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大学数学基礎解説
文献あり

代数学をやるその2 位数5593の群は巡回群

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はじめに

代数学の演習結果をメモしていくものです.今回は巡回群に関する基本的な問題を持ってきました.

その他の問題たちは こちらのまとめページ から見れます.よろしければリンクをご利用ください.

更新履歴

(2022/8/8):解答を少し修正しました.

問題と解答

位数$5593$の群$G$は巡回群であることを示せ.

間違っている方
証明を表示

$e$で群$G$の単位元を表す.まず$5593$を素因数分解すると
$$5593 = 7 \cdot 17 \cdot 47$$
となる.よってSylowの定理より,$G$にはSylow7部分群$N_7$とSylow17部分群$N_{17}$とSylow47部分群$N_{47}$が存在する.Sylow17部分群の個数は$|G|=5593$の約数で$17$で割った余りが$1$となる整数であるが,そのような整数は$1$しか存在しない.これより$N_{17}$$G$の中で正規となる.同様に,$N_{47}$$G$の中で正規となる.よって$N_{17}N_{47}$$G$の正規部分群である.$17$$47$は互いに素なので$N_{17} \cap N_{47}=\{e\}$が成り立つ.従って,群論の一般論から
$$N_{17}N_{47} \cong N_{17} \times N_{47} \cong \mathbb{Z}/17\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/47\mathbb{Z}$$
が成り立つ.ここで$N_7$$G$の正規部分群であることが示されれば,$N_7N_{17}N_{47}$$G$の部分群で,$7$$17 \cdot 47$が互いに素であることから,
$$N_{7}N_{17}N_{47} \cong N_7 \times (N_{17}N_{47}) \cong \mathbb{Z}/7\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/17\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/47\mathbb{Z} \cong \mathbb{Z}/5593\mathbb{Z}$$
が成り立つ.すると,$|N_7N_{17}N_{47}|=5593=|G|$であることから$G=N_7N_{17}N_{47}$となるので証明が完了する.よって示すべきは$N_7$$G$の正規部分群であることである.

まず,$N_{17}$$G$の中で正規であることから,$N_7N_{17}$$G$の部分群である.$7$$17$が互いに素であることから$N_7N_{17}$の位数は$7 \cdot 17$である.これより,$N_7$$N_7N_{17}$のSylow7部分群であり,その個数は$7 \cdot 17$の約数で$7$で割った余りが$1$である整数となる.そのような整数は$1$しか存在しないので,$N_7$$N_7N_{17}$において正規である.$N_{17}$$N_{7}N_{17}$においても正規であるから,
$$N_7N_{17} \cong N_7 \times N_{17} \cong \mathbb{Z}/7\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/17\mathbb{Z}$$
が成り立つ.即ち,$N_7N_{17}$は可換部分群である.すると,任意の$h \in N_{17}$に対して
$$hN_7h^{-1}=N_7$$
が成り立つ.これより,$N_7$への$G$の共役作用(ここが間違っている.$N_7$と共役な部分群が$N_7$のみかどうか分からないのでそのような作用はまだ定義できない)は,$N_7$への$G/N_{17}$の共役作用を引き起こす.即ち,$N_7$$G$において共役な部分群は$N_7$への$G/N_{17}$の共役作用による軌道の元で尽くされる.その軌道の元の個数は$|G/N_{17}|=7 \cdot 47$の約数であるが,そもそも$G$におけるSylowの定理より$N_7$と共役な部分群の個数は$1$もしくは$17 \cdot 47=799 \, (\equiv 1 \, {\rm mod}\, 7)$であったので,$1$しかとり得ない.従って$N_7$$G$の正規部分群であり,題意は示された.(証明終)

修正された方
証明を表示

$e$で群$G$の単位元を表す.まず$5593$を素因数分解すると
$$5593 = 7 \cdot 17 \cdot 47$$
となる.よってSylowの定理より,$G$にはSylow7部分群$N_7$とSylow17部分群$N_{17}$とSylow47部分群$N_{47}$が存在する.Sylow17部分群の個数は$|G|=5593$の約数で$17$で割った余りが$1$となる整数であるが,そのような整数は$1$しか存在しない.これより$N_{17}$$G$の中で正規となる.同様に,$N_{47}$$G$の中で正規となる.よって$N_{17}N_{47}$$G$の正規部分群である.$17$$47$は互いに素なので$N_{17} \cap N_{47}=\{e\}$が成り立つ.従って,群論の一般論から
$$N_{17}N_{47} \cong N_{17} \times N_{47} \cong \mathbb{Z}/17\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/47\mathbb{Z}$$
が成り立つ.ここで$N_7$$G$の正規部分群であることが示されれば,$N_7N_{17}N_{47}$$G$の部分群で,$7$$17 \cdot 47$が互いに素であることから,
$$N_{7}N_{17}N_{47} \cong N_7 \times (N_{17}N_{47}) \cong \mathbb{Z}/7\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/17\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/47\mathbb{Z} \cong \mathbb{Z}/5593\mathbb{Z}$$
が成り立つ.すると,$|N_7N_{17}N_{47}|=5593=|G|$であることから$G=N_7N_{17}N_{47}$となるので証明が完了する.よって示すべきは$N_7$$G$の正規部分群であることである.

まず,$N_{17}$$G$の中で正規であることから,$N_7N_{17}$$G$の部分群である.$7$$17$が互いに素であることから$N_7N_{17}$の位数は$7 \cdot 17$である.これより,$N_7$$N_7N_{17}$のSylow7部分群であり,その個数は$7 \cdot 17$の約数で$7$で割った余りが$1$である整数となる.そのような整数は$1$しか存在しないので,$N_7$$N_7N_{17}$において正規である.よって
$$(N_7N_{17})^{-1} \cdot N_7 \cdot N_7N_{17}=N_{7} \tag{1}$$
$N_7N_{17}$において成り立つ.$G$の演算と$N_7N_{17}$における演算は一致しているから,これは$G$においても成り立つ.
$G$のSylow7部分群全てからなる集合を$X$とし,$G$$X$への共役作用を考える.Sylowの定理から全てのSylow7部分群は互いに共役であるので,この作用は推移的であり,$H_7$の軌道が$X$全体に一致する.よって$X$の元の個数は$G/{\rm Stab}(H_{17})$(${\rm Stab}(H_7)$$H_7$の固定部分群)の位数に等しい.ところで,式(1)から${\rm Stab}(H_7)$$N_7N_{17}$を含む.すると,
$$|G/H_7H_{17}|=|G/{\rm Stab}(H_7)| \cdot |{\rm Stab}(H_7)/H_7H_{17}|$$
となる.よって$G/{\rm Stab}(H_7)$の位数,即ち$X$の元の個数は$|G/H_7H_{17}|=47$の約数である.$G$におけるSylowの定理より$X$の元の個数は$1$もしくは$17 \cdot 47=799 \, (\equiv 1 \, {\rm mod}\, 7)$であるから,その値は$1$しか取り得ない.従って$N_7$$G$の正規部分群であり,題意は示された.(証明終)

感想

素因数分解をしてSylowの定理,といういつものやつですね.

今回使った事実

剰余群の元は上にバーを付けて表します.

$G$を群,$H,N$$G$の部分群とする.$N$$G$の正規部分群であるとき,$HN \subset G$は部分群である.$H$も正規なら$HN$$G$の正規部分群である.

証明を表示

任意の$h,h' \in H, \, n,n' \in N$に対して
$$(hn)^{-1}h'n'=n^{-1}h^{-1}h'n'=(h'^{-1}h)^{-1} \cdot (h'^{-1}h)n^{-1}(h'^{-1}h)^{-1}n' \in HN$$
が成り立つ.よって$HN$$G$の部分群である.$H$も正規であるとすると,任意の$g \in G$と任意の$hn \in HN$に対して
$$g(hn)g^{-1}=(ghg^{-1})(gng^{-1}) \in HN$$
$$g^{-1}(hn)g=(g^{-1}hg)(g^{-1}ng) \in HN$$
が成り立つので,$HN$$G$の正規部分群である.(証明終)

$G$を群,$H,N$$G$の正規部分群とする.このとき$HN/(H \cap N) \cong \{H/(H \cap N)\} \times \{N/(H \cap N)\}$が成り立つ.特に$H \cap N=\{e\}$であるとき,$HN \cong H \times N$が成り立つ.

証明を表示

補題1より$HN$$G$の(正規)部分群である.任意の$h \in H, \, n \in N$に対して
$$h^{-1}n^{-1}hn=h^{-1} \cdot (n^{-1}hn) \in H$$
$$h^{-1}n^{-1}hn=(h^{-1}n^{-1}h) \cdot n \in N$$
が成り立つので,$h^{-1}n^{-1}hn \in H \cap N$である.これは$HN/(H \cap N)$では$\overline{hn}=\overline{nh}$を意味する.
写像$\varphi : H \times N \rightarrow HN/(H \cap N)$$h \in H, \, n \in N$に対して$\varphi(h,n)=\overline{hn}$を満たすものとして定める.すると,任意の$h,h' \in H, \, n,n' \in N$に対して
$$\varphi((h,n)(h',n'))=\varphi(hh',nn')=\overline{hh'nn'}=\overline{hnh'n'}=\varphi(h,n)\varphi(h',n')$$
が成り立つので,$\varphi$は群準同型である.その定義から明らかに$\varphi$は全射.$h \in H, \, n \in N$$h,n \in {\rm Ker}\,\varphi$を満たすとすると,$hn \in H \cap N$となる.よって
$$h=(hn)n^{-1} \in N, \hspace{0.2in} n=h^{-1}(hn) \in H$$
となるので,$h,n \in H \cap N$である.$h,n \in H \cap N$なら$(h,n) \in {\rm Ker}\,\varphi$は明らかであるから,
$${\rm Ker}\,\varphi=(H \cap N) \times (H \cap N)$$
となる.よって準同型定理より同型
$$HN/(H \cap N) \cong (H \times N)/{\rm Ker}\,\varphi \cong \{H/(H \cap N)\} \times \{N/(H \cap N)\}$$
を得る.(証明終)

$G$を群,$H,N$$G$の部分群とする.$N$$G$の正規部分群であるとき,同型$HN/N \cong H/(H \cap N)$が成り立つ.特に,$H,N$が有限群であるとき,位数に関して
$$|HN|=\frac{|H| \cdot |N|}{|H \cap N|}$$
が成り立つ.

証明を表示

$N$は部分群$HN$の中でも正規であることに注意する.$H$から$HN/N$への自然な準同型を$\pi$とすると,$\pi$は全射でその核は$H \cap N$である.よって,準同型定理より題意が従う.後半はこの同型から明らかである.(証明終)

Sylowの定理

$G$を有限群とし,その位数を$n$とする.$p$$n$の素因数とし,$n=p^am$($m$$p$と互いに素)と表す.このとき,$G$の部分群$H$$|H|=p^a$を満たすものが存在し,これをSylow$p$部分群という.また,$G$の全てのSylow$p$部分群は共役であり,その個数$s$$s \equiv 1 \hspace{0.05in} {\rm mod} \hspace{0.05in} p$を満たす.

証明
自明である(冗談です.長いから略しました).(証明終)

今回の記事は以上です.
最後までお読み頂きありがとうございました.

参考文献

[1]
永田雅宜, 復刻版 大学院への代数学演習, 現代数学社, 2021
[2]
代数学1 群論入門, 雪江明彦, 日本評論社, 2010
投稿日:2022527

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certain
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素朴な問題が特に好きです.

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