この記事では、最近Twitterで話題になった次の問題の解答についての解説をします。
そのあとで、トリボナッチ数に関係する定数との不思議な関係についてご紹介します。
元となる NNN (@n_symmetric)さんのツイートはこちらです。
謎の定数が出てきた pic.twitter.com/6b1YyrJckq
— NNN (@n_symmetric) April 24, 2022
問題形式に書き直すとこうなります。
任意の相異なる実数 $a,b,c$ に対し
${\displaystyle \begin{align} \left(\frac{a}{b-c}\right)^4+ \left(\frac{b}{c-a}\right)^4+ \left(\frac{c}{a-b}\right)^4 \end{align} }$ がとり得る値の最小値は?
求める最小値を$m$とおくことにしましょう。
$4$ 乗和ですから明らかに$0\le m$ です。
次に適当に数を代入しておおざっぱに評価します。
たとえば、$a=15,b=12,c=-2$ とすると
${\displaystyle \begin{align} \left(\frac{15}{12+2}\right)^4+ \left(\frac{12}{-2-15}\right)^4+ \left(\frac{-2}{15-12}\right)^4 =1.763\cdots \end{align} }$
これで、ざっくりと** $0\le m < 1.764$ **と評価できることがわかりました。
まず、$a,b,c$のどれか$1$つが$0$だとすると、相加相乗平均から式の値は$2$以上となります。$0\le m < 1.764$ ですから、ここからは$a,b,c$ がいずれも $0$ でない場合だけを考えます。
また、$a,b,c$ を定数倍しても式の値は変わりません。したがって、$c=1$ としても一般性は失われません。
$c=1$ として書き換えると
${\displaystyle \begin{align} \left(\frac{a}{b-1}\right)^4+ \left(\frac{b}{1-a}\right)^4+ \left(\frac{1}{a-b}\right)^4\\ \\ \end{align} }$
分母が重たいので次のように置換します。
${\displaystyle x=\dfrac{a}{b-1}\\ y=\dfrac{b}{1-a}\\ z=\dfrac{1}{a-b} }$
$z$ の式から $a,b$ を消去すると
$z=-\dfrac{xy+1}{x+y}$
となります。
分母に $x+y$ がありますが、 $x+y=0$ となるときは $a+b=1$ のときであり、このとき
$\left(\dfrac{a}{(1-a)-1}\right)^4+\left(\dfrac{1-a}{1-a}\right)^4+\left(\dfrac{1}{a-(1-a)}\right)^4>2$
ですから、最小値にはなりえないので** $x+y\ne0$ **としてよいです。
これを使って書き換えると
${\displaystyle \begin{align} &\left(\frac{a}{b-1}\right)^4+ \left(\frac{b}{1-a}\right)^4+ \left(\frac{1}{a-b}\right)^4\\ &=x^4+ y^4+ z^4\\ &=x^4+y^4+\left(\frac{xy+1}{x+y}\right)^4\\ \\ \end{align} }$
となります。
まだ扱いにくいので、さらに次のように置換します。
${\displaystyle A=x+y\\ B=xy }$
これらを使って、$x^4+y^4$ を $A,B$ で表すことができます。
${\displaystyle \begin{align} x^4+y^4&=(x^2+y^2)^2-2x^2y^2\\ &=((x+y)^2-2xy)^2-2x^2y^2\\ &=(A^2-2B)^2-2B^2\\ &=A^4-4A^2B+2B^2 \end{align} }$
これを使うと
${\displaystyle \begin{align} x^4+ y^4+ z^4 &=A^4-4A^2B+2B^2+\left(\frac{B+1}{A}\right)^4\\ \\ \end{align} }$
さらに、$C=A^2(>0)$ と置換すると、
${\displaystyle \begin{align} x^4+ y^4+ z^4 &=C^2-4CB+2B^2+\frac{(B+1)^4}{C^2}\\ \\ \end{align} }$
次数も下がってだいぶ扱いやすくなりました。
つぎに必要条件を考えます。
この式が最小になる$B,C$では、$B,C$ それぞれの偏微分が$0$ になるはずです。
つまり、次の連立方程式の解となる $B,C$ が最小値となりうる候補となります。
${\displaystyle \begin{cases} \dfrac{\partial}{\partial B}\left(C^2-4CB+2B^2+\dfrac{(B+1)^4}{C^2}\right)=0\\ \dfrac{\partial}{\partial C}\left(C^2-4CB+2B^2+\dfrac{(B+1)^4}{C^2}\right)=0 \end{cases} }$
偏微分すると
${\displaystyle \begin{cases} \dfrac{4 (B^3 + 3 B^2 + B C^2 + 3 B - C^3 + 1)}{C^2}=0\\ \dfrac{-2 (B^4 + 4 B^3 + 6 B^2 + 2 B C^3 + 4 B - C^4 + 1)}{C^3}=0 \end{cases} }$
分母を払って整理すると
${\displaystyle \begin{cases} B^3 + 3 B^2 + B C^2 + 3 B - C^3 + 1=0\\ B^4 + 4 B^3 + 6 B^2 + 2 B C^3 + 4 B - C^4 + 1=0 \end{cases} }$
これを満たす$B,C$の組合せを探します。
手計算ではとても解を見つけられる気がしませんが、グレブナー基底を使えばこのような複雑な連立方程式を簡単な形に変換してくれます。
WolframAlpha先生にグレブナー基底を使って簡単にしてもらいましょう。まず$\{C,B\}$の順でグレブナー基底を計算してもらうと
グレブナー基底は
$\{11 B^9 + 73 B^8 + 210 B^7 + 342 B^6 + 345 B^5 + 221 B^4 + 88 B^3 + 20 B^2 + 2 B,\\ 143 B^8 + 872 B^7 + 2252 B^6 + 3184 B^5 + 2649 B^4 + 2 B^3 C + 1284 B^3 + 6 B^2 C + 326 B^2 + 6 B C + 28 B + 2 C - 2,\\ 187 B^8 + 1032 B^7 + 2326 B^6 + 2696 B^5 + 1619 B^4 + 386 B^3 - 50 B^2 - 34 B + 2 C^2 - 2\}$
となるので、
$11 B^9 + 73 B^8 + 210 B^7 + 342 B^6 + 345 B^5 + 221 B^4 + 88 B^3 + 20 B^2 + 2 B=0$
を満たす$B$を探します。
因数分解すると
$B (B + 1)^5 (11 B^3 + 18 B^2 + 10 B + 2) = 0$
$B=0,-1$ は不適(証明略)です。
$B$の$3$次方程式
$11 B^3 + 18 B^2 + 10 B + 2=0$
は1つの実数解をもち、その解は
$ \begin{align} B &=\dfrac{1}{11} \left(-6 + \dfrac{\sqrt[3]{3(11 \sqrt{33} - 63)}}{3} - \dfrac{2}{\sqrt[3]{3 (11 \sqrt{33} - 63)}}\right)\\ &=-0.73953\cdots \end{align} $
です。
WolframAlpha: B (B (11 B + 18) + 10) + 2 = 0
次に$\{B,C\}$の順でグレブナー基底を計算すると
グレブナー規定は
$\{11 C^8 + 2 C^7 - 8 C^6 - 6 C^5 + C^4,\\ 14 B C^2 - 77 C^7 + 30 C^6 + 53 C^5 + 8 C^4 - 28 C^3 + 14 C^2,\\ 14 B^3 + 42 B^2 + 42 B + 77 C^7 - 30 C^6 - 53 C^5 - 8 C^4 + 14 C^3 - 14 C^2 + 14\}$
となるので、
$11 C^8 + 2 C^7 - 8 C^6 - 6 C^5 + C^4=0$
を満たす$C$を探します。
因数分解すると
$(C - 1) C^4 (11 C^3 + 13 C^2 + 5 C - 1) = 0$
$C=0,1$ は不適(証明略)です。
$C$の$3$次方程式
$11 C^3 + 13 C^2 + 5 C - 1 = 0$
は1つの実数解をもち、その解は
$ \begin{align} C &=\dfrac{1}{33} \left(-13 + \sqrt[3]{2(1327 - 231 \sqrt{33})} + \sqrt[3]{2 (1327 + 231 \sqrt{33})} \right)\\ &=0.14161\cdots \end{align} $
です。
WolframAlpha: 11 C^3 + 13 C^2 + 5 C - 1 = 0
$x+y=A,xy=B$ より $x,y$ は $X$ の二次方程式 $X^2-AX+B=0$ の解です。
また、$z=-\dfrac{B+1}{A}$ですから、$x,y,z$ を $A,B$ で表すと
${\displaystyle x=\dfrac{A\pm\sqrt{A^2-4B}}{2}\\ y=\dfrac{A\mp\sqrt{A^2-4B}}{2}\\ z=-\dfrac{B+1}{A}\\ A=\pm\sqrt{C} }$
となります。
※ $x,y$ については復号同順です。
定義より
${\displaystyle
a=\dfrac{xy-x}{xy+1}\\
b=\dfrac{xy+y}{xy+1}\\
c=1\\
}$
となりますが、$a,b,c$ については定数倍しても式の値は変わらないことから、それぞれ $xy+1$ 倍することにします。書き換えると
${\displaystyle a=xy-x\\ b=xy+y\\ c=xy+1\\ }$
$x,y$ の部分を $A,B$ で書き直すと
${\displaystyle a=B-\dfrac{A\pm\sqrt{A^2-4B}}{2}\\ b=B+\dfrac{A\mp\sqrt{A^2-4B}}{2}\\ c=B+1\\ }$
これと、$A=\pm\sqrt{C}$ から、$4$通りの解の候補がでた……ようにみえます。
1つ目の候補(?)
$
a:b:c=
\left(B-\dfrac{\sqrt{C}+\sqrt{C-4B}}{2}\right):
\left(B+\dfrac{\sqrt{C}-\sqrt{C-4B}}{2}\right):
(B+1)
$
2つ目の候補(?)
$
a:b:c=
\left(B-\dfrac{\sqrt{C}-\sqrt{C-4B}}{2}\right):
\left(B+\dfrac{\sqrt{C}+\sqrt{C-4B}}{2}\right):
(B+1)
$
3つ目の候補(?)
$
a:b:c=
\left(B-\dfrac{-\sqrt{C}+\sqrt{C-4B}}{2}\right):
\left(B+\dfrac{-\sqrt{C}-\sqrt{C-4B}}{2}\right):
(B+1)
$
4つ目の候補(?)
$
a:b:c=
\left(B-\dfrac{-\sqrt{C}-\sqrt{C-4B}}{2}\right):
\left(B+\dfrac{-\sqrt{C}+\sqrt{C-4B}}{2}\right):
(B+1)
$
しかし、よくみると$1$つ目の候補と$3$つ目の候補、$2$つ目の候補と$4$つ目の候補はそれぞれ順番を並べ替えたものであり、実質的に同じです。
さらに、数値計算では
$
\left(B-\dfrac{\sqrt{C}+\sqrt{C-4B}}{2}\right):
\left(B+\dfrac{\sqrt{C}-\sqrt{C-4B}}{2}\right):
(B+1)\\
\fallingdotseq
-1.80799:-1.43168:0.260465\\
\fallingdotseq
\left(B+\dfrac{\sqrt{C}+\sqrt{C-4B}}{2}\right):
(B+1):
\left(B-\dfrac{\sqrt{C}-\sqrt{C-4B}}{2}\right)
$
となり、$1$つ目の候補と$2$つ目の候補も同じ比のならべかえにすぎないようです。
(厳密には未証明ですが、WolframAlpha先生の検算ではこれらの比の誤差は計算限界以下でした)
以上から、最小値となる $a,b,c$ は次の比となる実数の組合せ(とその並び替え)とわかりました。
$ a:b:c\\ = \left(B-\dfrac{\sqrt{C}+\sqrt{C-4B}}{2}\right): \left(B+\dfrac{\sqrt{C}-\sqrt{C-4B}}{2}\right): (B+1)\\ \fallingdotseq -1.80799:-1.43168:0.260465 $
ただし
$
\begin{align}
B
&=\dfrac{1}{11} \left(-6 + \dfrac{\sqrt[3]{3(11 \sqrt{33} - 63)}}{3} - \dfrac{2}{\sqrt[3]{3 (11 \sqrt{33} - 63)}}\right)\\
&=-0.73953\cdots
\end{align}
$
$ \begin{align} C &=\dfrac{1}{33} \left(-13 + \sqrt[3]{2(1327 - 231 \sqrt{33})} + \sqrt[3]{2 (1327 + 231 \sqrt{33})} \right)\\ &=0.14161\cdots \end{align} $
${\displaystyle \begin{align} x^4+ y^4+ z^4 &=C^2-4CB+2B^2+\frac{(B+1)^4}{C^2}\\ \\ \end{align} }$
ですから、これに先ほどの$B,C$を代入すれば最小値 $m$ が求められます。WolframAlpha先生に計算してもらうと
${\displaystyle \begin{align} m&=\dfrac{10 + 2\sqrt[3]{2501 - 363 \sqrt{33}} + 2 \sqrt[3]{2501 + 363 \sqrt{33}}}{33}\\ &\fallingdotseq 1.762293875711\cdots \end{align} }$
ところで、トリボナッチ数の一般項の四捨五入を使った表現に出てくるこんな定数があります。
${\displaystyle T_n=\left\lfloor
\frac{T^n}{U}
\right\rceil}$
ただし、$T,U$は次の定数です。
${\displaystyle \begin{align} T&=\frac {1}{3}\left(1+{\sqrt[{3}]{19-3{\sqrt {33}}}}+{\sqrt[{3}]{19+3{\sqrt {33}}}}\right)\\ &=1.839286755214161\cdots \end{align} }$
${\displaystyle \begin{align} U&=3T^2-2T-1\\ &=5.4703537932903902\cdots \end{align}}$
Mathlog:トリボナッチ数の一般項の四捨五入による表現の導出
元ツイに寄せられた数々のリプライや引用リツイートの情報等とこの定数を組み合わせれば、この式に出てくる定数 $T$ を使って、$a:b:c$ と $m$ を次のように表現することができるようです。
$a:b:c=
(2T+2):(T+\sqrt{T^{2}+2T}):(T-\sqrt{T^{2}+2T})
$
のとき
${\displaystyle
\begin{align}
&\left(\frac{a}{b-c}\right)^4+
\left(\frac{b}{c-a}\right)^4+
\left(\frac{c}{a-b}\right)^4\\
&=\dfrac{2T+4}{4T-3}\\
&=m
\end{align}
}$
計算してみると、確かにそうなります。
しかし、なぜこうなるのか私は理解していません。
(すいません)
(2022.5.1 追記)
上記記事中の定数 $B,C$ について、$T$で表現できることを確認しました。
次のようにできます。
$ \begin{align} B &=-\dfrac{T+1}{T+2}\\ &=-0.73953\cdots \end{align} $
$ \begin{align} C &=\dfrac{1}{T(T+2)}\\ &=0.14161\cdots \end{align} $
いい感じにシンプルに書けました。
はたしてトリボナッチ数に関係する定数がからむのは単なる偶然なのでしょうか。
(2022.5.5 追記)
上記の記事では、最小値を求めるのに $B,C$ を求めてから元の式に代入する方法を使いましたが、実は、グレブナー基底を使えば $B,C$ を求めることなく最小値を計算できることに気が付きました。
やり方は、偏微分がゼロになるときの式の値さえわかればいいのですから、次の$3$元連立方程式の解となる $m$ を調べればよいということです。
${\displaystyle \begin{cases} \dfrac{\partial}{\partial B}\left(C^2-4CB+2B^2+\dfrac{(B+1)^4}{C^2}\right)=0\\ \dfrac{\partial}{\partial C}\left(C^2-4CB+2B^2+\dfrac{(B+1)^4}{C^2}\right)=0\\ C^2-4CB+2B^2+\dfrac{(B+1)^4}{C^2}=m \end{cases} }$
WolframAlpha先生にグレブナー基底を計算してもらうと
[WolframAlpha: GroebnerBasis[{D[C^2-4CB+2B^2+{(B+1)^4}/{C^2},B]=0,D[C^2-4CB+2B^2+{(B+1)^4}/{C^2},C]=0,C^2-4CB+2B^2+{(B+1)^4}/{C^2}=m},{C,B,m}]]( https://ja.wolframalpha.com/input?i=GroebnerBasis%5B%7BD%5BC%5E2-4CB%2B2B%5E2%2B%7B%28B%2B1%29%5E4%7D%2F%7BC%5E2%7D%2CB%5D%3D0%2CD%5BC%5E2-4CB%2B2B%5E2%2B%7B%28B%2B1%29%5E4%7D%2F%7BC%5E2%7D%2CC%5D%3D0%2CC%5E2-4CB%2B2B%5E2%2B%7B%28B%2B1%29%5E4%7D%2F%7BC%5E2%7D%3Dm%7D%2C%7BC%2CB%2Cm%7D%5D )
$\{11 m^4 - 32 m^3 + 8 m^2 + 16 m + 16,\\ \qquad \vdots\,\,\text{(以下使わないので省略)}\\ \}$
となるので、
$11 m^4 - 32 m^3 + 8 m^2 + 16 m + 16=0$
を解いて $m$ を得ることができます。
因数分解すると
$(m - 2) (11 m^3 - 10 m^2 - 12 m - 8) = 0$
解のうち $0\le m<2$ となるものは $1$ つしかなく、それは上記で得られた解と一致します。
WolframAlpha: 11m^4-32m^3+8m^2+16m+16=0
(2022.5.5 追記)
同じ方法を使えば、当初の問題の$4$ 乗の部分を $6$ 乗にした場合の最小値についても調べることができます。
$6$乗の場合はつぎの$3$元連立方程式を解くことになります。
${\displaystyle \begin{cases} \dfrac{\partial}{\partial B}\left(C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+\dfrac{(B+1)^6}{C^3}\right)=0\\ \dfrac{\partial}{\partial C}\left(C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+\dfrac{(B+1)^6}{C^3}\right)=0\\ C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+\dfrac{(B+1)^6}{C^3}=m \end{cases} }$
WolframAlpha先生にグレブナー基底を計算してもらうと
[WolframAlpha: GroebnerBasis[{D[C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+{(B+1)^6}/{C^3},B]=0,D[C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+{(B+1)^6}/{C^3},C]=0,C^3-6C^2B+9CB^2-2B^3+{(B+1)^6}/{C^3}=m},{C,B,m}]]( https://ja.wolframalpha.com/input?i=GroebnerBasis%5B%7BD%5BC%5E3-6C%5E2B%2B9CB%5E2-2B%5E3%2B%7B%28B%2B1%29%5E6%7D%2F%7BC%5E3%7D%2CB%5D%3D0%2CD%5BC%5E3-6C%5E2B%2B9CB%5E2-2B%5E3%2B%7B%28B%2B1%29%5E6%7D%2F%7BC%5E3%7D%2CC%5D%3D0%2CC%5E3-6C%5E2B%2B9CB%5E2-2B%5E3%2B%7B%28B%2B1%29%5E6%7D%2F%7BC%5E3%7D%3Dm%7D%2C%7BC%2CB%2Cm%7D%5D )
$\{1849 m^8 - 10246 m^7 + 17323 m^6 - 7540 m^5 + 372 m^4 - 3664 m^3 - 1616 m^2 + 320 m - 64,\\ \qquad \vdots\,\,\text{(以下使わないので省略)}\\ \}$
$1849 m^8 - 10246 m^7 + 17323 m^6 - 7540 m^5 + 372 m^4 - 3664 m^3 - 1616 m^2 + 320 m - 64=0$
因数分解して
$(m - 2) (m^2 - 2 m - 1) (1849 m^5 - 2850 m^4 + 376 m^3 - 1184 m^2 + 208 m - 32) = 0$
解のうち $0\le m<2$ となるものは $1$ つしかなく、それは$5$次方程式
$1849 m^5 - 2850 m^4 + 376 m^3 - 1184 m^2 + 208 m - 32=0$
の解となっています。近似値は次のとおり。
$m=1.63348907346325448597037265359354784473\cdots$
WolframAlpha: 1849m^8-10246m^7+17323m^6-7540m^5+372m^4-3664m^3-1616m^2+320m-64=0
なお、WolframAlphaでは厳密解が計算できませんでした。おそらく、四則演算と冪根の組合せでは表せない解になると思われます。
(2022.5.5 追記)
同じ方法を使えば、当初の問題の$4$ 乗の部分を $8$ 乗にした場合の最小値についても調べることができます。
$8$乗の場合はつぎの$3$元連立方程式を解くことになります。
${\displaystyle \begin{cases} \dfrac{\partial}{\partial B}\left(C^4-8C^3B+20C^2B^2-16CB^3+2B^4+\dfrac{(B+1)^8}{C^4}\right)=0\\ \dfrac{\partial}{\partial C}\left(C^4-8C^3B+20C^2B^2-16CB^3+2B^4+\dfrac{(B+1)^8}{C^4}\right)=0\\ C^4-8C^3B+20C^2B^2-16CB^3+2B^4+\dfrac{(B+1)^8}{C^4}=m \end{cases} }$
式が複雑になると、WolframAlpha先生は文字を $x,y$ にしないと計算してくれないという変な癖がありますので、$B,C$ を $x,y$ に置換してから WolframAlpha先生にグレブナー基底を計算してもらうと
[WolframAlpha: GroebnerBasis[{D[y^4-8y^3x+20y^2x^2-16yx^3+2x^4+(x+1)^8/y^4,x]=0,D[y^4-8y^3x+20y^2x^2-16yx^3+2x^4+(x+1)^8/y^4,y]=0,y^4-8y^3x+20y^2x^2-16yx^3+2x^4+(x+1)^8/y^4=m},{y,x,m}]]( https://ja.wolframalpha.com/input?i=GroebnerBasis%5B%7BD%5By%5E4-8y%5E3x%2B20y%5E2x%5E2-16yx%5E3%2B2x%5E4%2B%28x%2B1%29%5E8%2Fy%5E4%2Cx%5D%3D0%2CD%5By%5E4-8y%5E3x%2B20y%5E2x%5E2-16yx%5E3%2B2x%5E4%2B%28x%2B1%29%5E8%2Fy%5E4%2Cy%5D%3D0%2Cy%5E4-8y%5E3x%2B20y%5E2x%5E2-16yx%5E3%2B2x%5E4%2B%28x%2B1%29%5E8%2Fy%5E4%3Dm%7D%2C%7By%2Cx%2Cm%7D%5D )
$\{1215051273 m^{13} - 9045070902 m^{12} + 24469346984 m^{11} - 27549334336 m^{10} + 10383816752 m^9 - 2020749296 m^8 + 1585571840 m^7 + 2402076160 m^6 + 1111820544 m^5 + 41492480 m^4 + 10082304 m^3 - 1241088 m^2 - 65536 m - 4096,\\ \qquad \vdots\,\,\text{(以下使わないので省略)}\\ \}$
因数分解サイトを使って因数分解すると
$(m−2)(243m^5−946m^4+680m^3+576m^2+112m−16)(5000211m^7−7756250m^6+2065244m^5−2973928m^4−277104m^3−65504m^2−3008m−128)=0$
$m=2$ の解のほか、$5$次方程式の方の解と$7$次方程式の方の解が得られました。
$5$次方程式の方の解は
$m\fallingdotseq 0.0935307$
$7$次方程式の方の解は
$m\fallingdotseq 1.54957$
未証明ですが、数値実験の結果から、$7$次方程式の方の解の方が最小値と思われます。
もう少し先の桁まで計算すると
$m=1.54957068032383362115233806586966093783\cdots$
WolframAlpha: 5000211m^7−7756250m^6+2065244m^5−2973928m^4−277104m^3−65504m^2−3008m−128=0
(2022.5.5 追記)
ここまでにわかった結果をまとめておきます。
${\displaystyle x=\dfrac{a}{b-c}\\ y=\dfrac{b}{c-a}\\ z=\dfrac{c}{a-b} }$
としたとき、
$x^2+y^2+z^2$の最小値 | $x^4+y^4+z^4$の最小値 | $x^6+y^6+z^6$の最小値 | $x^8+y^8+z^8$の最小値 |
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$m-2=0$ の解 | $11 m^3 - 10 m^2 - 12 m - 8=0$ の解 | $1849 m^5 - 2850 m^4 + 376 m^3 - 1184 m^2 + 208 m - 32=0$ の解 | $5000211m^7−7756250m^6+2065244m^5−2973928m^4−277104m^3−65504m^2−3008m−128=0$ の解 |
$2$ | $1.762293875711052\cdots$ | $1.633489073463254\cdots$ | $1.549570680323833\cdots$ |
これらの係数に法則性があるのかどうか、気になりますね。
この式で遊んでみてこれまでにわかった情報をまとめました。
グレブナー基底で複雑な連立方程式が解けるという話を聞いたことはあったのですが、今回その実力を目の当たりにしました。
すごいぞグレブナー基底!そしてWolframAlpha先生!
しかし、まだまだわからないことがたくさんあります。
解法についても、もっとシンプルな方法があるのではないかと思います。
特に、トリボナッチ数に関係する定数がでてきたことは不思議です。
何かご意見、情報等ありましたらコメント等で教えてください!