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大学数学基礎解説
文献あり

代数学をやるその7 多項式環の極大イデアル

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はじめに

今回は多項式環の極大イデアルの生成元の個数を求める問題を持ってきました.

その他の問題たちは こちらのまとめページ から見れます.よろしければリンクをご利用ください.

更新履歴

(2022/06/20):補題2と補題3の追加,(1)の解答の間違いを修正.
(2022/12/17):補題2の入れ替えと補題3の削除,(1)の解答を更に修正,一旦途中までの(2)の解答を掲載.
(2022/12/27):補題2の入れ替えと補題3の追加,(2)の解答を修正.
(2023/10/15):追記の記入

問題と解答

以下の問に答えよ.(2020年度 東京大学数理科学研究科 修士課程専門B 第2問)
(1) $K$を体とする.$K$上の2変数多項式環$K[X,Y]$の極大イデアルは2つの元で生成されることを示せ.
(2) 有理整数環$\mathbb{Z}$上の2変数多項式環$\mathbb{Z}[X,Y]$の極大イデアルは3つの元で生成されることを示せ.

以下,剰余環の元は上にバーを付けて表します.また,可換環$R$とその拡大環$R'$,そして$R$のイデアル$I$に対し,$I$によって生成される$R'$のイデアルを$IR'$${\rm E}(I)$(Eはextensionの意)などと表すことにします.例えば,可換環$R$とそのイデアル$I$に対し,$I$によって生成される$R$上の1変数多項式環$R[X]$のイデアル$I(R[X])$
$$I(R[X])={\rm E}(I)=\{f(X) \in R[X] \, | \, f(X) \, の係数が全て \, I \, の元\}$$
となります.

(1)
証明を表示

$I \subset K[X,Y]$を極大イデアルとする.このとき$K[X,Y]/I$は体である.$K[X,Y]/I$は有限生成$K$代数でもあるから,補題1(Zariski's Lemma)により$K[X,Y]/I$$K$の有限次代数拡大体である.従って$X \in K[X,Y]$の像$\overline{X} \in K[X,Y]/I$$K$上のある既約多項式$f(T) \in K[T]$の根である.即ち
$$\overline{0}=f(\overline{X})=\overline{f(X)}$$
が成り立つ.これは$f(X) \in I$を意味する.$f(X)$によって生成される$K[X]$のイデアルを$(f)$$f(X)$によって生成される$K[X,Y]$のイデアルを${\rm E}(f)$と表すと${\rm E}(f) \subset I$が成り立つ.よって同型
$$K[X,Y]/I \cong (K[X,Y]/{\rm E}(f)/(I/{\rm E}(f) \cong (K[X]/(f))[Y]/(I/{\rm E}(f))$$
を得る.これより$I$$(K[X]/(f))[Y]$の極大イデアル$I/{\rm E}(f)$に対応する.$f(X) \in K[X]$は既約であったから$K[X]/(f)$は体である.体上の1変数多項式環はPIDであるから,ある$g(X,Y) \in K[X,Y]$によって$I/{\rm E}(f)=(\bar{g})$と表せる.これより$I\subset (f,g)$が成り立つ.$(f,g) \neq K[X,Y]$であれば,$I$の極大性から$I=(f,g)$となり題意が示される.よって示すべきは$(f,g) \neq K[X,Y]$であることである.

そこで,$(f,g)=K[X,Y]$と仮定する.このとき,ある$a,b \in K[X,Y]$が存在して$1=af+bg$と表せる.これは$K[X,Y]/{\rm E}(f)$において$\overline{1} \in (\overline{g})=I/{\rm E}(f)$であることを示している.しかし,これは$I/{\rm E}(f)$$K[X,Y]/{\rm E}(f)$の極大イデアルであることに矛盾.従って$(f,g) \neq K[X,Y]$である.(証明終)

(2)
証明を表示

$I \subset \mathbb{Z}[X,Y]$を極大イデアルとする.$I$は特に素イデアルであるから,$I \cap \mathbb{Z}$$\mathbb{Z}$イデアルである.よって$I \cap \mathbb{Z}=(0)$もしくは$I \cap \mathbb{Z}=(p)$($p$は素数)が成り立つ.

$I \cap \mathbb{Z}=(0)$とすると,$I$に含まれる整数は$0$のみである.つまり$S=\mathbb{Z} \backslash \{0\}$とおくと$I \cap S= \emptyset$である.これより自然な準同型$\mathbb{Z}\rightarrow \mathbb{Z}[X,Y]/I$は単射である.即ち$\mathbb{Z}[X,Y]/I$$\mathbb{Z}$を含む体である.よって$\mathbb{Z}[X,Y]/I$は有理数体$\mathbb{Q}$を含む$\pi : \mathbb{Z}[X,Y] \rightarrow \mathbb{Z}[X,Y]/I$を標準全射,$i : \mathbb{Z}[X,Y] \rightarrow S^{-1}(\mathbb{Z}[X,Y])=\mathbb{Q}[X,Y]$を任意の$f \in \mathbb{Z}[X,Y]$に対して$i(f)=f/1$を満たす環準同型とする.$\pi$$S$の各元を$\mathbb{Z}[X,Y]/I$の単元にうつすので,局所化の普遍性より$\pi=\varphi \circ i$を満たす環準同型$\varphi : \mathbb{Q}[X,Y] \rightarrow \mathbb{Z}[X,Y]/I$が存在する.$\pi$が全射であるから$\varphi$も全射である.即ち$\mathbb{Z}[X,Y]/I$有限生成$\mathbb{Q}$代数である.従って補題1(Zariski's Lemma)より,$\mathbb{Z}[X,Y]/I$$\mathbb{Q}$の有限次拡大体,特に代数拡大体である.このとき,補題2を$A=\mathbb{Z}$として適用することで$\mathbb{Z}[X,Y]/I$$\mathbb{Z}$上有限生成でないことが分かる.しかし,これは自然な全射準同型$\mathbb{Z}[X,Y] \rightarrow \mathbb{Z}[X,Y]/I$の存在に矛盾する.従って$I \cap \mathbb{Z}=(0)$となることはない.

以上より,$I \cap \mathbb{Z}=(p)$($p$は素数)と書ける.$p$$\mathbb{Z}[X,Y]$で生成するイデアルを${\rm E}(p)$と表すと,${\rm E}(p) \subset I$であるから同型
$$\mathbb{Z}[X,Y]/I \cong (\mathbb{Z}[X,Y]/{\rm E}(p))/(I/{\rm E}(p))$$
が成り立つ.即ち,$I/{\rm E}(p)$$\mathbb{Z}[X,Y]/{\rm E}(p)$極大イデアルである.同型
$$\mathbb{Z}[X,Y]/{\rm E}(p) \cong (\mathbb{Z}/(p))[X,Y]$$
が成り立ち,$\mathbb{Z}/(p)$は体であるから,(1)で示したことより$I/{\rm E}(p)$は2つの元で生成される.その生成元を多項式$f,g \in \mathbb{Z}[X,Y]$によって$\overline{f},\overline{g}$と表す.このとき$\mathbb{Z}[X,Y]$に戻れば$I\subset (f,g,p)$が成り立つが,1.の最後と同様の方法によってこの包含は等号となることが分かる.即ち$I$は3つの元で生成される.(証明終)

(1),(2)どちらの証明でも,極大イデアルと係数環との共通部分が零イデアルでないことを示すことが最も大事ですね.
因みに,今回の(1)の証明と同様の議論を帰納法と共に用いることで,一般に体$K$上の$n$変数多項式環の極大イデアルが$n$個の元で生成されることも分かります.面白いですね.

今回用いた事実

剰余環の元は上にバーを付けることでも表します.

Zariski's Lemma

$k$を体とする.体$K$を有限生成$k$代数とすると,$K$$k$の有限次拡大体である.

証明は wikipedia にも載っているのでそちらを参照して下さい.

次の補題2は,有名な事実である補題3から従います.

$A$を一意分解環で無限に多くの単項素イデアルを持つものとする.また,$K$$A$の商体,$L$$K$の代数拡大体とする.このとき,$L$$A$上有限生成ではない

証明を表示

背理法で示すために,$A$上の多項式環$A[X_1,\cdots,X_n]$とその極大イデアル$I$が存在して
$$L \cong A[X_1,\cdots,X_n]/I$$
と書けるとする.任意の$1 \leq i \leq n$に対して$\theta_i$$X_i$の像とする.$a \in A$$\theta_1,\cdots,\theta_n$たちの$K$上の最小多項式の分母を全て掛け合わせた元とする.$a \neq 0$であるから$a^{-1} \in K$である.このとき$L$$A[a^{-1}]$上整である.従って補題3より$A[a^{-1}]$も体である.$a$の素元分解に現れるどの素元とも単元倍で移りあわない素元$p \in A$を取る(このような素元の存在は$A$が無限に多くの単項素イデアルを持つことから従う).$p$$A[a^{-1}]$の元と見れば可逆であるから,ある$a_0,\cdots,a_{n} \in A$($n \geq 0$)が存在して
$$p(a_n(a^{-1})^n+\cdots+a_1a^{-1}+a_0)=1$$
が成り立つ.両辺に$a^n$を掛けることで
$$p(a_n+\cdots+a_1a^{n-1}+a_0a^n)=a^n$$
を得る.これは$p$$a$を割り切ることを示しているが,それは$p$の仮定に反する.以上より題意は示された.(証明終)

$A$は整域$B$の部分環で,$B$$A$上整であるとする.このとき$A$が体であることと$B$が体であることは同値である.

証明を表示

$A$が体であるとし,任意の$x \in B \backslash \{0\}$を取る.$B$$A$上整であるから,$a_0,\cdots,a_{n-1} \in A$($n>0$)が存在して
$$x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0=0$$
が成り立つ.これは
$$x(x^{n-1}+a_{n-1}x^{n-2}+\cdots+a_1)=-a_0$$
と変形できる.整数$n$が最小になるように$a_i$たちを取ることで$a_0 \neq 0$としてよい($x \neq 0$だから).すると$A$が体であることから$a_0^{-1} \in A$なので
$$-a_0^{-1}x(x^{n-1}+a_{n-1}x^{n-2}+\cdots+a_1)=1$$
が成り立つ.即ち$x \in B \backslash \{0\}$は可逆である.$x \in B \backslash \{0\}$の任意性より$B$は体である.

逆に$B$が体であるとする.任意の$x \in A \backslash \{0\}$を取る.$x$$B$の元と見れば逆元$x^{-1} \in B$が存在する.$B$$A$上整であるから,$a_0,\cdots,a_{n-1} \in A$($n>0$)が存在して
$$(x^{-1})^n+a_{n-1}(x^{-1})^{n-1}+\cdots+a_1x^{-1}+a_0=0$$
が成り立つ.両辺に$x^{n-1}$を掛けることで
$$x^{-1}+a_{n-1}+\cdots+a_1x^{n-2}+a_0x^{n-1}=0$$
$$x^{-1}=-(a_{n-1}+\cdots+a_1x^{n-2}+a_0x^{n-1}) \in A$$
となる.即ち$x \in A \backslash \{0\}$$A$の中でも可逆である.$x \in A \backslash \{0\}$の任意性より$A$は体である.(証明終)

追記:問(1)をもっと初歩的に示したい

問(1)は環論のより初歩的な事実を用いるだけでも示すことができます(その分上述の証明より長くなりますが…).その方法を以下に示します.この方法は参考文献[4]のp22-23に依っています.

問(1)の証明(より初等的)
証明を表示

$K[X,Y]=(K[X])[Y]$という事実に注意する.その時々で見やすい方の表記を用いることとする.

$K[X,Y]$の素イデアルを全て決定することで問(1)を示す.$P \subset K[X,Y]$を素イデアルとする.$P$$(0)$や単項イデアルの場合は特に示すことがないので,$P$は零でも単項でもないとする.$P$は素イデアルなので$K[X,Y]$と等しくない.即ち$P$にはある多項式$f \in K[X,Y]$が含まれる.$f$を素元分解することである既約元$f_1 \in K[X,Y]$$P$に含まれることが分かる($P$は素イデアルだから.また$K[X,Y]$はUFDなので素元と既約元は一致する).$P$は単項でないので$f_1$で割り切れない$f_2 \in K[X,Y]$$P$に入る.このとき$f_1,f_2 \in P$$K[X,Y]$において互いに共通因子を持たない

(Step 1)
まず$f_1,f_2$$(K(X))[Y]$($K(X)$は有理関数体)においても共通因子を持たないことを背理法で示す.$h \in (K(X))[Y]$$f_1,f_2$$(K(X))[Y]$において割り切るとすると,
$$f_1=ah, \hspace{0.1in} f_2=bh \hspace{0.2in} (a,b \in (K(X))[Y])$$
と書ける.$h,a,b \in (K(X))[Y]$それぞれにおいて係数の分母を括り出し,更に分子の最小公倍数を括り出すことで,原始多項式$\tilde{h}, \, \tilde{a}, \, \tilde{b} \in (K[X])[Y]=K[X,Y]$を用いて
$$f_1=\alpha \tilde{a}\tilde{h}, \hspace{0.1in} f_2=\beta \tilde{b}\tilde{h} \hspace{0.2in} (\alpha,\beta \in K(X))$$
と書ける.原始多項式の積は原始多項式であるというGaussの補題から,$\tilde{a}\tilde{h}, \, \tilde{b}\tilde{h}$もそれぞれ原始多項式である.よって,$f_1,f_2 \in (K[X])[Y]$であることも併せると,$\alpha,\beta \in K[X]$でなければならない.このとき$\tilde{h}$$(K[X])[Y]=K[X,Y]$内で$f_1,f_2$を共に割り切っており,$f_1,f_2$$K[X,Y]$内で共通因子を持たないという仮定に反する.よって$f_1,f_2$$(K(X))[Y]$においても共通因子を持たない

(Step 2)
$(K(X))[Y]$は体上の1変数多項式環であるからPIDである.すると,$f_1,f_2$$(K(X))[Y]$内で共通因子を持たないことから,ベズーの等式よりある$a,b \in K(X)$が存在して$af_1+bf_2=1$が成り立つ$a,b$の分母の最小公倍数$c \in K[X]$を両辺に掛けることで
$$caf_1+cbf_2=c$$
を得る.$f_1,f_2 \in P$であることから$c \in P$が従う.即ち$c \in P \cap K[X]$である.$P \subset K[X,Y]$は素イデアルであるから$P \cap K[X]$$K[X]$の素イデアルである(包含写像$K[X] \hookrightarrow K[X,Y]$の引き戻し).$c$を素元分解することで,ある既約多項式$p$が存在して$p \in P \cap K[X]$となることが分かる.$K[X]$はPIDなので$P \cap K[X]=(p)$が成り立つ.特に$(p)$$K[X]$上の極大イデアルであり,$K[X]/(p)$は体である.従って$(K[X]/(p))[Y]$はPIDである.

(Step 3)
Step 1とStep 2より,ある既約多項式$p \in K[X]$が存在して$(p) \subset P$となる.ここで$P$が素イデアルであることと
$$K[X,Y]/P \cong (K[X,Y]/(p))/(P/(p)) \cong (K[X]/(p))[Y]/(P/(p))$$
という等式から,$P/(p)$$(K[X]/(p))[Y]$の素イデアルとなる.$(K[X]/(p))[Y]$はPIDであったから,ある$g \in K[X,Y]$であって,$\bar{g} \in (K[X]/(p))[Y]$は既約,かつ$P/(p)=(\bar{g})$となるものが存在する.これより$P \subset (p,g)$が成り立つ.
$(p,g)=K[X,Y]$とすると$\bar{1} \in (\bar{g})=P/(p)$となって$P/(p)$の極大性に反するから$(p,g) \neq K[X,Y]$である.ところで,PIDにおいて素イデアルは極大イデアルでもあるから$P/(p)$は極大であり,それに対応して$P$も極大となる.従って$P=(p,g)$と書けることが分かる.

(Step 4)
ここまでの議論より$K[X,Y]$の素イデアルは次の3つの内のいずれかの形をしている
$$(0), \hspace{0.2in} (f) \, (f \in K[X,Y] \, は既約),$$
$$(p,g) \, (p \in K[X] \, は既約, \, g \in K[X,Y] \, は \, (K[X]/(p))[Y]で既約)$$
逆にこれらのイデアルが素イデアルであることは直ぐに確かめられる.
これらの内極大イデアルとなり得るものを考える.$p,g$の条件と等式
$$K[X,Y]/(p,g) \cong (K[X]/(p))[Y]/(\bar{g})$$
より$(p,g)$は極大イデアルである.$K[X,Y]$は体でないので$(0)$は極大イデアルでない.よって既約元$f \in K[X,Y]$に対しイデアル$(f) \subset K[X,Y]$が極大でないことを示せば,全ての極大イデアルが$(p,g)$の形をしていなければならないことが分かり,即ち全ての極大イデアルが2元生成であることも従う.

(Step 5)
以下,既約元$f \in K[X,Y]$に対し$(f) \subset K[X,Y]$が極大でないことを示す.$f$$Y$について整理して
$$f(X,Y)=a_n(X)Y^n+\cdots+a_1(X)Y+a_0(X) \hspace{0.2in} (a_0,\cdots,a_n \in K[X], \, a_n(X) \neq 0)$$
と表す.
まず$n=0$即ち$f \in K[X]$とする.このとき上と同様の議論によって$(f) \subsetneq (f,g)$を満たす極大イデアル$(f,g)$($g \in K[X,Y]$)を取ることができるので$(f)$は極大でない.
$n \geq 1$とし,$a_n$を割り切らない既約多項式$g \in K[X]$を1つ取る($K[X]$には単項素イデアルが無限個存在するのでこのような$g$を取れる).すると$(f) \subsetneq (f,g) \subsetneq K[ X,Y]$が成り立つ.実際,$(f)=(f,g)$とすると$h \in K[X,Y]$によって$g=fh$と書けるが,両辺の$Y$の次数を比較すると
$$0={\rm deg}_Y(g)={\rm deg}_Y(f)+{\rm deg}_Y(h) \geq {\rm deg}_Y(f)=n \geq 1$$
となって矛盾.また$(f,g)=K[X,Y]$とすると,ある$c_1,c_2 \in K[X,Y]$が存在して$c_1f+c_2g=1$と書ける.この等式を$(K[X]/(g))[Y]$で考えると,$\bar{c_1} \cdot \bar{f} = \bar{1}$となる.つまり$\bar{f}$$(K[X]/(g))[Y]$の単元である.しかし$g \in K[X]$$f$の最高次係数である$a_n(X) \in K[X]$を割り切らないから${\rm deg}_Y(\bar{f})=n\geq 1$であり,単元とはなり得ないため矛盾.以上より$(f) \subsetneq (f,g) \subsetneq K[X,Y]$が成り立つので,$(f)$は極大でない.以上より題意は示された.(証明終)

今の証明においても,単項でない素イデアルとその係数環との共通部分が零イデアルでないことを示すところが最も急所だと思います.
また,今の証明において,$K[X]$を,無限個の単項素イデアルを持つ単項イデアル整域$A$$K(X)$$A$の商体$F$置き換えても全く同様の議論ができます.よって多項式環$A[Y]$の素イデアルたちは,次の3つの内のいずれかの形をしていることになります.
$$(0), \hspace{0.2in} (f) \, (f \in A[Y] \, は既約), \hspace{0.2in} (p,g) \, (p \in A \, は既約, \, g \in A[Y] \, は \, (A/(p))[Y]で既約)$$
しかも,これらの中で極大イデアルは2元で生成されるもののみであることも分かります.
因みに無限個の単項素イデアルの存在が必要となるのは上の証明のStep 5において$a_n$を割り切らない既約元を取るところです.もし$A$が有限個しか単項素イデアルを持たないならば,上とは異なる結果になります.極端な例として$A$が体である場合を考えると,$A[Y]$の素イデアルは全て単項イデアルとなってしまいます.

参考文献[4]にも書いてありますが,この事実を用いると,例えば多項式環$\mathbb{Z}[Y]$の素イデアルたちが今の3つの形のどれかになることも分かって,結構嬉しいですね.

今回の記事は以上です.
最後までお読み頂きありがとうございました.

参考文献

投稿日:2022610

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素朴な問題が特に好きです.

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