

K(k)=0π2dθ1k2sin2θ=01dx(1x2)(1k2x2)

このkを母数と言います。特に指定が無い限り、k=1k2,K=K(k),K=K(k)と表すものとします。
代表的な特殊値として、

K(12)=π3/22Γ(34)2

があります。

K(12)=0π2dθ1sin2θ2=20π2dθ2sin2θ=20π2dθ1+cos2θ=201dx1x4(x=cosθ)=2401t141(1t)121dt(t=x4)=23/2B(14,12)=Γ(14)Γ(12)23/2Γ(34)=π22πsinπ41Γ(34)2=π3/22Γ(34)2

算術幾何平均(AGM)

abの算術幾何平均とは、簡単には算術平均(a+b)/2と幾何平均abを繰り返しとった時の収束先です。a,bは複素数とできますが、簡便のため、ここではどちらも正の実数とします。

a,b>0について
a0=a,b0=ban+1=an+bn2,bn+1=anbn
と数列{an},{bn}を定めればこれらは同じ値に収束するので、その値をa,bの算術幾何平均と呼び、AGM(a,b)と表記する。

これが良く定義できていることは、こちらで確認できます。
また算術幾何平均は第一種完全楕円積分で書くことができます。

k=1k2とするとき、
AGM(1,k)=π2K(k)

証明はこちらに書いてあります。

テータ関数

テータ関数

ϑ2(q)=nZq(n+12)2ϑ3(q)=nZqn2ϑ4(q)=nZqn2(1)n

これらには豊富な関係式があり、特に以下が成り立ちます。

ϑ24(q)+ϑ44(q)=ϑ34(q)

証明はこちらにあります。
また、テータ変換公式などと呼ばれる恒等式があります。

ττ=1のとき
nZen2πiτ+2πivn=1iτnZe(nv)2πiτ

証明はこちらにあります。
テータ関数は第一種完全楕円積分とも関係があります。

k=ϑ22(q)ϑ32(q),k=1k2=ϑ42(q)ϑ32(q),K=K(k),K=K(k)とするとき、
ϑ32(q)=1AGM(1,k)=2Kπ(1)q=eπK/K(2)

(1)の証明はこちらにあります。
ここで(2)を証明します。

q=eπiτ,τ=1τ,q=eπiτ
とする。テータ変換公式より
ϑ4(q)ϑ3(q)=en2πiτ+πinen2πiτ=1iτe(n1/2)2πiτ1iτen2πiτ=ϑ2(q)ϑ3(q)K=K(ϑ42(q)ϑ32(q))=K(ϑ22(q)ϑ32(q))=π2ϑ32(q)=π(iτ)2ϑ32(q)=iτKiτ=KKq=eπKK 

上述の(1),(2)を合わせて以下が成り立ちます。

ϑ3(eπK/K)=2Kπ

これにより、p>0に対してp=K/Kとなるようなkを求めることが出来れば、ϑ3(eπp)Kで書けることになります。

ϑ3(eπ)を求めます。
まずK/K=1となるkを探します。
K=Kよりk=k=12が分かるので
ϑ3(eπ)=2K(12)π=2ππ3/22Γ(34)2=π4Γ(34)
これは記事の最初で紹介した
nZeπn2=π4Γ(34)
です。

K/K=1の場合は簡単にkを決定できましたが、一般の場合についての関数に名前がついているらしいです。

Modular lambda star function

K(1λ(x)2)K(λ(x))=x

概容はこちらをご覧ください。
どうやらxが正の有理数のときλ(x)は代数的数になり、K(λ(x))はガンマ関数のclosed formで書けるらしいです。へぇ~
Wikipediaにこんな関係式が載っていたので示してみます。

λ(4x)=11λ(x)21+1λ(x)2

λ(x)=kとすることで、定理の主張は次のように言い換えられます:

l=1k1+k,l=1l2,L=K(l),L=K(l)
のとき
LL=2KK

LL=AGM(1,l)AGM(1,l)=AGM(1+l,1l)AGM(1,l)=AGM(21+k,2k1+k)AGM(1,1k1+k)=2AGM(1,k)AGM(1+k,1k)=2AGM(1,k)AGM(1,k)=2KK 

ϑ3(e2π),ϑ4(e2π)を求めます。
K/K=1となるのはk=12のときですから、L/L=2となるのは
l=1k1+k=212+1
のときです。
ϑ32(e2π)=1AGM(1,l)=1AGM(1+l,1l)=1AGM(21+k,2k1+k)=1+k21AGM(1,k)=1+kπK(k)=1+12πK(12)=1+22ππ3/22Γ(34)2=1+223/2πΓ(34)2ϑ3(e2π)=1+223/4π1/4Γ(34)ϑ4(e2π)=ϑ4(e2π)ϑ3(e2π)ϑ3(e2π)=lϑ3(e2π)=1(212+1)24ϑ3(e2π)=4241+21+223/4π1/4Γ(34)=π1/421/8Γ(34)

ヤコビの三重積

無限和と無限積を変換してくれるのがヤコビの三重積です。

ヤコビの三重積

nZqn2zn=n=1(1q2n)(1+q2n1z)(1+q2n1z1)

こちらの記事

に証明を書きました。

これを使うとこの記事の最初に紹介した無限積が求まります。

n=1tanhnπ=n=11e2nπ1+e2nπ=n=11qn1+qn(q=e2π)=n=1(1qn)21q2n=n=1(1q2n1)2(1q2n)21q2n=n=1(1q2n)(1q2n1)(1q2n1)=nZqn2(1)n=ϑ4(q)=π1/421/8Γ(34).

この例の途中で使った(とも言える)無限積の変換に名前がついているので紹介します。非常に有効なテクニックで、ヤコビの三重積の証明などでも使えます。

オイラーの分割恒等式

n=1(1x2n1)=n=111+xn

n=1(1x2n1)=n=1(1x2n1)(1x2n)1x2n=n=11xn1x2n=n=111+xn

なぜ"分割"という単語が入っているのかについてはこちらをご覧ください。

イータ関数

デデキントのイータ関数

η(τ)=eπiτ/12n=1(1e2πiτn)Imτ>0

※ディリクレのイータ関数とは全くの別物です。
ヤコビの三重積とオイラーの分割恒等式を使って、イータ関数をテータ関数で表します。

η3(τ)=12ϑ2(q)ϑ3(q)ϑ4(q)q=eπiτ

η3(τ)=eπiτ/4n=1(1e2πiτn)3=q1/4n=1(1q2n)3=q1/4n=1(1q2n)3(1+q2n)2(1q2(2n1))2=q1/4n=1(1q2n)3(1+q2n)2(1+q2n1)2(1q2n1)2=12q1/4n=1(1q2n)(1+qq2n1)(1+q1q2n1)n=1(1q2n)(1+q2n1)(1+q2n1)n=1(1q2n)(1q2n1)(1q2n1)=(12nZqn2qnq1/4)(nZqn2)(nZqn2(1)n)=12ϑ2(q)ϑ3(q)ϑ4(q) 

今までの内容を用いて、イータ関数を第一種完全楕円積分で表します。

η(iKK)=2kk6Kπ

q=eπK/Kとおく。
η(iKK)=12ϑ2(q)ϑ3(q)ϑ4(q)3=21/3ϑ3(q)ϑ2(q)ϑ3(q)ϑ4(q)ϑ3(q)3=21/32Kπkk3=2kk6Kπ 

η(i)を求めます。K/K=1よりk=k=12なので
η(i)=212126K(12)π=1ππ3/22Γ(34)2=π42Γ(34)
更に、冒頭で紹介した級数を計算できます。
n=11n(e2πn1)=n=11nm=1e2πnm=m=1n=1e2πmnn=m=1ln(1e2πm)=ln(m=1(1e2πm))=ln(eπ/12η(i))=ln(eπ/12π1/421/2Γ(34))=ln22+lnΓ(34)lnπ4π12

テータ関数の特殊値にガンマ関数が現れましたが、比を取ることで代数的数になったりします。以下の定理が成り立ちます。

τ=iKKのとき
η6(2τ)η6(τ)=14kk1/2

q=eπiτとおく。
ヤコビの三重積より
ϑ2(q2)ϑ3(q2)ϑ22(q)=q1/2n,mZq2(n2+n+m2)q1/2(nZqn2+n)2=n=1(1q4n)(1+q4n)(1+q4n4)(1q4n)(1+q4n2)2(1q2n)2(1+q2n)2(1+q2n2)2=12n=1(1q4n)2(1+q4n)2(1+q4n2)2(1q2n)2(1+q2n)2(1+q2n)2=12n=1(1+q2n)2(1+q2n)2=12
が成り立つので、
η6(2τ)η6(τ)=ϑ22(q2)ϑ32(q2)ϑ42(q2)ϑ22(q)ϑ32(q)ϑ42(q)=ϑ22(q)ϑ32(q)ϑ3(q)ϑ4(q)ϑ22(q2)ϑ32(q2)ϑ42(q2)ϑ24(q)ϑ3(q)ϑ4(q)=kk1/2ϑ22(q2)ϑ32(q2)ϑ24(q)=14kk1/2 

以下が従います。

q=eπK/Kのとき
n=1(1+q2n)6=14q1/2kk1/2

τ=iKKとして
n=1(1+q2n)6=(n=11q4n1q2n)6=q1/2η6(2τ)η6(τ)(q=eπiτ)=14q1/2kk1/2.

n=1(1+e2πn)=n=1(1+q2n)(k=12,q=eπK/K)=(14eπ2(12)(12)1/2)1/6=eπ/1223/8

参考文献

投稿日:2022420
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便利
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  2. 算術幾何平均(AGM)
  3. テータ関数
  4. ヤコビの三重積
  5. イータ関数
  6. 参考文献