この記事では、最近Twitterで話題になった次の問題の解答についての解説をします。
そのあとで、トリボナッチ数に関係する定数との不思議な関係についてご紹介します。
元となる NNN (@n_symmetric)さんのツイートはこちらです。
謎の定数が出てきた pic.twitter.com/6b1YyrJckq
— NNN (@n_symmetric) April 24, 2022
問題形式に書き直すとこうなります。
任意の相異なる実数
求める最小値を
次に適当に数を代入しておおざっぱに評価します。
たとえば、
これで、ざっくりと**
まず、
また、
分母が重たいので次のように置換します。
となります。
分母に
ですから、最小値にはなりえないので**
これを使って書き換えると
となります。
まだ扱いにくいので、さらに次のように置換します。
これらを使って、
これを使うと
さらに、
次数も下がってだいぶ扱いやすくなりました。
つぎに必要条件を考えます。
この式が最小になる
つまり、次の連立方程式の解となる
偏微分すると
分母を払って整理すると
これを満たす
手計算ではとても解を見つけられる気がしませんが、グレブナー基底を使えばこのような複雑な連立方程式を簡単な形に変換してくれます。
WolframAlpha先生にグレブナー基底を使って簡単にしてもらいましょう。まず
グレブナー基底は
となるので、
を満たす
因数分解すると
は1つの実数解をもち、その解は
です。
WolframAlpha: B (B (11 B + 18) + 10) + 2 = 0
次に
グレブナー規定は
となるので、
を満たす
因数分解すると
は1つの実数解をもち、その解は
です。
WolframAlpha: 11 C^3 + 13 C^2 + 5 C - 1 = 0
また、
となります。
※
定義より
となりますが、
これと、
1つ目の候補(?)
2つ目の候補(?)
3つ目の候補(?)
4つ目の候補(?)
しかし、よくみると
さらに、数値計算では
となり、
(厳密には未証明ですが、WolframAlpha先生の検算ではこれらの比の誤差は計算限界以下でした)
以上から、最小値となる
ただし
ですから、これに先ほどの
ところで、トリボナッチ数の一般項の四捨五入を使った表現に出てくるこんな定数があります。
ただし、
Mathlog:トリボナッチ数の一般項の四捨五入による表現の導出
元ツイに寄せられた数々のリプライや引用リツイートの情報等とこの定数を組み合わせれば、この式に出てくる定数
のとき
計算してみると、確かにそうなります。
しかし、なぜこうなるのか私は理解していません。
(すいません)
(2022.5.1 追記)
上記記事中の定数
次のようにできます。
いい感じにシンプルに書けました。
はたしてトリボナッチ数に関係する定数がからむのは単なる偶然なのでしょうか。
(2022.5.5 追記)
上記の記事では、最小値を求めるのに
やり方は、偏微分がゼロになるときの式の値さえわかればいいのですから、次の
WolframAlpha先生にグレブナー基底を計算してもらうと
[WolframAlpha: GroebnerBasis[{D[C^2-4CB+2B^2+{(B+1)^4}/{C^2},B]=0,D[C^2-4CB+2B^2+{(B+1)^4}/{C^2},C]=0,C^2-4CB+2B^2+{(B+1)^4}/{C^2}=m},{C,B,m}]]( https://ja.wolframalpha.com/input?i=GroebnerBasis%5B%7BD%5BC%5E2-4CB%2B2B%5E2%2B%7B%28B%2B1%29%5E4%7D%2F%7BC%5E2%7D%2CB%5D%3D0%2CD%5BC%5E2-4CB%2B2B%5E2%2B%7B%28B%2B1%29%5E4%7D%2F%7BC%5E2%7D%2CC%5D%3D0%2CC%5E2-4CB%2B2B%5E2%2B%7B%28B%2B1%29%5E4%7D%2F%7BC%5E2%7D%3Dm%7D%2C%7BC%2CB%2Cm%7D%5D )
となるので、
を解いて
因数分解すると
解のうち
WolframAlpha: 11m^4-32m^3+8m^2+16m+16=0
(2022.5.5 追記)
同じ方法を使えば、当初の問題の
WolframAlpha先生にグレブナー基底を計算してもらうと
[WolframAlpha: GroebnerBasis[{D[C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+{(B+1)^6}/{C^3},B]=0,D[C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+{(B+1)^6}/{C^3},C]=0,C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+{(B+1)^6}/{C^3}=m},{C,B,m}]]( https://ja.wolframalpha.com/input?i=GroebnerBasis%5B%7BD%5BC%5E3-6C%5E2B%2B9CB%5E2-2B%5E3%2B%7B%28B%2B1%29%5E6%7D%2F%7BC%5E3%7D%2CB%5D%3D0%2CD%5BC%5E3-6C%5E2B%2B9CB%5E2-2B%5E3%2B%7B%28B%2B1%29%5E6%7D%2F%7BC%5E3%7D%2CC%5D%3D0%2CC%5E3-6C%5E2B%2B9CB%5E2-2B%5E3%2B%7B%28B%2B1%29%5E6%7D%2F%7BC%5E3%7D%3Dm%7D%2C%7BC%2CB%2Cm%7D%5D )
因数分解して
解のうち
の解となっています。近似値は次のとおり。
WolframAlpha: 1849m^8-10246m^7+17323m^6-7540m^5+372m^4-3664m^3-1616m^2+320m-64=0
なお、WolframAlphaでは厳密解が計算できませんでした。おそらく、四則演算と冪根の組合せでは表せない解になると思われます。
(2022.5.5 追記)
同じ方法を使えば、当初の問題の
式が複雑になると、WolframAlpha先生は文字を
[WolframAlpha: GroebnerBasis[{D[y^4-8y^3x+20y^2x^2-16yx^3+2x^4+(x+1)^8/y^4,x]=0,D[y^4-8y^3x+20y^2x^2-16yx^3+2x^4+(x+1)^8/y^4,y]=0,y^4-8y^3x+20y^2x^2-16yx^3+2x^4+(x+1)^8/y^4=m},{y,x,m}]]( https://ja.wolframalpha.com/input?i=GroebnerBasis%5B%7BD%5By%5E4-8y%5E3x%2B20y%5E2x%5E2-16yx%5E3%2B2x%5E4%2B%28x%2B1%29%5E8%2Fy%5E4%2Cx%5D%3D0%2CD%5By%5E4-8y%5E3x%2B20y%5E2x%5E2-16yx%5E3%2B2x%5E4%2B%28x%2B1%29%5E8%2Fy%5E4%2Cy%5D%3D0%2Cy%5E4-8y%5E3x%2B20y%5E2x%5E2-16yx%5E3%2B2x%5E4%2B%28x%2B1%29%5E8%2Fy%5E4%3Dm%7D%2C%7By%2Cx%2Cm%7D%5D )
因数分解サイトを使って因数分解すると
未証明ですが、数値実験の結果から、
もう少し先の桁まで計算すると
WolframAlpha: 5000211m^7−7756250m^6+2065244m^5−2973928m^4−277104m^3−65504m^2−3008m−128=0
(2022.5.5 追記)
ここまでにわかった結果をまとめておきます。
としたとき、
これらの係数に法則性があるのかどうか、気になりますね。
この式で遊んでみてこれまでにわかった情報をまとめました。
グレブナー基底で複雑な連立方程式が解けるという話を聞いたことはあったのですが、今回その実力を目の当たりにしました。
すごいぞグレブナー基底!そしてWolframAlpha先生!
しかし、まだまだわからないことがたくさんあります。
解法についても、もっとシンプルな方法があるのではないかと思います。
特に、トリボナッチ数に関係する定数がでてきたことは不思議です。
何かご意見、情報等ありましたらコメント等で教えてください!