先日、Harryさんのツイートを発端として、ある種の三角関数を含んだ重積分(Dirichlet積分の多重化)について色々なことが判明したので、現在わかっていることをまとめます。
インデックス表記については、多重ゼータ値などと統一します。多重S値という名前は、僕が適当につけたものです。
とする。ここで、
は収束し、これを多重S値(MSV)と呼ぶ。
MSV同士の積について、積分範囲のシャッフルを考えることで以下が成り立ちます。
実は、関係式はこれ以外にも存在します。複素積分を使います。
まず複素積分の使い方について具体例から見ていきましょう。
とします。
従って、
となります。コーシーの積分定理を適用すれば
実部,虚部を比較することにより
を得ます。なんと
ではもう一つの
と計算することができます。しかし結果に着目すれば
逆にDirichlet積分から
同様にして、複素積分から以下が出てきます。
実部と虚部を比較して
シャッフル積から
となります。こんな感じで他にもMSV間の関係式
などが出てきます。
色々特殊値が求まってきたので整理しましょう。
Dirichlet積分より、
先に解説した通り、
先に解説した通り、
です。またシャッフル積より
が従い、先の解説と同様にして
となり、あとは計算をするだけ...
はあぁぁ~~???なんだこれ???
もしかしたら何かしらの対称性とかがあって計算しやすい形に変形できるのかもしれませんがそんなの知ったこっちゃないのでゴリ押します。
不定積分は一応ポリログで書けるので...すが、代入して整理していける量じゃないです。ズルします。その前にちょっと変形してやります。
まず
ここで、こちらの論文(arXiv:2004.06232)の
らしいです。次に
最後のAMZVの計算方法は、こちらの記事で紹介されています。
これでようやく準備が整いました。
さらに、
です。まとめると、
となります。
複素積分から出てきた関係式
と、シャッフル積を組み合わせます。この値の多重ゼータ値による表示の予想は現在ありませんが、周期に属することは分かっています。
追記:この記事を書いた直後にAMZVで書けることが発覚しました!(後で解説しています)
です。
より
です。残った
複素積分から
で、この虚部を見ると
となります。
左辺を整理すると
右辺を計算すると
なので、
まとめると、
以上です。